見出し画像

サッカーに興味を持った人は、何日以内に次の試合を見ればファンになりやすいのだろうか

拙著『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに』から生まれた問い。

ワールドカップを見て、サッカーが面白いと思った。

日本代表の選手を覚えた。

Jリーグにも少し興味を持った。

そこで私は、以前の記事を書きながら一つ気になったことがある。

興味を持った瞬間から、次のサッカー体験までの時間は、短い方がいいのではないだろうか。

例えば、ワールドカップが終わった翌週にJリーグを見に行く人。

一か月後に行く人。

半年後に行く人。

この三人では、その後ファンになる可能性に違いはあるのだろうか。

もっと直接的に言えば、

サッカーに興味を持った人は、何日以内に「次の一回」を経験すれば、その興味が残りやすいのだろうか。

今回は、この問いを少し調べてみた。

調べてみたが、「○日以内」という答えは見つからなかった

まず結論から書くと、

「初観戦から7日以内ならファンになりやすい」
「30日を超えると定着率が下がる」

といった、サッカー観戦についての明確な日数を示す研究は、今回確認した範囲では見つけられなかった。

スポーツ観戦の研究で多く扱われているのは、むしろ、

  • 観戦体験への満足

  • チームへの愛着

  • スタジアムでの体験

  • イベントの質

  • 再観戦意向

  • 他人に勧めたいという意向

などである。

例えば、日本のプロバスケットボール観戦者473人を対象とした研究では、スタジアムやアリーナでの感覚的な体験と、チームへのロイヤルティ、再訪意向との関係が検討されている。(J-STAGE)

またスポーツイベントに関する近年の研究でも、観戦者がイベントを好意的に評価することや、満足することが、再び観戦したいという意向や他者への推奨につながることが示されている。(PubMed Central (PMC))

つまり研究から比較的はっきり言えるのは、

最初の体験が良かった人ほど、また来る可能性は高まる。

というところまでである。

では「時間」は関係ないのだろうか。

私は、そうとも思えない。

「次も行こう」と思った気持ちは、いつまで残るのだろう

初めてスタジアムへ行った日を想像してみる。

ゴールが決まった。

周囲が一斉に立ち上がった。

応援の音圧に驚いた。

スタジアムグルメがおいしかった。

帰り道に、

「また来たいね」

と話した。

この瞬間、再観戦への気持ちはかなり高いはずである。

問題は、その次である。

翌週にホームゲームがある。

チケットもすぐ買える。

「あの試合、また行こうか」

となる。

これはかなり自然である。

ところが次に行ける試合が二か月後だったらどうだろう。

その間に仕事が忙しくなる。

子どもの予定が入る。

別の趣味へ関心が向く。

そもそも試合日を忘れる。

「また行きたい」と思ったこと自体が、少しずつ日常に埋もれていく。

これはスポーツに限った話ではない。

興味がある状態と、行動する状態の間には時間がある。

そして、その時間が長くなるほど、行動まで届かない人は増えるのではないだろうか。

これは現時点では私の仮説である。

でも、Jリーグには検証できるデータがすでにかなりあるはずだ。

Jリーグは「再来場」をすでに重要視している

Jリーグは現在、単に一度スタジアムへ人を集めるだけではなく、その後の再来場を重要な指標としている。

2024年には、Jリーグを知っているもののまだ観戦経験がない層を重点対象にし、

認知
→ 関心
→ 来場
→ リピート
→ 定着

という顧客体験の流れでファン獲得を考えていた。(Jリーグ公式サイト)

また、近年のJリーグではJリーグIDやチケット購入履歴を使い、新規来場者がその後どの程度再来場したかを把握する取り組みも進んでいる。

ここまで分かるのであれば、次にぜひ知りたい。

初回来場から2回目まで、何日空いた人が最も定着しているのか。

である。

「2回来た人」は、1回来ただけの人と違うのだろうか

スポーツイベントの研究では、過去の観戦経験がある人ほど、将来の観戦意向が高い傾向が報告されている。初めて来た人と、すでに来場経験のある人では、スポーツへの関与や再参加意向にも差がある。(Emerald Publishing)

これは感覚的にも分かる。

一度目は、

行ってみようかな。

である。

二度目は、

また行こう。

である。

似ているようで、かなり違う。

一度目には、

招待されたから。

ポケモンが目的だったから。

友人に誘われたから。

ワールドカップを見たから。

という外部のきっかけがある。

しかし二度目に自分でチケットを取ったなら、

その人自身が「もう一度」を選んだ

可能性が高くなる。

だから私は、ファン化を考えるうえで、

初回来場者数以上に、「2回目へ進んだ人数」が重要なのではないか

と思う。

そして「2回目までの日数」を測ってみたい

ここからが今回考えてみたいことである。

例えば、初めてJリーグへ来た1万人を追跡するとする。

その後、

7日以内に再来場した人。

8〜30日以内。

31〜60日。

61〜90日。

半年以内。

1年以内。

再来場しなかった人。

に分ける。

そしてさらに一年後まで追う。

年間3回来たのか。

5回来たのか。

ファンクラブへ入ったのか。

自分でチケットを購入するようになったのか。

お気に入りクラブを登録したのか。

そうすれば、

「2回目までの間隔」と「その後の定着」の関係

が見えるかもしれない。

もちろん、単純な因果関係ではない。

もともと関心が強い人だから早く2回目へ行った可能性もある。

ホームゲームの日程にも左右される。

アクセスや費用、家族構成も違う。

それでも、かなり価値のあるデータになると思う。

ワールドカップ後なら、さらに面白い

特に2026年は、この分析をする絶好の機会ではないだろうか。

ワールドカップが終わった。

その直後に、秋春制初年度となるJリーグの新シーズンが始まった。

開幕から大規模な集客が起きている。

つまり、

ワールドカップを見る

Jリーグへ初めて来る

次の試合へ来る

という流れを追える可能性がある。

以前の記事では、ワールドカップ後のJリーグ開幕節に初観戦者がどれだけいたのかを知りたい、と書いた。

今回さらに知りたいのは、

その初観戦者は、何日後にもう一度来たのか。

である。

ここまで分かれば、「ワールドカップの熱を日常のサッカーへつなげる」という話がかなり具体的になる。

もし「黄金期間」が見つかったら

仮に分析してみて、

初観戦から30日以内に2回目へ来た人は、その後の年間来場回数が明らかに多い。

という結果が出たとする。

そうなれば、クラブ側の施策も変わる。

初観戦者に半年間ずっとメールを送るのではなく、

最初の30日間を特に大切にする。

初観戦の翌日に、

「昨日はありがとうございました」

と送る。

数日後に、

「次のホームゲームはこちらです」

と知らせる。

初観戦者だけの割引を出す。

家族で来た人には、次のファミリー企画を案内する。

ポケモン目的だった人には、

「次回はこんなイベントがあります」

と知らせる。

つまり、

興味が熱いうちに、次の一歩を見せる。

のである。

次の試合がないなら、「次の接触」でもいい

ただ、いつも都合よくホームゲームがあるとは限らない。

アウェイが続く。

代表期間がある。

遠方で次回は行けない。

そんな場合もある。

そこで「次の一歩」を、スタジアムだけに限定する必要はないと思う。

次の試合をテレビで見る。

ハイライトを見る。

選手の動画を見る。

クラブのSNSをフォローする。

地域イベントへ行く。

子どもが体験教室へ参加する。

つまり、

来場 → 来場

だけでなく、

体験 → 次の接触

までの時間を短くする。

これでもいいのではないだろうか。

スポーツイベントの研究でも、社会的なつながり、ブランド体験、満足などがその後のロイヤルティに結びつくとされている。(PubMed Central (PMC))

一度の強烈な体験だけではなく、その後も関係が続くことが重要なのだと思う。

「いつかまた来てください」では弱いのかもしれない

初めて来た人に、

またぜひ来てください。

と言う。

もちろん悪くない。

でも、それだけでは具体的な行動にならない。

それよりも、

次は2週間後です。

の方が強い。

さらに、

次はこの選手に注目してください。

前回来場した方はこちらからチケットを買えます。

今度は家族向けイベントがあります。

まであれば、もっと進みやすい。

人は、

「いつか」

より、

「次はここ」

の方が動きやすい。

だから、ワールドカップ後に必要なのも、

「これからも日本サッカーを応援してください」

だけではないのだと思う。

次のJリーグは土曜日です。
次の代表戦はこの日です。
あなたの近くではこのクラブが試合をします。

という具体的な次の場所である。

ファンになる瞬間は、一度目ではないのかもしれない

ここまで考えると、最初の観戦よりも二度目の方が重要なのではないかと思えてくる。

一度目は、きっかけによって連れてこられる。

二度目は、自分で戻ってくる。

もちろん全員がそうではない。

でも、

「また行く」という選択を一度した

ことには大きな意味がありそうだ。

そして三度目。

四度目。

気がつけば、

来月の試合はいつだろう。

と自分で調べるようになる。

そこで初めて、

観戦がイベントではなく習慣になる。

以前の連作で考えた、

ブーム → 接触 → 体験 → 習慣 → 文化

という流れで言えば、

最も難しいのは、

体験 → 習慣

なのかもしれない。

だから「何日以内?」を調べてみてほしい

現時点では、

7日なのか。
30日なのか。
60日なのか。

私は答えを持っていない。

今回調べた研究からも、明確な日数までは分からなかった。

だからこそ、知りたい。

Jリーグには、

JリーグIDがある。

チケット購入履歴がある。

初来場者のデータがある。

再来場のデータもある。

これらを使って、

初観戦から2回目までの日数と、その後の定着率

を分析したら、とても面白いのではないだろうか。

ワールドカップ後。

ポケモンコラボ。

無料招待。

国立開催。

いろいろな入口から人が来る。

入口は違っていい。

でも、その人がファンになるかどうかを考えるなら、

「何がきっかけだったか」と同じくらい、「次の体験までどれくらい空いたか」

を見る価値があると思う。

サッカーへの興味は、スイッチのように突然オンになって、そのまま永久に点灯するものではない。

おそらく、

見た。

面白かった。

また見た。

もっと知りたくなった。

また行った。

という小さな繰り返しの中で、少しずつ強くなる。

ならば、日本サッカーが設計すべきなのは、

最初の一回だけではなく、最初の一回と二回目の間

なのかもしれない。

そしていつか、

「初観戦後○日以内に次の接点をつくると、定着しやすい」

という日本サッカー独自のデータが見つかったら。

ワールドカップのブームを日常へつなげる方法は、今よりずっと具体的になるのではないだろうか。


日本サッカーについて、こんな本を書いています

日本サッカーを「競技」だけでなく、産業、スタジアム、地域、交通、育成、観戦環境など、さまざまな角度から考えるKindle本を書いています。
気になるテーマがありましたら、ぜひ手に取ってみてください。

※以下は全てKindle Unlimited対象作品です。
Kindle Unlimited会員の方なら追加料金なしでお読みいただけます。

『日本サッカー産業論:ワールドカップ優勝を「偶然」ではなく「仕組み」で実現する』
日本サッカー全体を一つの「産業」として捉え、これからの成長の仕組みを考える本です。

『Jリーグスタジアム経済論:スタジアムから始まる地方創生』
スタジアムを「試合を見る場所」だけでなく、地域に人とお金を呼び込む社会・経済基盤として考えます。

『「見る人」から考える日本のスポーツ施設:校庭・体育館・公園・練習場に、椅子も屋根もトイレも足りない』
選手ではなく観戦者・保護者・地域利用者の側から、椅子、屋根、トイレなど日本のスポーツ施設を問い直します。

『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに:子どもの競技選択から2046年ワールドカップ優勝まで』
世界一になれるかもしれない子どもに、どうすればサッカーを選んでもらえるのか――競技選択から日本サッカーの未来を考えます。

『サッカー地方創生:クラブが地域を救うのではない――「主語は地域」から考える共創と実行の仕組み』
地方創生をクラブだけに背負わせず、自治体、企業、住民、サポーターを含む「地域全体の仕組み」として考えます。

『Jリーグ交通経済論:「行ける」「帰れる」が、クラブと地域を強くする 』
スタジアムへの「行きにくさ」を交通問題として捉え、鉄道、バス、自動車などからJリーグの移動を考えます。

※全てKindle Unlimited対象作品です。
Kindle Unlimited会員の方なら追加料金なしでお読みいただけます。


蒼色真琴
MA Publishing

#Jリーグ #サッカー #Jリーグ観戦 #サッカー観戦 #日本サッカー #スポーツマーケティング #ファンマーケティング #スポーツビジネス #日本代表 #ワールドカップ #ナンバーワンスポーツ

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集