ワールドカップが終わった翌週、初めてJリーグを見に行った人はどれくらいいるのだろうか
拙著『サッカーを日本のナンバーワンスポーツに』から生まれた問い。
2026年のワールドカップが終わった。
日本代表を見ていた人の中には、普段はJリーグをほとんど見ない人もいたと思う。
選手の名前を覚えた。
サッカーって面白いなと思った。
もう少し見てみたいと思った。
そして、その直後に始まったのが、2026/27シーズンのJリーグだった。
今年は秋春制へ移行して最初のシーズンである。8月に新しいシーズンが始まるというだけでもこれまでとは違うが、さらにワールドカップ直後という特別なタイミングが重なった。Jリーグも2026/27シーズンを8月から翌年6月までの日程としてスタートさせている。(Jリーグについて)
そして、開幕から驚くような数字が出た。
開幕節に47万人。翌週には、それをさらに更新した
8月7日から9日に行われた第1節。
J1・J2・J3の29試合に、合計47万6112人が来場した。
全カテゴリーを合わせた1節あたりの最多入場者数を更新しただけでなく、J1は10試合で30万4292人、収容率85.9%を記録し、こちらも節別の過去最高となった。(Jリーグ公式サイト)
それだけでも十分すごい。
ところが翌週、さらに記録が更新された。
第2節にはJ1・J2・J3の30試合で48万1544人が来場。
J2は15万9567人、J3は7万956人となり、それぞれカテゴリー単独でも節別最多を更新した。
開幕から2節だけで、95万7656人がJリーグのスタジアムを訪れたことになる。(Jリーグ公式サイト)
これは明らかに大きな数字である。
では、その約96万人の中に、
「ワールドカップを見て、初めてJリーグへ行ってみた人」
は、どれくらいいたのだろうか。
私は、そこがとても気になる。
残念ながら、今のところ人数までは分からない
今回、Jリーグの公式資料を確認した範囲では、開幕2節の総入場者数は公表されているものの、
初めてJリーグを観戦した人が何人いたのか
ワールドカップをきっかけに来場した人が何人いたのか
という内訳までは、まだ公表されていない。
だから、
「ワールドカップ効果で47万人集まった」
とは言えない。
秋春制初年度という新鮮さもある。
夏休みでもある。
開幕戦そのものへの期待もある。
各クラブの営業努力もある。
ポケモンなどとのコラボレーション、招待施策、国立競技場での試合など、以前から積み上げてきた集客策もある。Jリーグは2024年から、未観戦層や久しぶりの来場者を重視し、国立開催や招待、コラボレーションを通じて新規来場を増やす施策を強化してきた。(Jリーグについて)
だから原因を一つに決めることはできない。
それでも、
ワールドカップ直後の新シーズンに、過去最多級の人がスタジアムへ来た
という事実は残る。
私は、だからこそ「その中に誰がいたのか」を知りたくなる。
これまでにも「初めて来た人」は測られてきた
Jリーグは以前から、新規来場者を増やすことを重要なテーマとしている。
2024年の事例では、大規模な集客策を行ったJ2クラブの試合で、来場者の約4分の1が初来場者だったケースも紹介されている。(Jリーグについて)
さらに2025年には、JリーグIDを活用した招待やCRM施策を進め、初回来場者の再来場率が30%を超えたとJリーグ自身が報告している。(Jリーグについて)
これは、とても面白い数字だと思う。
100人を無料で呼ぶ。
そこで終われば、一日の集客である。
しかし、そのうち30人以上がもう一度来れば、
「イベントで来た人」が、「次も来る人」に変わり始めた
ことになる。
だから、今回の2026/27シーズンでも、本当に見たい数字は総入場者数だけではない。
47万人来た。
48万人来た。
その先で、
そのうち初めての人は何人だったのか。
その人はなぜ来たのか。
ワールドカップを見ていたのか。
誰と来たのか。
次も来たいと思ったのか。
実際に第2節、第3節へ戻ってきたのか。
ここまで分かると、今回の記録の意味がかなり変わってくる。
もし「ワールドカップ→Jリーグ」が見えたら大きい
例えば、開幕節の47万人の中に、ワールドカップをきっかけに初めて来た人が一定数いたとする。
さらに、その人たちの一部が秋になってもスタジアムへ来る。
冬にも試合を見る。
翌春もクラブを気にしている。
そうなれば、
ワールドカップの熱狂が、Jリーグの日常へ移った
と言える。
前の記事で私は、
ブーム → 接触 → 体験 → 習慣 → 文化
という流れを考えた。
ワールドカップは「接触」を一気に増やしてくれる。
今回の開幕2節は、その人たちを「体験」へ移せたかもしれない瞬間である。
次に見るべきなのは、
体験した人が、習慣へ進むのか。
である。
「何人来たか」から、「誰が残ったか」へ
Jリーグはすでに、単純な総入場者数だけではなく、収容率や新規来場、再来場を重視している。
2025年のシーズンレビューでも、満員に近いスタジアムでの体験が初来場者の再訪動機になり得るため、総入場者数だけでなく収容率も重要だという考え方が示されている。(Jリーグについて)
これは2026/27シーズンを考えるうえでも重要だと思う。
第1節の47万6112人。
第2節の48万1544人。
ここまではすでに記録になった。
でも、本当に面白いのは数か月後である。
8月に初めて来た人が、
9月にも来る。
11月にも来る。
年を越えてもクラブの試合結果を見る。
来年には、自分でチケットを買っている。
そこまで進めば、今回の記録的集客は単なる「開幕景気」ではなくなる。
初観戦者を追いかけてみてほしい
だから、Jリーグや各クラブには、ぜひ今回の初観戦者を追跡してほしいと思う。
これは批判ではない。
むしろ、今のJリーグだからこそできることだと思う。
JリーグIDがある。
チケット購入履歴がある。
招待施策のデータがある。
アンケートもできる。
過去にも新規来場者や再来場率を測ってきた実績がある。(Jリーグ公式サイト)
ならば、
2026年ワールドカップ後に初めて来た人は、その後どうなったのか
を、一つの長期データとして残せないだろうか。
3か月後。
半年後。
1年後。
そこまで追えば、日本サッカーにとって非常に価値のある資料になると思う。
次の2030年ワールドカップでも使える。
その次の大会でも使える。
ワールドカップのあと、何日以内に試合へ誘えばよいのか。
どんな人が再来場しやすいのか。
初観戦で何が満足につながったのか。
どんな人は一度きりで終わったのか。
が分かるからである。
47万人という数字の中に、未来のサポーターがいたかもしれない
開幕節のスタジアムにいた一人を想像してみる。
ワールドカップまでは、日本代表しか見たことがなかった。
せっかくだからJリーグも行ってみようと思った。
家族とスタジアムへ行った。
ゴールが決まった。
周りが立ち上がった。
思ったより楽しかった。
帰り道で、
「また来ようか」
と話した。
その一人は、今はまだサポーターではないかもしれない。
でも、来月もう一度来るかもしれない。
来年にはユニフォームを着ているかもしれない。
10年後には子どもを連れているかもしれない。
だから私は、
47万6112人という数字の大きさ以上に、その中に何人の「初めて」が含まれていたのかを知りたい。
そして、その人たちがどれだけ次へ進んだのかを見てみたい。
ワールドカップの成功を、日本代表の成績だけで終わらせないためにも。
Jリーグの開幕記録を、一度の記録だけで終わらせないためにも。
「何人来たか」の次に、「誰が残ったか」を見る。
そこまでできたとき、
2026年のワールドカップと2026/27シーズンの開幕は、一本の線でつながるのではないだろうか。
「見る人」を日常のサッカーへどうつなげるかについては、こちらの記事でも考えました。
ワールドカップで増えた「見る人」を、どうすれば日常のサッカーへつなげられるのだろうか
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