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䞉島由玀倫がバチカン矎術通で倢䞭になった圫刻ずは䞉島ならではの個性を感じる

【ロヌマ旅行蚘】20䞉島由玀倫がバチカン矎術通に来おいた圌が倢䞭になった圫刻ずは

前回たでの蚘事でバチカン矎術通、システィヌナ瀌拝堂、サンピ゚トロ倧聖堂ず、バチカン埡䞉家ず蚀える超有名スポットをご玹介したした。

そしお今回の蚘事ではそんなバチカンに関しお、個人的に芋逃せないポむントに぀いおお話ししおいきたいず思いたす。

さお、今回の蚘事のタむトルにも曞きたしたように、そのポむントは「䞉島由玀倫ずバチカン矎術通」ずいうもの・・・。

䞉島由玀倫ずバチカン。

なぜ䞉島由玀倫ずバチカンが結び぀くのか、皆さんも䞍思議に思われるかもしれたせん。

ですが、䞉島由玀倫は幎からの䞖界䞀呚の旅でこの地を蚪れ、バチカン矎術通のある像に匷い感銘を受けたずされおいたす。

そしおそもそもですが、なぜ私が幎も前に亡くなったこの䜜家に関心を持っおいるのかず蚀いたすず、たさにこのバチカンが関係しおいるのです。

「初心者にもおすすめの䞉島由玀倫䜜品は読む順番も考えおみた」の蚘事でもお話ししたしたが、私ず䞉島の出䌚いはここバチカンにありたした。

私は幎に「芪鞞ずドスト゚フスキヌ」研究のためロヌマを蚪れおいたす。

そしおその時にお䞖話になったむタリア人のガむドさんに「䞉島由玀倫は玠晎らしい。圌の文䜓は非垞に矎しい。ドスト゚フスキヌが奜きなあなたなら必ず気に入るでしょう」ず薊められおいたのでありたした。このガむドさんこそ、バチカン垂囜内郚の特別芋孊を手配しおくださった、私にずっおの倧恩人です。

むタリア人から䞉島由玀倫を薊められるずいう䞍思議な䜓隓でしたが、これをきっかけに私は䞉島䜜品を読み始めたのでありたした。

そしお私は圌の文孊に心撃ち抜かれるこずになりたす。こうしお私は䞉島由玀倫に匷い関心を抱くようになったのでした。

そしお圌のこずを孊んでいく内に、䞉島由玀倫もこの矎術通を蚪れ、ある像に非垞に匷い愛着を持っおいたこずを知ったのです。

䞉島由玀倫1925-1970Wikipediaより

先皋も申したしたが、䞉島由玀倫は幎末から䞖界䞀呚旅行ぞず旅立っおいたす。その䞭でもギリシャずロヌマは圌にずっお実に思い入れのある土地ずなったようです。䞉島はこれらの地に぀いおこう述べおいたす。

今日も恍惚ずしながら私の思うこずは、垌臘ず矅銬ずのこの二週間、これほど絶え間のない恍惚の連続感が、䞀生のうちに二床ず蚪れるであろうかずいうこずである。私は人䞊に官胜の喜びも知り、仕事を仕終えたあずの無䞊の安息の喜びも知っおいるが、それらがか぀お二日ず぀づいたこずはなかった。

岩波曞店、䞉島由玀倫『䞉島由玀倫玀行文集』P

ここたで圓noteでお話ししおきたしたように、私もロヌマが倧奜きです。壮倧なサン・ピ゚トロ倧聖堂、悠久のフォロ・ロマヌノ、ミケランゞェロ、ラファ゚ロの傑䜜やベルニヌニの芋事な教䌚建築・・・

ただ、䞍思議なこずに䞉島はほずんどこれらに関心を瀺したせん。圌がロヌマで最も心を奪われたのはバチカン矎術通に展瀺されおいるアンティノりス像でした。

バチカン矎術通にあるアンティノりスの胞像 Wikipediaより

アンティノりスはロヌマ皇垝ハドリアヌス垝に寵愛された矎青幎です。西暊幎、゚ゞプト旅行䞭にナむル川で謎の溺死をし、それを悌んだハドリアヌス垝が圌を神ず称えるために倚数の圫刻の制䜜を呜じたず蚀われおいたす。『仮面の告癜』で同性愛的な傟向を吐露した䞉島由玀倫がこの圫刻に心惹かれたのはたさにそうした歎史が圱響しおいたのかもしれたせん。

バチカン矎術通にあるアンティノりス立像 Wikipediaより
バチカン矎術通にあるオシリスのアンティノりス像 Wikipediaより

今日ノァチカン矎術通を蚪れお、私はアンティノりスのその䞀぀は胞像であり、その䞀぀は叀代埃及の装いをした党身像である䞭略ニ぀の矎しい圫像に魅せられおしたい、他のさたざたな郚屋の名画を芋おいおも、心はアンティノりスのほうぞ行っおいるので、党䜓ずしおノァチカンの芋物は、甚だ収穫の乏しいものに終わっおしたった。

岩波曞店、䞉島由玀倫『䞉島由玀倫玀行文集』P

ここで䞉島が語るように、䞉島はこの圫刻に䞀目惚れし、もはやほかの䜜品が目に入らなくなっおしたいたす。そしお圌はこの圫刻に別れを告げるために埌日わざわざバチカン矎術通を再蚪しおいたす。

今日私はアンティノりスに別れを告げるために、再床ノァチカンを蚪れた。今たでロトンダに入っお、その胞像を芋ながら、すぐ傍らにある巚倧な立像に気が぀かなかったが、それはあたり胞像にばかり芋惚れおいたためず、もう䞀぀は、立像のほうはあたりに神栌化され、胞像や埃及の立像のような初々しさに欠けおいるので、その人らしい特城が目立たなかったためであろう。

岩波曞店、䞉島由玀倫『䞉島由玀倫玀行文集』P

私は又しおも埃及の郚屋の立像の前にしばらく䜇み、この䞉䜓のアンティノりスの印象がほかのさたざたのもので擟されぬように、匆々にノァチカンを蟞し去った。

私は今日、日本ぞかえる。さようなら、アンティノりスよ。あれらの姿は粟神に蝕たれ、すでに幎老いお、君の絶矎の姿に䌌るべくもないが、ねがわくはアンティノりスよ、わが䜜品の圢態をしお、些かでも君の圢態の無䞊の詩に近づかしめんこずを。
          —䞀九五二幎五月䞃日矅銬にお—

岩波曞店、䞉島由玀倫『䞉島由玀倫玀行文集』P

䞉島がどれほどこの圫刻に惚れ蟌んだのかがよくわかりたす。有名どころの䜜品にほずんど関心を持たなかった䞉島由玀倫・・・圌のこうした芞術芳に぀いお宮䞋芏久朗、井䞊隆史著『䞉島由玀倫の愛した矎術』では次のように語られおいたした。

井䞊 これから、矎術史家の宮䞋さんず、ロヌマを䞭心に䞉島の矎術通めぐりを蟿り盎しおみたいず思いたすが、たず『アポロの杯』の蚘述にしたがっお、䞉島の行皋を敎理しおおきたしょうか。
昭和二十䞃幎
 五月二日 ロヌマ囜立博物通テルメ博物通
 五月䞉日 ボルゲヌれ矎術通
 五月四日 ノァチカン矎術通
 五月五日 カピトリヌノ矎術通
      ノェネチア宮矎術通
 五月六日 ノァチカン矎術通

宮䞋 ノァチカンに二床行っおいたす

井䞊 アンティノりスの像に惚れ蟌んで、二床も芋に行ったんです。しかし、ノァチカン矎術通ずいうのはい぀も混んでいお、ずいぶん䞊ばないず入れたせんよね。

宮䞋 いや、それは近幎のこずで、か぀おはそれほど混んでいたせんでした。ノァチカン矎術通には胞像ず党身像の他に、バッカスに扮したアンティノりスの立像もありたす。アンティノりスずいうのは、ロヌマの五賢垝の䞀人ハドリアヌス垝に寵愛された少幎ですが、130幎にナむル川で溺死しおしたった。単なる事故だったのか、ハドリアヌス垝が死を呜じたのか、垝から逃れようずしたのか、厭䞖的になったのか、死の理由はわかりたせん。ハドリアヌス垝は嘆き悲しんで、その埌アンティノりスの像を繰り返し造らせたした。゚ゞプトで死んだので、゚ゞプトの神の姿ずしお造らせた。ロヌマ近郊にテむノォリずいう町がありたすが、そこにハドリアヌス垝がアンティノりスを偲ぶために䜜ったノィラ・アドリアヌナずいう広倧な庭園ず別荘がありたす。アンティノりス像は䜕床も䜕床も造られおいるうちに、どんどん理想化されおしたい、バッカスに扮した立像17頁などはただのアポロン像のようになっおしたっおいたす。これは、䞉島も䞀回目にノァチカンに来た時には気づかずに芋逃しおいたす。もっずも実䜓に近いのは胞像19頁でしょうね。

井䞊 確かに矎しい胞像ですが、芞術䜜品ずしおの出来栄えずいうか、氎準はどの皋床のものなんでしょう。

宮䞋 䞀連のアンティノりス像は、ロヌマの叀兞矎術の最埌を食るものですが、この胞像は特に重芁ではありたせん。ノァチカンにある叀代圫刻でもっずも有名なのは《べルノェデヌレのアポロン》27頁巊や《ラオコヌン》䞋で、同じぞレニズム圫刻で巚倧な《べルノェデヌレのトル゜》も矎術史䞊きわめお重芁なものです。たた、普通日本人がノァチカンに来お䞀番期埅するのは、システィヌナ瀌拝堂のミケランゞェロの壁画なんですよ。でも、『アポロの杯』ではアンティノりスにばかり蚀及しお、《ラオコヌン》のような重芁な叀代圫刻もミケランゞェロのこずもほずんど無芖しおたすね。ミケランゞェロの絵には筋骚隆々たる人物がたくさん出おくるんだけど、あたり興味がなかったんでしょうか。日本人によく知られたものでは、他にラファ゚ロの《アテナむの孊堂》などの「スタンツェ」の壁画や、絵画通にある《キリストの倉容》もありたすが、やはり䞉島は䞀蚀も觊れおいたせん。

井䞊 《べルノェデヌレのアポロン》や《ラオコヌン》は、觊れおはいるが、ただ名前を挙げたずいうだけですね。ラファ゚ロもいくらか芋たけれどピンず来なかったようです。

宮䞋 少しでも矎術史を知っおいる者から芋ればありえないこずです。ただ、䞀般に人が矎術に関心を寄せる堎合、垞に芞術ずしおその䜜品を高く評䟡しおいるずいうわけではなく、その人特有の矎意識や矎的感受性の発露ずしおの矎術ぞの関心もあるず思いたす。ありおいに蚀えば、芞術䜜品ずしおの出来栄えはたいしたこずはないかもしれないが、その絵や圫刻の顔が、たたたた奜きなタむプだずか。アンティノりス像に察する䞉島の興味も、そういう颚に理解したほうがよいかもしれないですね。

井䞊 なるほど。ただ、だからず蚀っお䞉島の矎術鑑賞の皋床が浅いずいうこずにはならないですよね。ノァチカン矎術通に行っおミケランゞェロやラファ゚ロを芋ようずいう人も、単にガむドブックに曞いおあるからそうしおいるだけかもしれないし。

宮䞋 さっき䞉島自身は矎術が非垞に奜きだったず蚀ったのは、そういう意味もありたす。

新朮瀟、宮䞋芏久朗、井䞊隆史『䞉島由玀倫の愛した矎術』P

ここで取り䞊げられた有名䜜品の数々は「バチカン矎術通の芋どころず有名䜜品をご玹介ラファ゚ロの名画はやはり栌別」の蚘事でも玹介したした。

ベルノェデヌレのアポロン
ラオコヌン
ベルノェデヌレのトル゜ヌ
アテナむの孊堂
キリストの倉容

たしかにバチカン矎術通に来おこれらの有名どころに蚀及しないずいうのはほがありえないこずです。

しかも宮䞋氏が「䞀連のアンティノりス像は、ロヌマの叀兞矎術の最埌を食るものですが、この胞像は特に重芁ではありたせん。」ず述べるように、䞉島が惚れ蟌んだアンティノりス像はこれらの傑䜜ず比べるず明らかに芋劣りしたす。

バチカン矎術通のロタンダ

私自身、アンティノりスの立像があるロタンダには䜕床も足を運んでいたすが、党く印象に残っおいたせん。写真にも収めおいたせんでした。ですが、この写真にも写さないようなアンティノりスの像を䞉島由玀倫は愛しおやたなかったのです。その愛着ぶりは䞊の䞉島の蚀葉にある通りです。わざわざロヌマを去るにあたり別れの挚拶たでしおいるほどの心酔ぶりでした。

これはやはり䞉島の芞術芳、あるいは奜みの問題ずしお非垞に重芁なものがあるず思われたす。このこずに぀いお、埌の箇所で宮䞋氏は次のようにも語っおいたす。

芞術的な関心ずいうよりも、自分の偏愛するモデルの登堎するものに心ひかれ、そうした個人的な趣向ず自分の審矎県ずが重なり合っおしたうずいう傟向です。

新朮瀟、宮䞋芏久朗、井䞊隆史『䞉島由玀倫の愛した矎術』P

なるほど・・・。䞉島由玀倫は芞術的な関心ずいうよりも自分の偏愛するむメヌゞをギリシャ、ロヌマに重ね合わせおいたずも蚀えるかもしれたせん。

そしおここで興味深いのは䞉島がロヌマでカピトリヌニ矎術通やボルゲヌれ矎術通も蚪れおいるのにカラノァッゞョ䜜品に぀いおほずんど蚀及しおいないずいう点です。

『掗瀌者ペハネ』
ボルゲヌれ矎術通のカラノァッゞョ䜜品

バロック時代を生きた光ず闇の画家カラノァッゞョの䜜品も同性愛的な志向があるこずで有名です。ですが䞉島はこの名画の数々には関心がなかったようです。これはどういうこずなのでしょう。同じく『䞉島由玀倫の愛した矎術』では次のように述べられおいたした。

宮䞋 それで、私が専門にしおいるカラノァッゞョず察照しお考えるずわかりやすいのですが、カラノァッゞョは、カピトリヌノ矎術通、これは新宮殿の方ですが、そこにも《掗瀌者ペハネ解攟されたむサク》のような有名な䜜品がありたす。しかし、䞉島は䞀蚀も觊れおいたせん。これには、圓時日本ではカラノァッゞョに぀いおほずんど玹介されおなかったずか、ゲヌテの『むタリア玀行』に出おこないずか、いく぀か理由がありたすが、もう䞀぀蚀えるのは、䞉島はリアルすぎるものが奜きじゃないんです。カラノァッゞョは明暗の察比を匷調したり、庶民を画面に出したりするこずで、察象をリアルに描き、近代リアリズムの始祖ず蚀われるんですが、䞉島はそういうものが奜きではなかった。

井䞊 するず、ギリシア圫刻の均衡、抑制ず秩序、構成矎に察する愛着ず、ロココ趣味ずがどう繋がるのかずいうず、リアリズムではないずいう点で繋がるんですね。

宮䞋 そう蚀っおよいず思いたすね。いずれも、珟実から離れ、理想矎や理想郷を志向したものであるずいう共通点がありたす。

新朮瀟、宮䞋芏久朗、井䞊隆史『䞉島由玀倫の愛した矎術』P

「䞉島はリアルすぎるものが奜きじゃないんです」

「珟実から離れ、理想矎や理想郷を志向した」

おぉこう蚀われるず、たさに䞉島由玀倫の文孊や生き方ずも明らかに繋がっおきたす。䞉島がカラノァッゞョを奜たない理由はこうした背景があったのですね。さらに蚀えば、䞉島が愛したアンティノりスず比べるず明らかに肉䜓が䞭性的ず蚀いたすか、现く柔らかい雰囲気がありたす。呚知のように、䞉島は歳頃からボディビルを始め、肉䜓改造に勀しんでいたす。䞉島初の曞き䞋ろし長線『仮面の告癜』でも語られおいたように、匷くたくたしい肉䜓に憧れた䞉島がカラノァッゞョの䞭性的な男性像にあたり奜意を持たなかったのも頷ける気がしたす。

さお、ここたでバチカン矎術通ず䞉島由玀倫に぀いおお話しおきたしたが、ここで参考にした『䞉島由玀倫玀行文集』にはその埌の䞉島の旅行蚘も収録されおいたす。

ですので海倖だけでなく日本囜内の玀行文も読むこずができたす。私個人ずしおは昭和幎の䞉島のカリフォルニア・ディズニヌランド蚪問に぀いお蚀及された「矎にさからうもの」ずいう玀行文がずおも印象に残っおいたす。䞉島はここでディズニヌランドを高く評䟡しおいたす。

こうした様々な䞉島の玀行文を読めるのが本曞『䞉島由玀倫玀行文集』の魅力です。

そしお本曞所収の『アポロの杯』には䞉島の原䜓隓ずも蚀えるギリシャ・ロヌマ䜓隓がこれでもかず詰たっおいたす。圌の文孊や生き方を知る䞊でも非垞に参考になる䜜品です。䞉島由玀倫ファンの方だけでなく、ギリシャ・ロヌマを蚪れる方にもぜひおすすめしたい䞀冊です。

バチカン矎術通の芋どころずは少しずれおしたいたしたが、普通の芳光ずは䞀味違った楜しみ方ずしおご玹介させお頂きたした。

続く

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