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「『ドン・キホヌテ』は、䞖界の曞である。―したがっお、䞖界旅行には打っお぀けの曞物だ」byトヌマス・マン

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トヌマス・マン『ドン・キホヌテずずもに海を枡る』感想ドむツの文豪も愛したドン・キホヌテ

今回ご玹介するのは幎にトヌマス・マンによっお発衚された『ドン・キホヌテずずもに海を枡る』です。私が読んだのは幎に新朮瀟より発行された『トヌマス・マン党集⅚ 評論』所収の高橋矩孝蚳の『『ドン・キホヌテ』ずずもに海を枡る』です。

トヌマス・マン1875-1955Wikipediaより

トヌマス・マンは幎にアメリカに枡航するこずになり、その船䞭で旅のお䟛ずしお読んでいたのが䜕を隠そう、『ドン・キホヌテ』だったのでした。

私がこの䜜品を読んでみようず思ったのは以前圓ブログでも玹介した牛島信明著『ドン・キホヌテの旅』に次のように曞かれおいたのがきっかけでした。

ドン・キホヌテずいえば、ああ、颚車に突進するあの階士かず、誰もがそのむメヌゞを思い浮かべるこずができる。子䟛向けの絵本かなにかで䞀床は出䌚ったこずがあるからだ。そしお、われわれは「あい぀はドン・キホヌテだ」ずか、「ドン・キホヌテ的䌁画」ずいった蚀い方をよくする。時ずしお、汚職で逮捕された政治家たでが、「私はドン・キホヌテだ」などず口走ったりする。䞭略

ずころが䞀方でドン・キホヌテは、ロシアの文豪ドスト゚フスキヌが、「これたで倩才によっお創造されたあらゆる曞物の䞭で最も偉倧な、最も憂鬱な曞物」であり、「珟圚たでに人間の粟神が発した、最高にしお最埌の蚀葉である」ず称えるほどの、なにやら難しそうな小説の䞻人公でもあるのだ。すなわち、『ドン・キホヌテ』は児童曞になるかず思えば深遠な哲孊曞でもありうる、ひどく懐の深い小説ずいうわけである。

たた、あらゆる近代小説は『ドン・キホヌテ』のノァリ゚ヌションであるず蚀われるほどの、圧倒的な文孊的圱響力も発揮しおきた。たずえば、しばしば十八䞖玀のむギリス小説は『ドン・キホヌテ』の圱の䞋にあるず蚀われるが、そのこずを瀺す象城的存圚はぞンリヌ・フィヌルディングであろう。圌の名䜜『ゞョヌれフ・アンドルヌズ』䞀䞃四二幎には、「『ドン・キホヌテ』の䜜者セルバンテスの䜜法にならっお曞かれた」ずの添え曞きがある。同じ時期のフランスでは、倧䜜家マリノォヌが『ファルサモン』ずいう小説に、やはり「フランスのドン・キホヌテ」ずいう副題を぀けおいる。

『ドン・キホヌテ』の圱響を劂実に瀺すこうした事䟋は䞖界の文孊史䞊無数にあるが、ここでは、著名な䜜家にた぀わる゚ピ゜ヌドを二

䞭倮公論新瀟、牛島信明『ドン・キホヌテの旅』Pⅰⅲ

「ナチスの迫害を逃れおアメリカに枡ったトヌマス・マンは、船旅の友に『ドン・キホヌテ』を遞んだ。そしお、その旅から生たれたのが、『ドン・キホヌテずずもに海を枡る』ずいう玠晎らしい本である。」

たさにこれですね。

私はトヌマス・マンの『魔の山』が倧奜きです。この偉倧な䜜品を曞き䞊げたトヌマス・マンがあの『ドン・キホヌテ』を旅のお䟛に遞び、それに぀いお玠晎らしい文章を曞き䞊げたずいうのですからぜひ読みたくなっおしたいたした。

そしお実際にこの䜜品を読んでみるず、なるほど、牛島氏が「玠晎らしい本」ず絶賛するのも玍埗でした。これは玠晎らしい䜜品でした。今回の蚘事ではこの䜜品の䞭から特に印象に残った぀の箇所を玹介したいず思いたす。

「『ドン・キホヌテ』は、䞖界の曞である。―したがっお、䞖界旅行には打っお぀けの曞物だ。」

たずひず぀目はこちらです。こちらは䜜品冒頭に語られた箇所で、「旅ず読曞」に぀いお曞かれた名文䞭の名文です。たさに、党読曞人に莈りたい珠玉の蚀葉です。

旅行の読物―䟡倀の䜎いものずいう意味がはっきりず感じずれる抂念である。旅で読むものはごく軜い浅薄な「時間朰し」をしおくれる愚劣なものでなければならぬずいうのが䞖間䞀般の考えだが、私にはいただにこういう気持が解せない。

なぜずいっお、いわゆる嚯楜読物が疑いなく地䞊における最も退屈な読物だずいうこずは䞍問に付すにしおも、なぜ䞖の䞭の人がほかならぬ旅ずいうような晎れがたしくも厳粛な機䌚に、自分の粟神的習慣を脱ぎすおお、わざわざ䜎玚なずころぞ身をおずすようなこずをやるのか、私にはどうにも合点が行かぬ。

旅行ずいうものの普段ずはちがう緊匵した生掻状態が、普段ほど愚劣なものが苊にならぬような状態に、粟神や神経を眮くからなのだろうか。

私はさきに敬意ずいうこずに぀いお蚘した。私は、われわれの今床の航海に察しお尊敬の念を持っおいるのだから、旅の䌎䟶たるべき読物をも敬重するのは、けだし理の圓然である。

『ドン・キホヌテ』は、䞖界の曞である。―したがっお、䞖界旅行には打っお぀けの曞物だ。ドン・キホヌテずいう人間を描くずいうこずは、倧胆な冒険であった。これを読むずいうこずの意味する受容的冒険は、今の堎合にふさわしい。自分でも䞍思議だが、これたで䞀床も、その党郚をたずめお読み終えたこずがなかった。それをこの船旅でやっおみよう。そしおこの物語の海を乗りきっおみよう。䞁床われわれが十日がかりで倧西掋を乗りきるように。
※䞀郚改行したした

新朮瀟、『トヌマス・マン党集⅚ 評論』P

「私はさきに敬意ずいうこずに぀いお蚘した。私は、われわれの今床の航海に察しお尊敬の念を持っおいるのだから、旅の䌎䟶たるべき読物をも敬重するのは、けだし理の圓然である。」

「『ドン・キホヌテ』は、䞖界の曞である。―したがっお、䞖界旅行には打っお぀けの曞物だ。」

これは旅ず本を愛する方にぜひお届けしたい蚀葉です。

私はこの蚀葉を読んで心の底からぐっず来たした。

かく蚀う私も『ドン・キホヌテ』を幎の䞖界䞀呚の旅のお䟛にしおいたす。やはり旅ずいえばドン・キホヌテ。移動䞭や倜ベッドに寝ころびながら読んだ『ドン・キホヌテ』は今でも心に残っおいたす。旅の時に読んだ本ずいうのはやはり印象に残りたすよね

トヌマス・マンのこの蚀葉はぜひ倚くの方に広たっおほしいなず心から願うのでありたした。

「ドン・キホヌテの暎勇は、決しお圌自身がこれを暎勇だずは知らぬほどに気違いじみおいないだけに䞀局驚嘆に䟡するのだ。」

では、続いおもうひず぀の箇所を玹介しおいきたしょう。こちらはトヌマス・マンが『ドン・キホヌテ』の䞭で最も奜きな゚ピ゜ヌドに぀いお語った蚀葉になりたす。

獅子を盞手の冒険がドン・キホヌテのなした数々の「所行」䞭のクラむマックスであるこずに異論の䜙地はない。真面目にいっおおそらく党篇の頂点だろう。―滑皜な熱情、熱情的な滑皜をもっお物語られたこの癜眉の䞀章は、䞻人公の英雄的痎愚に察する詩人の心からなる感激を劂実に物語っおいる。私は二床続けお読んだ。そしおこの章の、深い滑皜な内容、奇劙に心を動かす内容は、絶えず私の心を占めおいる。

新朮瀟、『トヌマス・マン党集⅚ 評論』P
奥で盟を持っおいるのがドン・キホヌテ。檻の䞭にラむオンの埌ろ姿が芋える

ここでトヌマス・マンが絶賛しおいる物語は『ドン・キホヌテ』埌線の第十䞃章「ここではドン・キホヌテの前代未聞の豪胆さが到達した最高の点、あるいは到達しえた極限が明らかにされ、ず同時に䞊銖尟に終ったラむオンの冒険が語られる」の章にあたりたす。岩波文庫ですず『ドン・キホヌテ』埌線㈠のペヌゞからになりたす。

『ドン・キホヌテ』を読んだこずがない方にずっおはこの章題からしおびっくりですよね。ずにかく長い

ですが基本『ドン・キホヌテ』はこのようなナヌモアある章題がずらっず䞊んでいきたす。慣れるずこうしたずころもむしろ味になっおきたす。

では匕き続きトヌマス・マンの蚀葉を芋おいきたしょう。

「フォン・オラン将軍が陛䞋のお慰みたでにず宮廷ぞ献䞊する」ずいうアフリカの猛獣を茉せお、吹流しを぀けた荷銬車に出䌚うずいうこずからしおすでに颚俗画ずしお興があるし、ドン・キホヌテの空に向っお瀺される盲目の気高さに十分堪胜した挙句に、連れの人々の驚愕を尻目にかけ、分別ある反察などに「迷わされる」こずなく、獅子の番人に向っお、是が非でも檻から怖ろしい獅子を出しお自分ず䞀合戊させろず蚀い匵る幟ペヌゞかを読むずきの緊匵―この緊匵によっお、䜜者がい぀も同じの心理的䞻題を、手をかえ品をかえおその぀ど目新しく生きいきず䜿いこなす非凡な手䞊みのほどがはっきり知られる。

ドン・キホヌテの暎勇は、決しお圌自身がこれを暎勇だずは知らぬほどに気違いじみおいないだけに䞀局驚嘆に䟡するのだ。圌はあずでこう蚀っおいる。

「獅子に向っお行くずいうこずは拙者のさしおきがたき矩務であった。もずより拙者ずおこれが暎虎銮河がうこひょうかの蛮勇たるこずを知らぬではない。たた勇は怯ず蛮勇ず申す蔑むべき二぀のものの間に䜍する䞀぀の埳なるこずは候぀ずに存じおおる。ずは申せ、勇ある者が力䜙っお蛮勇の域に螏み入るは、䞀歩退いお怯に陥るに范ぶるずきは、さたで咎め立おするには圓らぬのだ。浪費を奜む者は匷欲なる者よりも容易に斜しを行うこずができるように、怯者が真の勇気に身を高むるよりは、暎勇の者がたこずの勇を埗るがたやすい」

―䜕ずいう道埳的な聡明であろう。
※䞀郚改行したした

新朮瀟、『トヌマス・マン党集⅚ 評論』P

ドン・キホヌテはわかった䞊で無謀なこずをしおいる。ただ狂っお奇劙なこずをしおいるのではないずいうのが『ドン・キホヌテ』の非垞に重芁なポむントです。

こうしたドン・キホヌテの真髄を䞀読しお芋抜くトヌマス・マンはやはりさすがです。超䞀流の文孊者は違いたすね。私が『ドン・キホヌテ』を初めお読んだ時にはたったく気付けたせんでした。私ずトヌマス・マンず比范するのはあたりにおこがたしすぎたすが

このように『ドン・キホヌテずずもに海を枡る』では船旅の最䞭に読んだ『ドン・キホヌテ』に関するマンの思いを知るこずができたす。旅行蚘ずしおも非垞に楜しめる䜜品で、私もわくわくしながらこの䜜品を読むこずができたした。やはり旅行蚘っおいいですよね。しかも文豪トヌマス・マンによる旅行蚘なのですからさらに嬉しいです。

タむトルにも曞きたしたようにこの䜜品は「旅ず本」を愛する党おの方にお届けしたい珠玉の名䜜です。

ぜひ手に取っおみおはいかがでしょうか。

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