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「ノンベジの方、手を挙げてください」


旅行会社からもらうお客様のネームリストには、それぞれの食事制限が記載されている。インドツアーでは、ベジタリアン、ノンベジタリアン、そしてジャイナ。

ジャイナとはジャイナ教徒のことで、基本はベジタリアンだが、地中のものと臭いが強いものを食べない。つまり、たまねぎやニンニク、ジャガイモなどを食べない。だから、ジャイナ教徒がいる場合、インド料理屋に事前に頼んでおく必要がある。

だが、ベジ・ノンベジはリスト通りではないのだ。

事情が全然つかめないまま、ベジとノンベジの人数を数える。もちろん、毎日毎食、その数が違う。

なんで!
あなたはノンベジじゃないの?!

やっとお客様が説明をしてくれた。

インド人は基本ベジタリアン、ノンベジは少し豪華な食事っていう感じなんだって。日本の家庭だと、1品多くお刺身を付ける感じなのかな?
それで、気分でノンベジになったり、ベジになったりするらしい。

例えば、広島の原爆資料館に行った日は全員ベジになる。
とても豪華な食事を食べる気分にはなれなくなるらしい。

だからレストランへ食事制限の人数を伝えなければいけない、ぎりぎりの時間に聞く。

「今日のランチ、ノンベジの方は手を挙げてください。」

こんな具合だから、インドのグループツアーはランチもディナーもインド料理店。ガイドも同席同食。ナンとカレーは美味しいけど、ランチ・ディナーの2食、1週間インド料理を食べていると、どんどん太る。

ディナーは遅く、20時スタートが普通だ。ただ、お酒を飲む人が少ないので、食事時間は短い。飲むお酒はウィスキーコーラ。辛いカレーには合うのかもしれない。でも、私はワインが飲みたい。だから、もしお水のコップが金属製だったら、白ワインを注文して、「これに入れて持ってきて」と日本語でウェイターに頼む。お水を飲んでいるように見えるかなって思って(笑)。

日本人は食前に手を洗うけど、インド人は食後に手を洗う。なので食後、洗面所に長い列が出来る。それから入口横に置いてある器のフェンネルを一つまみ口に入れ、レストランを出る。焼肉屋でレジ横のガムをもらうみたいに。そして食事を気に入ると、私に必ず握手する。

慣れているものを食べたいのはどの国の人も一緒。特に、インド人は香辛料たっぷりのお菓子を持ってきていて、バスの中でおやつを食べる。もちろん、私にもドライバーにもおやつのおすそ分けが回って来る。少しカレーの香りがして、バスの匂いでインドのツアーだなぁって思う。

最後に余ったお菓子をもらうことがある。でも、1週間カレーを食べ続けた後のお菓子は、ありがたいけど、正直ちょっと迷惑。全部ドライバーさんに進呈する。

若い世代ばかりのインセンティブツアーの時、インド料理ばかりでは嫌だ、と言われ、ランチをテイクアウトのピザにしたいと言われた。

あ、そうか!ピザって、カレーがトマトソースになってるようなものだから、基本一緒なんだ!中東を起点に、東西は小麦粉文化で繋がってるんだ!思えば、ウズベキスタンやイランでは美味しいパンが色々あった。ピザ生地を彷彿させる形のものも、ナンにそっくりなものも。

それに、マルゲリータって「ベジ食」じゃん!食事制限関係ない!

それから、近くのドミノピザに電話し、マルゲリータピザを30枚注文した。さすがに大型バスを店の前につけられないから、数名がピックアップに行った。ピザ30枚はすごい量だった。バスの中は久々にイタリアンの香りに包まれた。

ある国籍ミックスのインセンティブツアーで、インド人のベジタリアンが数名いた。その日は富士山を見に日帰り旅行で、お昼はホテルのビュッフェ。ランチ会場に食事制限の確認電話をすると、

「ベジタリアンの方にミネストローネスープを用意してます。」

は?それってベーコン入ってるじゃん!

日本人はベーコンを肉と認識していないことがよくある。

その時のお客様に教えてもらったこと。もしどうしても用意できないのであれば、白米とヨーグルトがあれば良いんだって。それなら、日本のどこに行っても手に入る。本当にお客様に教えてもらう事ばかり。

インド人女性はパンジャブスーツやサリーなどを着ていることが多い。
私はサリーがとても好きで、初めてのインド旅行で2枚買ってきた。旅行中サリーを着て歩いた写真を見せたり、様々なところでサリーの着付けを直してもらった、そんな話をすると、女性が皆で示し合わせてツアーの最後に全員がサリーを着てくれることがある。色とりどりのサリーを見ると、民族衣装はその国の太陽の光の強さと空の色に合わせてるのかなって思う。

私の買ったサリーの下に着るオーダーメイドのチョリ(小さなTシャツ)がもう入らない。
もう、これが入ることはない。
だって二の腕が入らないんだもん。

一度「パンジャブスーツは持っていない」と言ったら、ドクター夫妻から最後の夜に部屋に呼ばれ、サイズをはかられた。ウエストや着丈、そして二の腕の太さ(オーダーメイドには必須!)
後日、赤とグリーンのパンジャブスーツが2枚届いた。最後に行ったインド旅行の際、パンジャブスーツで街を歩くと、インド人たちが口々に「インドのドレスを着てる」と言って、満面の笑みで話しかけてきた。
どこの国でも、民族衣装を着て歩くのはとても楽しい。

インド女性は長い髪の人が多い。多くの女性に髪を触られる。ストレートの黒髪は珍しいのだ。そして褒められる。そんな理由でロングヘアをやめられない。

インド人はYESの時に頭を左右に傾ける。
バスの中で、行程の確認など「分かりましたか?」と聞くと、皆が頭を振る。
最初の頃は、首を縦に振らないので心配したが、慣れてくると、大きな黒い目をくりくりさせ、頭を振る姿が可愛く見えてくる。

先輩ガイドの由美子さんが
「赤べこみたいだよね」
と言ってたのを聞いてから、そのイメージが離れない。

「今日のランチは美味しかったですか?」

バスの中で30の赤べこが頭を揺らす姿を想像して、頬がほころぶ。

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