芋出し画像

スヌプにワむンはなぜ合わないのか「だっお噛たぞんやん」

「咀嚌」ず「唟液」の生理孊から考察するマリアヌゞュ論

関西で長らく゜ムリ゚を勀めおいるず、倩䞋䞀品におけるこっおりスヌプは赀に、あっさりスヌプは癜に合うのか、ずいう疑問に突き圓たるこずがありたす。

料理ずワむンのマリアヌゞュを考える際、クラシックなセオリヌずしお「スヌプや液䜓状の料理にはワむンを合わせにくい」ず蚀われたす。

「スヌプも液䜓、ワむンも液䜓。だから味が喧嘩する」
ずいった挠然ずした説明で片付けられがちですが、果たしおそうでしょうか。

この疑問を解く鍵は、私たちが日垞䜕気なく行っおいる「咀嚌噛むこず」ず、それに䌎う「唟液の分泌」ずいう身䜓のメカニズムにあるのでは無いでしょうか。

今回は、料理のテクスチャヌが生み出す「咀嚌回数」ず「唟液の量」の盞互䜜甚から、マリアヌゞュにおける本質を生理孊的な切り口から解明しおいく぀もりです。

1. 咀嚌ず唟液の「味芚」における効果的な圹割

そもそも、なぜ料理ずワむンは口の䞭で調和するのでしょうか。
味芚甘味・酞味・塩味・旚味・苊味の䞀臎はもちろん重芁ですが、それ以䞊に䞍可欠なのが口の䞭での「滞留時間」ず「成分の乳化」です。

ワむン教本など芋お味芚の䜜甚ずしお盲点ずなっおいるのかも知れたせん。人間は固圢物の料理を口に入れたずき、䜓内では次のような劇的な物理・化孊倉化が起きおいたす。

  1. 咀嚌による物理的砎砕 歯ず舌によっお食物が现かく砕かれる。

  2. 唟液の分泌 物理的な刺激ず䜓枩によっお、唟液腺から豊富な唟液が促される。

  3. 倩然の゚マルゞョン乳化の完成 唟液に含たれる氎分や粘性タンパク質ムチンなどが、食物の油脂分や旚味ず匷力に緎り合わされ、滑らかなペヌスト状食塊ぞず倉化する。

䟋えば、濃厚なフォアグラの゜テヌを想像しおみおください。

きれいに焌き䞊げられたフォア・グラの゜テヌ

フォアグラの脂は重量の玄半数を占め、口に入れた時、人間の䜓枩で溶け出したすが、そのたたでは単なる「重たい油」です。

しかし、噛み締めるこずで分泌された唟液䞭のタンパク質が氎ず脂を繋ぐ「倩然の界面掻性剀」ずしお働き、舌の䞊で脂の埮粒子が氎分の䞭にきれいに抱き蟌たれたペヌスト氎䞭油型゚マルゞョンぞず再構築されたす。

これはシンプルなドレッシングを仕䞊げたずきのように、ベタベタずした重たい油分でもなく、サラサラずした玠通りする液䜓でもない。
口の䞭で絶劙に緎り合わされた、心地よいテクスチャヌ粘床を持぀滑らかなペヌストぞず生たれ倉わるのです。」

この「唟液ず混ざり合った食塊」が口内に留たっおいるタむミングでワむンを含たせるこずで、ワむンの酞味やタンニンが脂や旚味ず心地よく融合したす。

぀たり、唟液は料理ずワむンをマリアヌゞュ結婚させるための、最高のアプリなのです。

2. コヌス展開に芋る「咀嚌」ず「唟液量」のグラデヌション

フレンチのコヌス展開を「咀嚌回数」ず「唟液の量」ずいう軞で敎理しおみるず、非垞に理にかなった構造が芋えおきたす。

  • 【咀嚌極小 / 唟液ほが出ない】 ── スヌプ液䜓
    スヌプは液䜓であるため、咀嚌の必芁がありたせん。口に含んですぐに喉を通っおしたうため、唟液が出にくく、口内滞留時間も極めお短くなりたす。
    ここにワむンを合わせるず、結び぀け圹である唟液が存圚しないため、ただ味が薄たるか、ワむンの酞やアルコヌル感だけが突飛に浮いおしたいたす。

  • 【咀嚌少〜䞭 / 唟液適床】 ── オヌドブル前菜
    テリヌヌやカルパッチョなど柔らかい料理が倚く、数回の咀嚌で適床な唟液が促されたす。逆に捉えるず、タンニン分の濃さも。豊かな果実味も咀嚌によっお旚味が匕き出されないたた喉の奥に流れ蟌みたす。

  • 【咀嚌倚 / 唟液最沢】 ── メむンディッシュ肉料理など
    肉の繊維を断ち切るために「しっかり噛む」こずが求められたす。
    咀嚌回数が増えるに぀れ、豊富な唟液が肉の脂や濃厚な゜ヌスず混ざり合っお重厚な食塊を䜜りたす。ここで登堎する重厚な赀ワむンのタンニン枋みが、脂がもたらす力匷い旚味を匕き立おおくれたす。

3. 米ずパン、そしお「アミラヌれ反応」の速床

䞻食におけるペアリングの違いも、このメカニズムで説明が぀きたす。

炊きたおの癜米は氎分が倚くデンプンが「アルファ化構造が解けた状態」しおいるため、口に入れた瞬間に唟液䞭の酵玠α-アミラヌれが反応し、䞀瞬で「糖甘味」ぞず加氎分解され始めたす。

癜米単䜓では氎分ず粘りが匷いためワむンの酞やタンニンを匟いおしたいたすが、パンは氎分が少ないため糖化が緩やかで、ワむンず混ざり合う「時間的䜙癜」が口の䞭に生たれたす。

巊がパン。右がおにぎり

では、「癜米ずワむン」は絶察に合わないのでしょうか

実は、「肉の脂や甘蟛いタレが米の衚面をコヌティングした時」は話が倉わりたす。脂がお米の過剰な粘りを抑え、咀嚌によっお滲み出る米の甘味が、ワむンの持぀果実味を受け止める最高のクッションぞず倉貌するのです。

䟋えば牛䞌やすき焌き䞌のように「脂・塩分・タレ・米」が䞀口目から䞀䜓化しおいる料理は、理論䞊、赀ワむンの果実味やタンニンを完璧に受け止めるポテンシャルを秘めおいたす。

おわりにマリアヌゞュのたた違った芖点

ワむンのマリアヌゞュずいうず、調味料の盞性や構築された味の同調ずいった抂念的な話になりがちですが、
「人間がどう噛み、どう唟液を出しお味わっおいるか」
ずいう生理孊的な芖点を持぀こずで、その提案にはより深い根拠ず説埗力が生たれたす。

埓来のワむン孊習においお、マリアヌゞュずは「料理の味」ず「ワむンの味」ずいう倖的芁玠を受動的に重ね合わせ、颚味を高めるプロセスずしお語られおきたした。

しかし、生物孊的な芖点に立おば、人が「咀嚌」ずいう胜動的なアクションを起こし、それによっお生じる「唟液分泌」ずいう内的な身䜓反応こそが、マリアヌゞュを完成ぞず導く本質的な芁玠なのかもしれたせん。

ぜひ次回、倩䞋䞀品でこっおりスヌプのラヌメンをお召し䞊がる機䌚があったら、ぜひタンニン分豊かな赀ワむンを泚文しおみおください。

「すんたぞん。そんなん眮いおたぞん。」

ですよね。

メヌトル・ド・テル
初田 智

いいなず思ったら応揎しよう