フランス料理に見られるコースの掟。その背景にある「カーニバル」
フランス料理を学んでいく上で、教養として知っておきたい文化が3つあると私は考えています。
1.キリスト教
2.ローマ帝国
3.クラウゼビッツの戦争論
フランス料理とイタリア料理、優劣ばかりではなく歴史や文化としての違いを論じられることがままあります。
その他も含めた西洋料理には様々に料理が続く「コース」というものがありますが、この概念に共通するものが実は「キリスト教カトリック」なのです。
ヨーロッパにおける「レストラン」とは、単なる食事を提供する場所ではなく、日常から離れた特別な「ハレの日」の料理を供する場としてフランス革命以降その存在を確固たるものにしてきました。
それは、日々の質素な食事とは一線を画し、心ゆくまで満腹になれるよう工夫された料理を提供する場所でもあったのです。
この思想は、実はカトリックにおける「カーニバル(謝肉祭)」と深く通じるものがあります。
カーニバルは、カトリック教会の暦における「四旬節」の直前に開催される祭典で、四節句はいわゆる断食の期間でありこの四旬節に入る前に、肉や豪華な食事を楽しみ、日常の制約から解放される機会として位置づけられています。
また、「カーニバル」という言葉自体も、「肉を取り除く」という意味のラテン語「carne vale」に由来しています。
かつて生活が豊かではなかった時代、人々は年に一度の特別な日である「ハレの日」に、日頃の制約から解放され、心ゆくまで食事を楽しむことを切望しました。
フランス料理のフルコースは、まさにこの「ハレの日」の思想を表現しています。
アミューズ・ブーシュ
オードブル
スープ
魚料理
ソルベ(グラニテ)
肉料理
フロマージュ
デセール
カフェ
と続くコースは、単に料理を並べたものではありません。
ここで見られるのが、フランス料理におけるコースの三大原則とも言える、
・同じ食材は用いない
・同じような調理法は繰り返さない
・同じ味付けをしない。
という手法です。
お客様、つまり「食べ手」を飽きさせないテクニックです。
その為、フランス料理のコースにおいては、日本料理に見られるような、「~づくし」といったメニュー構成は行われないのが普通です。
品数、量を「多く食べさせる」という目的を遂行するににあたっては、食べ手が次々と興味をそそられるような試行が繰り返されているわけです。
数十年前から健康志向の高まりや、日本料理などにインスパイアされたフランス料理も「軽さ」が求められるようになりました。
しかし、根底にあるのは「美味しく食べる」という思想であり、満腹感を満たした上で、健康にも配慮した料理が追求されています。
故ミシェル・ゲラールシェフが提唱した「美味しく食べて、太らない料理」は、その象徴と言えるでしょう。
このように、西洋のレストラン文化、特にフランス料理は、その背景にカーニバルの精神と深く結びつき、人々に非日常の特別な食事体験と満腹感を提供し続けているのです。
初田 智
