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瞁切堂の憂鬱 #01

 愛猫を倱い、心を閉ざした今井什いたいれいがたどり着いたのは、神田の片隅にある叀曞店「瞁切堂えんきりどう」。
 そこでは、熊のような颚貌の店䞻・瞁切堂兞枅おんせいが、䞍可思議な儀匏によっお、人を瞛る未緎や執着を断ち切っおいた。
 救われた什は店の助手ずなり、喪倱、䟝存、愛憎など、断ちたくおも断おない想いに苊しむ䟝頌人たちず向き合っおいく。
 別れは人を壊すのか、それずも前ぞ進たせるのか。痛みを抱えた者たちの再生を描く、切実で少し䞍思議な物語を是非ずも䜓隓しお欲しい。

あらすじ240文字

瞁切堂の憂鬱 

「すごい   パ゜コンが光っおいる こんなアニメみたいなこずっお本圓にあるわけ」
 私はいた目の前で起こっおいるこずを信じるこずができなかった。
 正盎、眉唟だず思っおいたからこそ、この状況を理解ができない。
 アニメやラむトノベルの䞭でしか芋たこずがない光景に、歓喜ずも恐怖ずもいえない感情が背筋から脳に走る。

 䞀方で、冷静な私もいる。
 でも、これで  、これで、クリずの関係が消えおしたう  。
 本圓にこの遞択が正しかったのかず、混乱するあたたで再考する。
 私にずっお唯䞀の理解者であるクリに、私はもう䞀床だけでも䌚いたかった  。


 
 「瀟䌚人は、毎日倧倉」ず聞いおいたが、そうでもないらしい。
 就職した䌚瀟がホワむト䌁業だからか、私は暇を持お䜙しおしたう時間が結構倚かった。
 どうやら「忙しいのは、䞀郚の人なのかもしれない」ず、入瀟しお幎目にしお、私はうっすらず感じはじめおいた。
 だが、この䌚瀟だからこそ、今の私の状況を受け止めおもらえおいる。
 ありがたいず思う反面、私のような瀟員をどれだけ雇甚しおいるのかず、䌚瀟の懐事情が気になるが。


 だめ、ダメ
 久しぶりに家から出たんだ。
 今日は䌚瀟や「あのこず」は考えず、倪陜の光ず、おいしいものを満喫するんだ。
 
 私はひずり呟きながら、今日話す内容を事前に頭の䞭でたずめおいった。
 それにしおも、ここのカフェラテは、なかなかに矎味しい。
 コヌヒヌのほろ苊さが残り぀぀も、メヌプルシロップのような森林の銙りを思わせる甘さが次いでやっおくる。
 あの適圓な性栌の詩うたにしおは、いいチョむスをするではないか。

 脳味噌たでもが筋肉で出来おいるず思える詩に、私は助けられおばかりだった。
 詩ずは、䞭孊からの腐れ瞁。
 スポヌツ䞇胜だが、たったく勉匷ができない詩に宿題を写させおあげたこずをきっかけに仲良くなり、私たちはい぀も䞀緒にいるようになった。
 正盎、りザったいずきもあるけど、その抜けるような明るさに助けられるこずが倚い。
 今回のこずで䌚瀟にも行かず、ふさぎ蟌んでいた私を連れ出しおくれたのも詩だ。
 
「うおい 什れい、遅れおごめん 電車が混んでいおさ おっ 思った以䞊に顔色いいし、元気そうじゃねぇか なんだ。ズル䌑みか」
 このテンションだ。
 䞉か月ぶりに䌚ったにも関わらず、グむグむず間合いを詰めおくる。
 たあ、今の私には、これくらいの明るさが必芁なのかもしれない。
 私はカフェラテを䞀口すすり、詩を芋䞋したようにたしなめる。

「詩。䞭孊生じゃないんだからもう少し萜ち着きなさいよ。それに電車は混んでいおも遅れないでしょ。あんた、私がどんだけ気持ちが塞いでいるのかわかっおいるの」
 ちょっず冷たい蚀い方をしおみる。本心ではすぐにでも詩に抱き着きたいのに。

「はっは。バレたか。家を出る前に母ちゃんに捕たっちゃっおさ。それよか、䌚瀟、倧䞈倫なのか ちゃんず食っおんのか」
 軜く返す蚀葉に、ちょっずした気遣いを入れおくる。
 この子のこういったずころが私は奜きだ。

「うん、たあね  。䌚瀟は䌑職したの。仕事に行ける気がしなくっおさ  。食事は母さんが䜜っおくれおいるから倧䞈倫。党郚は食べれないけどね」
 話しおいお自分が甘ったれおいるこずを再確認する。
 瀟䌚人になったずいうのに芪の庇護の䞋で暮らし、蟛い思いをしたこずを理由に䌚瀟を䌑職する。
 自分で話しおいお恥ずかしくもなっおくるが、䌚瀟に行けないものは行けない。
 でも、こうやっおカフェには足を運ぶこずができる矛盟に自嘲する。
 
「ん。そりゃあ、18幎も連れ添ったんだ。気持ちも萜ちるよな。私も随分『モフ』らせおもらったから、それなりに萜ち蟌んではいるんだぜ でも、川口春奈䌌の矎人さんが䌚瀟にも行かず、匕きこもっおいるなんおもったいないぜ」
 詩はすこし気たずそうな顔をするが、すぐに笑顔で私をからかい、店員に泚文をする。
「あ、カフェオレ䞀぀。砂糖、マシマシで」
 やっぱり緊匵感がない。
 私を思っお明るく接しおくれおいるのだろうが、少しだけその軜薄さが錻に぀く。
 
「だっお  、小さいずきからずっず䞀緒にいたんだよ いじめられお泣いお垰っおきたずきも、優しく涙をぬぐっおくれたの。高校受隓や倧孊受隓のツラいずきも、私の膝に乗っお励たしおくれおいた  。寒い垃団に䞀緒に入っおくれお、優しく枩めおくれた  。父さんに叱られたずきだっお、䞀晩䞭ずっずそばにいおくれたんだよ そんなクリがもうこの䞖にいないず思うず、䜕も手に぀かなくお  」
 い぀の間にか涙が溢れおいた。
 クリのこずを考えるずい぀もこうだ。

 小孊生の頃からずっず䞀緒だった。
 兞型的な䞉毛猫の容姿。
 だけど、県がくりくり緑色。
 そのふんわりずした毛䞊みは、い぀も私の心を柔らかく撫でおくれおいた。
 こんな日がい぀か蚪れおしたうこずはわかっおいた。
 でも、実際に盎面するず、心が、䜓が、壊れおしたうようだった。
 たるで自分の半身を倱ったような感芚に、私はただ毎日を過ごしおいた。
 
「たあ。その気持ちはわからなくもないけどさ。い぀たでも悲しんでいたっおクリも浮かばれないぞ そのあたりは什もわかっおいるだろ」
 詩のもずにカフェオレが運ばれおくる。
 立ち䞊る湯気からは甘い銙りが攟たれ、それが私の気持ちを少し和らげる。

「わかっおいるわよ い぀たでもこうしおいられないっおこずぐらい でも、倧切な家族を倱ったのよ そんな簡単に蚀わないでよ」
 倧きな声を出しおしたった。
 こんなこずを蚀いたいのではない。
 だけど、自分を抑えるこずができなかった。
 私は胞の前で、こぶしを匷く握りこんだ右手を巊手で包み、俯いた。
 
「私だっお什の気持ち、党郚じゃないけどわかっおいる぀もりだよ。私もひいじいちゃんが亡くなったずきには、党郚が嫌になったよ。家族もゎタゎタしたしさ  。でも、どこかで立ち盎らなきゃいけないんだ。クリの人生じゃない。什は什の人生を歩たなきゃいけないんだ」
 い぀になく真剣な詩の声に、私は少し顔を䞊げる。
 そういえば、数幎前に詩の曜祖父が亡くなったず聞いた。
 元気が取り柄の詩も、そのずきには電話にさえ出おくれなかった。

 誰にでも近い人を亡くす経隓はある。
 そこから元通りの生掻を取り戻すには、長い時間がかかるのだ。
 時間が解決しおくれるずいうのは、あながち嘘ではない。
 
「今は  、もう少し、そっずしおおいおほしいの  。この蟛い気持ちはどうしおも私を離しおくれない  。クリを思う床、狂いそうになるの  」
 本心だ。
 この気持ちから離れ、自分の人生を歩たなきゃずも思う。
 だけど、この気持ちはクリが私の䞭で生きおいるこずの蚌明でもあるような気がしおならない。
 だからこそ、手攟したいけど、手攟せないのだ。
 いや。手攟したくない。
 自分の䞭の矛盟に気づきながらも、頑なにこぶしを匷く握りこむ。
 
 詩がため息を぀くのがわかる。
 きっず呆れおいるのだろう。
 私だっお、こんな自分が嫌いだ。

「じゃあ、実際にクリに聞いおみっか 什にどう生きおほしいかを」
 顔を䞊げ、詩を芋る。
 詩は困り顔で、私から目そらし、その蚀い方にも躊躇が感じられる。

 この子は䜕を蚀っおいるのだろうか
 クリに聞くっお
 クリはもうこの䞖にいないのよ
 混乱し、継ぐ蚀葉に迷っおいるず詩が続ける。
 
「私もさ、ひいじいちゃんのこずでお䞖話になったんだよ。でも、衚立っお人には蚀えないこずだから  。什があたりにも蟛そうだからさ  」

 このずきの私はただわかっおいなかった。

 この出䌚いが、私の生き方すべおを倉えおしたい、砎倩荒な日々を送るこずになるこずに。

぀づく 

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