【地方婚活の真相】福岡市はなぜ女余りなのか?地方最強説の光と影
福岡市の「地方最強都市」は幻想だった?
「福岡市は地方創生の勝ち組だ」
そんなキャッチコピーを、何度となく目にしてきた。
開業率全国一、人口増加率トップ、アジアの玄関口――。
そうした華やかな数字の裏で、別の深刻な現実が進行している。
未婚女性の急増と、晩婚化の加速だ。
「女余り」が深刻化する地方都市の現実
総務省の令和2年国勢調査『日本統計地図』によれば、福岡市を含む福岡県の25~39歳の女性の未婚率は全国でも高い水準にある。
国勢調査の未婚率マップを見ると、福岡県の女性は「赤」、つまり未婚率が高い都道府県に分類されるのに対し、同世代の男性は「薄緑」と、男女比のアンバランスが浮き彫りになっている。
なぜ、人口が増加し続けているはずの福岡市で、女性の未婚率がここまで高いのだろうか。
ヒントになるのは、福岡大学経済学部の木下敏之教授の著書である。木下氏は、元・佐賀市長であり、人口動態と地域経済に詳しい地方自治の実務家でもある。
著書『データが示す福岡市の不都合な真実』において、「福岡市は九州で最も子どもが生まれない街」であると指摘し、その要因として晩婚化・未婚化の急速な進行を挙げている。
実は、私自身、木下氏の指摘に深く共感し、ある雑誌で福岡市の地域分析に関する記事を執筆した経験がある。取材の中で耳にした数々の、表には出ないリアルな声が今でも忘れられない。
優秀な若者が集まっても、男性は流出し、女性が残る構造
福岡市には九州大学をはじめとする高等教育機関が集中し、優秀な若者が集まりやすい。一方で、木下氏は「女性は地元に残るが、男性は毎年2000人が東京へ流出する傾向がある」と分析している。
確かに、理系職の就職先や大企業の本社が少ない福岡市では、男性は進学や就職のタイミングで都市部へと流れていく。一方、サービス業や中小企業が中心の地元経済において、女性は福岡市にとどまりやすい。その結果、「女性ばかりが残される都市構造」が形成されていく。
この構造において問題なのは、都市に人は集まっても、結婚相手が集まるわけではないという点にある。
これは福岡市に限らず、北海道や宮城県などでも同様の傾向が見られる。特に札幌市を含む北海道は、国勢調査の地図を見る限り、道内の広域にわたり女性の未婚率が高い「赤」表示となっており、都市集中だけでは語れない「女余り」の問題を物語っている。
開業率トップの裏で進む、少子化と晩婚化
「福岡市は政令指定都市の中で開業率全国一」と聞くと、スタートアップを後押しする若者に人気のある都市といったイメージが湧くかもしれない。
しかしその実態は、「起業は多いが、廃業も多い」「増えているのは高齢者人口ばかり」「出生率は全国でも最低水準」といった現実と背中合わせである。
木下氏の指摘では、「福岡市の人口増加の多くは高齢者によるもの」だという。つまり、若者の定住と子育て世代の流入にはつながっていないのだ。
このことが意味しているのは、若い女性が地元に残り、未婚のまま年齢を重ねる構造が温存されてしまう、ということだ。
男性が「選ぶ側」になりやすい福岡の婚活市場
さらに、婚活の現場では、構造だけでなく空気の偏りも無視できない。福岡では、女性の母数が圧倒的に多いため、結果として男性が「選ぶ側」として振る舞いやすくなっている。
実際、婚活アドバイザーでIBJ加盟店を運営する大西明美さんも、地方婚活の中でも「私が特に苦戦している地域は九州」とnote で述べた上で、こう綴っている。
福岡は女性が多く、男性は競争が激化しています。
九州男児と言われるように、伝統的な価値観が根強く、男性は仕事、女性は家事育児という役割分担が固定化されている傾向があります。そのため、結婚後も対等な関係を築きたいと考える女性にとっては、結婚生活が難しいと感じられるケースが多いようです。
また、私の取引先の印刷会社では、東京から福岡に転勤したある男性がこう話していた。
「いやぁ~、福岡の女の子は方言が可愛いし、最高ですよ」
だが、その言葉には、どこか女性を下に見る空気がにじんでいると感じてしまった。
もっとも、地方に残る女性が多いといっても、すべての層に当てはまるわけではない。大西さんは、地方企業における「お茶くみ」や「昇進の差」といったジェンダーバイアスを背景に、優秀な女性ほど都市部に移住しているため、男性は意識改革が必要だとも綴っている。
つまり、地方に残るのは、「都市に出られなかった」、あるいは「地元志向・家庭志向」で留まった層が多いとも言える。その結果、地元に留まる女性の母数が多くなることで、福岡市の婚活市場では「男性が選ぶ側」に回りやすいのだ。
こうした「都市の女余り」は、福岡に限った話ではない。
関西圏でも、未婚率マップを見ると大阪・京都・兵庫・奈良などが真っ赤に染まり、「女性のほうが多い」という構造が顕著に表れている。
だが、福岡の特徴は、人口が増えているにもかかわらず、婚活市場では女性が余り、男性が「選ぶ側」になりやすい空気が濃厚に存在している点だ。これは他の地方都市とは一線を画す“ねじれ構造”であり、女性側が申し込まれても「条件は合っているのに、好きになれない」と感じやすい要因にもなっている。
▼ 12年婚活で238人と会った筆者が、「条件は合ってるのに好きになれない」問題を掘り下げた記事です。
「結婚しない」のではなく「出会えない」
私はこれまで12年にわたって婚活をしてきた。そして、多くの地方出身者とも出会い、語り合ってきた中で実感するのは、「結婚しない」のではなく、「したいけれど出会えない」という現実である。
少子化や未婚化を語るとき、多くの議論は「なぜ若者は結婚しないのか」という自己責任論に流れがちだ。だが、今回紹介したような都市構造や人口動態の歪みを直視すれば、決して個人の努力だけではどうにもならない現実があると分かる。
特に福岡市のように、人口増加や開業率といった「ポジティブなデータ」ばかりが先行して語られがちな都市こそ、婚活の現場では大きな矛盾を孕んでいる。
結婚のタイミングも、相手の選び方も、人それぞれであるはずだ。だが、婚活市場にはいまだに「平均初婚年齢=正解」「家庭に入る=勝ち組」といった偏った価値観が根強く残っている。
私はこれからも、そうした“見えにくさ”の中にある苦しさや違和感に、静かに光を当てていきたいと思っている。
※記事の模倣・無断転載・無断引用を固く禁じます。
※本記事は2025年6月16日に執筆・公開しました。
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