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20年以上IT業界で働いて分かった、「向いている仕事」はあとから変わっていい

今の仕事は、自分に向いていないのではないか。別の役割に興味はあるけれど、ここまで積み上げた経験を捨てることにならないか。30代、40代になると、この迷いは若い頃より重く感じやすい。

一度選んだ道には、一貫性が必要だと思うからだ。技術職として始めたなら技術を深め続ける。PMになったなら管理する側へ進む。途中で重心を変えると、過去の選択まで間違いだったように見えてしまう。

けれど、20年以上IT業界で働いてきた僕は、「向いている仕事」はあとから変わっていいと思っている。適性は、生まれつき決まった一つの答えではない。経験によって身についた力、任される対象、生活の中で守りたいものが変われば、力を出しやすい仕事も変わる。

大切なのは、昔の自己理解に今の自分を合わせ続けることではない。今の自分に合う形へ、適性の見方を更新することだ。

向いている仕事は、能力だけでは決まらない

向いている仕事を考えるとき、性格や得意不得意だけを見てしまうことがある。人と話すのが得意だからコンサル、技術が好きだからエンジニア、調整が得意だからPM、といった分け方である。

もちろん、それも判断材料にはなる。ただ、実際の仕事との相性は、もっと動くものだ。

若い頃は、新しい技術を覚え、手を動かして答えへ近づくことが楽しいかもしれない。経験を重ねると、複数の情報を整理し、問題の場所を見つけ、関係者が動ける形にすることへ手応えを感じるようになることもある。家庭や健康、背負う責任が変われば、成果だけでなく、働き続けられる負荷かどうかも重要になる。

これは、適性がぶれたのではない。仕事を見る視点と、使える力が増えた結果だ。以前は選べなかった仕事が選択肢に入り、以前は気にならなかった負荷が判断条件に入る。適性とは、能力だけでなく、経験、環境、生活段階との組み合わせで決まる相性だと思う。

技術を離れたのではなく、使う範囲が広がった

エンジニアとして働き始めた頃は、技術を学んだ分だけできることが増え、それが成果につながった。

その後、プリセールス、PM、業務コンサル、プロダクト開発など、役割の重心は変わっていった。特に、技術だけでは前へ進まない現場で、業務理解、前提の整理、部署間の調整が必要になる経験をしたことで、自分が担える仕事の見え方も変わった。

最初から、問題を構造化したり、Bizと技術をつないだりする仕事が自分に向いていると分かっていたわけではない。技術の現場で経験を積んだからこそ、後から使えるようになった力がある。役割を変えたことで過去が途切れたのではなく、過去の経験を使う範囲が広がった。

ここを見落とすと、キャリアの変化を「前の仕事から逃げた」「専門性を捨てた」と捉えやすい。実際には、これまでの経験が次の役割の土台になることも多い。変わったのは経歴の一貫性ではなく、経験の使い方である。

昔の適性に、今の自分を閉じ込めなくていい

適性を固定すると、二つの無理が起きる。

一つは、以前は合っていた仕事を、今も合うはずだと続ける無理だ。できる仕事であっても、今の生活や関心と合わなくなることはある。もう一つは、経験の途中で得た力を「本来の専門ではない」と外してしまう無理である。

たとえば、技術者として顧客説明を重ねる中で、相手の前提を整理する力が身につく。PMとして案件を動かす中で、問題が起きる前の兆候を読む力が育つ。コンサルとして業務を見る中で、技術的な制約を現実的な選択肢へ変える力が深まる。

こうした力は、職種名だけでは見えにくい。しかし、何度も任されること、周囲より自然に続けられること、経験を重ねるほど精度が上がることには、今の適性が表れる。

過去に選んだ仕事が間違いだったから、次へ進むのではない。そこで身につけたものがあるから、次に向いている仕事が変わる。そう捉えると、キャリアの変化は一貫性の欠如ではなく、経験による更新になる。

今の適性を見直す、三つの問い

転職や異動を決める前に、今の自分を三つの視点で見直してみてほしい。

  1. 苦にならないこと
    周囲は負担に感じているのに、自分は比較的自然に続けられる仕事は何か。話すこと、整理すること、調べること、決めることなど、職種名ではなく行為で書く。

  2. 後から身についたこと
    最初から得意だったわけではないが、経験を重ねる中で任されるようになったことは何か。昔の自己評価ではなく、現在の仕事で実際に使っている力を見る。

  3. 今守りたいもの
    収入、専門性、裁量、家族との時間、心身の余力など、これから働くうえで外したくない条件は何か。できる仕事でも、守りたいものを壊すなら、今の適性とは言い切れない。

三つを並べると、「得意だから続ける」「苦手だから離れる」だけでは見えなかった選択肢が出てくる。今の仕事の中で役割を少し変える道もあれば、別の職種へ重心を移す道もある。すぐに結論を出す必要はない。まずは、昔決めた適性と、今の自分の相性がずれていないかを確かめればいい。

「向いている仕事」は、一度見つけたら守り続ける答えではない。経験を積み、生活が変わり、守りたいものが増えるたびに、見直していい判断である。

あなたが今見直すなら、苦にならないこと、後から身についたこと、今守りたいもののうち、どこに一番大きな変化がありますか。

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