具体と抽象① 具体とは?抽象とは?
なぜ新人は、少し条件が変わるだけでフリーズしてしまうのか?
登場人物
高橋課長:IT・物流コンサル出身のロジカルな課長。関西弁がたまに出る。
川島さん:サプライチェーン管理課の新入社員。文章力や図解に興味あり。
川島:高橋課長、お疲れ様です!前回の「会社とのシナジーを追求する」ってお話、すごく刺激になりました。自分が普段打っている伝票入力が、巡り巡って会社の利益や、他部署との相乗効果(シナジー)に繋がっているんだなって。
高橋:お、川島さん、ええ顔つきになってきたな!そうや、自分の仕事がどこに繋がっとるかを意識するだけで、見え方はガラッと変わる。
でもな、会社や他部署と本当にシナジーを生むためには、もう一つ、絶対に外されへん「武器」があるんや。
川島:武器……ですか?
高橋:そう。それが今回から始まる大きなテーマ、「コミュニケーション」や。その中でも、すべての基礎になる「具体と抽象」について、今日はじっくり話そか。
論理力は「3つの力」でできている
川島:具体と抽象、ですか。なんだか国語の授業みたいで、ちょっと難しそうです……。
高橋:難しく考えんでええよ。川島さんは「論理的な人」って聞くと、どんなイメージを持つ?
川島:うーん、冷徹というか、数字ばっかり使って難しい言葉で話す人、でしょうか(笑)。
高橋:ハハ、よくある誤解やな。でもな、本当の「論理力」っていうのは、相手に伝わるように整理して話す優しさのことなんや。 本質的に、論理力は次の3つの力しかないと言われてる。
言いかえる力(同等関係)
比べる力(対比関係)
たどる力(因果関係)
川島:えっ、3つだけですか?それなら私にもできそうな気がします!
高橋:できるできる!そして、この3つの中で、コミュニケーションのすれ違いを無くすために一番重要なのが、1つ目の「言いかえる力」。これこそが、まさに「具体と抽象の往復」なんや。

具体と抽象は「言い換える力」
川島:具体と抽象が「言い換える力」……。具体的にはどういうことですか?
高橋:早速「具体的には?」って聞いたな、素晴らしい! じゃあ、川島さんが大好きな「映えるカフェ」で例えてみよか。
川島:あ、私のインスタ、見てくださってるんですか!
高橋:こっそりな(笑)。 例えば、川島さんが「このカフェのいちご大福、もちもちで最高!」って言ったとする。これが「具体」や。目に見えるし、実際に食べられる、個別のハッキリしたもの。
川島:はい、いちご大福は正義です。
高橋:じゃあ、そのいちご大福を「言い換えて」上のグループにまとめるとどうなる?
川島:ええと、いちご大福は「和菓子」ですかね?
高橋:正解!さらに和菓子をまとめると?
川島:和菓子は「スイーツ」、もっと広げると「食べ物」……ですか?
高橋:その通り!この、いちご大福から「和菓子」「スイーツ」「食べ物」って、個別の特徴を削ぎ落として、共通の仲間で大きくまとめていく作業。これを「抽象化」って言うんや。
具体(下):いちご大福(目に見える、個別のもの)、モンブラン、チーズケーキ
抽象(上):スイーツ、食べ物(目に見えない、大きな概念)

川島:なるほど!「言い換え」のハシゴを、上るのが「抽象化」で、下りるのが「具体化」なんですね。
高橋:そう!サプライチェーンの仕事でも全く同じや。「リードタイム」とか「安全在庫」っていう個別の言葉(具体)を、「要するに、お客様を待たせないための準備(抽象)」って言い換えられるかどうかが勝負なんや。
「言い換える力」がない人は何ができないか?
川島:でも課長、もしこの「言い換える力(具体と抽象の往復)」がないと、仕事でどう困るんですか?
高橋:致命的なことが2つ起きる。 1つ目は、「マニュアル通りのことしかできへん」。 2つ目は、「話が噛み合わへん」。
川島:うっ……耳が痛いです。
高橋:例えば、川島さんが先輩から「A社への伝票は、午前中に処理してね」って教わったとする。これは「具体」の指示や。 もし言い換える力がないと、B社やC社の伝票が来た時に、「あれ?B社はいつやればいいんやろ?」ってフリーズしてしまう。
川島:あ、それ私やりそうです……。
高橋:ここで「抽象化」ができる人は、「なぜ午前中なのか?」を考える。
「あ、午前中に処理すれば、夕方の物流便に間に合うからか(抽象)」と本質を掴む。
そしたら、「じゃあ、同じ便を使うB社も午前中にやった方がええな」って、自分で考えて動ける(具体化)ようになるんや。
川島:なるほど!一本のハシゴだけじゃなくて、隣のハシゴに飛び移れるんですね。
高橋:ええ例えや!もう一つの「話が噛み合わへん」っていうのは、会議でよくある。
営業が「とにかく在庫を増やして!(具体)」って言って、製造が「効率が下がるから無理!(具体)」って、具体論だけで殴り合ってまう。
川島:あります!現場がピリピリしてて、私おどおどしちゃいます。
高橋:そこでサプライチェーン管理課の出番や。
「二人の目的は、お客様の満足度を上げて、会社の利益を最大化すること(抽象)ですよね。そのために、一番いいバランスの在庫量はどれくらいでしょう?」って、一歩高い視点(抽象)から言い換えて、交通整理をしてあげる。
これができる人が、「本質をわかっているね」って信頼される担当者や。
川島:すごいです……!具体と抽象を言い換えるだけで、仕事のトラブルまで解決できるなんて。
次回予告
高橋:ふふ、具体と抽象の面白さが、ちょっと分かってきたみたいやな。 でもな、ただ「抽象的な素晴らしい言葉」を並べるだけでもアカン。 「会社の利益のために頑張ろう!」って抽象論だけ言われても、現場は「で、何すればええの?」ってなるやろ?
川島:確かに、何をすればいいか分からなくてフリーズします。
高橋:せやから、大事なのは「往復すること」なんや。 次回は、このハシゴを高速で上り下りする「具体と抽象の往復によってできること」について、もっと詳しく話そか。
川島:次回もよろしくお願いします!
~新人のための言い換え力を高めるトレーニング~
☐指示を受けたら「なぜ?」を1回考える
☐専門用語を自分の言葉で説明してみる
☐会議や打ち合わせで「目的は何ですか?」を質問する
この3つに共通するのは、「作業」ではなく「目的」を考える習慣です。
新人が条件変更でフリーズしてしまうのは、具体的な手順だけを覚えていて、その上位概念(抽象)を理解していないことが多いからです。
「これは何のための仕事なのか?」を毎日1回考える。
それだけでも、具体と抽象を往復する力は着実に鍛えられていきます。
