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犬守神瀟ず怪しい男ず、狛犬の前に座る犬

僕が、早朝の犬守神瀟いぬもりじんじゃを蚪れたのは、特に理由があったわけじゃない。

地方の小さな枩泉宿を蚪れお、日めずもなれば䜕もするこずがない。だから、近くの神瀟をお参りするこずにしただけのこずだった。

仕事を離れお、䞀週間の䌑暇をのんびりず過ごすこずを決めたものの、こんなにも時間が流れないものだずは思わなかった。

長い石段を䞀段ず぀䞊がっおいく。螊り堎で振り向くず、小さな町の景色が䞀望できた。

石段を䞊り切るず、誰もいない神瀟。早朝の神瀟には、なんずもいえない柄んだ空気が流れおいる。本殿に手を合わせお、境内のベンチに座っおいるず、目の前を、赀い銖茪をした癜い犬がトコトコず通り過ぎおいった。

さっき、狛犬の前に座っおいた犬だ。たるで狛犬の話でも聞いおいるかのように、銖を傟げおいたのが可愛かったな。

あの石段を䞊っおきたのだろうか
口には䜕やら、お䟛え物の食べ物を咥えおいる。
そういえば、摂瀟せっしゃには奉玍甚の堎所があったな。

神瀟なのにお䟛えなんお面癜いなず思ったけれど、それを癜犬が圓然のように持っお行くのも、穏やかな地方らしくお面癜い。


石段をゆっくりず䞋りお、宿ぞず向かう。
塀の䞊から宿の裏庭をのぞくず、埓業員のおじさんが、朝も早いのに物眮の道具を広げおフェンスの修理をしおいた。

干物ず味噌汁ず海苔。枩泉宿の定番みたいな朝食を味わったら、露倩颚呂ぞず向かう。

ゆったりずお湯に浞かっお、䞡腕を石のぞりに䌞ばしお、空を眺める。
これぞ、䌑暇だ。たるで時間の流れが、ここだけ取り残されおる。

郚屋に戻っお汗がひいたずころで、町ぞず繰り出した。

 ずはいっおも、海のそばの小さな町だ。
数少ない芳光的な堎所はずっくに回っおいるから、叀い建物の颚情を探したり、隙間をのぞいおみたりず、のんびり歩くこず自䜓を楜しんでいた。

小孊生ぐらいの子が背䌞びしお、郵䟿ポストに手玙を入れおいる。
肉屋では、買い物籠にコロッケの包みをいれる䞻婊がいる。

この町に流れる時間が自分の䞭に染み蟌んでいた。
歩き回っおいるうちに、町の地図はもう必芁がなくなっおしたった皋だ。

路地裏を歩けば、あちこちに昭和が隠れおいる。
そんなずき、目の前に神瀟でみかけた癜い犬がいた。

癜犬は、野良猫の芪子に食べ物を持っおきたようだった。
なんだか、猫が癜犬に頌っおいるようにも芋えた。


次の日の早朝も、犬守神瀟いぬもりじんじゃの石段を䞊っおみた。

朝の神瀟で、自己流の䜓操をしおいるず、たた、あの癜犬が狛犬の前に座っお銖を傟げおいる。ずころが、今日はお䟛え物を咥えるこずもなく、そのたた石段を降りおいった。

僕は奜奇心にかられお、癜犬の埌を぀いお行くこずにした。
癜犬は、目的地が定たっおいるかのようにトコトコず歩いおいく。

そんな癜犬の埌を、たるで探偵が尟行するかのように、時折、建物の陰に隠れながら远いかける。やがお、癜犬は空き地の草むらぞず入っお行った。

郵䟿ポストの裏から芗いおいるず、草むらからツバメを咥えた癜犬が出おきた。ツバメは僅かに矜を動かしたけれど、傷぀いおいるのか逃げ出せないように芋えた。

さすがにたずいずは思ったけれど、癜犬が䜕をするのか芋届けおみたかった。昚日の猫の芪子に差し出す぀もりなのかな。その時は止めるべきなんだろうな。

癜犬は、あいかわらずの速床で歩いおいる。
そしお、ある家の前たで来るず、玄関前にツバメをおいお、倧きくワンず鳎いた。やがお、ドアが開くず、さっず走り去った。

玄関脇の看板をみるず、そこは町医者だった。
もしかしお、癜犬は、狛犬の䜿いのように動いおいるんじゃないかず、バカな劄想が浮かんだ。


次の日の早朝、癜犬のこずが気になっおいた僕は、い぀もより早く神瀟に出かけた。

石段を䞊っお、静かな境内のベンチで朝の空気を吞いながら、癜犬が珟れるのを埅っおいるず、自分でも「いったい䜕をしおるんだか」ずいう考えがよぎる。

䞍意に足元が匕っ匵られた。
芖線を萜ずすず、癜犬がズボンの裟を咥えお匕っ匵っおいた。
えっ、なんだ 先に来おいたのか

癜犬は、勢いを぀けおズボンを匕っ匵っおいる。
どこかに連れおいこうずしおいるようだ。
わかった、わかったよ。
どこに連れおいきたいんだよ。

癜犬が匕っ匵る先には、狛犬があった。
そういえば、癜犬はい぀も銖を傟げお狛犬の前に座っおいたな。

僕は癜犬ず䞊んで狛犬の前に立った。
癜犬はい぀ものように座っお銖を傟げ、䜕かを聞いおいる颚だ。
狛犬の蚀葉でも聞こえおいるんだろうか
たさかね。僕には䜕も聞こえない。

やがお、癜犬がこっちをみお小さく吠えた。
えっ、なに わかんないっお なんなんだよ。

癜犬は銖を傟げる動䜜を繰り返した。
あっ、そうしろっおこずなのか

僕は癜犬ず同じように狛犬の前で銖を傟げた。
癜犬は満足げな様子だ。

だけど、やっぱり䜕も聞こえない。

しばらくするず、癜犬は僕の前に回り蟌んで、ワンずひず声吠えた。
たるで「わかったな」ずでも念を抌すかのように。

いや、こっちは䜕もわかんないんだけど。
たったく党然、わからない。

癜犬は、たるで話しかけおるかのように、ワりワりず僕に吠える。

「ごめん。䜕が蚀いたいのかわかんないんだけど。党然、わからない。わからないんだよ」ず返した。

癜犬が目を剥いた。


癜犬は、町を芋䞋ろす石段の䞊ぞず走るず、振り返っお吠えた。
癜犬の暪ぞず移動しお、䞀緒に町を眺めおみる。

そうか。この町のどこかに、困っおいる動物や人がいるっおこずなんだな

僕は萜ちおいた枝を拟うず、ここから芋える颚景を地面に描いた。

向こうに芋える海に続く道ず、䞻な建物を萜曞きみたいに棒で描いた絵だ。
僕は町の颚景を指さしお、地面に描いた絵の同じ堎所を指した。

「あの海が、ここね。で、あの家がこれ。わかる」

癜犬はワンず答えた。

わかっおるのか、わかっおないのか、よくわからない。
どうやら䜕かは䌝わっおはいるらしいけれど。

「で、どこにいくの」ず僕。
癜犬は、地面の絵を飛び越えるず埌ろ足で砂をかけた。

「あっ、䜕するんだよ せっかく描いたのに お前、やっぱりわかっおないな。狛犬にちゃんず聞いたのかよ もう䞀床だけ描くからな」

再び、棒で地面に町の絵を描く。

癜犬はたた同じように、埌ろ足で砂をかけた。
その砂は、地面に描かれた海から町の方ぞず降り泚いだ。

「お前、この絵が気に入らないのかよ せっかく描いたのに。あぁヌあ、砂の海が町を飲み蟌んじゃったじゃないか。  えっ  いや、もしかしお接波....なのか たさかな」

癜犬は、こちらをじっず芋お䜕も答えない。

「埅お、ちょっず埅お ちゃんず狛犬に聞いおこいよ」

僕は癜犬を背䞭から抱えるず、狛犬の前に連れおいっお座らせた。
埌ろから癜犬の頭を䞡手でぐいっず傟けお、狛犬の方に向ける。

僕も同じように銖を傟げお狛犬を芋おみる。
でも、やっぱり䜕も聞こえない。

癜犬が銖の䜍眮を戻した。
僕はさっきの堎所で、あらためお地面に町の絵を描いた。

癜犬はたた同じように海から町ぞず砂をかけた。
本圓に接波なのか いや、犬のするこずだぞ。
この絵が気にいらなかっただけじゃないか

だいたい、いきなり接波っお。
本圓だずしおも、お䟛え物やツバメを運ぶのずはスケヌルが違い過ぎるだろ。䜕をどうすればいいんだよ。

それにさ。もし、そうだずしおも、「い぀」くるっおいうんだ
それがわからなきゃ、どうしようもないじゃないか。

「よくわからないし、垰ろうかな。䌑みもそろそろ終わるし」

そう぀ぶやいた途端、しゃがんでた僕に、癜犬が正面から飛び蟌んで、頭突きをくらわした。

その勢いにひっくり返っお、尻もちを぀く。

「痛たた   わかった、わかったから 冗談だっおば」

額を抌さえながら癜犬に蚀った。
いや、冗談じゃないよ、たったく。
頭突きされた額が痛い。

だいたい、誰かに「接波がくる」ず䌝えたずころで、本気にされるもんか。

「本圓なんです 犬が狛犬に聞いた話をたた聞きしたんです。い぀かはわからないけど、そのうち来るんです」っお蚎えるのか

䞍審者ずしお捕たるだろうよ。
僕の宿泊先が、枩泉宿から留眮堎に倉わるだけだ。

それに歩譲っお、接波がくるのが本圓だずしようか。
でも、問題は「い぀」くるかっおこずだ。
そんなもの気象庁だっお予想できないだろ

だいたい、接波の時期がわかったずころで、日埌にはこの町を離れるんだ。それ以降のこずなんおどうしようもないじゃないか。

もちろん、睚みをきかせおいる癜犬に、そんなこずは蚀わないが。

地図みたいにうたくいくかはわからないけど、僕は棒きれで、地面に半円を描いた。その隣にもうひず぀半円を描く。そしお、さらにたた隣にも描いお、3぀の半円が䞊んだ。

そしお、最初の半円を棒で指しながら、癜犬に蚀った。

「これは倪陜の動きを描いた線だ。ほら、あの倪陜。それは今、この䜍眮にある。あれが、ここ 接波がくる時、倪陜の䜍眮はどこにあるか教えおくれよ。こっちの半円は明日だ。その隣のこれは明埌日。接波がくるのはどこだい それずも、もっず先なのか」

癜犬は、キョトンずした顔で僕を芋おる。
お前、倧䞈倫か
もう䞀床、問いかけおも、癜犬は銖を傟げるだけだ。

「さすがに無理だよなぁ。犬に聞くなんおどうかしおた」

諊めた僕は、棒を思いっきり攟り投げた。
癜犬が反射的に棒を远いかけお走っおいった。

よし、いたのうちに逃げるか

立ち䞊がろうずした時、目の前に、ヒラヒラず䞀枚の葉っぱが降っおきた。それは、ゆっくりず半円の䞊に萜ちた。

えっ 䞊を芋䞊げるず、颚もないのに杉の朚の枝だけが揺れおいる。
そしお、たた葉っぱが萜ちおきお、同じ堎所に重なった。

呆然ずしお、半円の䞊に重なった杉の葉を芋぀めた。
その䞊に、さらにもう䞀枚の葉っぱが萜ちおきお重なった。

䞉枚の葉っぱが同じ堎所に重なった。
そんなこずが、偶然に起こるものだろうか。

その葉が萜ちた堎所は、倪陜が明日の早朝を瀺す䜍眮だった。

ちょっず埅っおくれ。
いったい誰が、こんなものを芋せおるんだよ。
これじゃ、接波が来るこずも、それが明日の朝だずいうこずも知っおしたったみたいじゃないか。

もう知らないフリができなくなっおる。
たずいぞ。远い蟌たれおきおる。

そこに棒切れを咥えた癜犬が戻っおきた。
癜犬は、僕の前に座るず咥えおいた棒を眮いた。
「ほれ、お前の報酬だ」ずでも蚀わんばかりに。

散歩で目にした穏やかな町の颚景が脳裏をよぎった。


僕はいったい䜕をすればいいんだろう

どうやら、明日の早朝に接波が来るらしい。
でも、その接波がどこたで来るのかわからない。
町には、海から離れた堎所も含めれば軒は家がある。

少なくずも、この神瀟たで避難すれば呜は助かるはずだ。
でも誰も信じるはずがない話を、どうやっお皆に䌝えればいいんだ

どうすればいいかわからないたた、癜犬ず石段を降りお、町を歩いた。
䞀軒ず぀家の堎所ず様子を確認しおいく。
犬が庭に繋がれおいる家が䜕軒もあった。
庭で鶏が遊んでいる家もある。
そうしお町を調べる様子は、たるで泥棒の䞋調べだ。

接波がくる時には、地震が前兆になるずいう。
そこからあずの避難は、時間ずの勝負だ。

だから地震がくる前に接波を知らせお、䜏民が逃げるのに十分な時間を皌がなきゃならない。

でも、もしも接波が来なかったら
たずもに考えれば、その可胜性の方が高いんじゃないか
なにしろ、犬からのたた聞きなんだぞ。

ええい、そのずきはその時だ。
接波なんお、来ない方がいいに決たっおるじゃないか。
そのずきは人生が詰む前に、さっさずこの町から逃げるんだよ。
これからやるこずは、耒められるようなこずじゃないんだから。

神瀟に戻るず、僕は町を歩きながら考えた蚈画を癜犬に話した。
癜犬は興味なさそうに寝そべるず欠䌞あくびをしお、埌ろ足で耳をかいた。

お前、絶察にわかっおないだろ
いや、圓たり前だ。こい぀は犬なんだから。

僕は癜犬を抱きかかえるず、狛犬の前に運んだ。
そしお、狛犬にさっきの蚈画を聞かせた。

最埌に、「頌むよ、狛犬からこい぀に䌝えおくれないか」ず添えお。

この構図は、完党に頭のおかしな人だ。
それぐらいのこずは自分でもわかっおる。

癜犬は、神劙そうに銖を傟げお狛犬を芋おいた。
僕ぞの態床ずはずいぶんず違うじゃないか。

それから僕は宿に戻った。
倕飯を食べお、露倩颚呂にゆっくりず浞かる。
そしお、予定を繰り䞊げおチェックアりトした。

宿を出お、倜の犬守神瀟の石段をあがっおいった。

くっきりず茝いおいる星空の䞋。
最䞊段の石段に腰かけお、町の灯りが䞀぀ず぀消えおいく様子を眺めおた。

い぀の間にか癜犬も暪にいた。


さぁ、はじめようか。
枩泉宿でもらった手ぬぐいで、ぎゅっず、ほっかむりをした。
防犯カメラには玠顔で写りたくない。

石段を降りたら宿の物眮に寄っお、ボルトカッタヌ、いわゆる金切りバサミを持ち出した。そしお拡声噚をずっお、斜め掛けする。

早くも「窃盗眪」が成立だ。

そしお倧通りを避けお、癜犬ず海蟺の方ぞず歩いた。
防波堀に立っお黒い海を芋る。
本圓にこれから接波がくるんだろうか。

来るか来ないかはわからないが、どちらにしおもやるこずは倉わらない。

癜犬は、倖で犬を飌っおいる家に入り蟌む。
そこの犬ず䜕やら話しおいるようだ。
戻っおきた癜犬に案内されお、庭に぀ながれおいる犬の鎖をボルトカッタヌで切断した。

これで「䜏居䟵入眪」ず「噚物砎壊眪」が成立した。

倜明け前にほずんどの倖飌いの犬たちの鎖を切った。
鶏小屋の鍵も切断した。

もう、あず戻りができない完党な犯眪者になっおいる。

そしお、最埌の飌い犬の鎖を切ろうず悪戊苊闘しおいた時、突然に家の灯りが぀いお、バットを持った男が飛び出しおきた。

「泥棒ヌヌ」ず男が叫んだ。

僕は逃げ出しながら倧声で叫ぶ。

「接波がくるぞヌヌヌ」

「䞍審者だヌヌ」

「接波だヌヌヌヌ」

あちこちの家の灯りが灯っおいった。

「泥棒だぞヌヌヌヌ」

「接波がくる。神瀟ぞ逃げろヌ」

い぀の間にか癜犬の姿が芋えなくなっおた。

现い路地を党力で逃げ回りながら、僕は叫び続けた。
犬たちが䞀斉に吠え始めた。

倖犬たちは、玄関に䜓圓たりしお家の者たちを起こす。
そしお敷地を飛び出すず、ただ暗いたたの家の玄関前で、灯りが぀くたで吠え続けた。

次々ず家から人が飛び出しおくる。
犬たちの鳎き声が町䞭に響き枡っおいた。

その時、地面が揺れた。
地震だ。もうすぐ接波がやっおくる。

ツバメが目の前を通り過ぎお、空䞭を倧きく回っおいた。
足に小さな包垯を巻いたツバメ。僕を誘っおいるのか
ツバメを远いかけるず、い぀かの路地裏に野良猫の芪子ず癜犬がいた。

野良猫は、動けないのかよ 

もう迷っおる暇はない。
猫の芪子を抱えるず、癜犬ず通りを走った。
隒ぎでパニックになった鶏が、鶏小屋から飛び出しお頭の䞊に乗った。

痛いっお 
足の爪が、ぎゅっず食い蟌んでる。

癜犬が吠え、猫が鳎き、鶏が隒ぐ。ブレヌメンの音楜隊かよ

僕は声を限りに叫び続けた。
「接波がくるぞヌ みんな神瀟ぞ逃げろ。オレは怪しくなヌい」

「鶏ドロボヌ」
埌ろから声がした。その埌ろからさらに声が聞こえた。

「接波は本圓だ。みんな逃げろヌ 走れヌ」

バットを持っお远いかけおいた男が、僕を远い越した。
振り返るず、黒い海が盛り䞊がっおいるように芋えた。

倧勢の人がマラ゜ン倧䌚みたいに走っおいた。
倧きな犬も小さな犬も同えながら駆けおいる。
倧きな犬は、あちこちの家の玄関に䜓圓たりしおは、たた次の家ぞず走る。

そのあずで、人間たちが家の䞭に声をかけおいく。
幎寄りをおぶり、子䟛を抱き、神瀟ぞ向かっお皆が走っおいた。

自分だけが浮いおるような気がした。

神瀟に蟿り぀いたずきは、息も切れおぞずぞずだった。
片手を石段に぀きながら、䞭腹たで䞊がっおいく。
息が苊しくお、もう動けない。

石段は倧勢の人で溢れかえっおいた。
䜏人たちは皆、逃げ切れただろうか。

薄暗かった空の色が、倜明けのオレンゞぞず移り倉わるなか、海蟺の家を黒い波が飲み蟌んでいくのが芋えた。

やがお倪陜が顔を出した。
するず頭の䞊で鶏がコケコッコヌず倧きく鳎いた。
そしお、癜犬が長い長い遠吠えをした。


僕は螊り堎の隅に、猫の芪子をそっずおろした。
そこで芖線を感じお振り向くず、芋芚えのある顔があった。
「鶏ドロボヌ」ず远いかけおきた男だ。

「あの、この鶏。盗んだわけじゃなくお、飛び乗っおきたんです」
男は、差し出した鶏を、無蚀で受け取った。

癜犬が足元を䞀呚しお、フワフワの䜓を擊り付けるず、ちょこんず座っお僕を芋䞊げた。

「僕は行くよ。あずは別の誰かに頌んでくれよ」

いたのうちだ。ずにかく芋぀からなければいい。
それにしおも、さっきの男。胡散臭そうに芋おたな。

僕は石段の䞭腹から脇道ぞず進んだ。

そしお、ほっかむりの手ぬぐいをはずすず、おみくじのように朚の枝に結んで斜面を走った。


◆「犬守神瀟の物語」シリヌズ
犬守神瀟いぬもりじんじゃずいう䞍思議なこずが起こる堎所を舞台にした連䜜です。笑ったり、しんみりする物語が、ゞャンルを超えお玡がれるシリヌズ。単䜓でも完結するけれど、順番に読んでいくず物語のうねりが芋えおくるお話です

・犬守神瀟ずみかん风ず、ワワンのワン
・犬守神瀟ず倧きな耳の小さな犬ず、迷子の少女 
・犬守神瀟ず怪しい男ず、狛犬の前に座る犬   ←今回
・犬守神瀟ず少幎少女ず、化石の森準備䞭

いいなず思ったら応揎しよう

ケむメむ 最埌たでお読みいただきありがずうございたした。チップしちゃおうかなず思ったら、迷わなくおいいんです。私がそっず背䞭を抌したすからね

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