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【書評】「嘘」と「ほんとうのこと」について考える(ぼくらは嘘でつながっている。:浅生鴨)

最近私は「嘘」について考える行為に、取り憑かれている。
「嘘」をテーマにしたとある取材で、相手の言いたかったことをうまく翻訳できなかったのだ。自分から「嘘」をテーマに掲げたというのに。
それからずっと、考えている。
「嘘」とは。「ほんとうのこと」とは。
この漠然とした疑問に、一筋の光を与えてくれた本がある。

今回ご紹介するのは
浅生鴨『ぼくらは嘘でつながっている。元NHKディレクターの作家が明かす人間関係の悩みが消えるシンプルな思考法』(ダイヤモンド社)
です。


本との出会い

私がこの本に出会えたきっかけは、冒頭に書いた取材でした。
「嘘」をテーマに掲げたその取材は、ライターで私の師匠の佐藤友美(さとゆみ)さんにおこなった取材です。
さとゆみビジネスライティングゼミで、「1on1でさとゆみさんに取材をする」という課題。私はさとゆみさんに「嘘」をテーマに取材をしました。
取材は本当におもしろい話が聞けて、ホクホクしていたワタクシ。しかし、原稿の講評を見てみると見事なまでにまっかっかでした。「省略することで意味が変わってしまう部分を省略してしまっている」「翻訳がうまくいっていない」と指摘をいただき、見事に撃沈。
そんな私に、さとゆみさんがヒントになるかも、ととある記事を提示してくれたました。朝日新聞さんの「telling,」で連載されていた「本という贅沢」という、さとゆみさんの書評記事です(サイトはつい先日完全クローズしてしまったのでご紹介できないのがはがゆい)。
そこでとりあげられていたのが、今回ご紹介する『ぼくらは嘘でつながっている。』でした。

「事実」なんてものはない

どうでしょう。
今までの人生で一度は親や先生、あるいは友人からも「嘘はついてはいけない」と言われたことはありませんか?
なんなら、自分が我が子や周囲の人に言ったことはありませか?
私、何も考えずに子どもに言ってました。「嘘だけはついたらいけないよ」と。ここでいう何も「考えない」とは、「なぜ嘘をつくことが悪いことなのか、説明できる状態にないまま」と同義です。
著者の浅生鴨さんは、「嘘」とは「事実ではないこと」とし、「事実」はこの世に存在しない、と言います。
「事実」とは、「実際に起こった事柄」です。しかし、浅生さんは「事実」なんてものはない、と言います。

 人間は、自分の望み通りに、自分が考えたいように記憶をどんどん変えていきます。

浅生鴨『ぼくらは嘘でつながっている。元NHKディレクターの作家が明かす人間関係の悩みが消えるシンプルな思考法』(ダイヤモンド社) p.38

私たちは、自分が受け取りたいように物事を受け止め、しかも、それが「事実」であったかのように考えてしまう。
しかし、私たちは自分というフィルターを剥がして「事実」を見ることはできない。自分にとっての「事実」が他人にとっての「事実」であることは、ありえない。では、この「嘘」と向き合うためにはどうすればいいのか。この本には、そのヒントがいくつも盛り込まれています。
また、ダイヤモンド社の本とは思えないぐらい、エンターテインメント要素の強い本です(ほめてます)。

「嘘」と「ほんとうのこと」

私、この本について、ぜひお伝えしたいことがあって。
『ぼくらは嘘でつながっている。』は、どちらかといえば「嘘」を肯定的にとらえる本といっていいと思います。
一方、先日私も読みました土門蘭さんの『ほんとうのことを書く練習』(ダイヤモンド社)という本。こちらでは「ほんとうのこと」だけを書いていこう、ということが終始語られています。
一見まったく逆のことを書いていそうな本たちですが、私はこう感じました。なんか、なんとなく、似ている……?
で、途中でふと、『ぼくらは嘘でつながっている。』の編集者さんは誰だろう?と思ったのですよね。というか、読んでいるうちにまさか……!という感じがしてました。
そう、『ぼくらは嘘でつながっている。』の担当編集は今野良介さん。『ほんとうのことを書く練習』の担当編集者でもいらっしゃいます。

この事実を知って私の頭は軽くパニックでした。
「嘘」がすべてといっている本と「ほんとうのこと」を書こうという本が、同じ編集者の手によって世に送り出されている。これは一体どういうことか。どちらかの本が嘘を言っているのか。
読み終わった今では、そうではない、と私は思います。おそらくどちらの本も(他人にとっては「嘘」かもしれないけれど自分にとっては)「ほんとうのこと」に向き合っていこう、というテーマだったのではないか、と思うのです。
「嘘」と「ほんとうのこと」。掘りすすめた先の井戸の奥底では、つながっていた。私は、そう感じました。
『ほんとうのことを書く練習』が面白かったと言う方には、絶対におすすめの一冊です。
ぜひ、みなさんも両方読んでみて、「嘘」と「ほんとうのこと」について考えてみてください。

それではまた来週。


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