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【書評】私の文章は、化粧くさくないだろうか(ほんとうのことを書く練習:土門蘭)

小学生のころ、参観日の匂いが苦手だった。
あの匂いの正体が、化粧品の混ざった匂いだと知ったのは、私が大人になって百貨店に行くようになってからだ。

今回ご紹介するのは
土門蘭『ほんとうのことを書く練習「わたしの言葉」で他者とつながる文章術』(ダイヤモンド社)
です。


本との出会い

エッセイからインタビュー記事、短歌にブックライティングまで。幅広く「文筆家」として活躍する土門蘭さんの著作です。余談ですが、文筆家って響き、いいですよね。正直憧れる。

さて、こちらの本。発売される前からSNSなどで見かけ、ぜひ読まねば!と思っておりました。理由は担当編集が今野良介さんだからです。
高橋久美子さんの『いい音がする文章 あなたの感性が爆発する書き方』、井上慎平さんの『強いビジネスパーソンを目指して鬱になった僕の弱さ考』など、次々とヒット作品の編集を担当してきたダイヤモンド社の今野良介さん。
文章のリズムを紐解き、人の弱さに向き合う本を出された編集者の新作が、書くことについての本だと知れば、読まずにはいれませんでした。

文章の匂い

先日、とある有名ライターさんの公開インタビューを視聴させてもらいました。彼は「数千文字の記事でも、10万字の1冊の本でも、伝えたいことはひとつだ」とおっしゃっていました。
この本の場合、なぜ「ほんとうのこと」を書くことが必要なのか、が伝えたいことです。「ほんとうのこと」を書く理由と、「ほんとうのこと」を書く方法が、懇々と丁寧語られ、一冊にまとめられています。

私が一番印象的だったのは、文章の匂いについて。著者の土門さんは文章のには匂いがある、と言います。いい文章にはいい匂いがある。それは「素の匂い」だ、と。例えばコーヒーなら、コーヒー。リンゴならリンゴ。それぞれの素材の匂いがするのが「素の匂い」のするいい文章だと言います。
逆に、「素の匂い」のしない文章とは、「化粧くさい文章」だ、と。厚化粧された文章はからは化粧の匂いがする、というのです。

ライターはよく、取材を「素材集め」、執筆を「料理」と表現します。もちろん料理(執筆)が上手である方がよいです。しかし、いくら料理の腕が立ったとしても、素材がイマイチならよい原稿は書けない。
土門さんはこのことを「匂い」という表現に落としこまれた。素材の匂いがしないほど、つまり、厚化粧したり、調味料を入れすぎたりすると、よい文章は生まれない。良い文章とは、素材の匂いがしっかりそしてこの解釈は私にはとても斬新に感じました。

編集者の大連作

作家や著者が、連作ではないけれど根っこの方ではつながっている本を出す、というのはよくある話だと思います。
例えば私のライターの師匠である佐藤友美(さとゆみ)さんは『書く仕事がしたい』、『本を出したい』(いずれもCEメディアハウス)と、リンク性のある著作を持っている。
この『ほんとうのことを書く練習』に、私は『いい音がする文章』、『弱さ考』とのつながりを感じました。
文章の匂いなど、まさに『いい音がする文章』との対比だし、自分と対話するために「ほんとうのこと」を書くべし、というのは『弱さ考』にも通ずる話だと思います。
編集の今野さんは、違う著者の作品でありながら「編集者:今野良介」の大連作を作り上げたのだな、と感じました。
今後この大連作の続編があるのか、はたまたまったく別の切り口の新作が生まれるのか。楽しみにしたいと思います。
作家や著者にこだわって本を探すのもいいですが、たまには編集者に注目して本を探す、というのもいかがでしょうか?新しい発見があるかもしれません。

私の文章は化粧くさくないか

私は、なんとか毎日コラムを書き続けていますが、日記は書いていません。ひょっとすると、私の文章はどこか常に着飾っていて、「ほんとうのこと」を書いていないのではないか。化粧くさい文章になっているのではないか。
そんなことを考えるきっかけになる本でした。
でも確かに、自分が手ごたえのある内容を書けたと思うのは、厚化粧をしていない文章を書けたときだな、とも感じます。
「ほんとうのこと」を書くライターでありたい。そう思いました。

それではまた来週。


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