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別所温泉の国宝を見てから上田電鉄を乗りつぶし、上田城跡と鉄橋を眺めた話

夏の長野県を巡る旅行記、その4。

前回は長野からしなの鉄道に乗って上田へと移動し、酷道の日本遺産を巡るバスで座席から跳ね飛ばされながら別所温泉へと移動し、北向観音を参拝した話を扱った。

今回はその続きで、別所温泉の散策に繰り出すところからスタート。

実はもともとの旅程では別所温泉の観光にそれほど長い時間を確保していたわけではないのだが、予想以上に北向観音の規模が小さくサクッと参拝できたため、時間が余ってしまったのだ。

そのまま駅に戻って時間を潰すのももったいないので、限界ギリギリまで散策することにした……という、落ち着きのない限界バックパッカー仕草

別所温泉を散策

別所温泉という地名の通り、周辺には温泉旅館がいくつも集まっているようだ。湯に浸かるほどの時間はないのと、そもそも私は風呂に入るとその日はもう動けなくなってしまう人種のため、華麗にスルー。

けっこうな勾配と道の曲がり具合が美しい。

そんな道を進んでいくと、奥に真っすぐ伸びる参道を発見。安楽寺という寺院のようだ。

高い木々に囲まれた道の奥に石畳の階段が伸び、その先には立派な山門がそびえ立っている。これはなかなか良い雰囲気だ。

山門をくぐると、今度はすっと視界が開ける。周囲の木々に囲まれた静かな境内は、それまでの温泉街とはまた違った厳かな空気に包まれていた。奥に進むには拝観料が必要とのことで、「北向観音は無料だったのに……」などと思いつつ、ここまで来たのだから素直に支払う……といっても大人 300 円と、かなり良心的な金額である。

人間社会から切り離されていそうな神秘的な池を発見。

そして再び、高い木々に囲まれて木陰の落ちる道をぐねぐねと奥へ進んでいくと……

階段の続く上の方に、何やら不思議な建物が見えてきた

というわけで登ってみたが……画角に全く収まらない!

少し坂を登ってみるが……今度は木が絶妙に邪魔してくるという。周りは墓地となっているため、画角調整のためにズカズカと歩き回るのはためらわれ、これでよしとした。

この建物は八角三重塔と呼ばれる塔で、なんと国宝に指定されている。鎌倉時代に建立された現存する日本唯一の木造八角塔で、中国から伝わった「禅宗様」の建築としても大変貴重な遺構らしい。

国宝指定を受けたのは、松本城とともに長野県の建築物としては最初とのこと。華々しく多くの観光客が訪れる松本城と、別所温泉の山中にひっそりと建っている八角三重塔。知名度の差はものすごいが、国宝としては同じスタートラインに立っているというのがなんとも面白い。

そして何より面白いのが、私はそんな貴重な建物があるとは知らずにただ「北向観音が思ったよりも早く周れたので、テキトーに近くを散策してみる」という大変雑なモチベーションでたどり着いたこと。旅行というのは、こういう予定外の収穫があるから面白い。

というわけで安楽寺の観光を終え、駅へと戻る……と思いきや、まだギリギリ時間が残っているので隣の常楽寺へも早足で行ってみることに。

安楽寺と常楽寺の間は別所温泉遊歩道展望台と名付けられた道があり、そこからは遠くに塩田平を望むことができる。写真では望遠しないとあまり伝わらないのだが、実際に目で見るとなかなか迫力のある景色だった。

で、常楽寺に到着。実は北向観音の本坊にあたる寺院だ。

こちらも入山料が必要だが、100 円をセルフ方式で納めるという非常に簡素なシステムだった。

境内の奥へ進んでいくと、安楽寺と同じようにどんどん木々に覆われ、鬱蒼とした雰囲気になっていく。

そして階段を登りきったところで、なにやらボス部屋のような空間が出現。

柵で囲まれた中には、石造りの小さな塔多宝塔と呼ばれているらしく、国の重要文化財に指定されている。ちょっとした衝撃で倒れてしまいそうな見た目に反し、700 年以上この地に立ち続けているとか。

正直なところ、寺院の木造建築などに比べて規模もディテールも控えめだが、木々に囲まれた薄暗い空間には独特の空気が流れており、神聖な場所であることが感じさせられた。

……というわけで、本当にこれ以上は寄り道できないため、早足で駅へと向かう。この細い田舎道がなんとも良い雰囲気だ。

で、駅に到着。下り坂を進んでいくだけだったため、思っていたよりも早く着くことができた。

まさに観光地の終着駅といった雰囲気の駅舎。

待合室はこんな感じ。かなり立派な駅だが、前回述べたように現在の上田電鉄では上田駅以外は無人駅となっており、奥にあったであろう窓口も閉鎖されている。

ホームはこんな感じ。坂の急な地形ということもあり、車止めの先はすぐ崖がそびえ立つ構造になっている。

個人的には、行き止まり駅と言えばこういう車止めの先が壁という様子が思い浮かぶのだが、おそらくそれは地元の西武園駅が強く印象に残っているからだろう。西武園駅の他に似たような構造の駅は見かけたことがないので、今回目撃できて少し嬉しい気持ちになった。

一方、上田方面を見るとこんな感じ。さすがの急傾斜と言うべきか、下っていく線路の先が見えないというジェットコースター状態

以前訪れた長野電鉄の終着駅、湯田中駅を連想していた。

さらに奥には、前回バスで横を素通りした保存車両も見える。上田電鉄の古い車両のようだ。

……といった感じで駅を観察していると発車時刻が近づいてきたため、車内へと乗り込んだ。

上田電鉄を乗りつぶす

駅を出て少しすると、車窓には見事な田舎景色。青い空と緑の山が美しい。

車両はロングシートだが、そのぶん左右どちらの車窓も楽しみやすい。

しかし各駅でちょこちょこ乗車があり、別所温泉を空気輸送で出発した列車は次第に混雑していった。さらに途中で大学生らしき人たちが乗り込み、立ち客も目立つ状態に。あとから調べてみると大学前というあまりにもド直球な駅の近くに長野大学が立地していた。いかにも国立な名前だが、長野の国立は信州大学で、こちらは公立大のようだ。

そんな大学生だらけの列車で上田へと向かう……と思いきや、1駅手前の城下駅にて前方へと歩いていく。

読み取り機に QR コードをかざして下車。

上田へと向かう列車を見送る。前回上田から下之郷まで乗車しているため、一部が往復乗車となったがこれにて全線完乗を達成した

城下駅で下りた理由は、来た道を戻りたくない原理主義者として往復区間を少しでも削減したかったのと、千曲川橋梁を観察するためだ。

千曲川橋梁を眺める

というわけで、駅からすぐの千曲川に架かる橋へと向かう。

折り返してきた別所温泉行きを撮影。前回は前面展望で車内からの景色を楽しんだが、外から見るのも楽しい。

近づいてみるとこんな感じ。河川敷と山の緑と、空の青、そして鉄橋の鮮やかな赤がお互いを引き立て合って美しい景色だ。

橋の両端は踏切になっているため、こんな構図も撮影可能だ。

こちら側は逆光。

……といった感じで、1区間歩いて上田駅へと戻ってきた。上田電鉄のある温泉口はどことなく裏口感がある。

一方で新幹線乗り場に近いお城口The 地方の中心駅といった風格で、ロータリーも大きい。

その名の通り上田城に近いのはこちら側で、昔から栄えている中心市街といった様子。

一般的には国鉄の駅が町外れにできて私鉄が旧市街を結び新幹線はさらに新市街側に面して作られる……というケースが多い。ところが上田は新幹線が旧市街側に面しており私鉄が裏側という逆転現象が起きており、興味深かった。

で、その後は宿にチェックインして荷物を放り投げてから、最強の移動手段であるチャリを入手。……って、前々回の松本と全く同じ流れである

上田城跡を見学

向かった先は上田城跡。1583 年に築城が始まり、徳川軍による二度の攻撃を受けても落城しなかった難攻不落の城として知られている。

関ヶ原の戦い後に破却され現代では公園になっているが、一部の櫓や櫓門が残されている。

入口付近には上田市民館跡なる古びた建物が。「すでに閉館時間を迎えた歴史史料館的な施設かな」と思いながら通り過ぎたが、まさかの建物自体が役割を終えていたとは。城跡の中に現代建築の跡地があるというのも、マトリョーシカ的で面白い。

なお、この建物は現在解体中で、解体後はこの場所にあった武者溜まりが復元される予定とのこと。

本丸へのメインの入口がこちらの城門。2つの櫓とその中央にある櫓門が出迎える構造になっており、先ほどの武者溜まりからも包囲できる位置関係なため、防御力はなかなか高そうだ。

これらの櫓は内部も見学可能なようだが、今回は残念ながら閉館時間を過ぎていた。

で、いよいよ本丸跡……に入るものの、特に建物などが残っているわけではなく、そのままチャリですっと通り抜けてしまった。

天守などは復元されていないのか……と思ったのだが、実は上田城は本丸・二の丸が実質的に倉庫として使われ、本丸には櫓などの防御施設が配置される一方で藩主の居館は三の丸に置かれていたという、かなり珍しい構造だったのである。現在その場所には上田高校が建っており、校門としてはあまりにも風情のある立派な門が見られる。

門の横にはお堀も残っており、昔はここも城の一部であったことがわかる。

……といった感じで、いきなり夜の街歩き中に撮った写真をひっぱりだしてしまい時系列が前後するが、上田城跡をチャリで巡った後は市街をぶらぶら散策。その具体的な内容は次回に書くとして、日没近くに千曲川を気持ちよく走っているところまで時間を飛ばす。

夕暮れの鉄橋を観察

お昼ごろから青空の広がる晴れ模様となったものの、雲はそこそこ多く夕日は拝めそうになかった。

というわけでその光の弱さを逆手に取り、先ほどの千曲川橋梁を逆光で撮影してみることに……って、隣の橋が思ったよりも遠かった

おもいっきり望遠してこんな感じ。時間の余裕がなく画角を調整する前に列車が来てしまったが、後ろに山がどーんとそびえ立つ景色が美しく、なかなか良い感じになった。

そして今度は先ほど徒歩で渡った橋に再び戻り、折り返しの列車を撮影。

このカラーリング……別所温泉駅で見た保存されている旧型車のものと同じだなあ。中身は全て元東急 1000 系だが、色で個性を出していくのがなんとも面白い。

濃紺とクリーム色のツートンカラーに、赤い鉄橋。色の組み合わせとしてもよく調和していて、個人的にはかなり好きな光景だった。

……といったところでだいぶ分量も多くなってきたため、今回はここまでとしたい。

おわりに

今回訪問した別所温泉は北向観音の参拝がメインの目的で、それ以外はたまたま時間が余ったので行ってみたという行き当たりばったりトラベラーな行動だった。そんな無計画旅行ながら、国宝の八角三重塔重要文化財の多宝塔という、かなり貴重な文化財に巡り合うことができた。

旅行というのは事前にしっかり計画を立てることももちろん大切であるが、こういう「なんとなく行ってみた場所」が思わぬ当たりだったりするのも面白い

そんなわけで、もし上田を訪れる機会があればぜひ別所温泉まで足を伸ばしてみてはいかがだろうか。

……というわけで、次回に続く!


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