バスで志賀高原を越え長野電鉄を乗りつぶした話
志賀高原。長野県北東部に広がる高原地帯で、標高が高く自然に恵まれた環境から冬のスキーや夏の避暑・ハイキングなど、リゾート地として有名だ。公共交通機関でのアクセスはやや難易度が高いが、志賀高原の玄関口とも言える湯田中には長野電鉄が乗り入れており、そこからはバスを利用してアクセスできる。
今回はそんな志賀高原に群馬側から突入し、長野電鉄の乗りつぶしにも挑戦した話。前回は草津温泉を観光し、バスに乗って国道最高地点の峠を越えたところまでを扱った。
今回はその続きで、ほたる温泉バス停で下車したところからスタート。
途中下車
このバスに乗り続ければ長野駅まで行くにも関わらずここで下車したのは、長野電鉄を乗りつぶすためだ。というのも、このバスは長電の終点である湯田中には直接乗り入れないため、国道のバス停から 20 分ほど歩かなければならない。しかも長電の便との噛み合わせが悪く、そこそこ待たされることになる。

一方でほたる温泉からは湯田中行きの路線バスが発着している。峠を越えて草津温泉まで行くバスは非常に少ないが、湯田中~ほたる温泉であればもう少し便があるため、あえて路線バスに乗り換える旅程も組めるわけだ。

そんなわけで乗り換え待ちの時間を利用して周囲を散策。こんな山奥の一角に温泉旅館が集まっているのはなかなか面白い光景だ。

しかし繁忙期のど真ん中のはずなのに、人の姿はまばらで妙に寂しい。ときおり、国道をすり抜ける自動車の音だけがやけに大きく響く。

近くにリフトを発見。

せっかくなので乗ってみることに。

スキー用ではない普通の観光向けリフトらしく、初夏~秋の休日のみ運行という観光特化な感じだ。夏休み期間は毎日運行しているらしい。

というわけで上に到着。頭上には霧が立ち込めており、標高を稼いだことがよくわかる。

表示を見ると標高 1796 メートル。これはなかなかの高さである。

ここはハイキングコースになっているようで、大沼池という絶景スポットへアクセスしつつ志賀高原中心部の方へ抜けることができるらしい。

……が、そのコースは4時間ほどかかるため、私はほんの少しだけ歩いて戻るというつまみ食いをすることに。

リフトから一番近くにある池がこちらの渋池。

もちろん大沼池に比べたらしょぼいのだろうが、鏡のようにキレイな水面に周囲の木々が映されている様子は実に美しかった。

そんなわけでサクッと帰路につく。下の方を見ると視界の上半分は霧に覆われるというのが面白い。

下りはリフトを使わずに歩いても良かったのだが、所要時間があまり予想できなかったのと荷物がやや重かったので安全をとってリフトに課金。

湯田中へ
ちょうどバス停に戻ってきたところで湯田中行きのバスが発車を待っていたため、すかさず乗車。

ここまで乗ってきた草津温泉~長野駅の急行バスに引き続き、こちらの路線バスでもクレカタッチで支払いが可能らしい。乗客が全くいないため限界田舎路線のように錯覚するが、わざわざタッチ決済を導入するということはそれだけ観光需要が大きいのだろう。

というわけで出発。乗客は私1人だけのバスに揺られながら車窓を楽しむ。

少し走ると志賀高原の中心地に到着。スキー場も至近にあり、宿泊施設が集まるエリアだ。

志賀高原は中学のスキー教室で訪れて以来の訪問である……といっても夏と冬で全然景色が違うから、「あ!以前来た場所だ!」とはならないのが悲しいところである。

そしてここから外国人観光客が何人か乗車。日本の中でも志賀高原を旅先にチョイスするとは、なかなか旅慣れている印象だ。もしかしたらインバウンド向けの宣伝が功を奏しているのかも。

そしてまたしても池を発見。志賀高原は本当に池が多いなあ……火山活動の影響だろうか。

志賀高原の中心部を抜けてしばらくすると、湯田中へ向けて一気に標高が下がっていく。ぐねぐねとカーブするだけでは耐えきれない高低差らしく、なんとループ線に突入。

僅かな遠心力を感じながら下がっていき、上を見上げるとほんの少し前に走っていた道路。ループ線の一番の見所である。

車窓も山岳地帯から平野部へと様変わり。

山を下りてすぐのスノーモンキーパークバス停は、温泉に浸かる猿で有名な地獄谷野猿公苑への入口で、ここでも外国人観光客が何人か乗車してきた。夏は温泉に浸かる猿は見れないと思うが、普通の猿目的だろうか。

さらに進んで川を渡ると、一気に温泉街っぽい景色に。

……などと車窓を楽しんでいるとあっという間に湯田中駅に到着。

駅周辺を散策
次の便まで少しだけ時間があるため、切符だけ先に購入してから周囲をぶらぶら。

駅を出てすぐに見える景色がこれ。う~ん、まさに昭和の観光地という感じでエモいなあ。

それっぽい通りに入ってみると……

ん……あれ?なんか観光地感が全然ないんだけど。普通に地方郊外の寂れた駅前通りという感じ。もちろんこういうのは嫌いではないしむしろ好物の部類ではあるが、予想とのギャップに驚いていた。

どうやら観光の中心地は先ほどバスで川を渡ったあたりらしく、駅からは徒歩 20~30 分ほどの距離になる。

そんなわけで、湯田中駅自体は観光地というよりは少し離れた玄関口という雰囲気。長電の延伸計画もあったようだが、頓挫したらしい。
長電に乗車
そんなわけで周辺の散策を終え、駅に戻ってきた。

長電の特徴として、地方私鉄としては珍しく特急列車を頻繁に走らせている点が挙げられる。日中は1時間に1本程度のペースで特急ゆけむり・特急スノーモンキーを運行しており、観光需要や速達需要を満たしているようだ。しかも特急券は自由席なら 100 円と大変お買い得。

特急スノーモンキーの使用車両は元成田エクスプレスの 253 系。当時の配色をほぼそのまま引き継いでいる。

車内はこんな感じでシートはかなり広々としている。おそらくこちらも NEX 時代のものをそのまま流用しているのだろう。

ところで湯田中駅は急勾配を登りきった場所に設置されているため、線路の先を覗くと(この写真ではちょうど隠れてしまったが)登山鉄道並みの下り坂が続いている。成田空港特急と急勾配の組み合わせというアンマッチさが面白かった。

ここではこの光景が日常になっているのだと思うとなんとも感慨深いなあ。
長電乗りつぶし
そんなわけで発車時刻となり、長野駅へ向けて出発!窓も広々としているため、高原の景色を存分に楽しむことができた。

地方私鉄ゆえに基本的には単線となっており、停車駅ではしばしば行き違いが発生していた。向かい側からやってきたのは普通列車の元東急 8500 系。

しかしこの組み合わせもなかなか面白い。背景が緑豊かな山というのもイイ味出している。

再び田舎景色を眺めながらぼんやりと揺られる。特急が停まるような主要駅はそこそこの規模の集落だが、その間は畑の広がる田舎景色といった感じ。

そしてまた停車駅で待ち合わせ。カメラを構えて待つ……って、相手は特急ゆけむりじゃあないか!

元小田急 10000 形を使っており、こちらも外観はロマンスカー時代から大差ない。

NEX とロマンスカーが離合するというのは激アツな展開である。

私の中の小田急と言えば、幼少期に見た鉄道ビデオの刷り込みもあって未だに 10000 形ロマンスカーである。これはエモいなあ。

ホームに滑り込む様子を見届けたら、置き去りにされないようそそくさと車内へ戻る。

道中、須坂駅にて車庫を発見。元東急3500・3600系が眠っていたが、こちらはもう営業運転にはつかないようである。

スノーモンキーのもう1編成と、普通列車用の元東京メトロ03系。03系も地方私鉄でよく見るようになったなあ。

ちなみに、この須坂駅からは松代などを経由して屋代(篠ノ井の2駅先)を結ぶ屋代線が伸びていたが、2012年に廃線となっている。また、屋代線に先んじて信州中野から分岐して木島駅を結ぶ支線も2002年に廃線となっており、地方私鉄の経営状況の厳しさが伺える。

そのため、現在の長電は長野~湯田中を結ぶ長野線1本だけ。しかも長野以外で他路線と接続しない盲腸線なので、私のような来た道を戻りたくない原理主義者には乗りつぶし難易度がやや高くなってしまっているわけだ。

ところで、このあたりで前の人がカーテンを下ろしてしまい、車窓が眺めづらくなってしまった。2席分サイズの上下スライド式カーテンはこういう時に困るな……。

列車はやがて広大な千曲川を渡っていく。ちなみにここで渡っている村山橋は国道 406 号が一緒になっているという、大変珍しい鉄道・道路併用橋だ。

千曲川を渡ると次第に沿線の建物も増えてきて、線路は複線に変身。単線の北しなの線を乗り越えてしばらくすると地下へと潜り、いよいよ長野駅に到着。全線完乗を達成した。

長電は地方私鉄としては非常に珍しく、ターミナルの長野駅から数駅は完全な地下構造となっている。

北陸鉄道浅野川線も北鉄金沢駅は地下構造だけど、駅を出発したらすぐ地上に出るので、ちゃんと地下鉄やってるのは長電が唯一かもしれない。
長野市を散策
地上に出れば、そこは県都・長野市。道路の向かい側には県の代表駅である長野駅。昨日から草津や志賀高原の山奥にいたせいで、駅前の繁華街がやたらと大都会に見える。

その後は宿に荷物を放り投げてぶらぶら街歩き。

夕日はいつの間にか山の向こうに沈んでしまった。

長野市と言えば善光寺だが、残念ながら時間的に観光は不可能。お寺・神社って閉まるの早いよなあ。

いい感じのアーケード商店街を発見したので散策。

……ってうおわあああ!なんだこの建物は!調べたところ、明治25年に開場した芝居小屋を前身とする国内最古級の映画館だとか。昭和・大正を飛び越えて明治とは驚きである。

しかも現役でバリバリ上映しているという!!これはすごいなあ……。

さらに歩いていくと、今度は商店街にあまり似つかわしくないショッピングモール的な建物が出現……って真横に神社が。なんかいろいろチグハグな光景で逆に趣深い。

神社にはちゃんと参拝しておいた。

……といった感じでアーケード商店街の散策を終了。距離は長くないものの、密度が濃く面白い商店街だった。

そんなこんなで日も沈んだためこの日の散策はこれにて終了。分量も多くなってきたため、キリ良くここで区切ろうと思う。
おわりに
今回と前回・前々回を振り返ると、吾妻線と長電長野線という2つの盲腸線をバスワープによってうまく接続するという、来た道を戻りたくない原理主義者としては大変ニンマリな旅程になった。
バスの運賃がそれなりに高いため金銭的コストはかかってしまうものの、道中の景色は大変素晴らしく、盲腸線ワープによる時短効果もそこそこ大きいのでわりとアリな旅程だと思う。もし興味を持った方がいればぜひ挑戦してみてほしい。

なお、調べたところ今回の旅程は2025年ダイヤでの再現はできないらしく、ほたる温泉ではなく志賀高原山の駅などでの乗り継ぎになるようだ。意外とダイヤ改正はあるので、事前リサーチはしっかり済ませておこう。山奥で乗り継ぎに失敗したら命にも関わりかねないので……。
……といったところで今回はここまで。次回に続く!
