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【実話】第5話:暗黒|玄関から一歩も動けなくなったあの日。僕を飲み込んだ「鬱」という底なし沼。

■ 過去の物語はこちら
▼ 第1話:プロローグ|不倫さえしなければ

▼ 第2話:二面性|献身と隠された嘘の聖域

▼ 第3話:蹂躙|打算と、汚された最後の禁忌

▼ 第4話:断罪|崩れ去った城と妻からの決別


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第5話【暗黒】


「……動けない」


頭では分かっている。仕事に行かなければならない。

行かなければ、またお金がなくなる。

養育費が払えなくなる。

それなのに、玄関に座り込んだ僕の身体は、まるで鉛を流し込まれたように一ミリも動かなかった。

これまでどんなに苦しくてボロボロになっても、「自業自得だ」「自分が頑張ればいい」と無理やりエンジンを回してきた。

けれど、そのエンジンがついに音を立てて焼き付いた瞬間だった。

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「鬱病」の宣告と、這いつくばる生活


職場に電話をするのが死ぬほど怖かったが、震える手でなんとか「病院へ行く」とだけ告げるのが精一杯だった。

そのまま精神科を受診して下された診断は、「鬱病」だった。

会社に診断書を送り、傷病手当で食いつなぐ生活が始まった。

会社の人たちの顔を思い出すだけで吐き気とイライラが止まらないが、身体はもう動かない。

薬を酒で流し込み、一日の3分の2以上を寝て過ごす毎日。


お金、仕事、孤独……あらゆる不安に一度に襲われ、家の中でも這いつくばって移動するのがやっとだった。

「鬱」とは、これほどまでに「動けない」ものなのかと、自分でも怖くなった。



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助手席に逃げ込み、温もりを食いつぶす


一人きりの静寂に耐えられなくなった僕は、温もりを求めて手当たり次第に女の子に連絡した。

自分では立ち上がることすらままならないくせに、女の子を呼び出し、彼女たちの車に乗せてもらって遠出に連れて行ってもらうこともあった。

「気分転換」と自分に言い聞かせながら、女の子に運転を任せ、遠くまで連れて行ってもらう。

その時だけは現実を忘れられたが、一人になった瞬間の嫌悪感は消えなかった。


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酒に負け、欲望に縋った最低な夜


ある日、家に呼んだ既婚者の子と、朝から酒を飲んでいた。

彼女は旦那と不仲だったので、来てくれた。

本当に最低な男だと自覚しながらも、孤独を埋めるためには酒と女が必要だった。

泥酔してベッドに横たわると、相手が酔った勢いで僕の下半身に触れてきた。

「やめとき」と口では言いながら、理性はとっくに飛んでいた。

お互い、ゴムをつける素振りすらない。

汗だくになって僕の上に乗る彼女は、旦那以外の男は僕が初めてだと言って興奮しきっていた。

旦那から教え込まれたという行為に、僕はただ身を委ね、最後は彼女の口の中に出した。

彼女はすぐ


.....ごくんっ




「美味しかった」と笑う幸せそうな彼女を見て、僕はただのラッキーだとさえ思っていた。

(後に、彼女は旦那のモラハラで離婚した)


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誰かに優しくされたかっただけなのに


そんな日々が続き、女の子が入れ替わり立ち替わり家に来た。

誰かに求められることで一瞬の幸せを感じたりもしたが、一人になった瞬間に訪れる「暗黒」は以前よりも深く、僕を飲み込んだ。


「仕事もできないくせに、女遊びはできるのかよ」



子供たちに会いたい。
でも、この廃人のような姿を見せるわけにはいかない。

会って元気が出たとしても、その後に来る「独りきりの反動」が怖くて、父親としての顔を合わせることすらできなかった。

しかし

ここまでの全ては、今まで自分がやってきた悪行の罪が返ってきてるのだと実感した。


こうなって当然...
自業自得。
悪いのは全て自分。




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運命を変える「音」との出会い


そんな自堕落な生活の中、ある女の子の社宅に泊まったときのこと。

そこでは、あるアーティストの曲が数曲、寝ている間もずっとリピートで流れていた。

帰宅後、なぜかそのメロディが耳にこびりついて離れない。

気になって調べ、一人きりのワンルームでその音楽を聴き直した。

その瞬間、今の自分を励まし、肯定してくれるような、不思議な癒やしを感じた。

歌詞を一つひとつ読み込んでいくと、刺さる言葉があまりにも多かった。


「……救われる気がする」



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薬、退職、そして新たな覚悟



あんなに重かった体が、その音楽を聴いているときだけは少しだけ軽くなった。

前向きな曲や歌詞をお守りに、僕は少しずつ、スーパーへの買い物や近所の散歩といった「外の世界」へ足を踏み出し始めた。

体調を見ながら、少しずつ薬の量も減らし始めていた。

音楽に救われ、元気を取り戻していく中で、一つの確信が芽生えた。


「いつまでも傷病手当に頼って、止まったままではいられない」



僕は決意した。


あの会社に「退職届」を出すことを。



「もう、二度とあそこには戻らない。戻ってはいけない。」


それは、自分を追い詰めた過去との決別であり、自分を取り戻すための、最初にして最大の「断罪」の仕上げでもあった。


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社会への「リハビリ」と、再起の第一歩


退職届を出し、傷病手当も打ち切った。

そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、学生時代の同級生だった。

彼が営んでいる仕事を手伝わせてもらえることになったのだ。

在宅での作業から、少しずつ外に出てこなす仕事まで。

それは、社会に出るための僕にとっての「リハビリ」だった。

仕事を通じて、これまで関わることのなかった多くの人たちと出会い、話をすることになった。

そこで突きつけられたのは、今までの自分がやってきたことのひどさ、そして惨めさだった。

第3話でも書いた通り、生々しい不倫の事実や最低な行為、見た人は気分を害したと思います。

批判、非難は当たり前です。

ドン引きされて当然の最低な父親でした。


「自分は頑張っている」「自分さえ良ければいい」



そんな狭い世界で生きてきた僕にとって、色んな人の考えや思い、厳しい意見を聞くことは、新しい価値観のシャワーを浴びるような経験だった。

人との対話を通して、僕はようやく、自分の人生をすべて客観的に見れるようになってきた。


自分の過ちを、言い訳せずに直視する。

それがどれほど苦しく、そして必要なことだったのかを、リハビリの日々が教えてくれた。

そして僕は、画面越しに聴いていた「あのアーティスト」に、どうしても会いたくなった。

家の中で這いつくばっていた自分が、気がつけば新幹線に乗り、各地のライブ会場へと足を運んでいた。

会場を包む圧倒的なエネルギー。
遠征先で吸う、知らない街の空気。

こんな自分を現状を全て、肯定してくれるかのような。



「その音に導かれるように、僕は一歩を踏み出した。」



ライブに行くたび、僕は当たり前の「生きてる実感」を取り戻していった。

鬱病の薬も最後には手放すことができた。

暗闇しかなかった築古ワンルームから、僕はついに、新しい人生へと歩き出した。

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次回予告

第6話:再生|音に導かれた再出発と、隣にいてくれる「光」との出会い。


友人の仕事を手伝いながら、少しずつ取り戻していった「普通の暮らし」

そんな中で訪れた、今の彼女との運命的な出会い。


「アルバイトで年収が半分になっても、彼女との同棲はめちゃくちゃ幸せ」

不倫、離婚、鬱……すべてを経験した僕が、今、一番大切にしたいもの。

この物語の最終章、僕がたどり着いた「現在」をすべて綴ります。

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