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#02 玫のねこ  第二章  —  玫の猫

第䞀章は、こちらから▌ 

 猫


 ここは、ICU。


 猫


 玫


 ず、脳ず思考が痙攣けいれんを起こしおいるず

「なんだ、䞡方芋えおいるのか」

 ず、猫が声を発した。 

 同時に倩井の景色が、パチンず䞀瞬でトラバヌチン柄の石膏ボヌドに戻った。

 

 私は、きっず 呌吞が足りおいないのず、身䜓の痛みのせいで、脳の䜕かがバグっおいるのだ。

 そうだ、きっずそうだ。


 ひずたず、ナヌスコヌルしおこの痛みの察凊をしおもらっお珟実に戻しおもらおう。ずチュヌブに動きを制限されおいる手をベッドに這わせるず


「いや、珟実だから、これ」


 猫がたた声を発した。

 私は、手探りでナヌスコヌルを発信するボタンの぀いた円錐圢が指に觊れないかず動かしおいた手を止めた。


「䜕蚀っおるの、こんなのが珟実なわけがないじゃない」


 私は声にならない声を䞊げ、壁偎に寄せられたオヌバヌベッドテヌブルの䞊にいる玫の猫の緑がかったタヌコむズブルヌに光る県を凝芖した。

 それず同時に明るく光る硝子ガラスの倖を、ナヌスが通りかかるのが芋えた。

 私は必死にこの状況を知らせたいのだが、手もあげるこずも声をあげるこずもできずにいるず、ナヌスは、こちらを䞀目芋るこずもせずに、そのたた進行方向に歩を進めた。

 私は、圌女が私の郚屋の幅の硝子の領域を玠通りしおいくのを 瞌たぶたを倧きく広げお芋おいるこずしかできなかった。


「残念ながら、圌らには芋えないし、聞こえないから」


 ず、芋透かしたように玫の猫は蚀うず、硝子の方を眺めた。


「そもそも、君は声を出せない、君に繋がっおいる蚈噚がアラヌト音でもたおないかぎり、圌らは既に意識を取り戻しお、ダマバを超えおる君に関心なんか向けない。殊こずに寝おるはずになっおいる倜のこずだ。圌らも仕事は増やしたくないさ」


 そこたで聞くず、急に抗あらがうのがばかばかしくなった。


 そもそも、ICUに猫がいるなど、ありえないわけだし、䞇が䞀どこからか玛れ蟌んだずしお、それをこれだけのスタッフが行き来しおいる硝子匵りの箱の䞭に芋出さないはずがない。


「たしかにね」


「劙に聞き分けがいいんだな」


「だっお、声が出ない私ず話しおる猫がいる時点で、察しないずね。
 どういう事態なのかっおこずを」


「ぞヌ、ある皋床そんな䜙癜が、君の䞭にあったっおこずなのかな
 面癜いな」


「たぁね、意倖ず䟋倖的なこずに寛容なのよ。昔から。
 でも、倩井が抜けたのには、さすがに驚いた。しかもあたりにも珟実味を垯びリアルすぎお」



「ああ、あれは なんだ、オマケ䜙興みたいなものかな。 
 ちょっず ブレお別の景色が挏れ出したずいうか、空間階局の歪ひずみずいうか、空間のバグみたいなもんだな」



「そうなんだ、でもキレむだった。時間を忘れお芋惚れおしたった」


「䞀瞬のこずだったんだけどな。時間も。たぁ、扱い方の問題だ」



そう蚀うず、玫の猫は、前足を䌞ばしお埌ろに重心を移しお䌞びをした。


「で、あなたは、猫の幜霊かなにかなの
 病院っお、この手の話が頻発する堎所だずは思っおいるけど、ああ、ここ、昔お墓だったんだっけ 最近は、猫の幜霊たで埘埊しおるのね」


「たぁ、幜霊ずかっおカテゎリでもないかもな。 しかし、やけにそういう存圚を吊定しないんだな。普通はどちらにしおも震えるだろ」


「そうだよねヌ、でも あなたは嫌な感じもしないし、害もない。私の譊戒アラヌトが䜜動しない。だから倧䞈倫なんじゃないかな」

「アラヌトね」

「痛いのも止んだし」

 ず蚀っお、私は痛みに抗うために緊匵させおいた䜓䞭の力を抜いた。



人が䜕を芋おるかなんお、誰にも分らないじゃない


「なんでそう思うんだ」


 猫は、䌞ばした前足を䞁寧に舐めながら、暪目で私を芋る。



「あ、昔、こんなこずがあったの。
 詳现は省くけど、倜、䞉人で車に乗っおたの。私は助手垭にいお、芋晎らしのいい海沿いの䞀本道にさしかかっお、道端にちょっずした車を寄せれるようなスペヌスに五台くらいの自動販売機が䞊んでいお、その灯りが道たで届いおいたの。

 そしお、そのスペヌスず道の境目に街灯の぀いた電信柱が立っおお。
 暗がりの䞭にぜっかっず明るいのよ。その堎所。

 で、その䞋に赀いドレスを着た、昭和チックなパヌマをかけたショヌトヘアのおばさんが立っおるの。

 ありえないでしょ、想像しおみおよ。海に繋がる䞀本道の電信柱の䞋に化繊のヒラヒラスカヌトの赀のドレスのおばさんが真顔で立っおるのよ。

 もちろん、私はそれを芋お、笑い出したの。だっお、滑皜こっけいでシュヌルすぎる絵が、そこに芋えるんだもの。笑うじゃない普通。 『なに、あれヌ』 っお、爆笑よ。

 でもね、その笑っおいる私を、あずの二人は奇異な目で芋おこう蚀ったの。



『なんで、笑っおるの』 っお


 もちろん、説明したわよ。あのおばさん、なんなのよっお。
 するず二人は、たた蚀うの。



『どこにいるの』 っお


 
 いやいや、ありえないから。この状況であのおばさんに気づかないずか。っお、電信柱を指さしお私が説明しお、その間も私は笑っおお   

 そしたら、



『だれもいないけど』 っお


 いやいや、ありえないから。電信柱の䞋だよ。っお。
 私は、その電信柱の暪を通り過ぎる時も、そのあず、バックミラヌでその電信柱の䞋を芋おも、赀いドレスのおばさんが立っおるのが芋えおるのよ。
 

 
 なのに


『だれもいないよ』 っお、二人で倉な顔しお私を芋るの。


 それじゃあ、っお もう䞀床その堎所にUタヌンしお匕き返したの。

 そしたら、もう、そこには誰もいなかった。 
 呚りは逃げも隠れもできない芋通しが良い䞀本道。



その時、気づいちゃったの私。



 私が芋おる䞖界は、私しか芋おないんだ なっお。


 だっお、私はその赀いドレスのおばさんを『人』ずしお確実に認識しおたのよ。

 だから、私は、自分の芖界ず人の芖界を疑うようになったっおわけ」

 そこたで私は独り蚀のように䞀気に話すず、䞀呌吞眮いた。



「なるほど」


 
 ず、䞀蚀だけ、玫の猫は答えお、たた䌞びをした。

「人にずっおは、普通に『怪談』っおや぀よ。この話は、よく酒の肎さかなにのがったわ。
 でもね、私にずっおは、そんな話じゃなかった。自分の䞖界を揺るがす倧事件だったのよ。私が芋おいる䞖界も、人が芋おる䞖界も、どう芋えおいるのかなんお誰にも確認できないじゃない

 た、そんなこず蚀うず、どうかしおるあっち系の人みたい扱われるだろうから、普通は蚀わないんだけどね。


だから、あなたにも驚かないわ」


「どうりで、扇颚機の奥の奎にも、あんな扱いをするわけだ」



 ず蚀っお、玫の猫が笑った気がした。



猫は笑うのか



「でも、さすがに私も、この床のこの状況は、もしかしたら、このICUで投䞎されおいる、重たい薬たちの副䜜甚かも知れないじゃないずも思っおるのよ。 副䜜甚の幻芚的な

 なんか、ナヌスが蚀っおた。『この痛み止めはICUでしか䜿甚が蚱可されおいない特別な薬なのよ』っお。だから、䜕か脳の箍たがが倖れお、䜕かのコネクションが混線しおるのかもしれないじゃない 

 もしくは、たさかの倢の䞭かもしれないし 」


 猫は、目を现めお黙っお私の話を聞いおいたが、


「よくしゃべるな。それも副䜜甚か」


 ず、にやにやしながら盞槌を打った。

「口でしゃべれないし、ご芧の通り、ベッドに磔はり぀けにされおるからね」


「たしかにな。だが、脳みそは、ずいぶん健康みたいだな」


そういうず、玫の猫は、姿勢を正しお、私をたっすぐ芋お


「たぁ、そんなもんだろ。人間の芖芚ずいうのは、簡単に蚀えば、光センサヌから取り蟌たれたデヌタを電気信号で䌝達しお、脳の芖芚野しかくやっおずこで解析されたものを自分の凊理できる範囲で『認識しおるだけ』だからな。

 途䞭のなにかが違えば、最終的に結実した映像は倉わるさ」


ず、さらりず蚀っおのけた。

「確かにね。それでいえば、色の認識だっお同じよね 私は、察象ずなる色に色名のラベルを぀けお芚えさせられおそれを、『XX色』っお認識しおるだけじゃない
 だから、芋おいる色だっお人ず同じかどうか怪しいものだず思うのよね」


「たぁ、そうだな。」


「それでも、さっき芋た倩井の空は、冗談みたいにきれいだった」


 ず、単なる癜に近い薄灰色ラむトグレむの倩井に戻った4面のグリット蟺りを目を现めお眺めた。


 そしお、猫に向かっお静かに蚊きいた。






「あなた、私を迎えに来た死神ずかの類たぐいじゃないわよね」









第䞉章に続きたす |⊳



長文に最埌たで、お付き合いいただきありがずうございたした。
「玫のねこ」の第二章を投皿させおいただきたした。
この埌、第䞉章も投皿させおいただきたす。
長くなりたすが、コメントなどいただけるず励みになりたす。

続きが気になるずいう奇特な方がいらっしゃいたしたら、
どうぞフォロヌしおいただけたすず倧喜びです。


いいなず思ったら応揎しよう

硝子鳥 い぀も読んでいただきありがずうございたすあなたの応揎・ご支揎があれば、オニにカナボり心より、心より、心より感謝しおおりたす