藻場を創生する企業「BLUABLE」登場!富士通から誕生した出向起業スタートアップの実態に迫る
こんにちは!富士通広報note編集部です。
皆さんは「出向起業」という言葉をご存じでしょうか。一般的に大企業では、新規事業に挑戦できる環境、機会が得られにくいという課題があります。「出向起業」はそんな大企業に所属する人たちが、所属自体はそのまま、「出向」という形で通常の業務から離れて、自律的で柔軟に新規事業を創造できる起業形態の1つです。
この「出向起業」という形態で、富士通からも「株式会社BLUABLE(ブルアブル)」(以下、BLUABLE)というスタートアップが誕生しました。
BLUABLEは、海洋の生態系に取り込まれ、貯留される炭素であるブルーカーボンを事業とし、そのブルーカーボン創出の基となる藻場の創生に挑む企業です!
今回は、そんなBLUABLEの社員の皆さんに、設立の経緯や事業の内容、今後の展望などインタビューしてみました。
1. 企業の誕生経緯や事業概要について、代表取締役 魚谷さんに聞いてみた!
まずは代表取締役である魚谷さんにBLUABLEの企業概要や設立経緯についてお話を伺ってみます。

―BLUABLEとはどんな企業!?
BLUABLEは、2024年10月に富士通の新規事業創出プログラム「Fujitsu Innovation Circuit」(以下、FIC)から生まれた初の出向起業型のスタートアップなんです。
私たちは、「ブルーカーボンって測れるの?」「そもそも藻場って、どうやってつくるの?」というところに着目して、藻場の創生から、ブルーカーボンの測定・クレジット化の支援までをワンストップでサポートする藻場創生キットの開発に取り組んでいます。
具体的には、海藻が根付きやすい素材(基質)の研究や、ICTを活用し、海藻の重量からブルーカーボンを測定する仕組みづくり、磯焼け(*)が進むエリアでの種苗の培養などを行っています。
*磯焼け:海藻が減少し、岩礁域が荒廃する現象
BLUABLEが目指すのは、藻場を中心とした環境と経済の好循環の創出です。

これは、BLUABLEが描くビジョンを表したビジョンボードです。環境・経済・社会という3つの視点でブルーカーボンの価値を明確に示し、企業、自治体、住民、水産業者などのステークホルダーが協力することで実現する持続可能な未来像を描いています!
―どうしてBLUABLEを設立しようと思ったの!?
きっかけは、BLUABLEの共同創業者の西川さんが、2013年から藻類の研究に関わっていたことでした。さらに、2020年にJBE(ジャパン・ブルーエコノミー技術研究組合)(*)が設立され、ブルーカーボンはこれから盛り上がるだろうということもありました。その頃は、ブルーカーボンに関する事業がまだ少なく、ブルーカーボンの測定やクレジット化の技術開発には確かにチャンスがありました。
でも…調べれば調べるほど、そもそも藻場自体がどんどん消えているという現実に突き当たって。
ないものは測れない、だからこそ、測定以前に“つくる”ことが必要だと考えるようになったんです。
*JBE(ジャパン・ブルーエコノミー技術研究組合):海洋の保全、再生、そして活用などブルーエコノミー事業の活性化を図ることを目的とした技術(方法論)の研究開発を、異なる分野と立場の研究者、技術者、実務家らが密に連携して実施するために設立された組合
2.これまでの活動の取り組み、成果について研究開発担当 西川さんに聞いてみた!

―なんで、ブルーカーボンなの!?
私は、もともと富士通でシステムエンジニアをしていましたが、災害などを通じて、持続可能なエネルギーって何なのだろう、どうにかして持続可能な社会をつくれないだろうかと思うようになったんです。
そこで2013年より、持続可能なエネルギー源として期待されていた微細藻類(*)によるバイオマスエネルギーの研究を開始しました。藻類培養をICTで支援する企画を発案してプロジェクトを立ち上げ、震災復興事業である福島県での藻類燃料実証事業に参加しました。2017年には、富士通グループの環境分析を行う会社に異動し、培養実験や成分分析試験などを進めてきました。
*微細藻類:肉眼では見えないほど小さな藻類
私がこれらの研究を進めていた頃、微細藻類は光合成によって二酸化炭素を吸収する、ブルーカーボンとしても徐々に注目されつつありました。温室効果ガスを抑えることは、持続可能なエネルギーを考える上で大切な観点であり、私にとっても強い関心事だったので、2021年に海産性微細藻類によるブルーカーボン研究事業に参加できることになったんです。
ただ、微細藻類は二酸化炭素の吸収量を定量にするのが難しく、まだブルーカーボンとして正式に認められていないんですよね。私としては、これまでの微細藻類研究で培った経験を生かしながらブルーカーボンに関わっていきたい、という思いがあったので、JBEがブルーカーボンの対象としている大型藻類(海藻)に研究のフィールドを移したんです。
―これまでどんな取り組みをしてきたの!?
2024年10月の創業より、藻場創生キットのプロトタイプ試験を実施しており、北海道から九州まで実証実験海域10サイトに導入しています。(海は誰の所有物でもないのですが、その利用許諾の調整はとても大変なので、この分野をよくご存知な方ほど、「この短期間に10サイトも!?」と驚かれます。)対象となる海藻も地域ごとにバラエティ豊かな検証ができました。
そして、10サイト中、設置時期が極端に遅くなってしまった1サイトをのぞいて海藻の繁茂が確認できています!
プロトタイプの基質にがっしりとくっついていることも観察できました。

このメカニズムについては一部解明して特許出願済です。

また、創生した藻場の重量を測定し、創出するブルーカーボンを測定するリモート重量推定システムを開発しました。このシステムは、海に投下した藻場創生キットに付着した海藻の重量を、センシングとAI技術によって分析していくことで測定していきます。これも特許を出願している技術です。

このような成果が出てきたため、5月下旬にはマリンバイオテクノロジー学会のシンポジウムでBLUABLEとしての研究成果を初めて発表しました。
BLUABLE note 記事: マリンバイオテクノロジー学会シンポジウムで研究内容を初披露
2025年2月に日本政府は初めてブルーカーボンの目標値を2035年100万t-CO2、2040年200万t-CO2と設定しました。
私たちのこの藻場創生キットを一刻も早く実用化し、全国各地で手軽に藻場の創生をすることで、ブルーカーボンの目標価達成に向け、貢献できるようにますます力を尽くしたいと思っています。
3.これからの取り組みと展望について、事業デザイン福地さんに聞いてみた!
最後は福地さんにお話を伺ってみたいと思います!

―今後、どのような取り組みをしていくの!?
私たちは今、「企業の海森(うみもり)」という新しいプロジェクトをスタートさせています。
これは、企業や団体の皆さんと一緒に、藻場を保全・回復・創出する活動です。
いわば“企業の森”の海バージョン。私たちは藻場づくりの技術や調査ノウハウを提供し、企業の皆さんには資金や人の面でサポートしてもらう、そんな共創の形を目指しています。

参加企業には、3つの価値を提供します。
① 現場で学ぶ実体験
社員の方々が藻場の保全活動に参加し、海の環境や地域と触れ合う体験を通して、気づきや学びを得られるプログラムを用意しています。
② 地域と海の“はじめの一歩”を支える技術伴走
「どんな海藻を育てればいい?」「どこに植えられる?」
そんな企業側の“わからない”に寄り添い、海の専門家として調査・観察・判断材料の提供を行います。地域に貢献したい企業と一緒に、一歩ずつ実現可能な形を探っていきます。
③ ネイチャーポジティブ経営への貢献
ブルーカーボンクレジットの申請支援などを通じて、企業の環境・サステナビリティ戦略にもつながる取り組みを目指します。
すでに、北海道・兵庫・和歌山・愛媛・長崎・鹿児島などでプロジェクトが動き始めています。
ご関心のある方は、ぜひ一緒に海の森づくりに参加しませんか?現在、この取り組みは連携パートナーを募集しており、詳細は以下のサイトをご確認ください。
―BLUABLEの今後の展望は!?
私たちは、「海を耕す」ことを通じて、気候変動にも、生物多様性にも、地域経済にもポジティブな循環をつくることを目指しています。
これまでの環境対策は、“失われたものを守る”という守りの発想が多かったと思うんです。でも、BLUABLEがやりたいのは、海の再生を“希望の産業”として捉えること。 その一歩が、藻場の創生です。
そして今、私たちが挑んでいるのがその先。 藻場で育った海藻を収穫し、深海に沈めていく、ブルーカーボンの“深海固定”という新しいステージです。
この手法は、CO₂を海藻に吸収させたあと、数百年〜数千年単位で大気に戻さずに閉じ込めることができる、いわば“人類が手にした最も自然に近いカーボンリムーバル技術”とも言えるものです。
「つくる・育てる・固定する」この一連の流れを、日本の海から世界に広げていく。
そんな“海から未来を耕す産業”を、本気で育てようとしています。
BLUABLEは、企業・地域・研究者、そして次の世代を担う若い人たちと共に、気候変動を乗り越えた先の“美しい海と暮らし”をつくっていく旗手でありたいと思っています。
BLUABLEの社員の皆さんありがとうございました!
なお、BLUABLEの取り組みの様子やこれまで登壇した様々なイベント概要などについては、以下のBLUABLE|noteにて掲載をしております!こちらも合わせてご確認ください!

