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『トワイライト、新版画』版画の鮮明さ|【三菱一号館美術館 鑑賞レポート】

今月24日まで開催している

東京三菱一号館美術館
『トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで』

に足を運びました。

事前に調べてとくに気になっていたのが、
「明治の視覚を変革した写真と、伝統的な浮世絵との関わり」
というテーマです。

文明開化によって失われゆく風景を惜しむノスタルジックな態度は、写真と浮世絵が共有していくことになりました。
この複雑な関係を紐解くために、本展はスミソニアン国立アジア美術館と三菱一号館美術館が共同で企画したものです。


写真と版画を同列に並べて展示するという、わたしにとって初めての体験でした。


2026年2月19日(木) - 2026年5月24日(日)|「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」|三菱一号館美術館


平日の朝、開館して30分も経たないうちに会場は満員。
木版画の展覧会でこの賑わいは、正直驚きました。

今回いちばん見たかったのは、写真と版画を並べた展示です。

スミソニアン国立アジア美術館と三菱一号館美術館が共同で企画したもので、浮世絵と写真の複雑な関係を紐解くという試みです。

文明開化で失われゆく風景を惜しむ感覚を、写真も版画も共有していました。実際に並んでいるのを見て、意外だったのは。


写真の克明さが版画を圧倒するかと思っていたのに、
むしろ版画のほうが鮮明に見えたこと


手彩色された写真はセピアに薄く色づいて、
カラー写真のような、でもどこか不自然さもあり。
版画と写真の目指すところは同じという点は伝わってきました。

第1部、第2章~ 第3章まで📸ok
左:小林清親 版元:福田熊次郎 《大川岸一之橋遠景》明治13年、右:アドルフォ・ファルサーリ《人力車に乗る女性たち》明治13–23年頃
人力車に乗る人をモチーフに版画と写真を一緒に並べる。
小林清親 版元:福田熊次郎 《大川岸一之橋遠景》
シルエットと月明り、闇にきらめく光。

清親の忘れられない「光線画」

小林清親(1847–1915)の作品は以前、練馬区美術館で見たことがあります。

あのときの水彩画のようなグラデーションと抒情性が忘れられなくて、今回また会えるのを楽しみにしていました。

練馬区美術館「小林清親 文明開化と光と影をみつめて」(2015年)
今回のチラシと同じ表紙(《東京新大橋雨中図》)の画集。



淡く暗い色調、ぼんやりとした光と陰影。
「光線画」と呼ばれるシリーズは、江戸の情緒と人々の感傷をそのまま閉じ込めたようでした。
その時代を知らないわたしでも、忘れがたい憧憬を感じました。

赤×黒はモダンだね。
小林清親 版元:福田熊次郎《 明治十四年一月廿六日出火 両国大火浅草 橋 》明治14年
江戸と言えば火事。
小林清親 版元:福田熊次郎《明治十四年二月十一日夜大火 久松町にて 見る出火》 明治14年頃
火事その2。
左:小林清親 版元:小林鉄次郎《 武蔵百景之内 深かわ木場》 明治17年
中央:小林清親 版元:小林鉄次郎《 武蔵百景之内 両国花火》 明治17年
右:小林清親 版元:小林鉄次郎《 武蔵百景之内 江戸ばしより日本橋の景 》明治17年
井上安治作品は淡い紫とピンクのグラデーションの壁紙。
井上安治 版元:福田熊次郎  《銀座商店夜景 》明治15年


巴水の光には、「性格」がある?

最後の展示スペースでは川瀬巴水(1883–1957)の《東京十二題 夜の新川》の前で、足を止めました。

建物の隙間からこぼれる、白に近い黄色の光。
一見なんでもない路地の景色なのに、見ていると「何かがありそうな」気配。そしてその「何か」が、怖いものではなく、楽しいことが起きそうな予感がする光の色。あの路地の先では、誰かが笑っているかもしれません。

《東京十二題 雪に暮るゝ寺島村》では民家からオレンジ色の光が漏れ、傘をさした人物が雪の中を歩いています。そこにも室内の団らんの気配があります。藍と青の雪の白さが、東京の冬の鈍さをしんしんと伝えています。


何かが消えた

しかし《春之雪(京之清水)》の前では、何かが消えていました。

作品ナンバー150のこの作品で展覧会は締めくくりでした。

技術は圧倒的でした。シルクスクリーンと見紛うほどの精緻さで、木版画でここまでできるのかと驚きます。
ですが初期の作品にあった気配が、うすくなっています。
完成度が上がるにつれて、絵の中の「余白」が埋まってしまったのかもしれません。

技術と情緒は、必ずしも一緒に育たない?のだろうか。

午前中の庭園は光を受けてモリモリ、キラッキラ。
小企画展入り口脇のスペースには、スタンプ6回で完成するオリジナルポストカードがあった。
蘆雪展でも、こういうのあったね。


小企画展「ジャポニズムの季節Ⅰ──春」


2026年2月19日(木) - 2026年5月24日(日)|「ジャポニスムの季節Ⅰ――春」


磨かれて輝くカップアンドソーサーがガラスケースに並んでいました。
文豪の一行とともに展示されていて、小さなフロアながら、ため息が出るほど優雅な時間がありました。

鳥の羽に
見初める
春の光かな
樗良
咲き満ちて
こぼれる花も
なかりけり
虚子


【トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで】
会期:2026年2月19日 – 5月24日
開館時間:10:00 - 18:00(祝日除く金曜日、第2水曜日、会期最終週平日は20時まで)※入館は閉館時間の30分前まで
🈹「カラーコーデ割」(🟠オレンジまたは🟣パープルで100円引き、両方で200円引き)あり。


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Art.MegumiKarasawa 展覧会に足を運び、この記事を書くため数日かけて言葉にしました。もし何か残るものがあれば、サポートいただけると嬉しいです。 いただいたお気持ちは、次の作品の画材代として大切に使わせていただきます。作品制作と執筆の大きな励みになります。これからもどうぞよろしくお願いします。

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