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夢の工房から生まれた版画|『Idem Paris』 展【イセタンザスペース】


時代と逆行するようなリズムで、今も版画が生まれる場所。
パリ・モンパルナスの工房 Idem Paris が新宿にやってきた。

版画のひそかな楽しみは刷った紙を確認すること。

2026年4月9日(木)~5月6日(水·振替休日)|「ldem Paris「夢の工房 / Dreaming Factory」|イセタンザスペース

イセタンザスペース

新宿方面に足を延ばすときは、必ずチェックするデパートのコーナーがあります。新宿伊勢丹2階のイセタンザスペースです。

ここは現代アートやインテリアやセラミックなどの作品を、扉のない白い壁とスペースを使ってギャラリーのように展示されています。

デパートならではの高級感と手が届かない感じもありつつ、常に新しいそわそわした気分に溢れ、物欲と美的欲求にきらきらした空気が流れています。

このスペースを知ったのは以前の「ドナルド・ジャッド展」から。
今回は Idem Paris のリトグラフ工房で刷った国内外のアーティストの作品が見られるということで、ぜひとも見ておきたかったのです。

パリの夢の工房、Idem Paris

Idemは1881年創業、パリ・モンパルナスの老舗リトグラフ工房です。
マティス、ピカソ、シャガールら20世紀の巨匠たちも通い、伝統的な石版印刷を今日まで継承しています。

古き良きパリの芸術の香りと職人の手仕事。
品格のある古い工房内には、手入れされ大切にされてきた昔からのプレス機や、名だたる芸術家の手から生まれた石板の版や道具が並んでいます。
※イセタンザスペースのHPで写真を見ることができます。

ある時からずっと同じ時間が流れているような、時代とは逆行したリズムと光。映画「パリに咲くエトワール」を観てから、20世紀のパリの街にタイムスリップした感覚を味わっています。

展示アーティストたち

【Idem Paris】
Akira Minagawa
Jean Jullien
Jean-Philippe Delhomme
Momoko Ando
Philippe Weisbecker
Stanley Donwood / Thom York
Toeko Tatsuno
Yuumi Domoto

【Idem Editions】
Izumi Kato
Raymond Pettibon

リトグラフは石版の上に直接描画していくので、工房に赴いてそこで制作に取り掛かるそうです。

作品と紙

左:Jean Jullien、中央、右:Lea with Notebook
Toeko Tatsuno
Philippe Weisbecker

それぞれの持ち味とスタイルが紙にまっすぐ転写されていたのは、リトグラフならではの自由度の高さからでしょう。
直接鉛筆やコンテで描き進められるその制作過程は、紙に描くくらいの手触りがあります。

四方に耳があり、Idem社のウォーターマーク(透かし)が入っている。

今回出品された版画はBFK Rives paperと和紙に刷られていました。
BFK Rivesはアルシェ社の生産する、フランス産のコットン100%の、酸を含まない中性紙です。長期保存に優れた柔らかく、リトフラフや銅版画など版画に適した最高級紙です。(IdemはBFKを使っているんですね~)

版画を刷る紙を確認するのも楽しみのひとつ。
紙の性質や特質、厚みや風合い(白って200色あんねん。)から、どれを選ぶのか、アーティストの試行や工房の選定から、作品そのものの外側に、もうひとつ見えてくるものがあります。

Momoko Ando

Momoko Ando

黒一色の版画は、墨画のような水を含んだような揺らぎと透明感がありました。

Akira Minagawa

Akira Minagawa

蝶々の作品はミナ・ペルホネンの世界そのままの、やわらかくふんわりとしたストーリーのある仕上がり。

Izumi Kato

Izumi Kato

黒一色ですが、あの特徴的な色彩がなくても有り余る加藤泉世界が紙に閉じ込められていました。黒のみだと神秘さや謎が深まります。

Jean Jullien《Dogtator》の石版

Jean Jullien

シンプルな線はリトグラフの質感と相性がよく、独特な色彩の洒落があって、インテリアとしてもマッチするはずです。

会場では実際に「Dogtator」の石版が展示されていて、よどみない線と版の中にぴたっと収まる絵のバランスが見事でした。

Stanley Donwood / Thom York

Stanley Donwood / Thom York

リトグラフの面白さにハマって爆発したような勢いで、こちらもノリノリになるくらいのクリエイティヴをまき散らしていて、気持ちがよかったです。

idem――書かずにはいられない場所 原田マハさんのテキスト

 『ロマンシエ』という小説

開催概要には原田マハ氏がテキストを寄せています。
Idem Paris の扉を開いたことで誕生した小説『ロマンシエ』を、迂闊にも知りませんでした。これはいちど読まなくては。

デパートの小さな一角ですが、好奇心を刺激する展示ラインナップに惹きつけられ、また次回を楽しみに会場を後にしました。

Idem Paris「夢の工房 / Dreaming Factory」】
会期:2026年4月9日(木)〜 5月6日(水・振替休日) 
開館時間:10:00〜20:00 
会場:イセタンザスペース(新宿伊勢丹 2階)


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