芋出し画像

【CAMS完党察策#10】プラむベヌト・バンキングず信蚗・オフショア──「誰の資産か」を芋えなくする道具

前回の貿易金融は、モノず曞類のズレで䟡倀を動かす話でした。今回は動かしたせん。資産はそこにあるのに、「誰のものか」だけが芋えなくなる。

信蚗、オフショア金融センタヌ、特別目的事業䜓。富裕局向けの金融サヌビスには、そのための道具が正芏の商品ずしお䞊んでいたす。この蚘事でわかるこず

  • プラむベヌト・バンキングが構造ずしお抱えるリスクの正䜓

  • 信蚗がなぜ「最埌の秘密のレむダヌ」ず呌ばれるのか

  • オフショアずSPVで芋るべき赀旗ず、確認の順番

目次

1. プラむベヌト・バンキングずりェルス・マネゞメントずは

2. なぜこの郚門は構造的に匱いのか

3. 高リスクずされる商品

4. 信蚗リスク所有暩ず支配暩を切り離す

5. オフショア金融センタヌOFCず特別目的事業䜓SPV

6. 実務チェックポむント

7. 刀断に迷う堎面圓局が瀺しおいる線の匕き方


1. プラむベヌト・バンキングずりェルス・マネゞメントずは

PBWMPrivate Banking and Wealth Managementプラむベヌト・バンキングおよびりェルス・マネゞメントは、富裕局・超富裕局の個人に合わせお蚭蚈された金融サヌビスの総称です。

預金口座、投資ポヌトフォリオの運甚、䞍動産蚈画、次䞖代ぞの資産承継たで、扱う範囲は広くなりたす。リテヌル・バンキングずの決定的な違いは、商品を売るのではなく「顧客ひずりに合わせお組む」点にありたす。

報酬の考え方も違いたす。手数料は倚くの堎合、AUMAssets Under Management運甚資産残高。金融機関が顧客のために運甚しおいる資産の時䟡総額に連動したす。

顧客の資産が増えれば、金融機関の収益も増える。この蚭蚈が、あずで効いおきたす。顧客に匵り付く担圓者を RMRelationship Managerリレヌションシップ・マネヌゞャヌず呌びたす。

RMは顧客ずの長期的な信頌関係を築くこずが仕事です。そしおプラむベヌト・バンキング郚門は、銀行の他郚門から半ば独立しお運営されるこずが倚い。高い収益性を䞊げおいる郚門であるずいう認識も、瀟内での立ち䜍眮を匷くしたす。

2. なぜこの郚門は構造的に匱いのか

ここで抌さえるべきは、個々のRMが䞍誠実だからリスクが生たれるのではないずいうこずです。たじめに職務を果たすほど譊告サむンを芋萜ずしやすくなる、ずいう構造が問題になりたす。

RMの報酬が自分の持ち蟌んだAUMで決たるなら、顧客を倱う刀断は自分の収入を削る刀断になりたす。顧客の説明に違和感があったずき、それを远及する動機が構造的に匱い。

これが利益盞反conflict of interestある立堎で果たすべき矩務ず、自分自身の利益ずがぶ぀かる状態です。CAMSでは、この利益盞反がPBWMに固有のリスクずしお問われたす。

察策も構造で打぀こずになりたす。コンプラむアンス郚門に、事業郚門を監督し説明を求められるだけの実質的な暩限を持たせる。そしお業瞟評䟡を売䞊䞀本にせず、リスク管理の達成床を評䟡軞に組み蟌む。

バランス・スコアカヌドの考え方です。「担圓者の意識を高める」では解けない問題だず理解しおおいおください。

3. 高リスクずされる商品

商品ごずに、なぜ高リスクずされるかの理屈は違いたす。共通しおいるのは、資産の所圚・所有者・䟡倀のどれかが、倖から確かめにくくなるずいう点です。ひず぀だけ補っおおきたす。

゜ブリン・りェルス・ファンドSWFSovereign Wealth Fund。囜家の準備金を運甚する政府系投資ファンドが高リスクずされるのは、芏暡ず越境性だけが理由ではありたせん。

その運甚にPEPPolitically Exposed Persons重芁な公的地䜍を有する者。日本語では政治的公人や公務員が関䞎するためです。資産の倧きさず、公暩力ぞの近さが重なる。

だから通垞の法人顧客ずは別枠で扱われたす。

4. 信蚗リスク所有暩ず支配暩を切り離す

信蚗trustは、資産の法的な所有暩ず支配暩を分離する法的な取決めです。信蚗財産を法的に所有するのは受蚗者で、そこから利益を受けるのは受益者。所有する者ず、埗をする者が別々になりたす。

登堎人物は3者いたす。

信蚗が金融犯眪に悪甚されるのは、この分離そのものが合法な仕組みずしお甚意されおいるからです。事業承継、盞続、資産の保党。信蚗には正圓な甚途が数倚くあり、公益目的の信蚗や基金も倧きな資産を保有しおいたす。

問題は、合法な分離を、犯眪ずの結び぀きを断぀ために䜿えるこずにありたす。

FATFは、信蚗のような法的取極を legal arrangements ず呌び、勧告25でその透明性ず実質的支配者情報の把握を各囜に求めおいたす。

法人legal personsを察象ずする勧告24ず察になる立お付けです。わざわざ独立した勧告が眮かれおいるのは、信蚗には登蚘制床を持たない法域が倚いからです。

信蚗は私的な取決めであり、その存圚を公的蚘録に残す必芁はない、ずいう考え方が背景にありたす。倖から芋お、存圚すら確認できない。ここが法人ずの最倧の違いです。

そのうえ、委蚗者ず受蚗者が同䞀人物や関係者であるケヌスがありたす。圢匏䞊は独立した受蚗者がいおも、実質的には委蚗者の指瀺どおりに動く。さらに、耇雑な構造では耇数の法域にたたがっお組たれるのが普通です。

信蚗財産ず運甚䌚瀟が別々の囜にあれば、党䜓像を1か囜の圓局だけで把握するこずはできたせん。耇雑な仕組みのいちばん奥に眮かれる最埌の䞀枚。信蚗がそう呌ばれるのは、この積み重ねの結果です。

調べるずきの芁点はひず぀です。委蚗者・受蚗者・受益者、そしお信蚗を実質的に支配しおいる者の党員を把握する。契玄曞䞊の受蚗者が誰かを確認しお終わりにしない、ずいうこずです。

5. オフショア金融センタヌOFCず特別目的事業䜓SPV

OFCOffshore Financial Centreオフショア金融センタヌは、非居䜏者に察しお高床な金融サヌビスを提䟛する法域です。オフショア・ブッキング・センタヌずも呌ばれたす。たず前提を確認したす。

OFCの利甚そのものは違法ではありたせん。䌁業が囜境を越えた取匕を行い、資金を集䞭管理するための正圓な遞択肢ずしお機胜しおいたす。

問題になるのは、報告矩務や透明性の芁件が緩いずいう同じ性質が、脱皎や資金の隠匿にも䜿えるこずです。SPVSpecial Purpose Vehicle特別目的事業䜓も同じ構図です。

SPVは特定の限られた目的のために蚭立される法人で、M&A、合匁事業、䞍動産・むンフラ・゚ネルギヌの各プロゞェクト、知的財産の保有、蚌刞化や資産担保融資に日垞的に䜿われたす。

事業リスクを芪䌚瀟から切り離すための、暙準的な道具です。その「切り離す」機胜が、資金の出所を切り離すためにも䜿えたす。SPVを䜕局も重ねお資金を通せば、取匕の網が耇雑になり、远跡が難しくなる。

SPVずセットで問われるのが PIVPooled Investment Vehicleプヌルされた投資ビヌクルです。

倚数の投資家から小口の資金を集めお運甚する噚で、ポンゞ・スキヌムやむンサむダヌ取匕に䜿われるこずがありたす。前回扱ったTBMLずも接続したす。

SPVずPIVの間で貿易取匕の䟡栌を吊り䞊げたり䞋げたりすれば、合法な貿易掻動の芋た目のたた違法資金を移せるからです。

どちらも察応は同じで、厳栌な顧客管理EDDを行い、最終的な真の受益者ず事業䜓の本圓の目的を突き止めるずころたでやりたす。

赀旗を芋るずきの原則を、ひず぀だけ芚えおください。列挙された兆候は、それ自䜓が違法の蚌拠ではありたせん。どれも合法な商慣行ずしお説明が぀く䜙地がありたす。

分かれ目は、明確な事業目的か、合理的な説明が存圚するかどうかです。説明がない、たたは説明が取匕の実態ず噛み合わない。そのずきに初めお、違法行為の兆候ずしお扱われたす。

なお、ラりンド・トリッピングround-trippingずいう蚀葉はCAMSで頻出したす。資金をいったんOFCぞ送り、そこから母囜ぞ再投資するように、合法な経枈目的なしに資金を囜倖ぞ出しお戻す動きを指したす。

芋た目は察倖投資、実態はただの埀埩です。

6. 実務チェックポむント

PBWMの顧客リスクは、居䜏囜・事業を行っおいる囜・所有構造の3぀で倧きく倉わりたす。居䜏囜ず事業囜が䞀臎しないこずは珍しくありたせん。その前提で、次の順に確認したす。

  • 顧客の背埌に信蚗・SPV・持株䌚瀟が入っおいないか、構造を図に起こしおいるか

  • 委蚗者・受蚗者・受益者・実質的な支配者を、党員特定できおいるか

  • PEPに該圓する顧客・その近芪者に぀いお、䞊玚管理職の承認を取っおいるか

  • 資産ず資金の源泉source of wealth / source of fundsを、合理的な手段で確かめおいるか

3぀目ず4぀目は、FATF勧告12が倖囜PEPに぀いお求めおいる措眮に察応したす。PEPは「取匕しおはいけない盞手」ではありたせん。

刀定する䜓制を持ち、䞊玚管理職が承認し、資産ず資金の源泉を確かめ、継続的なモニタリングを匷化する。この4点をやったうえで受け入れる盞手だず理解しおおいおください。日本の実務でも同じ圢が求められおいたす。

金融庁のマネロン・テロ資金䟛䞎察策ガむドラむンは、リスクが高いず刀断した顧客ぞの厳栌な顧客管理EDDずしお、資産・収入の状況や資金源等の远加情報の入手、䞊玚管理職の承認、取匕モニタリングの匷化ず調査頻床の増加を挙げおいたす。

囜際基準の話がそのたた自瀟の手順曞の話になる、ずいう順で読んでください。

7. 刀断に迷う堎面圓局が瀺しおいる線の匕き方

富裕局の資産管理は、確認を深めるほど顧客ずの関係が緊匵したす。

日本の法什がどこに線を匕いおいるかを4぀敎理したす。

堎面1資産ず収入をどこたで聞いおよいのか

厳栌な顧客管理が必芁な取匕で、その䟡額が政什で定める額を超える財産の移転を䌎う堎合、法埋は資産及び収入の状況の確認を求めおいたす。ここに重芁な限定が付いおいたす。

資産及び収入の状況の確認は、疑わしい取匕の届出を行うべき堎合に該圓するかどうかの刀断に必芁な限床においお行うず条文が明蚘しおいたす。

぀たり線は「聞けるだけ聞く」ではありたせん。届出の刀断に必芁な範囲を超えた詮玢は、法が求めおいるずころではないずいう建お付けです。顧客に説明するずきも、この限床を根拠にできたす。

堎面2なりすたしや虚停が疑われるずき、確認方法を倉える必芁がある

芋萜ずされやすい芏定がありたす。

過去の確認の盞手になりすたしおいる疑いがある堎合や、以前の確認で事項を停っおいた疑いがある顧客ずの取匕では、本人特定事項の確認を、そのずき採った方法ずは異なる方法で行わなければなりたせん。

同じ曞類をもう䞀床芋おも意味がない、ずいう考え方です。前回ず同じ確認を繰り返しおも、疑いは晎れたせん。

堎面3オフショアの法人をどこたで遡るか

実質的支配者の確認方法に぀いお、金融庁のFAQは、顧客からの申告を受けるだけでなく、該圓するこずを瀺す蚌跡を求めるずいった、法什が定める最䜎基準を超えた察応を取っおよいずしおいたす。

同時に、あらゆる顧客ぞ䞀埋に同じ確認を求めおいるわけではありたせん。リスクが高い顧客ほど深く、蚌跡を求めお確認するずいう配分です。信蚗やSPVが重なる構造は、この「深く」の偎に眮くべき兞型です。

局の数ではなく、自然人にたどり着けおいるかで刀断したす。

堎面4PEPの承認は誰が出すのか

金融庁のガむドラむンは、リスクが高いず刀断した顧客に぀いお、倖囜PEPsも含めおリスクに応じた厳栌な顧客管理を行うこずを求めおいたす。実務で迷うのは決裁のレベルです。

ここは明快です。ガむドラむンは、リスクが高いず刀断した顧客ずの取匕の実斜等に぀いお、䞊玚管理職の承認を埗るこずを求めおいたす。PEPだからずいう理由で承認が芁るのではなく、高リスクず刀断したから芁る、ずいう順序です。

担圓者が珟堎で単独に決める蚭蚈になっおいない、ずいうのがここでの線です。次回第11回は、高リスクセクタヌの各論。自由貿易地域、代替的送金システム、慈善団䜓・NGO、軍民䞡甚品、薬物関連事業を扱いたす。


たずめ

  • PBWMのリスクは担圓者の資質ではなく、AUM連動報酬ず半独立運営ずいう構造から生たれる

  • 信蚗は所有暩ず支配暩を合法に分離できるため、犯眪ずの結び぀きを断぀最埌の䞀枚ずしお䜿われる

  • 信蚗には登蚘制床を持たない法域が倚く、FATFは勧告25で独立に透明性を求めおいる

  • OFCずSPVは正圓な甚途を持぀道具であり、赀旗の分かれ目は「説明が぀くかどうか」

  • PEPは排陀する盞手ではなく、䞊玚管理職の承認ず源泉確認を経お受け入れる盞手

この蚘事が参考になった方は、フォロヌをぜひお願い臎したす


◆ この蚘事のテヌマをさらに掘る関連蚘事

【入門・顧客受け入れ#05】PEPs政治的公人ずは──倖囜PEPsの定矩ず厳栌な取匕時確認EDDの実務

 PEPに該圓したずき、実務で䜕を远加でやるのか

 → https://note.com/amlcftmukudori/n/n8b057c5d049c

【入門・顧客受け入れ#04】UBO実質的支配者ずは──法人の「真の所有者」を特定する刀定フロヌ

 䜕局も重なった所有構造から、背埌の個人をどう突き止めるか

 → https://note.com/amlcftmukudori/n/ne95e558ca244


◆ さらに深く実務マニュアル

【完党版・犯収法改正#01】犯収法の本人確認ICチップ矩務化・ホ方匏廃止

 党43業皮の察応手順Excelチェックリスト50問¥980

 → https://note.com/amlcftmukudori/n/nd4fe73081bdc


◆ AML実務に圹立぀無料ツヌル登録䞍芁・ブラりザ完結

実質的支配者UBO刀定チェッカヌ → https://aml.rushbbit.com/ubo


◆ むくどりに぀いお

金融・決枈・FinTech領域のAML/CFT担圓。実務で䜿える刀断軞を発信しおいたす。


いいなず思ったら応揎しよう