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第3話:営業の天才と、無敵の全能感〜アポなし訪問の極意〜

この物語を初めて読む方は、ぜひ第1話からお読みください。 【第1話:3度地獄を見た男の「再生」〜借金900万の果てに掴んだ副業月収50万の光〜】 https://note.com/yowapeni/n/nf396bdafdbb8

「キリンビールを2年で辞め、俺は完全歩合の営業職に飛び込んだ」

結婚、そして出産。守るべき家族ができた俺に、固定給の手取り25万という「安定」は、あまりにも物足りなかった。一度、打ち子時代に月120万の味を知ってしまった脳は、もっとヒリつくような稼ぎを求めていたのだ。

舞台は、回線バブル全盛期。 NTTのフレッツ光が主流だった時代に、俺は「au光」への切り替えを提案する個宅訪問営業を始めた。

手法は、管理会社の許可なし、アポなしの「不法侵入」ギリギリの戦いだ。 オートロックのマンションを見つければ、裏技のコマンドを打ち込んで解錠し、2階から順に侵入する。目的は、各部屋の電気メーターの回り具合を見て「在宅」を確認するためだ。

在宅している部屋をチェックリストに書き込み、一度外へ出る。そして、オートロック前のインターホンから、狙い澄ました一撃を叩き込む。

一方、オートロックのない物件は、俺たちの業界で「タタキ物件」と呼ばれる。 ここでは直接玄関前まで行き、電気メーターが回っている部屋だけを叩く。ふと表札を見ると、そこには先人たちの「暗号」が刻まれている。

「S(単身)」「F(ファミリー)」「M(男)」「W(女)」……そして「✕(獲得不可)」。 その暗号を読み解きながら、俺は効率的に獲物を仕留めていった。

管理人に見つかって呼び出され、こっぴどく説教されることもある。だが、俺は反省しているフリをして、手元のノートに「チ〇コマ〇コチ〇コマ〇コ……」とひたすら書き殴っていた。

これくらいの不敵さがなければ、アポなし営業なんてやっていられない。

営業会社特有の、大声で気合を入れる朝礼や、達成不可能な目標を立てるだけのミーティングを、俺は冷めた目で見ていた。
 「そんなことで数字が上がるなら、世の中全員トップセールスだよ」と…

ダメなグループが傷を舐め合っている間、俺は売れている奴の背中を追い、その言い回しを自分流にアレンジした。俺のスタイルは「数打ちゃ当たる」ではない。100人会って1人取るのではなく、「5人会って5人取る」

「旦那がいないと決められない」という逃げの口実を、「財布を握っているのは奥さんですよね?」と笑顔で切り崩し、その場で即決をもぎ取る。 人あたりの良さと、相手の心に踏み込む度胸。 気づけば俺は、入社3ヶ月で営業統括部長、実質No.2の座に君臨していた。

手取りは、毎月90万前後。 かつての打ち子時代や借金生活で金銭感覚が狂っていた俺にとって、その金額に驚きはなかった。
むしろ、「会社が潰れても、俺なら何でも稼げる」という、根拠のない全能感だけが肥大化していった。
札束を数える指先が、完全に麻痺していた。この世のすべてが自分の思い通りになる。そんな、神にでもなったかのような錯覚。それが破滅への入り口だった…

頭の回転の速さ、行動力、そして金。 すべてを手に入れたと思っていた。 だが、その「無敵の感覚」こそが、地獄の蓋を再びこじ開ける鍵になるとは、当時の俺はまだ知る由もなかった…。

仕事は順調。家族も幸せ。でも、心のどこかに、あのヒリつくような『毒』を求める自分がいた。平和すぎる日常が、逆に俺を追い詰めていたのかもしれない…


次回予告:第4話「営業車、平和島競艇、そして一口だけのつもりだった」

順風満帆なエリート生活。
しかし、営業車を走らせる俺の目に飛び込んできたのは、競艇場の青い水面だった。 
「完済した俺ならもう大丈夫。一口だけなら……」 その慢心が、再び地獄の蓋をこじ開ける。二度目の転落は、一度目よりも速く、そして深かった。

【最後まで読んでいただきありがとうございます!】 
この物語は、私の実体験に基づく「再生の記録」であり全て実話です。 もし少しでも「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、【スキ(左下のハートマーク)】【フォロー】をお願いします! あなたの応援が、この壮絶な物語を書き切る力になります。

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