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なぜ取引所はステーブルコインを選ぶのか ─ 各社の収益構造を徹底比較

前回は、暗号資産取引所によって利用者層や得意分野が大きく異なることを見てきた。その違いを生み出しているのが、それぞれの「収益構造」である。

少し前まで、暗号資産取引所の主な収益源は売買手数料だったが、現在は大きく変化している。

サブスクリプション、レンディング(暗号資産の貸し出し)、ステーキング(保有する暗号資産による報酬獲得)、決済、カストディ(暗号資産の保管・管理)、プライム・ブローカレッジ(機関投資家向け総合金融サービス)。

現在の暗号資産取引所は、こうした多様な金融サービスを展開することで、それぞれ異なる収益構造を築いている。

だからこそ、「どのステーブルコインを採用するか」という判断も、単なる新規銘柄の追加ではなく、自社の収益構造そのものと密接に結び付いているのである。

それでは、各暗号資産取引所の特徴を見ていこう。

※前回掲載したグラフを再掲

◆Binance
Binance最大の強みは、圧倒的な流動性である。2025年通期では市場シェアが40%前後に達し、10%未満の2位以下を大きく突き放している。世界中の投資家が集まり、多種多様な暗号資産が活発に取引されている。

ステーブルコインの取引量を見ると、USDTが圧倒的な存在感を示している。しかし、それはBinanceが特定のステーブルコインを優遇しているというよりも、市場参加者の需要を反映した結果という側面が強い。そのため、新たなステーブルコインを採用する際は、十分な流動性や利用需要が見込めるかが重要な判断材料になる。

もっとも、Binanceには気になる点もある。

過去には、Binanceブランドのステーブルコイン「BUSD」を巡り、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が発行会社であるPaxosに対し、新規発行の停止を命じたことがある。

Binanceは、マネーロンダリング対策(AML)や制裁遵守などに課題があるとされており、NYDFSは、発行会社であるPaxosが提携先を十分に監督・管理できていないと判断したのである。

その後、Binanceは米国当局との一連の問題を受け、約43億ドルの和解金を支払ったほか、創業者がCEOを辞任し、AML(マネーロンダリング対策)の不備に関する責任を認めて服役するなど、大きな転換点を迎えた。

もちろん、これらの出来事と現在のBinanceを単純に結び付けることはできない。現在はコンプライアンス体制の強化が進められており、状況も大きく変わっている。

しかし、銀行が発行するSoFiUSDという視点で考えると、「どの取引所へ上場するか」は、流動性だけで決まる話ではない。SoFi自身も、規制対応・コンプライアンス・ブランドへの影響などを総合的に判断しながら、提携先を選ぶ必要がある。

つまり、「取引所がSoFiUSDを選ぶ」だけではなく、「SoFiもまた、提携先となる取引所を選ぶ」という視点も持っておく必要がある。

◆Bybit
Bybitも世界有数の暗号資産取引所であり、デリバティブ取引を中心に急成長してきた。現在は現物取引やWeb3分野にも事業を広げているが、その強みは、依然として個人のアクティブトレーダー向けサービスにある。

そのため、銀行発行ステーブルコインとの親和性という視点では、やや距離がある。もちろん、将来的に決済や金融サービスへ軸足を広げれば評価は変わる可能性もある。しかし、SoFiUSDが今後広げていく市場とは、現時点ではやや方向性が異なる。

◆OKX
OKXは世界有数の暗号資産取引所であり、現物取引だけではなく、デリバティブやWeb3分野にも積極的に事業を広げている。特にアジアや中東、欧州などグローバル市場では高い存在感を持ち、DeFiやWeb3ウォレットなどのサービスも積極的に展開している。

今後、SoFiUSDが米国外へ本格展開するのであれば、OKXのようなグローバル取引所も有力な候補になり得る。ただし、現時点のSoFiは米国市場を中心に事業を拡大している。そう考えると、今すぐというよりは、中長期的な選択肢ではないだろうか。

◆Coinbase
Coinbaseの収益は、かつては売買手数料への依存度が高かった。しかし近年は、サブスクリプション・機関投資家向けサービス・カストディ・ステーキングなど、安定収益の割合が年々高まっている。

その中でも大きな存在となっているのが、USDC関連収益である。USDCは単なる取扱銘柄ではない。利用が増えるほど、Coinbase自身にも利益が生まれる重要な収益基盤なのである。

もちろん、だからといって競合となり得るSoFiUSDが上場しないとは言えない。Coinbaseは米国最大級の暗号資産取引所でもある。需要があり、市場全体の利益につながるのであれば、新たなステーブルコインを採用する可能性は十分ある。

しかし少なくとも現時点では、CoinbaseにとってSoFiUSDの優先順位は高くないだろう。自社の重要な収益基盤と競合するステーブルコインを、積極的に普及させるインセンティブはそれほど大きくない。

<次回>
次回は、今回取り上げられなかった他の暗号資産取引所とともに、「では、SoFiUSDは実際にどの取引所へ上場する可能性が高いのか」という視点から、現時点での考えを整理してみたい。

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