なぜSoFiの株価は伸び悩むのか──「ROTCE 20~30%」に見る市場評価を変える道筋(前編)
SoFiは売上・利益ともに高い成長を続けている。それにもかかわらず、なぜ株価は業績ほど素直に評価されないのか。
その理由の一つとして考えられるのが、SoFiを「高成長の金融サービス企業」ではなく、「資本集約型の銀行」と見る市場の評価である。
そんな市場の見方を変える可能性を示したのが、SoFiが2026年第2四半期決算で公開した、長期目標を示すスライドである。
日本語に訳せば、「ROTCE 20~30%を実現するまでの道筋」といった意味合いである。

後ほど解説するが、「ROTCE(有形自己資本利益率)」という言葉自体、馴染みが薄い。
しかし、このスライドは今回の決算資料の中でも重要である。なぜなら、単なる利益率目標ではなく、SoFiが長期的にどのような企業へ変わろうとしているのかが凝縮されているからである。
銀行は、リスク資産に応じて一定水準以上の自己資本を維持することが規制上求められる。そのため、融資残高を増やし続ければ、それを支える自己資本も必要になる。
SoFiが今後も融資を中心に高い成長を続けた場合、「いずれ増資が必要になる」という懸念が出てくる。そして、増資に頼る成長を続ければ株式の希薄化につながり、会社の売上や利益が増えても、株価は思うように伸びない。
では、SoFiはこの資本面の制約をどう乗り越えていくのか。
重要になるのが、融資を成長させながら、それ以上に手数料ビジネスなどの資本負担の軽い事業を拡大し、より多くの売上と利益を生み出すことである。こうした事業で生み出した利益を内部留保すれば、増資に頼ることなく、融資に必要な自己資本を積み上げていくことができる。
※SoFiの手数料収益(Fee-Based Revenue)は毎年伸び続けている。

つまり、今ある自己資本をより効率的に使いながら、売上と利益を拡大していく。そして、利益率と資本効率の双方を高めることで、最終的に目指すのが「ROTCE 20~30%」という水準である。
【そもそもROTCEとは何か】
ROTCE(Return on Tangible Common Equity)は、「有形自己資本利益率」などと訳される。
よく使われるROE(Return on Equity)は自己資本利益率だが、ROTCEでは自己資本からのれんなどの無形資産を除外した「有形自己資本」を分母として利益率を計算する。
銀行や金融機関では、ROTCE(有形自己資本利益率)は資本効率を測る指標として使われる。
【「25% × 1倍 = 25%」が意味するもの】
SoFiはROTCE(有形自己資本利益率)を次の2つに分解して説明している。

❶「Net Income Margin=純利益率」(純利益÷売上)
❷「Revenue to Equity Ratio=有形自己資本売上倍率」(売上÷有形自己資本)
そして、二つの式にある「売上」を相殺すれば、
・純利益÷有形自己資本=ROTCE(有形自己資本利益率)になる。
SoFiがスライドで示した例は、
・純利益率25%×有形自己資本売上倍率1倍=有形自己資本利益率25%
である。
これをもっと簡単に表現すると、
❶100ドルの売上から25ドルの利益を残す
❷100ドルの有形自己資本から100ドルの売上を作る
この2つを同時に実現できれば、
・100ドルの有形自己資本から25ドルの利益が生まれる
したがって、有形自己資本利益率は25%になる。
この計算式では「純利益率」だけではなく、「1ドルの有形自己資本から生み出せる売上」も重要な要素である。
売上と同じペースで自己資本を増やし続けるのであれば、いくら売上が成長しても資本効率は高まらない。株価も伸びづらい。
重要なのは、売上を自己資本の増加を上回るペースで成長させることである。
【純利益率25%は本当に可能なのか】
SoFiの2026年第2四半期の純利益率は13.3%である。これが本当に25%まで上がるのか。

そこで注目したいのが、増分純利益率である。増分純利益率とは、「新たに増えた売上のうち、どれだけが新たな利益として残ったのか」を見る指標である。
例えば、売上100億円、利益10億円だった会社が、翌年に売上120億円、利益16億円になった場合、増えた売上と利益はそれぞれ20億円と6億円である。
したがって「増分純利益率は、6億円÷20億円=30%」となる。会社全体の利益率は「16億円÷120億円=13.3%」にすぎないものの、増えた20億円の売上に対する利益率、すなわち増分純利益率は30%となる。
SoFiの増分純利益率を前年比ベースで計算すると、直近4四半期は、2025Q3 30.2%、2025Q4 41.1%、2026Q1 30.2%、2026Q2 18.2%と、単純平均すると約30%となる。

売上が大きく成長する中で、直近4四半期の増分純利益率は平均約30%となっている。これは非常に重要な意味を持つ。
現在のSoFiはまだ成長途上にあり、将来の成長に向けた先行投資も続けている。そのため、会社全体の利益率は13%程度にとどまっている。
しかし、売上を伸ばしながら30%前後の増分純利益率を生み続けることができれば、利益率の高い売上が全体に占める割合は徐々に大きくなる。その結果、会社全体の利益率も押し上げられていく。
こうした実績を基に、SoFiは長期的な純利益率25%への道筋を示している。
【もう一つの「1倍」も重要】
❷の「Revenue to Equity Ratio 1倍」(有形自己資本売上倍率1倍)も重要である。

Revenue to Equity Ratio(有形自己資本売上倍率)は「売上÷有形自己資本」で計算される。これを2026年第2四半期の数値から概算すると、0.52倍となる。

SoFiが長期イメージとして示している1倍に対して、現在はまだ0.52倍にとどまる。
約94億ドルもの有形自己資本を持ちながら、年率換算の売上は約48億ドルと、現状の資本効率は決して高くない。しかし、裏を返せば、ここには大きな伸びしろが残されている。
では、SoFiは有形自己資本売上倍率を現在の0.52倍から、長期イメージとして示す1倍へどのように引き上げていくのか。
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