SoFiの株価評価はどう変わるのか──「ローン50%、非ローン50%」がもたらす構造変化(後編)
前編では、SoFiが2026年第2四半期決算で示した「ROTCE(有形自己資本利益率)20~30%」という長期目標の意味を詳しく見てきた。
銀行は融資を増やすほど、それを支える自己資本も必要になる。そのため、SoFiが融資を中心に成長し続けるのであれば、いずれ追加の資本調達が必要となり、株式希薄化への懸念もつきまとう。
SoFiが「資本集約型の銀行」という評価から抜け出すためには、単に売上や利益を増やすだけでは足りない。今ある自己資本から、どれだけ多くの売上と利益を生み出せるかが重要になる。
そこでSoFiが示したのが、「純利益率25% × 有形自己資本売上倍率1倍 = ROTCE 25%」という長期イメージである。

前編では、「純利益率25%」について、SoFiの増分純利益率が直近4四半期で平均約30%に達していることを確認した。今後も売上を伸ばしながら高い増分純利益率を維持できれば、純利益率が現在の13%程度から25%へ近づいていく道筋は見えてくる。
一方、もう一つの「有形自己資本売上倍率」は、2026年第2四半期時点で0.52倍にとどまる。では、SoFiはどのようにして0.52倍を1倍へ近づけていくのか。
【なぜSoFiの資本効率は現在低いのか】
ノトCEOは現在の「有形自己資本売上倍率」が1倍未満の理由の一つとして、「多すぎる自己資本を持っている」という趣旨の発言をしている。
事実、SoFiの各種規制資本比率は、規制上の最低水準に一定の余裕を加えた水準をさらに大きく上回っている。

有形自己資本も主に増資によって、わずか1年間で約42億ドル増加している。そのため、有形自己資本売上倍率は大きく低下した。

しかし、売上の成長が止まったわけではない。むしろ、将来の成長に先回りして資本を積み上げた状態と見ることができる。
ノトCEOは、現在は十分な資本余力があり、追加の資本調達を行わなくても、融資事業を今後数年間、年率20%程度で成長させられるだけの資本をすでに確保していると説明している。
もちろん、これは「数年後には再び増資が必要」という意味ではない。その理由を理解するうえで、今回のスライド右側に書かれた文章が重要になってくる。

SoFiは❷において、「資本負担の軽い手数料ビジネスを増やすことで、自己資本を売上と同じ割合で増加させることなく、売上を成長させる」と説明している。
つまり、自己資本の増加を上回るペースで売上を成長させ、会社全体の資本効率を高めていくということである。
【手数料収入は約40%にまで拡大】
SoFiの手数料収入は順調に拡大し、売上の約40%を占めるまでになっている。

これは、事業構成が「融資中心」から大きく変わり始めていることを示す。
実際に、金融サービス事業、技術プラットフォーム事業、LPB(ローンプラットフォームビジネス)、Big Business Banking、暗号資産関連サービス、そしてSoFiUSDなど、バランスシート上の融資残高を増やさなくても、収益を拡大できる事業が増えている。
SoFiも今回のスライド❷において、現在約40%である手数料収入の割合を、50%以上へ引き上げていく方針を示している。
これは単なる収益源の多様化ではない。会社全体の資本効率を高めるための事業構造の変化なのである。
【「ローン50%、非ローン50%」が意味すること】
ノトCEOは長期的な事業構成について、「ローン50%、非ローン50%」になっていくとの考えも示している。
ローンも成長する。しかし、非ローンはそれ以上に成長する。その結果として、ローン50%、非ローン50%へ近づいていくということである。

この事業構成の変化こそが、SoFi全体の資本効率を高めることにつながる。
金融サービス事業や技術プラットフォーム事業、SoFiUSDなどは、融資事業と比べて、より少ない資本負担で収益を拡大できる。非ローン事業の比重が高まるほど、SoFiは売上を成長させながら、1ドルの有形自己資本からより多くの売上を生み出せる会社へと変わっていく。
これが「capital-light(資本負担の軽い)」事業を拡大する意味である。
【13.3% × 0.52倍から、25% × 1倍へ】
2026年第2四半期現在、
・純利益率13.3%×有形自己資本売上倍率0.52倍≒有形自己資本利益率約7%
これに対してSoFiがスライドで示した長期イメージは、
・純利益率25%×有形自己資本売上倍率1倍=有形自己資本利益率25%
つまり、ROTCEを現在の一桁台から25%へ持っていくためには、二つのエンジンが必要になる。
「純利益率の上昇」と「資本効率の上昇」、この二つが同時に進むことで、ROTCE(有形自己資本利益率)が大きく跳ね上がる。
前者については、すでに増分純利益率約30%の実績がある。

後者についても、現在積み上がっている余剰資本を活用して融資を成長させながら、capital-lightな事業(資本負担の軽い事業)の拡大が続いている。
この二つが掛け合わさった先に、有形自己資本利益率20~30%がある。
【ROTCE(有形自己資本利益率)25%になれば、株価評価はどう変わるのか】
ノトCEOはこの話をする際、American Expressを例に挙げ、「American Expressは30%を超える高い有形自己資本利益率を実現しており、有形自己資本に対して非常に高い倍率で評価されている」と言う。
ノトCEOは、「SoFiが純利益率25%、有形自己資本売上倍率1倍以上を実現して、有形自己資本利益率が20~30%となれば、現在の有形自己資本2倍程度ではなく、5倍以上で評価されるべきだ」という趣旨の発言をしている。
※SoFiは1株あたり有形自己資本の約2.5倍で取引されている(参考:SoFi株8月17日終値18.31ドル÷1株あたり有形自己資本7.34ドル=2.49倍)。
株価が今から数倍に上昇するという話がしたいわけではない。
重要なのは、高い有形自己資本利益率を持続的に実現できる企業は、利益率の低い銀行株という評価から離れていくということである。
【「SoFi=銀行」という評価を超えられるか】
SoFiを「資本集約型の銀行株」として見るのであれば、高成長を続けるほど追加資本が必要になり、株式希薄化の懸念も消えない。
しかし、SoFiが目指している姿はそこではない。
長期的に事業構成を、「ローン50%、非ローン50%」へ近づける。
手数料収入の割合を現在の約40%から50%以上へ引き上げる。
その結果、売上の成長率 > 自己資本の成長率という状態を作る。
そうなれば有形自己資本売上倍率は上昇する。
さらに、増分純利益率約30%を維持しながら規模を拡大できれば、純利益率も現在の13%程度から25%へと近づいていく。
そして、高い利益率 × 高い資本効率によってROTCE(有形自己資本利益率)20~30%を実現する。
SoFiが目指している方向は明確である。
融資を増やして利益を伸ばすだけではない。今ある資本をより効率的に使いながら、資本負担の軽い収益を拡大し、1ドルの有形自己資本から生み出す売上と利益そのものを大きくしていく。
その先にあるのが、ROTCE 20~30%という世界である。
そこへ到達したとき、SoFiは高い成長率、高い利益率、高い資本効率を同時に持つ金融プラットフォーム企業となる。そして、市場がSoFiに与える評価も、現在とは大きく違ったものになるだろう。
SoFiが示した「ROTCE 20~30%」は、単なる遠い将来の目標ではない。SoFiが今後どのように変わっていくのかを測る、一つのロードマップなのである。
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