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月のアボカド《 2 》

《》《 2 》《》《》《》《》《 7 》
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突然始たった悪阻぀わりの圱響でスむがアボカド以倖のものを受け付けなくなったので、キッチンカりンタヌの籠の䞭には、黒の緑のアボカドが、ごろごろず垞備されるようになった。

「どれくらい食べられそう」

倕方になっお郚屋から出おきたスむに、むズミがキッチンから声を掛ける。スむはダむニングを通り過ぎお゜ファヌに腰を䞋ろし、そのたた静かに暪たわった。
血の気が匕いお黄土色になった脹脛ふくらはぎを重ねお、䜓を䞞く瞮こめる。

「はんぶん」
「これっお䜕もかけなくおいいの」
「うん、そのたた食べる」

倕食の支床を䞭断しお、むズミは皮の黒いアボカドをひず぀手に取った。
ナむフを果実に入れおぐるりず回し、半分に割ったアボカドをたな板の䞊に仰向けに䞊べる。果実の皮の぀いたものずそうでないもの。むズミの手が䞀瞬止たる。同じ圢。同じ果肉。同じ、皮のためのう぀ろ。アボカドの、片割れの皮を剥いお瞊長に薄く切り、むズミは皿に盛っおフォヌクを添える。

「ハシゞマさんから手玙来おるよ」

切ったアボカドず゚アメヌルを゜ファヌ前のテヌブルに眮くず、スむはゆっくりず起き䞊がっお封筒に手を䌞ばした。
氎分を倱った長い髪が、痩けた肩にだらりず垂れる。
文面を読み、䟿せんを開いたたた眮き、アボカドには手を぀けずにスむは゜ファヌに深くもたれこむ。

「ハシゞマさん、予定通り、九月には垰囜できそうだっお」
「よかったね。垰っおきたらすぐ籍入れるんでしょ」
「うん」
「ハシゞマスむ」
「倉なの」
「そうでもないよ」

キッチンに戻り、たな板に぀いたアボカドを氎で流し、むズミはミョりガを现く切り出しおゆく。
切り口から次々に、土に埋たった石鹞みたいな匂いが立぀。しゃき、しゃき、ず短く攟たれた音はすぐに匂いに姿を倉えお、ミョりガの瞁から溢れ広がる。

「さっきね、スむが寝おるずきにお母さんから電話あったよ」
「なんお」
「くれぐれも安静にしおなさいっお。あず、向こうは、もう梅雚に入ったっお」
「ぞえ」
「あず、お父さんが暎走しお雛人圢を予玄したっお」
「は ただ性別もわかんないのに䜕やっおんの」

銬鹿にしたような口調で蚀い、けれどすぐに脱力しお口元を匛たせ、次の瞬間スむの手のひらは腹の䞊にあおがわれる。
悪阻で痩せおくたびれた䜓から原始的な匂いのするあたたかみが立ちのがり、ミョりガを切っおいたむズミが黒目だけを静かに持ち䞊げる。

ぶしゅうず䜎い音を立おお、炊飯噚から熱い米の蒞気が吐き出された。

スむがふずむズミに向き盎る。
生きた匂いの濃く立ち籠めるキッチンで、あたたかみに和らいだリビングで、瞬きもせず、二人は真顔で芋぀め合う。

◇

䞀暹の手は、䜓枩が高くお也いおいる。
むズミの手よりも分厚くお固くお、指の付け根にはハヌトの圢のほくろがある。

十時過ぎに家に垰っおくる䞀暹の、い぀も始めに手に觊れお、思い切り匕っ匵っおぶら䞋がっお、それから膝に座っお食卓に぀く。
むサキの刺身。オクラのお浞し。ミョりガずネギの冷奎。
䞀人分の倕食の向こうに、グラスを手にしたむズミが腰掛けた。

现く開いた窓から倜颚が入る。カヌテンの裟だけがほんの僅かに、膚らんだり瞮んだりを繰り返す。倜の颚は、怍物の茎の湿ったような匂いがする。

「スむがきおから、䌌たような食事ばっかりでごめんね。あの子油の匂いが駄目みたいで」 

瞁たで氷をたっぷり入れた、切り子のロックグラスに焌酎の瓶を傟けおむズミが蚀う。泚がれた焌酎の熱に觊れお、ぱきぱきず氷が匟ける。

「晩飯の刺身率が䞊がっお、俺は嬉しいけどね」
「でもずんか぀ずか、おんぷらずか、食べたくならない」
「たたにね。でもそういう日は昌に食べおるよ」
「そう」
「むズミも、食いたいずきは我慢しないで倖に食いに出ちゃえばいいんだよ。スむちゃんに断っおさ」
「そうだけど」

青く切れ蟌みの入ったグラスの䞭で、氷の隙間を瞫っお液䜓が揺るぐ。

「やっぱりさ、家の䞭に人が䞀人増えるず違うよね」
「そりゃ話し盞手がいるず楜しいだろヌ、姉効だし気兌ねないし」
「話し盞手っおいうか、うん、たぁね」

むズミはグラスに口を぀けたたた小さく頷いお、せり䞊がるものを抌し蟌めるみたいに、ゆっくりず焌酎を飲み蟌んだ。

嵩の枛ったグラスをテヌブル戻し、衚情を解ほぐしお䞀暹に向く。子䟛をあやすような顔を䜜ったむズミの、けれど銖や鎖骚のあたりはほんの少し匷ばっおいる。
解れたふりをしお、籠らせおいる。
籠らせおいるこずを䞀暹は知らない。
泣いたり、しょんがりしおいたり、むズミの悲しい顔はそういう顔なのだず、たぶん䞀暹は決め蟌んでいる。

食事を終えお䞀暹が颚呂に立ったのを芋送っお、むズミは䞀人食卓に残った。結露のだらしなく垂れる切り子グラスに、もう䞀床焌酎を泚ぎ入れる。豆みたいに小さくなった氷が、きゅうきゅう音を立おながら、枩ぬるい焌酎に茪郭を奪われおゆく。

泚いだ酒を、けれどむズミは飲たなかった。
颚向きが倉わり、カヌテンが呌吞を完党に止める。济宀からはシャワヌの音ず䞀緒に、䞀暹の錻唄が聞こえおくる。

いいなず思ったら応揎しよう