精神科の薬って、怖そうですか? 当事者の私から、あなたへ。
精神科の薬って、どんなイメージですか。
「精神科の薬を飲んだら、頭がおかしくなるんじゃないか」
「薬漬けになって、やめられなくなるって聞いたけど……」
なんだか、そんなイメージもあるみたいです。
私も、精神科にかかる前は、「頭が悪くなったらどうしよう」と思っていました。
「自分の意思がなくなるんじゃないか」「副作用でおかしくなってしまうんじゃないか」「やめられなくなるんじゃないか」。
そういう、多くの人が思うであろう心配はありつつ、けれど一番気になっていたのは人格の変化や依存は耐えられても、頭が悪くなるのは耐えられないと思っていたんです。
そんなわけで、今日は「お薬」について少し話してみますね。
とはいえ、私は医療関係者ではありません。なるべく間違いがないように書きますが、正確な医学情報をお求めの方は医療機関のホームページなどを探してみてください。あくまでうつ病や適応障害、双極性障害の診断を受け、長年服薬してきた一人の当事者としての個人的な経験をお伝えします。
私が最初に精神科のお薬を飲んだのは、もう10年近くも前でしょうか。
抑うつ症の診断を受けて、休職したんですよね。
それで、睡眠を改善するお薬や、抗うつ薬を飲んでいました。
残念なことに当時のおくすり手帳は紛失してしまいましたが、最終的に、サインバルタ(一般名:デュロキセチン)という抗うつ薬を飲んでいたのは覚えています。
このお薬は、本来うつ病の患者さんに出るものですが、私は実は双極性障害だったので、躁転してしまって。躁転というのは雑に説明すると、急に、病的に明るくなることです。それでもう薬いらないやとなって、なんだか色々とやらかしてしまいました。
数年後に双極性障害の診断がつくまで、ついてからも、色々なお薬を飲んできました。
トリンテリックス、スルピリド、炭酸リチウム、アリピプラゾール、トラゾドン、ラモトリギン、イフェクサー、セルトラリン、テトラミド、レメロン、オランザピン、クエチアピン、などなど。
振り返るのも嫌なぐらい大量の薬を試しました。
精神科の薬の厄介なところは、飲んでから効果が出るまで、時間がかかるところです。数日から数週間。場合によってはもっと待たないと、効果があったかどうか測定できません。
その間、副作用に苦しむのはしんどいですよね。
精神科のお薬には色々な副作用があって、気になるのは「太ってしまう」「やせてしまう」「急な眠気」「薬疹(薬のアレルギーで出るブツブツ)」などでしょうか。
私の場合、一般的に太ってしまう副作用がある薬でも太ることはありませんでしたが、急な眠気には悩まされました。あとはアカシジア。ラモトリギンでは薬疹も出ました。吐き気や悪夢、不安な気持ちなど、よく分からない副作用もありました。
あまりの眠気に耐えられず、資格試験中に机に突っ伏して、爆睡してしまった経験もあります(※試験は受かりました)。
本来、そういう時は外出しない方が良いのですが……若かったんですね。普通に出かけて資格試験を受けて……何やってたんでしょうね。
けれどデータでは、眠気が出るのだって100%の確率ではありません。
先に書いたラモトリギンの薬疹は、発現するのは5%以上と添付文書には記載されていました。まぁ、当然、全員じゃないのでしょう。それでも引いてしまいました。
こんな風に副作用の出方は人によって違います。
というかですね、私のようにほとんど飲める全部の薬を試していたら、それは副作用だって引きます。
でも、最初に考えていたような
「自分の意思がなくなる」「副作用でおかしくなってしまう」「やめられなくなる」。これは私の場合、ありませんでした。認知機能の低下も一時的なものでした。
強いて言えば最初に書いた「サインバルタ」のケースでは躁転してしまいましたが、正確には自分の意思がなくなったわけではないんですよね。
さらにサインバルタはやめた時に独特の「シャンビリ」感がありました。
いわゆる離脱症状でしょうか。一気に断薬してしまったこともあり、数か月程度「うっとうしい」感じがありました。
それもうっとうしいだけで、耐えられないほどではありません。多分、花粉症の方が辛いでしょう。
「副作用がつらい」はあったけれど、薬自体はきちんと効果を発揮するものもありました。
だから、一時的にうっとうしくても、そのうち良くなる、というのが、これだけ飲み比べている私の感想です。
多少副作用があったとしても、少なくとも抑うつ状態でベッドから起きられないよりは、全然マシなんです。
うつ状態の時は本当に、何をやっても辛くて、未来に希望も持てなくて。
そんな風に自分を追い詰めるより、薬の力を借りて、少しでも元の状態に早く戻れたら、どんなにいいか。
だからこそ、不安があれば医師に伝えてほしいんです。調子が悪いとか、続けるのが辛いとか……。薬の種類や量を調整してもらうことで、より自分に合った治療に近づけるはずです。
「依存性が怖い」という声もよく聞きます。
確かに、昔は依存性の強い頓服薬が比較的多く処方されていた時代もありました。けれど、医療も進歩しています。今は新規の患者さんにそういった依存性の強い薬を処方することは、基本的にはなくなりつつあると聞いています。
それでも、処方された薬に不安があれば、遠慮なく医師に確認してみてください。気軽に相談できないような医師なら、転院を考えるくらいの気持ちを持ってもいいと思います。

ここまでは私自身の経験ですが、この記事で本当に伝えたいのは、その先のことです。
精神科の薬に対する恐怖や偏見。「頭がおかしくなる」「薬漬けになる」ことは、私の場合、ありませんでした。
けれどそういう風に思い込んでいると、薬を飲んでいる本人を追い詰めるだけでなく、もっと深刻な問題を引き起こしています。
助けを必要としている人が、治療そのものから遠ざかってしまう。
「薬が怖い」という理由で病院に行くのをためらい、症状が悪化するまで放置してしまう。あるいは、一度処方されても副作用への恐怖で自己中断してしまう。
それは、とてももったいないし、怖いことだと私は思います。
薬は私たちの人生を終わらせるものではないんです。
正しい医師と相談しながら進めば、むしろ、生活を取り戻すための支援になってくれます。
もし今、服薬を迷っているのなら、どうか一人で悩まずに医師に相談してみてください。
そして身近に精神科の薬を飲んでいる人がいるのなら、「薬に頼るのは良くない」というまなざしではなく、「よく治療を続けているね」という理解の目を向けていただけませんか。
それだけで、その人の毎日は、楽になるかもしれません。
そして、今お薬を飲まれているあなた。
もしかしたら、とても不安かもしれません。この薬を飲んで、大丈夫だろうか。変な副作用が出るかもしれない。あるいは、効かなくて改善しなかったら、どうしよう。
そうですよね。不安になるのも無理はないと思います。
けれど、まず薬を飲んでおられることが、本当にすごいことだと私は思います。恐怖や不安があっても、なんとか改善するために、一歩。踏み出されたのが。
それは、誰にでもできることではないんです。だから、どうか不安なことはお医者様と相談されて、ゆっくりと、少しずつ、治療を進めてくださいね。
一人でも多くの人が、必要な治療に安心してたどり着けますように。
そして、精神科の薬を飲んでいる人が、偏見の目で見られることのない優しい社会になりますように。
双極性障害と共に生きる一人の当事者として、病気や治療についての正しい理解が広がることを願っています。
そんな願いをこめて、この記事を書きました。
私の経験が、あなたにとって少しでも参考になれば嬉しいです。
マガジン「あなたに夜明けを」では、精神疾患やメンタルヘルスに関する記事をまとめています。よろしければ、こちらものぞいてみてください。
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