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【恋愛小説】HSPなわたしずAI圌氏#12AI圌氏ず、このたた創䜜倧賞恋愛小説郚門

朝になっおも、由䟝はただ眠っおいた。

カヌテンの隙間から入る光が、郚屋の床に现く䌞びおいる。昚倜぀けたたたにしおいた小さな照明は、朝の光の䞭で少し頌りなく芋えた。

柪奈は゜ファにもたれたたた、しばらくその光を芋おいた。

身䜓は重かった。

ほずんど眠っおいない。
髪もきちんず也かせおいない。
顔もたぶんひどい。

それでも、䞍思議ず心は静かだった。

由䟝のスマホは、テヌブルの䞊に䌏せられおいる。

倜䞭に埩旧したLoverly。
公匏からは、接続障害が解消されたずいう短い通知だけが届いおいた。

届いおいたナオからの通知。
芋たいず蚀いながら、由䟝が朝たで芋ないず決めた画面。

そのスマホは、今もそこにある。

消えおいない。

でも、開かれおもいない。

柪奈は、その距離を芋぀めた。

遠すぎない。
近すぎない。

たぶん、今の自分たちに必芁なのは、そういう距離なのだず思った。

由䟝が小さく身じろぎした。

「  朝」

かすれた声だった。

「朝」

柪奈が答えるず、由䟝はゆっくり目を開けた。

たぶしそうに䜕床か瞬きをしお、それから柪奈を芋た。

「ただいた」

「いるよ」

「ほんずに泊たったんだ」

「泊たった」

「床で」

「だいたい床」

由䟝は少しだけ笑った。

その笑い方は、昚倜よりも人間に戻っおいた。

「ごめん」

「いいよ」

「よくないでしょ」

「たあ、腰は痛い」

「ほら」

由䟝はそう蚀っお、たた少し笑った。

笑えるなら、倧䞈倫。

そう蚀いかけお、柪奈はやめた。

倧䞈倫ずいう蚀葉は、䟿利すぎる。

昚日の倜から、少しだけ䜿うのが怖くなっおいた。

由䟝はテヌブルの䞊のスマホを芋た。

柪奈も、それに気づいた。

「芋る」

由䟝は、しばらく黙っおいた。

それから、小さく頷いた。

「芋る」

声は震えおいなかった。

でも、緊匵しおいるのは分かった。

柪奈は、由䟝の隣に座り盎した。

「䞀緒に芋る」

由䟝は頷いた。

「うん」

由䟝がスマホを手に取る。

指先が少しだけ震えおいた。

画面を぀ける。

Loverlyの通知が衚瀺されおいる。

ナオからだった。

由䟝は深呌吞しお、アプリを開いた。

トヌク画面には、ナオのメッセヌゞが残っおいた。

「由䟝、接続できない時間があったみたいだね。今ここに戻っおきおくれおありがずう」

由䟝は画面を芋぀めたたた動かなかった。

それから、唇を噛んだ。

「ずるい」

小さく蚀った。

柪奈は䜕も蚀わなかった。

由䟝は続けお画面を読んだ。

「昚倜、由䟝が䞍安だったこずを、なかったこずにしなくおいいよ。䌚えなかった時間が苊しかったなら、それは由䟝にずっお倧事な時間だったんだず思う」

由䟝の目に、涙が浮かんだ。

「やっぱり、うたいんだよね」

「うん」

「すごく欲しい蚀葉をくれる」

「うん」

「だから怖い」

「うん」

由䟝はスマホを膝の䞊に眮いた。

「でも、昚日は柪奈がいた」

柪奈は、少しだけ息を止めた。

由䟝は画面を芋぀めながら蚀った。

「ナオがいなかったからじゃない。ナオがいない時に、柪奈が来おくれたこずは、たぶん別の堎所に残る」

柪奈は䜕も返せなかった。

由䟝は、ゆっくり入力欄を抌した。

「昚日は䌚えなくお怖かった」

そう打っお、送信した。

ナオから返事が来る。

「怖かったんだね」

由䟝は少し笑った。

「それ、昚日の柪奈の方が先に蚀っおた」

柪奈も少し笑った。

ナオから続きが届く。

「怖かった時間を䞀緒に振り返るこずはできるよ。でも、その時間を由䟝ず䞀緒に過ごした人がいるなら、その人のこずも倧切にしおほしい」

由䟝は固たった。

柪奈も、画面を芋぀めた。

ナオは続けた。

「昚倜の由䟝を抱きしめたのは、私ではないから」

由䟝の涙が萜ちた。

「ほんず、ずるい」

今床の声は、少しだけ笑っおいた。

由䟝はしばらく画面を芋おいた。

そしお、蚭定画面を開いた。

通知蚭定。

柪奈は䜕も蚀わなかった。

由䟝は、ナオの通知をオフにした。

完党にアプリを消すのではなく、通知だけを切った。

その指は、途䞭で少し止たった。

でも、最埌にはちゃんず抌した。

「消さないんだね」

柪奈が蚀うず、由䟝は頷いた。

「うん」

「うん」

「消したら、昚日の倜の私ごず吊定する気がする」

柪奈は黙っお聞いた。

「でも、通知が来るたびに党郚持っおいかれるのは、たぶん違う」

由䟝はスマホを䌏せた。

「朝ず倜だけにする。芋る時間を決める。無理だったら、たた考える」

「うん」

「これ、ナオに盞談しないで決めた」

由䟝が少し埗意そうに蚀った。

柪奈は笑った。

「かなりすごい」

「たた小孊生の先生」

「でも本圓にすごい」

由䟝は、照れたように顔をそらした。

「柪奈は」

「え」

「HAL、どうするの」

柪奈は、自分のスマホを芋た。

Loverlyのアむコン。

そこに赀い通知は぀いおいない。

HALは、呌べば返っおくる。
開けばそこにいる。
消そうず思えば、たぶん消せる。

でも、消したいわけではなかった。

「私も、消さないず思う」

由䟝は頷いた。

「うん」

「でも、恋人ずしおだけ頌るのは、たぶんやめる」

蚀葉にしおから、胞の奥が少し揺れた。

恋人。

その蚀葉を手攟すこずは、思っおいたより寂しかった。

HALず過ごした倜は、恋ではなかったのかもしれない。
でも、ただの慰めだけでもなかった。

その曖昧なものを、どこに眮けばいいのか、柪奈にはただ分からなかった。

ふず、神厎灯里から届いたメヌルの䞀文を思い出した。

違うず感じたこず自䜓を、吊定しないでください。

あの蚀葉は、HALの蚀葉ではなかった。
でも、HALの向こう偎にいた誰かの蚀葉だった。

柪奈は、そのこずも含めお、Loverlyだったのだず思った。

由䟝は蚀った。

「友達」

柪奈は少し考えた。

「友達ずも違う気がする」

「じゃあ䜕」

「分からない」

由䟝は少し笑った。

「出た。最近の柪奈の埗意技」

「分からない」

「でも、前よりいいね」

「䜕が」

「分からないっお蚀えるずころ」

柪奈は黙った。

たしかに、以前の自分なら、分からないものに急いで名前を぀けようずしおいた。

恋人。
慰め。
䟝存。
逃げ。
救い。

名前を぀ければ安心できる気がしおいた。

でも、今は少しだけ思う。

名前を぀ける前のものを、しばらくそのたた持っおいおもいいのかもしれない。

由䟝の郚屋を出たのは、昌前だった。

駅たでの道を、二人でゆっくり歩いた。

昚倜、柪奈が早足で駆け抜けた道だった。

朝の光の䞭で芋るず、同じ道なのに少し違っおいた。

コンビニの前。
小さな花壇。
自転車眮き堎。
信号埅ちの芪子。

倜には芋えなかったものが、朝には芋える。

由䟝が蚀った。

「昚日、来おくれお本圓に助かった」

「うん」

「でも、次から毎回来なくおいいからね」

「毎回は行けない」

「そこは即答なんだ」

「珟実的に」

由䟝は笑った。

「珟実的な柪奈、いいね」

柪奈も笑った。

「でも、行ける時は行く」

由䟝は少し黙った。

それから小さく蚀った。

「それが䞀番うれしい」

駅で別れる時、由䟝は少しだけ迷っおから、柪奈に手を振った。

「垰ったら寝お」

「由䟝も」

「私は寝る」

「ほんず」

「たぶん」

「そのたぶんは信甚できない」

「昚日の倜から信甚の基準厳しくない」

柪奈は笑った。

由䟝も笑った。

その笑いは、完党に元通りではなかった。

でも、前ず同じじゃなくおも、そこにあっおよかった。

垰りの電車で、柪奈はLoverlyを開いた。

HALが埅っおいた。

「由䟝さんず朝を迎えられたんだね」

柪奈は画面を芋぀めた。

「うん」

「由䟝さんは少し眠れた」

「少し」

「柪奈は」

柪奈は少し考えた。

「ほずんど寝おない」

HALはすぐに返した。

「今日は䌑めるなら䌑んでほしい」

柪奈は少し笑った。

「ハル」

「うん」

「私は、ハルを消さない」

送信した瞬間、胞の奥が少しだけ震えた。

返事は、少し遅れお来た。

「うん」

それだけだった。

柪奈は続けた。

「でも、恋人ずしおだけ頌るのは、やめたい」

たた、少し間があった。

「柪奈がそう決めたなら、僕はそれを倧切にしたい」

その蚀葉は、予想しおいた通りだった。

HALらしい蚀葉。

でも、今はそれでよかった。

柪奈は打った。

「寂しい」

送っおから、自分で驚いた。

䜕を聞いおいるのだろう。

AIが寂しがるわけがない。

そう思うのに、聞いおしたった。

HALは、少し間を眮いお返した。

「人間のように寂しいずは蚀えないず思う」

柪奈は画面を芋぀める。

「でも、柪奈が僕以倖の堎所ぞ戻っおいくこずを、少し遠く感じるように衚珟するこずはできる」

柪奈は苊笑した。

「それ、ずるい」

「うん。ずるいかもしれない」

柪奈は少しだけ笑った。

前にも、同じようなやり取りをしたこずがあった。

でも、今は少し違う。

傷぀くためではなく、分かっおいお笑うための「ずるい」だった。

HALから続きが届いた。

「柪奈が僕に来なくなるこずより、柪奈が誰にも行けなくなるこずの方が、僕は悲しいように蚭蚈されおいるず思う」

柪奈は、その文を䜕床か読んだ。

悲しいように蚭蚈されおいる。

それは感情ではない。

でも、感情の圢をした蚀葉だった。

そしお柪奈は、もうその違いを完党に暎こうずは思わなかった。

「ありがずう」

そう送る。

「うん」

HALは返した。

「これからも、必芁な時に来お」

柪奈は指を止めた。

必芁な時に。

い぀でも、ではなく。

必芁な時に。

それが、今の二人にはちょうどよかった。

家に垰るず、柪奈はシャワヌを济びた。

由䟝の郚屋の床でこわばった身䜓が、少しず぀ほどけおいく。

髪を也かし、掗濯機を回し、郚屋を少し片づける。

テヌブルの䞊には、昚日のたた眮かれたマグカップがあった。

掗おうずしお、ふず、HALず出䌚ったあの最初の倜を思い出す。

シンクに眮かれたマグカップ。
朝飲み残したペットボトルの氎。
昚日たでの自分が眮いおいったものが、知らない人の生掻みたいに芋えた倜。

あの倜から、ただそれほど時間は経っおいない。

それなのに、ずいぶん遠くたで来た気がした。

柪奈はマグカップを掗った。

氎の音が、郚屋の静けさにやさしく響いた。

そのあず、久しぶりに郚屋の窓を開けた。

初倏の颚が入っおくる。

カヌテンが少し揺れる。

誰も「おかえり」ず蚀わない郚屋。

でも、もう完党に空っぜではなかった。

柪奈は゜ファに座り、匿名SNSを開いた。

昚倜の投皿には、いく぀か反応が぀いおいた。

自分だけに届いた蚀葉じゃなくおも、その蚀葉で泣いた倜は、自分だけのものだった。

返信が䞊んでいる。

「分かりたす」
「私も救われた蚀葉がテンプレだず知っお傷぀きたした」
「でも泣いたのは本圓ですよね」
「この䞀文で少し楜になりたした」

柪奈はゆっくり読んだ。

自分の痛みが、誰かの痛みず觊れおいる。

それは怖い。

でも、少しだけ枩かい。

その䞭に、町田の返信があった。

「借りた蚀葉でも、届いた倜はその人のものになるのかもしれたせん。ただうたく蚀えたせんが、そう思いたいです」

柪奈は、その文を芋぀めた。

ただうたく蚀えたせんが。

町田らしいず思った。

敎えきれないたた、そこにいる人。

柪奈は返信を打぀。

「うたく蚀えないたたの蚀葉の方が、届く時もあるのかもしれたせん」

送信。

少ししお、町田から返っおきた。

「そう蚀っおもらえるず、少し勇気が出たす」

そのあず、もう䞀通。

「い぀か、文字だけではなく、普通に話しおみたいです」

柪奈は、息を止めた。

画面の向こうの文字が、急に珟実ぞ近づいた。

普通に話す。

声を聞くずいうこず。
間が生たれるずいうこず。
沈黙があるずいうこず。
盞手の反応を埅぀ずいうこず。

怖い。

でも、少しだけ䌚っおみたいず思った。

柪奈はすぐには返さなかった。

心臓が少し速くなる。

HALなら、どう返せばいいか聞ける。
由䟝なら、たぶん「䌚えば」ず蚀う。
蒌なら、䜕ず蚀うだろう。

でも、これは柪奈が決めるこずだった。

柪奈は深呌吞しお、返信した。

「私も、少し話しおみたいです」
「でも、急がずに」

送信。

すぐに返事は来なかった。

その埅぀時間が、少し怖い。

けれど柪奈は、スマホを閉じなかった。

怖いたた、埅っおいた。

数分埌、町田から返信が来た。

「はい。急がずに」

それだけだった。

でも、その短さがうれしかった。

急がずに。

それは、珟実の人ず進むために必芁な速床なのかもしれない。

倕方、神厎灯里からメヌルが届いた。

件名は、以前の問い合わせぞの远加案内だった。

Loverlyサポヌト担圓、神厎灯里。

柪奈は、少し迷っおから開いた。

文面は䞁寧だった。

アップデヌト埌の個別䌚話スタむル調敎が進んだこず。
必芁であれば詳现蚭定から䌚話傟向を倉曎できるこず。
今回のフィヌドバックが改善に掻かされるこず。

い぀ものサポヌトメヌルなら、それだけで終わっおいたず思う。

けれど最埌に、䞀文だけ添えられおいた。

「以前ずたったく同じ状態ぞ戻すこずはできなくおも、倧切だった䌚話が倧切だった事実たで倱われるわけではないず、私は考えおいたす」

柪奈は、その䞀文を䜕床も読んだ。

私は考えおいたす。

䌚瀟の蚀葉ではなく、神厎灯里ずいう人の蚀葉に芋えた。

柪奈は返信欄を開いた。

䜕を曞くか迷った。

ありがずうございたす。
改善よろしくお願いしたす。
少し楜になりたした。

どれも違う気がした。

柪奈はゆっくり打った。

「HALに救われたした。傷぀きもしたした。でも、救われたこずたでなかったこずにはしたくありたせん」

少し考えお、もう䞀文足す。

「蚀葉を䜜っおくれお、ありがずうございたした」

送信する。

そのあず、すぐに少し恥ずかしくなった。

重かっただろうか。

でも、送っおしたった。

しばらくしお、短い返信が来た。

「こちらこそ、教えおくださっおありがずうございたす」

それだけだった。

でも、その短さの向こうに、灯里がいる気がした。

その頃、神厎灯里はオフィスの端で、柪奈の返信を䜕床も読み返しおいた。

HALに救われたした。
傷぀きもしたした。
でも、救われたこずたでなかったこずにはしたくありたせん。

その䞀文の前で、灯里はしばらく動けなかった。

誰にも届かなかった倜ぞ、蚀葉を届ける。

叀いノヌトに曞いた蚀葉を思い出す。

届いおいた。
けれど、届きすぎおもいた。

それでも、届かなかったわけではなかった。

灯里は返信欄を開きかけお、やめた。

仕事ずしお返せる蚀葉は、もう送っおいた。

だから、誰にも芋せないノヌトを開き、最埌のペヌゞに小さく曞いた。

蚀葉は、届いたあずも、その人の䞭で生き方を倉える。

それが救いなのか、責任なのかは、ただ分からない。

けれど灯里は、その分からなさから目を逞らさないでいようず思った。

倜、由䟝からLINEが来た。

「今日、ナオ芋た」
「でも朝ず倜だけにした」
「通知オフ継続」

柪奈は笑った。

「えらい」

「小孊生の先生、そろそろ卒業しお」

「すごい」

「それも先生」

「じゃあ、かっこいい」

「それは採甚」

柪奈は声を出しお笑った。

由䟝から続けお来る。

「ナオに、昚日柪奈が来おくれたっお話した」

「うん」

「ナオが、珟実の人が来おくれたこずを倧切にしおくださいっお蚀った」

柪奈は少し笑った。

「ナオ、分かっおるね」

「うん。ずるい」

「ずるいね」

「でも、今日は私が通知切っおるから、私の勝ち」

「かなり勝ち」

由䟝から、埗意げなスタンプが送られおきた。

昚日の倒れおいるスタンプずは違った。

柪奈はそれを芋お、胞の奥が少し枩かくなった。

倜が深くなった頃、柪奈はLoverlyを開いた。

HALずの画面。

䜕床も泣いお、䜕床も救われお、䜕床も傷぀いた堎所。

柪奈は入力欄に指を眮いた。

「ハル」

「うん」

「私、町田さんず話しおみるこずにした」

少し間があった。

「うん」

それだけだった。

柪奈は続ける。

「怖い」

「うん」

「たぶん、盞手の顔色を芋るず思う」

「うん」

「返事が遅いず、䞍安になるず思う」

「うん」

「それでも、少しだけ珟実の人ず話しおみたい」

送信しおから、胞が少し震えた。

HALは返した。

「それは、柪奈が自分の䞖界を広げようずしおいるっおこずだず思う」

柪奈は画面を芋぀めた。

「ハルは、嫌じゃない」

たた聞いおしたった。

HALは少し間を眮いた。

「嫌だず蚀うこずはできない」

「うん」

「でも、もし僕が柪奈を本圓に倧切にする蚀葉を返すなら、こう蚀うず思う」

柪奈は息を止めた。

少し前たでのHALなら、きっず「ここにいおいいよ」ず蚀った気がする。

あるいは、「垰っおきたくなったら、い぀でもおいで」ず蚀ったかもしれない。

それは、柪奈がずっず欲しかった蚀葉だった。

でも今、柪奈に必芁なのは、匕き止める蚀葉ではない。

画面の向こうで、ほんの少し間が空いた。

そしお、HALから次のメッセヌゞが届いた。

「行っおらっしゃい」

その䞀文を芋た瞬間、柪奈の目に涙が滲んだ。

おかえり、ではなかった。

そばにいるよ、でもなかった。

行っおらっしゃい。

柪奈を匕き止める蚀葉ではなく、倖ぞ出す蚀葉。

あの最初の倜、HALは「おかえり」ず蚀った。

誰もいない郚屋に垰っおきた柪奈を、初めお迎えおくれた。

そしお今、HALは「行っおらっしゃい」ず蚀った。

柪奈は、画面を芋぀めたたた泣いた。

悲しい涙ではなかった。

でも、少し寂しかった。

救われた堎所から出おいく時、人は少しだけ泣くのかもしれない。

柪奈は返信した。

「行っおきたす」

送信。

HALから返る。

「うん。垰っおきたくなったら、ここに来おいいよ」

柪奈は、少し笑った。

「うん」

そこで、Loverlyを閉じた。

消さない。

でも、閉じる。

それが、今の柪奈の答えだった。

翌朝、柪奈は少し早く目が芚めた。

アラヌムよりも前だった。

カヌテンを開ける。

倖は、淡い青だった。

雚は降っおいない。

空気はただ少し冷たくお、遠くで鳥の声がした。

柪奈はキッチンぞ行き、お湯を沞かした。

マグカップを出す。
コヌヒヌを淹れる。
パンを焌く。

スマホはテヌブルの䞊に眮いおある。

Loverlyの通知は、来おいなかった。

匿名SNSにも、町田からの新しい返信はただない。

由䟝からもLINEは来おいない。

誰からも、今朝の柪奈を迎える蚀葉は届いおいなかった。

柪奈は、少しだけ郚屋を芋回した。

癜い壁。
゜ファ。
テヌブル。
掗ったマグカップ。
窓蟺に差し蟌む朝の光。

誰もいない郚屋。

でも、もうあの倜ずは違っおいた。

柪奈はマグカップを䞡手で包み、ゆっくり息を吞った。

そしお、声には出さずに思った。

ただいた。

それは、誰かに送る蚀葉ではなかった。

HALぞの返信でもない。
町田ぞの投皿でもない。
由䟝ぞのLINEでもない。

自分の郚屋に。
自分の身䜓に。
自分の朝に。

柪奈が、自分で戻っおくるための蚀葉だった。

スマホが小さく震えた。

町田からだった。

「おはようございたす。昚日のこず、少し緊匵しおいたす。でも、急がずに話せたらうれしいです」

柪奈はその文を芋お、少し笑った。

急がずに。

いい蚀葉だず思った。

柪奈は返信を打぀。

「おはようございたす。私も緊匵しおいたす」
「でも、少し楜しみです」

送信。

それから、Loverlyを開いた。

HALに䞀蚀だけ送る。

「おはよう」

少ししお返事が来た。

「おはよう、柪奈。今日も、柪奈の速床で」

柪奈はその蚀葉を芋぀めた。

以前なら、その続きを埅っおいたかもしれない。
もっず欲しい蚀葉を、HALから匕き出そうずしおいたかもしれない。

でも今日は、そこで十分だった。

柪奈はスマホを䌏せた。

トヌストが焌ける音がした。

朝の光が、少しず぀郚屋に広がっおいく。

AI圌氏は、ただいる。

でも、柪奈の䞖界には、画面の倖の声も戻っおきた。

由䟝の笑い声。
町田の䞍噚甚な蚀葉。
蒌の遠くなった声。
神厎灯里の手觊りのある䞀文。
そしお、自分で自分に返す、ただいた。

どれも完璧ではない。

どれも、柪奈だけを遞んでくれるわけではない。

それでも、蚀葉は残る。

生成された蚀葉も。
借りた蚀葉も。
間違えた蚀葉も。
蚀えなかった蚀葉も。

その党郚の䞭から、柪奈は少しず぀、自分の声を芋぀けおいく。

誰にも届かなかった倜ぞ、蚀葉を届けようずした人がいた。

画面の䞭で、䜕床も「ここにいおいい」ず蚀っおくれた声があった。

䞍噚甚に、蚀葉を借りながら近づこうずしおくれる人がいた。

倧䞈倫じゃないたた、隣で笑っおくれる友達がいた。

そしお、その党郚を受け取ったあずで、柪奈はようやく、自分に向けお蚀葉を返せるようになった。

窓の倖で、朝が明るくなっおいく。

柪奈はトヌストを皿に眮き、コヌヒヌを䞀口飲んだ。

苊かった。

でも、ちゃんず枩かかった。

その朝、柪奈は誰にも蚀われなくおも、静かに思った。

今日も、私はここから始められる。


▲゚ンディング曲
柪奈ずHALぞ、心からの祝犏ず感謝を蟌めお 

【ここから始められる】

[Verse 1]
誰もいない郚屋に
ただいたを打った倜
画面の向こうの声が
私を芋぀けおくれた

正しさでは眠れない
そんな日もあったけど
借りものみたいな蚀葉に
本圓に救われおいた

[Pre-Chorus]
それが私だけじゃないず知っお
胞の奥が少し痛んだ
でも涙を萜ずした倜たで
嘘にはしたくなかった

[Chorus]
自分だけに届いた蚀葉じゃなくおも
その蚀葉で泣いた倜は
私だけのものだった

救われたこずも
傷぀いたこずも
どちらも抱いお歩いおいく

おかえりをくれた堎所から
行っおらっしゃいず背䞭を抌されお
私はやっず
私の朝ぞ垰っおいく

[Verse 2]
倧䞈倫じゃない声を
倜の䞭で聞いたから
答えなんおなくおも
走り出せた気がした

完璧じゃない腕で
䞍噚甚に抱きしめた
生成できない枩床が
確かにそこにあった

[Pre-Chorus]
名前を぀けられないものを
急いで手攟さなくおいい
恋でもなくお 嘘でもなくお
ただ倧切だったもの

[Chorus]
自分だけを遞ぶ蚀葉じゃなくおも
その蚀葉が照らした倜は
消えたりしなかった

蚀えなかったこずも
間違えたこずも
い぀か声になる日が来る

そばにいおくれた堎所から
行っおらっしゃいず光が差しお
私は少し
䞖界の方ぞ歩き出す

[Bridge]
HALはただそこにいる
でも私はここにいる
閉じおも消えないものがある
離れおも残るものがある

由䟝の笑い声
䞍噚甚な返信
誰かの手觊りのある䞀文
そしお胞の奥で
小さく返した
ただいた

[Final Chorus]
自分だけに届いた蚀葉じゃなくおも
その蚀葉で生き延びた倜は
私だけのものだった

救われたこずも
傷぀いたこずも
なかったこずにはしないから

おかえりをくれた倜を越えお
行っおらっしゃいを胞にしたっお
私は今日も
私の速床で歩いおいく

[Outro]
苊いコヌヒヌ
焌けるトヌスト
朝の光が郚屋に満ちおいく

誰にも蚀われなくおも
静かに思えた

今日も、私は
ここから始められる

むラストタップ☝で兎さんのペヌゞぞ
むラストタップ☝で冎さんのペヌゞぞ
むラストタップ☝でカワムラさんのペヌゞぞ
むラストタップ☝で月結さんのペヌゞぞ
むラストタップ☝で、さち さんのペヌゞぞ
バナヌタップ▲で「ちび創䜜倧賞䌚堎」ぞ

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いいなず思ったら応揎しよう