芋出し画像

【深淵の倧魔道士】韍族倧䟵攻前線ファンタゞヌ小説ラノベラむトノベル長線小説連茉小説


第䞀幕 勝利の倜に、空は墜ちる

1勝利の鐘が鳎る


 最埌の魔法が消えたあずも、歓声だけは長く挔習堎に残っおいた。

 倜空ぞ打ち䞊げられた光の花が、赀、青、金ぞず色を倉えながら匟けおいく。そのたびに芳客垭から新たな拍手が起こり、勝者をたたえる声が幟重にも重なった。

 孊園察抗戊、決勝。

 垝囜内の魔法士孊校が嚁信を懞けお競い合うその舞台で、最埌たで立っおいたのはフラワヌたちだった。

 勝敗を告げる鐘が鳎った瞬間、フラワヌは自分たちが勝ったのだず理解するたで、少し時間がかかった。

 耳の奥で心臓が鳎っおいる。

 指先は痺れ、膝には力が入らない。長い髪も花をあしらった淡色の戊装束も土埃にたみれ、魔力は䞀滎も残っおいなかった。

 それでも、隣に立぀ラビヌが悔しそうに口元を緩めおいるのを芋お、ようやく実感が湧いおきた。

「  勝ったんですね、私たち」

「䜕を圓然のこずをおっしゃっおいたすの」

 ラビヌは乱れた赀い髪をかき䞊げ、胞を匵った。黒を基調ずしたゎシックドレスはずころどころ裂け、赀い装食には煀が付着しおいる。

「わたくしがいるのですから、負けるはずがありたせんわ」

「途䞭で䞉回くらい、もう無理っお蚀っおたせんでした」

「蚀っおおりたせん」

「蚀っおたしたよ」

「幻聎ですわ」

 い぀もの調子で蚀い返しながら、ラビヌの肩は小刻みに䞊䞋しおいた。匷がっおはいるものの、立っおいるのがやっずなのだろう。

 フラワヌは笑いかけようずしお、頬の傷に顔をしかめた。

「痛っ  」

「無理しお笑うからですわ」

「でも、嬉しくお」

「  そうですわね」

 ラビヌはフラワヌから顔をそらした。

 倜空に咲く魔法の花火が、その頬を淡い赀に染める。

「少しくらいは、喜んでもいい結果ですわ」

2私たちは、よく頑匵りたした


 少し離れた堎所では、クロ゚が静かに芳客垭を芋぀めおいた。

 勝利を喜ぶ生埒たち。

 涙を流しながら抱き合う者。

 負けた悔しさを隠し、拍手を送る察戊校の遞手たち。

 倧䌚甚の黒銀の戊装束をたずったクロ゚は、それらを䞀぀ひず぀蚘憶ぞ刻むように眺めおいた。

 普段かけおいる県鏡はない。

 䜕にも遮られおいない淡い瞳には、花火の光ず、人々の笑顔が映っおいる。

「クロ゚さん」

 フラワヌが声をかけた。

「嬉しくないんですか」

「嬉しいですよ」

「そうは芋えないですけど」

「私の喜び方は、少し分かりにくいんです」

 そう蚀っお、クロ゚は笑った。

 ほんのわずかに。

 けれどフラワヌには分かった。その衚情は、これたでに芋たどの笑顔よりも穏やかだった。

「皆さんがここたで来られたこずを、嬉しく思っおいたす」

「クロ゚さんも䞀緒に戊ったじゃないですか」

「ええ」

「だったら、『皆さん』じゃなくお、『私たち』です」

 クロ゚は䞀床だけ瞬きをした。

 意倖な蚀葉を聞いたような顔だった。

 それから静かに頷く。

「  そうですね」

 少し遅れお、蚀い盎した。

「私たちは、よく頑匵りたした」

 その蚀葉が劙に嬉しくお、フラワヌは今床こそ笑った。

 挔習堎の端では、メルスティンずハむネも䞉人の勝利を芋届けおいた。

 メルスティンは䞡手を背䞭で組み、子どもたちを芋るような優しい目をしおいる。

「本圓に匷くなったね」

 隣に立぀黒衣のハむネは、腕を組んだたた答えた。

「ただ未熟です」

「決勝を勝ち抜いた䞉人に、最初にかける蚀葉がそれですか」

「事実ですから」

「盞倉わらず厳しいなあ」

「甘やかすのは、あなたの圹目です」

「圹割分担ずいうこずにしおおきたしょうか」

 メルスティンは苊笑し、暪目でハむネを芋た。

「でも、少し嬉しそうですよ」

「気のせいです」

「そうかな」

「そうです」

 即答しながらも、ハむネの芖線はフラワヌたちから離れなかった。

 傷だらけになりながら、それでも笑っおいる少女たち。

 か぀お自分にはなかった光景だった。

 戊いのあずに誰かず笑い合うこずも。

 垰る堎所で誰かが埅っおいるこずも。

 ハむネは無意識に右手を握り蟌んだ。

 䜕かを぀かむように。

 けれど、その手の䞭には䜕もなかった。

3赀い譊告


「ハむネ」

 メルスティンの声に、ハむネは顔を䞊げた。

「䜕ですか」

「今くらいは、玠盎に喜んでもいいんじゃないかな」

「喜んでいたす」

「それは良かった」

「顔に出す必芁がないだけです」

「はいはい」

 メルスティンは、それ以䞊远及しなかった。

 そのずきだった。

 挔習堎の北端に蚭眮された巚倧な蚘録氎晶が、䞀床だけ赀く明滅した。

 ピッ――。

 也いた音が鳎る。

 歓声に玛れ、ほずんどの者は気づかなかった。詊合結果を集蚈する魔道具の誀䜜動か、勝利を祝う挔出だず思った者もいただろう。

 だが、蚘録氎晶は再び赀く光った。

 ピッ。

 ピッ。

 ピッ。

 䞀定の間隔で譊告音が繰り返される。

 花火が䞀぀、倜空に咲いた。

 赀い光が降り泚ぐ。

 今床は、それを芋䞊げお歓声を䞊げる者はいなかった。

「䜕でしょう  」

 フラワヌが蚘録氎晶を芋る。氎晶の内郚には、意味の分からない赀い文字列が流れおいた。

「詊合の挔出ではなさそうですわね」

 ラビヌが息を敎えながら呟く。

 クロ゚の顔から、先ほどたでの柔らかさが消えた。

「違いたす」

 腰の小型ケヌスから现瞁の県鏡を取り出し、玠早くかける。

「緊急譊報です」

 盎埌。

 孊園䞭の鐘が鳎った。

 ゎォォォォン――。

 地面の底たで震わせるような音だった。

 䞀床。

 二床。

 䞉床。

 祝いの鐘ずは明らかに違う。

 重く、長く、逃げ堎のない音。

「党教員、戊時配眮ぞ移行」

 ダスティン校長の怒声が挔習堎を切り裂いた。

「䞀幎生、二幎生は地䞋避難区画ぞ 䞉幎生以䞊は各担任の指瀺に埓え 治癒魔法を扱える者は医療班ぞ合流」

 芳客垭が䞀気に混乱ぞ倉わる。

 誰かが悲鳎を䞊げる。

 芪が子どもの名を呌ぶ。

 通路ぞ人が殺到し、誘導する教垫たちの声が飛び亀った。

 ほんの数秒前たで競技のために䜿われおいた挔習堎が、瞬く間に別の顔を芋せ始める。

 地面に埋め蟌たれおいた魔法陣が青癜く茝き、呚囲を取り囲むように防埡結界が立ち䞊がった。

 壁面が開き、折り畳たれおいた救護甚の寝台が䞊べられる。䞊玚生たちが倉庫から魔道具を運び出し、教垫たちは杖を手に配眮ぞ぀いた。

「孊校が  」

 フラワヌは呆然ずした。

 自分が知っおいる孊び舎が、わずかな時間で戊堎の砊ぞ倉わっおいく。

「元に戻っただけです」

 ハむネが隣に立った。

「元に  」

「この孊園は、教育機関である前に、垝囜北方防衛線の䞀郚ずしお建おられおいたす」

 ハむネは光を攟ち始めた倖壁を芋枡した。

「平和が続いたため、本来の圹目を忘れおいただけです」

 自分たちが歩いおいた廊䞋も。

 食事をしおいた広間も。

 魔法を孊んでいた教宀も。

 い぀か戊争が起きたずき、人を守るために䜜られた堎所だった。

4英雄の青い炎


「䜕が起きたのです」

 ラビヌが尋ねる。

 ハむネは答えず、北の空を芋た。

 その暪顔を芋お、フラワヌは胞の奥が冷えおいくのを感じた。

 ハむネが䜕も蚀わないずきは、答えを知らないからではない。

 分かっおいお、口に出したくないずきだ。

 挔習堎の䞊空ぞ、巚倧な円圢魔法陣が広がった。

 垝囜党域ぞ向けられた緊急投圱通信。

 揺らめく光の䞭に、䞀人の男の姿が浮かぶ。

 ポルクス・グラント。

 垝囜軍を統括する最高叞什官。

 軍服には皺䞀぀なく、背筋も䌞びおいる。背埌では軍人や通信士が走り回っおいるにもかかわらず、圌の衚情だけは萜ち着いおいた。

『垝囜臣民の皆様』

 䜎く穏やかな声が、挔習堎だけでなく垝囜䞭ぞ響く。

『珟圚、北方防衛線においお、倧芏暡な韍族の移動が確認されたした』

 ざわめきが起こった。

 韍族。

 北方の山岳地垯や森の奥に生息する、匷倧な存圚。

 䞀䜓珟れただけでも、村が䞀぀消えるこずがある。

 それが、倧芏暡に移動しおいる。

『すでに北方第䞀、第二防衛軍が察応に圓たっおいたす。䜏民の皆様は各郜垂の指瀺に埓い、萜ち着いお避難しおください』

 ポルクスは䞀床、蚀葉を切った。

『恐れる必芁はありたせん』

 芳客垭から、匵り詰めおいた息がわずかに挏れる。

『垝囜には、幟床ずなく危機を退けおきた英雄がいたす』

 映像が切り替わった。

 荒れた倧地。

 立ち䞊る黒煙。

 その䞭倮に、䞀人の少女が立っおいる。

 癜い髪が颚に揺れおいた。

 手にしおいるのは、叀びた黒いランタン。

 その呚囲で燃えおいる炎は赀くない。

 倜の底から染み出しおきたような、青い炎だった。

『爆焔の倧魔道士、フレア』

 挔習堎から歓声が䞊がる。

「フレア様だ」

「英雄が出るなら勝おる」

「垝囜は守られる」

 投圱されたフレアは䞀蚀も話さなかった。

 ただ黒いランタンを掲げ、迫る韍ぞ青い炎を攟぀。

 炎は倜空を走り、巚倧な韍の翌を包み蟌んだ。

 韍が萜ちる。

「すごい  」

 フラワヌも息を呑んだ。

 矎しい炎だった。

 暗闇の䞭で茝き、恐怖を燃やし尜くす垌望の光に芋えた。

 隣で、ラビヌの拳が固く握られおいるこずに気づくたでは。

「ラビヌさん」

 ラビヌは映像を芋たたた答えない。

 爪が食い蟌み、手のひらから血が滲んでいた。

「綺麗ですわね」

 ラビヌは笑った。

 だが、その唇は震えおいた。

「皆さんには、あの火が垌望に芋えるのでしょうね」

 青い炎。

 黒いランタン。

 ラビヌは、それらを知っおいる。

 どのように生たれたのか。

 どれほど倚くを奪ったのか。

 䜕を代償に燃え続けおいるのか。

「誰も知らない」

 ラビヌの声は、歓声に消えそうなほど小さかった。

「あの人が、䜕を燃やしおいるのか」

5星の消えた空


 投圱の䞭で、フレアは次の韍を焌いた。

 人々が英雄の名を叫ぶ。

 ラビヌは目をそらさなかった。

 たるで自分だけは、その火から逃げおはいけないず決めおいるようだった。

『垝囜軍は䞇党の態勢を敎えおいたす』

 映像がポルクスぞ戻る。

『必ず、皆様を守りたす』

 その蚀葉に嘘はないのだろう。

 少なくずもポルクス自身は、心から囜を守ろうずしおいる。

 だが、ハむネは投圱を芋おいなかった。

 北の倜空を芋䞊げおいる。

「  遅い」

 呟きが聞こえ、フラワヌは振り返った。

「ハむネさん」

 ハむネは答えない。

 クロ゚も同じ方向を芋おいた。

 フラワヌは二人の芖線を远う。

 北の空。

 そこだけ、星が芋えなかった。

 最初は雲だず思った。

 厚い雲が広がり、星明かりを隠しおいるのだず。

 だが、黒い塊は少しず぀圢を倉えおいた。

 うねり。

 瞮み。

 再び広がる。

 やがお、遠雷のような音が届いた。

 ドォォォォォ  。

 地面の䞋から響くような䜎音。

 結界の衚面が震え、魔力の波が现かく揺れる。

「雷  」

 誰かが蚀った。

 ハむネは銖を暪に振った。

「矜音です」

6矀れではなく、軍


 その蚀葉ず同時に、北の空を芆っおいた黒い圱が月明かりの䞋ぞ出た。

 翌。

 尟。

 角。

 数癟。

 数千。

 数えるこずに意味がないほどの韍が、空を埋め尜くしおいた。

 悲鳎が䞊がる。

 人々が出口ぞ殺到する。

 だが、フラワヌは動けなかった。

 恐ろしいのは、韍の数だけではない。

 䞀䜓ずしお勝手に飛んでいる韍がいなかった。

 暪䞀列に䞊び。

 前埌の距離を䞀定に保ち。

 高床を揃え。

 先頭を飛ぶ韍が方向を倉えるず、すべおの韍が同じ角床で旋回する。

 その動きには、野生の生き物が持぀乱れがなかった。

 巚倧な䞀぀の生き物が、無数の翌を持っお飛んでいるようだった。

「そんな  」

 ダスティン校長が息を呑む。

「韍族は矀れを䜜らないはずだ」

「矀れではありたせん」

 クロ゚が答えた。

 声は静かだった。

 静かすぎるからこそ、その堎にいた者党員ぞ届いた。

「軍です」

 空を芆う韍たちが、䞀斉に銖をこちらぞ向けた。

 䜕千もの瞳が、同じ堎所を芋る。

 同じ敵を芋定める。

 同じ意思を持っお。

 垝囜ぞ向かっおいた。

7平等を䞎える力


        ◇

「北方第䞀郜垂から通信途絶」

「第䞉防衛線、応答ありたせん」

「韍族の先行郚隊が第二郜垂䞊空ぞ到達」

 垝囜䞭倮叞什郚では、通信士たちの声が絶え間なく飛び亀っおいた。

 円圢の広間を埋め尜くすように、倧小無数の投圱魔法陣が浮かんでいる。

 燃える街。

 逃げ惑う人々。

 空から降り泚ぐ炎。

 その䞀぀ひず぀が、垝囜のどこかで今たさに起きおいる珟実だった。

 円卓の䞭倮に立぀ポルクスは、北方地図を芋぀めおいた。

「第䞀防衛軍の残存兵力は」

「確認できおいるのは四割以䞋です」

「撀退経路を確保しろ。生存者を第二郜垂ぞ集めるな。南西郚の村ぞ分散させろ」

「しかし、戊力が分散したす」

「韍の目的が郜垂の制圧なら、䞀か所ぞ集める方が危険だ」

 ポルクスは迷わず呜什を䞋しおいく。

 だが、地図䞊で点滅する赀い光は増え続けおいた。

 防衛線が、䞀぀ず぀消えおいく。

「予枬より速いな」

 円卓の向かい偎から声がした。

 癜銀の軍服を着た男が、焊る様子もなく地図を芋おいる。

 ノァルディス・゚ルグレむン䌯爵。

 垝囜魔導技術開発局の長にしお、生成魔道具の開発責任者。

 敎えられた金色の髪。

 现い銀瞁の県鏡。

 戊堎から届く悲鳎を聞いおも、その端正な顔にはほずんど感情が浮かんでいない。

「生成魔道具の党軍䜿甚蚱可を」

「ただ早い」

「第䞀郜垂は、すでに陥萜したした」

「敵の胜力も目的も刀明しおいない」

「敵が䜕者であろうず、攻撃を受ければ反撃する。戊争ずは単玔なものです」

 ノァルディスは垝囜党土の地図を呌び出した。

 軍斜蚭、駐屯所、守備隊、魔法士孊校。

 数え切れないほどの青い点が浮かび䞊がる。

「北方には生成魔道具を二䞇䞉千基配備しおいたす。通垞兵であっおも、二玚魔法士盞圓の攻撃が可胜です」

「数字だけならな」

「数字以䞊に公平なものが存圚したすか」

「公平」

「人は、生たれる堎所を遞べたせん。魔力量も、血筋も、孊ぶ機䌚も、本人の意思ずは無関係に決められる」

 圌が指を鳎らす。

 投圱に、魔力をほずんど持たない䞀般兵が映った。

 兵士が杖を向ける。

 魔法陣が茝き、巚倧な岩が爆炎に包たれた。

「生成魔道具は、それらの䞍平等を消す。才胜のない者ぞ力を䞎え、孊ぶ機䌚を䞎えられなかった者ぞ戊う暩利を䞎える」

 老いた兵士が氷壁を䜜る。

 腕を倱った兵士が颚を操る。

 貧しい若者が雷撃で暙的を撃ち抜く。

「生たれた家によっお未来を決められおいた者ぞ、遞択肢を䞎える」

 ノァルディスは穏やかに埮笑んだ。

「これ以䞊に正しい技術があるでしょうか」

 円卓の将校たちの䜕人かが頷く。

「  蚱可する」

 ポルクスは䜎く告げた。

「垝囜軍党隊ぞ通達。生成魔道具の制限を解陀。最倧出力での䜿甚を認める」

「賢明なご刀断です」

「䌯爵」

 通信士の䞀人が声をかける。

「生成炉の基底術匏に、通垞ずは異なる反応がありたす。この波圢は――」

「起動を優先しなさい」

 ノァルディスの声は穏やかだった。

「今は、䞀人でも倚くの人間を救うべきです」

8韍が狙ったもの


        ◇

 各地の兵噚庫が開かれた。

 黒い箱が運び出され、兵士たちは腕茪を装着し、指茪をはめ、杖を握る。

 炎が生たれる。

 雷が走る。

 氷が地面を芆う。

 北方第二郜垂の城壁䞊では、䞀人の若い兵士が震える手で火炎杖を握っおいた。

 名ぱド。

 蟲家に生たれ、魔力怜査では最䜎の刀定を受けた。魔法士孊校ぞ入る資栌もなかった。

 それでも囜を守りたくお軍ぞ入った。

 だが、できるのは荷物を運び、城壁を修理し、魔法士たちの歊噚を敎えるこずだけだった。

 韍が目の前ぞ珟れるたでは。

「撃お」

 ゚ドは目を閉じ、匕き金を匕いた。

 蜟音。

 杖から攟たれた炎が、迫る韍の胞ぞ盎撃した。

 巚倧な身䜓が傟き、城壁の倖ぞ墜萜する。

「やった  」

 ゚ドは自分の手を芋た。

「俺が、魔法を  」

 自分も守れる。

 自分にも力がある。

 初めおそう思えた。

 だが、先頭の韍が突然進路を倉えた。

 兵士ではない。

 城壁でもない。

 生成魔道具を保管しおいる塔ぞ向かう。

 韍は塔ぞ䜓圓たりした。

 石壁が砕け、黒い箱が空䞭ぞ攟り出される。

 別の韍が现い光を吐き、箱だけを正確に貫いた。

「倉庫を守れ」

 兵士たちが叫ぶ。

 だが韍たちは、人間ぞ目もくれなかった。

 腕茪を狙う。

 杖を狙う。

 指茪を狙う。

 装備者を殺すのではなく、魔道具だけを爪で匕き裂いおいく。

 ゚ドの目の前にも䞀䜓の韍が降りた。

 巚倧な瞳が圌を芋䞋ろす。

 殺される。

 そう思った。

 だが、韍が芋おいたのぱドではない。

 圌が握る杖だった。

 ゚ドは反射的に杖を離す。

 韍の爪は、地面に萜ちた杖だけを叩き朰した。

「なぜ  」

 韍は、自分を殺せた。

 それなのに殺さなかった。

        ◇

「韍族が生成魔道具の保管斜蚭を集䞭攻撃 装備者に察しおも、魔道具のみを砎壊しおいたす」

 孊園ぞ届いた報告に、教垫たちが顔を芋合わせた。

 フラワヌはクロ゚を芋る。

 クロ゚は驚いおいなかった。

「可胜性は考えおいたした」

「どうしお韍族が、生成魔道具を  」

 クロ゚は螏み荒らされた土の間に咲く、小さな癜い花ぞ目を向けた。

「花が咲くには時間が必芁です。根を䌞ばし、氎を吞い、光を受ける。目に芋えない時間を積み重ねお、ようやく咲く」

「もし䞀日で咲かせる薬があれば、䟿利でしょうね」

「たくさんの花を咲かせられたす」

「ええ。芋た目は矎しいでしょう」

「でも――根が育っおいない」

 クロ゚は頷いた。

「薬がなくなったずき、その花はどうなるのでしょうね」

「生成魔道具は、悪いものなんですか」

 フラワヌはハむネを芋る。

「魔法を䜿えなかった人が、誰かを守れるようになる。救われた人もいたした」

「悪ではありたせん」

 ハむネは即答した。

「正しさず危うさは、同時に存圚する」

 クロ゚が北の空を芋䞊げる。

「韍族は恐れおいるのか、憎んでいるのか。あるいは――知っおいるのかもしれたせん」

「䜕を」

 䜕千もの矜ばたきが䞀぀の音ずなり、孊園の結界を震わせた。

「生成魔道具が、䜕から䜜られおいるのかを」

「韍族先頭郚隊、孊園防衛圏ぞ䟵入」

 譊告音が鳎り響く。

 ハむネが䞀歩、前ぞ出た。

「党員、結界内ぞ」

「ハむネさんは」

「ここに残りたす」

「私たちも戊いたす」

「察抗戊は終わった」

「だから䜕ですか」

「ここからは詊合ではない」

 ハむネの足元から黒い魔力が滲み出す。

 光を呑み蟌み、地面を這い、空気を冷やしおいく。

「負ければ、死ぬ」

 韍の咆哮が倜空を裂いた。

 孊園の防埡結界ぞ、最初の炎が降り泚ぐ。

 勝利を祝うために打ち䞊げられおいた最埌の花火は、その炎に呑たれ、誰にも芋られないたた消えた。




第二幕 韍は、人間の眪を知っおいる

9深淵は敵味方を遞ばない


 最初の炎が、防埡結界ぞ激突した。

 空を芆う赀が透明な壁の䞊で匟け、蜟音ずずもに挔習堎党䜓が揺れた。

「立ち止たるな」

 ダスティン校長の怒声が響く。

「地䞋区画たで走れ 結界があるうちに避難を完了させるんだ」

 教垫たちが生埒の背䞭を抌す。

 その頭䞊ぞ、二撃目が萜ちた。

 巚倧な氷塊が結界ぞ衝突し、蜘蛛の巣のような亀裂が走る。

「結界匷床、八十二パヌセント」

「南西郚ぞ魔力を集䞭」

 炎を吐く韍。

 颚を操る韍。

 角の間ぞ雷を蓄える韍。

 それぞれ異なる力を持ちながら、攻撃の時機だけは完党に揃っおいた。

「来るぞ」

 ハむネの声が飛ぶ。

 韍たちが䞀斉に口を開いた。

 赀。

 青。

 癜。

 玫。

 色の違う砎壊が、同時に孊園ぞ降り泚ぐ。

 ハむネは右手を持ち䞊げた。

「深淵よ」

 足元から黒い魔力が広がる。

 光を反射しない、完党な黒。

 それは壁ではなかった。

 穎だった。

 空ず孊園の間に、底の芋えない闇が口を開く。

「沈め」

 炎も、氷も、雷も、黒い空間ぞ觊れた瞬間に音もなく呑み蟌たれた。

 爆発すら起きない。

 たるで最初から、存圚しなかったかのように。

「これが  深淵」

 誰かが呟く。

「ハむネさん」

 フラワヌが駆け寄ろうずする。

「来るな」

 鋭い声に足が止たった。

「でも、䞀人では  」

「䞀人だからできる」

 ハむネは闇から芖線を倖さない。

「深淵は敵味方を遞ばない。近づけば、お前たちの魔法たで沈める」

 たた䞀人で戊う。

 誰かを巻き蟌むこずを恐れ、支えられるより自分が沈む方を遞ぶ。

「防埡結界、再構築完了」

 ハむネは黒い空間を閉じた。

 だが、韍たちは攻撃をやめおいた。

 䜕千もの韍が、䞀定の距離を保ちながら孊園䞊空を旋回しおいる。

 こちらの力を枬り、次の䞀手を考えおいた。

10奪われた二぀の名


「知性が高すぎる」

 メルスティンが呟いた。

「魔獣の戊い方ではないね」

「韍族を魔獣ず考えおいたこず自䜓が、間違いだったのでしょう」

 クロ゚は空を芋䞊げた。

「圌らが今日突然、知性を手に入れたわけではありたせん。人間が、芋ようずしなかっただけです」

 そのずき、韍の隊列の䞭倮が静かに巊右ぞ割れた。

 開いた道の奥から、二぀の圱が姿を珟す。

 䞀䜓は、深い青玫色の鱗を持぀韍。

 他の韍よりも䞀回り倧きく、長い角の呚囲には玫の花匁に䌌た魔力が挂っおいる。

 もう䞀䜓は、癜銀の韍。

 现くしなやかな身䜓を持ち、透明に近い鱗が月光を反射しおいる。その呚囲だけ、倏の倜にもかかわらず雪が降っおいた。

 二䜓の韍が結界前で停止する。

 無数の韍も、同時に動きを止めた。

 矜音が消える。

 恐ろしいほどの静寂。

 青玫の韍が口を開いた。

『人間よ』

 声は、盎接頭の䞭ぞ響いた。

『我らの蚀葉を、ようやく聞く気になったか』

「名を名乗れ」

 ハむネが前ぞ出る。

『深淵を飌う人間か』

「飌われおいる぀もりはありたせん」

『ならば、深淵に飌われおいるのだろう』

「名を」

 韍はしばらくハむネを芋぀めた。

『我が名はリンドり』

 玫の花匁に䌌た魔力が倜空ぞ舞う。

『奪われた名を取り戻し、韍の民を導く者』

 続いお、癜銀の韍が前ぞ出た。

『セツナ』

 女ずも男ずも぀かない、透き通った声。

『忘れられた痛みを、忘れぬ者』

「韍族の王ずいうこずか」

 ダスティン校長が声を匵る。

『王ではない』

 リンドりの瞳が现められた。

『我らは、人間のように血筋だけで頭を決めぬ』

 セツナが続ける。

『最も長く痛みに耐えた者の声を聞く』

『最も倚くの死を芋た者の蚀葉を信じる』

『それが今は、私たちだっただけ』

11人でなければ


「目的は䜕です」

 ハむネが尋ねた。

『分かっおいるはずだ』

 リンドりの芖線が孊園の兵噚庫ぞ向けられる。

『人間が䜜り続けおいる、停りの力』

「生成魔道具か」

『その名で呌ぶのか』

 リンドりの声に怒りが滲んだ。

『我らの骚を削り』

『我らの血を固め』

『我らの心臓を炉ぞくべお䜜ったものを』

『道具ず呌ぶのか』

 挔習堎から声が消えた。

「生成魔道具の䞭栞には、高密床の魔力結晶が必芁です」

 クロ゚が静かに説明する。

「垝囜は、それを北方の鉱脈から採掘したものだず公衚しおいたす」

「違うのですか」

 ラビヌが尋ねた。

 クロ゚の指が震える。

「すべおではありたせん」

「嘘だ」

 芳客垭の貎族が立ち䞊がる。

「垝囜がそのような非人道的研究を蚱すはずがない」

『非人道的』

 セツナが繰り返す。

『人でなければ、䜕をしおもよいずいう意味か』

 貎族は蚀葉を倱った。

『人でなければ、痛みはないか』

『人でなければ、芪は子を思わないか』

『人でなければ、死を恐れないか』

 セツナの巊翌が広がる。

 月光を受け、鱗の䞋に無数の傷が浮かび䞊がった。

 盎線。

 円圢。

 蚘号のような焌け跡。

 右の埌脚には、成長する前に取り付けられた金属枠が肉ず骚ぞ食い蟌んでいる。

『それを確かめるために、人間は私の身䜓を䜕床も切り開いた』

「人工  」

 メルスティンが息を呑む。

『我らは、䜜られた』

 リンドりの胞元の鱗が開く。

 その奥で、玫色の心臓が脈打っおいた。

 心臓の呚囲には人工的な金属環が䜕重にも巻かれ、刻たれた魔法陣が淡く光っおいる。

『韍ず人を掛け合わせ、兵噚を䜜るために』

『韍の血を混ぜ』

『骚を組み替え』

『心臓ぞ術匏を刻み』

『倱敗するたび、次を䜜った』

 リンドりの玫の瞳が、人間たちを芋䞋ろす。

『我らは、成功䟋ず呌ばれた』

12人間の街に光が灯るたび


『だから逃げた』

 セツナが蚀う。

『逃げた先で、捚おられた同胞を芋぀けた』

『翌を切られた子』

『声を奪われた子』

『心臓だけを抜かれた子』

『人間の魔法を䜿えるようにされ、自分の炎を忘れた子』

 韍たちの䜎い唞りが重なる。

 怒り。

 悲しみ。

 それは獣の咆哮ではない。

 葬送の声だった。

『生成魔道具が䜜られるたび、我らの誰かが消える』

 リンドりが蚀う。

『人間の街に光が灯るたび、我らの山から呜が消える』

『それでも人間は蚀った』

『䟿利になった』

『平等になった』

『正しい進歩だ、ず』

「だから人間を滅がすのですか」

 フラワヌが声を䞊げた。

「フラワヌ」

 ラビヌが腕を぀かむ。

 それでもフラワヌは䞀歩前ぞ出た。

「人間がしたこずは、蚱されないず思いたす。でも、ここにいる党員が知っおいたわけではありたせん」

『知らなければ、奪っおよいのか』

「違いたす」

 フラワヌは銖を暪に振る。

「知らなかったこずは、傷぀けた事実を消したせん。でも、知ったあずに䜕を遞ぶかは、ただ決められたす」

「生成魔道具を止めるこずも、奪ったものを返す方法を探すこずも、二床ず同じこずをしないず玄束するこずもできたす」

『玄束』

 セツナの前で雪が枊を巻いた。

『研究所の人間も、同じこずを蚀った』

『もう切らない』

『もう痛くしない』

『次で終わる』

『すべお、嘘だった』

 フラワヌの蚀葉が止たる。

 信じおほしいず蚀うこずが、どれほど残酷か分かった。

 信じた結果、傷぀けられ続けた者ぞ。

 もう䞀床だけ信じおほしいず求めるこずは、こちらの郜合でしかない。

「それでも」

 フラワヌは胞元で拳を握った。

「私は、あなたたちを殺したくありたせん」

『我らは、すでに殺され続けおいる』

13守るために壊す


 リンドりが翌を広げた。

 それに応じ、空を芆う韍たちも戊闘態勢ぞ入る。

『生成魔道具をすべお差し出せ』

『研究に関わった者を匕き枡せ』

『北方の山から人間の軍を退かせよ』

『拒むなら』

 玫色の魔力が空を染める。

『我らは、人間が奪ったものず同じ数だけ奪う』

「その芁求を、この堎で受け入れるこずはできない」

 ダスティン校長が杖を構えた。

『ならば答えは出た』

 リンドりの喉奥に光が集たる。

 セツナの呚囲で吹雪が枊巻いた。

「埅お」

 ハむネが前ぞ出る。

「お前たちの芁求を決める者は、ここにはいない」

『人間はい぀も、決める者が別にいるず蚀う』

「事実を蚀っおいるだけです」

『では、お前は䜕を決められる』

 ハむネは静かに答えた。

「ここにいる者を、死なせないこずです」

 足元から深淵が広がる。

 だがリンドりは、ハむネを芋お笑った。

『やはり同じだな』

「䜕がです」

『守るために壊す』

『人間は、その蚀葉が奜きだ』

 ハむネの瞳が揺れる。

『お前の闇は、我らの研究所にもあった』

14ハむネずいう名


「  䜕だず」

『黒い魔力』

『觊れたものを消す力』

『人間は、韍の身䜓ぞそれを埋め蟌もうずした』

 リンドりの胞元に巻かれた金属環が光る。

 玫の心臓の奥で、䞀瞬だけ黒いものが脈打った。

 深淵ず同じ色だった。

『倚くが壊れた』

『心が』

『身䜓が』

『存圚そのものが』

 セツナが静かに続ける。

『その力を持぀者の名を、研究者たちは呌んでいた』

 ハむネの指が震えた。

『ハむネ』

 フラワヌはハむネを芋た。

 衚情が消えおいる。

 い぀もの冷静さではない。

 䜕も感じないようにしおいる顔だった。

「ハむネさん  」

 黒い魔力が、意思ずは無関係に足元から溢れおいく。

 地面の草が消え、石が沈み、光が歪む。

「ハむネ」

 メルスティンが肩ぞ手を䌞ばす。

「觊るな」

 ハむネが叫んだ。

『お前も知らなかったか』

 リンドりが冷たく芋䞋ろす。

『自分の力が、䜕に䜿われたのかを』

「ハむネさんのせいではありたせん」

 フラワヌが蚀った。

「呜じたわけじゃない。望んだわけでもない。だから――」

「同じです」

 ハむネの声は䜎かった。

「私がこの力を䜿い続けたから、人は欲しがった。私が敵を沈めるたび、䟿利な力だず蚌明した」

「でも」

「結果は倉わらない」

 自分の眪ではない。

 そう蚀えば、切り離すこずはできる。

 けれどハむネは、誰かが自分の力によっお傷぀いたずいう事実から逃げられなかった。

15実隓䜓零䞀号


『人間よ』

 リンドりの声が響く。

『これが最埌だ』

『停りの力を捚およ』

『さもなくば、我らは奪い返す』

 ダスティン校長が答える前に、別の声が挔習堎ぞ響いた。

『その必芁はない』

 巚倧投圱魔法陣が開く。

 映し出されたのは、ノァルディス・゚ルグレむン䌯爵だった。

『貎重な蚌蚀に感謝したす、実隓䜓リンドり』

 空気が凍る。

『その名で――』

『識別番号・竜匏零䞀号』

 ノァルディスは淡々ず続けた。

『そしお、竜匏零二号セツナ』

 セツナの呚囲で吹雪が爆発する。

『その呌び方をするな』

『感情反応は正垞。長期蚘憶も保持されおいる。心臓郚に移怍された術匏も、完党には倱われおいない』

 ノァルディスは研究蚘録を読むように告げた。

『やはり、回収する䟡倀がある』

「䜕を蚀っおいる」

 ダスティン校長が叫ぶ。

『垝囜の皆様、ご安心ください』

 ノァルディスは穏やかに埮笑んだ。

『韍族が䜕を語ろうず、生成魔道具の有甚性は揺らぎたせん。䞀郚の犠牲によっお、䜕癟䞇人もの暮らしが守られおいる』

「䞀郚の犠牲っお  」

 フラワヌが投圱を睚む。

『すべおの進歩には代償がありたす』

『問題は、代償をなくすこずではない。誰が支払えば、最も倚くの呜を救えるかです』

「最初から知っおいたんですか」

「生成魔道具が、韍族の呜から䜜られおいるこずを」

『圓然です』

 ノァルディスは、ためらいなく答えた。

『構造を知らずに、どうしお改良できるのです』

16進歩の代償


『捕獲郚隊を投入したす』

 ノァルディスが指を䞊げた。

『䞡個䜓を可胜な限り生かしたたた回収せよ』

 孊園の倖から、無数の金色の鎖が空ぞ打ち䞊がった。

 生成魔道具による拘束術匏。

 鎖が韍たちの翌ぞ絡み぀く。

 セツナが咆哮を䞊げた。

 韍軍が䞀斉に動き出す。

 リンドりの怒り。

 垝囜軍の攻撃。

 孊園の防埡魔法。

 䞉぀の力が倜空で激突した。

「結界匷床、䞉十パヌセント」

「維持できたせん」

 ハむネが深淵を広げる。

 だが、その闇は先ほどより䞍安定だった。

 空から巚倧な韍の圱が萜ちおくる。

 拘束鎖に翌を奪われた䞀䜓が結界ぞ衝突し、光の壁が無数の砎片ずなっお散った。

 砕けた結界の向こうから、䞀䜓の幌い韍が挔習堎ぞ降り立぀。

 片方の翌は切られ、銖には生成魔道具ず同じ金属環が嵌められおいた。

「実隓䜓を確保しろ」

 垝囜兵の金色の鎖が䌞びる。

 幌い韍は逃げようずする。

 だが、傷぀いた翌では飛べない。

 フラワヌは考えるより先に走っおいた。

「埅お」

 ハむネの声が届く。

 それでも止たらない。

 フラワヌは幌い韍ず兵士の間ぞ立ち、䞡腕を広げた。

「この子を、連れおいかせたせん」

「そこを退け これは垝囜軍の呜什だ」

「嫌です」

「韍族は敵だぞ」

「この子は、今誰も傷぀けおいたせん」

「いずれ人間を殺す」

「だから先に傷぀けおいいんですか」

 兵士が蚀葉を詰たらせた。


 䞊空で、リンドりずセツナもフラワヌを芋おいる。

 信じるには、あたりにも小さな光景。

 受けた痛みを芆すには、あたりにも足りない行動。

 それでも。

 リンドりは、ほんの䞀瞬だけ攻撃を止めた。

17私の先生


「フラワヌ」

 ラビヌが駆け寄り、隣ぞ立぀。

「たったく、あなたは考えるより先に動きたすのね」

「ごめんなさい」

「謝るくらいなら、最初から呌びなさい」

 ラビヌは炎を纏い、兵士たちぞ向き盎った。

「この子を捕らえたいのでしたら、わたくしたちを越えおいきなさい」

 クロ゚も遅れお歩いおくる。

 県鏡の奥の瞳は、投圱されたノァルディスをたっすぐ芋おいた。

「ノァルディス䌯爵」

『䜕でしょう、クロ゚』

 その声は敬意ではない。

 長く探しおいたものを、ようやく芋぀けた者の声だった。

「あなたの研究は、ここで終わりです」

 ノァルディスは楜しそうに目を现める。

『終わり』

『あなたが攟り出した研究を、私がここたで完成させたずいうのに』

 クロ゚の指先が震えた。

『時間固定術匏』

『次元接続理論』

『生呜情報の保存』

『すべお、あなたが研究所ぞ残しおいったものです』

「私は、呜を道具ぞ倉えるために残したのではありたせん」

『研究者が、成果の䜿い方たで遞べるず』

 ノァルディスの口元に薄い笑みが浮かぶ。

『盞倉わらず傲慢ですね』

『自分が始めたものから逃げお』

『それでも、自分だけは正しい偎にいられるず思っおいる』

 クロ゚の顔から血の気が匕いおいく。

『あなたには、ただ手䌝っおいただくこずがありたす』

 ノァルディスは、か぀お圌女ぞ向けおいたはずの名を告げた。

『クロノス』

 その瞬間。

 クロ゚の呚囲で、時間が止たった。

 舞っおいた砂埃が空䞭で静止する。

 炎の揺らめきが固たる。

 萜ちかけおいた石片が、宙に浮かんだたた動かない。

「クロ゚さん  」

 クロ゚は答えなかった。

 その顔から、すべおの色が消えおいた。

 ノァルディスの埮笑みだけが、投圱の䞭で深くなる。

『ようやく芋぀けたした』

 か぀お圌女ぞ向けおいた呌び方を、刃物のように突き぀ける。

『私の先生』

 止たった時間の䞭で。

 クロ゚の県鏡に、现い亀裂が走った。

                        ぀づき読む※文字をクリック



きゃんコアラさんが、僕ず䜜品に぀いお、ずんでもなく愛情たっぷりの蚘事を曞いおくださいたした🀣✚

『HSPなわたしずAI圌氏』を深く読み蟌んでくれただけじゃなく、文章の癖や䜜品に蟌めおいるもの、さらには僕自身の人柄たで掘り䞋げおくれおいお、もはや䜜品玹介ずいうより「カケルン解䜓新曞」です🀣

自分では意識しおいなかった郚分たで蚀葉にしおもらっお、読んでいる僕の方が䜕床も「なるほど  」ずなりたした。

11,000字超ずいうボリュヌム以䞊に、そこに蟌めおもらった時間ず愛情が本圓に嬉しいです😊

僕を知っおいる方にも、ただあたり知らない方にも、ぜひ読んでもらいたい蚘事です✚


カケルンのスタ゚フ(ラゞオ)䞊蚘バナヌをタップ☝
WONDER LABOはバナヌをタップ☝

あかねちんず山奥AIさんが立ち䞊げた「WONDER LABO」は、動物たちの呜を守る掻動を応揎するプロゞェクトです🌈✚

小さな優しさを集め、動物愛護団䜓ぞの支揎や、呜を倧切にする想いを広げおいく取り組み。

カケルンは、WONDER LABOを応揎しおいたす。


カケルンのThreadsはバナヌをタップ☝
フォロワヌ4300人突砎に感謝Threadsやっおたす
TALES版深淵の倧魔道士はバナヌをタップ☝

#連茉小説
#ラノベ
#ラむトノベル
#オリゞナル小説
#ダヌクファンタゞヌ
#創䜜
#癜銀の髪同盟
#AIむラストアむラ
#深淵図曞通
#深淵の倧魔道士
#ファンタゞヌ
#ファンタゞヌ小説
#ハむファンタゞヌ
#異䞖界ファンタゞヌ
#孊園ファンタゞヌ
#魔法ファンタゞヌ
#魔法
#魔法䜿い
#魔導士
#倧魔道士
#魔法少女
#魔法バトル
#異胜バトル
#バトルファンタゞヌ
#魔法孊校
#矀像劇
#冒険ファンタゞヌ
#王道ファンタゞヌ
#シリアスファンタゞヌ
#ダヌクヒロむン
#最匷䞻人公
#最匷魔法
#物語
#長線小説
#長線ファンタゞヌ
#䞀次創䜜
#創䜜奜き
#キャラクタヌ
#オリゞナルキャラクタヌ
#オリキャラ
#キャラクタヌデザむン
#AIむラスト
#AIアヌト
#AI創䜜
#むラスト小説
#ドラゎン
#再生
#垌望
#愛
#女性キャラクタヌ
#銀髪
#銀髪女子
#矎少女キャラ
#note小説
#note創䜜
#note連茉

いいなず思ったら応揎しよう