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ツレシモノ〜憑かれしものの残響録〜第十䞃話 厩壊

気を倱っおいたはずの男。倒れたたたで動かない。ただ右腕だけが、別の生き物のように圌方の手銖を掎んでいた。

「くっ」

男の指に力がこもる。䞀本䞀本が食い蟌むように、圌方の手銖を匷く握り蟌んでいく。圌方は右手で持った封印呪具に、䞊から巊手を圓おおさらに抌し蟌む。しかし、ピクリずも動かない。

さらに指が食い蟌む。手銖に鋭い痛みが走った。これ以䞊はダバい。圌方は腕を内偎に捻り、匷匕に振り解く。そのたた埌方ぞ跳んだ。

「掞倪郎。もう意識は刈れない。怪異化だ」

『  了解した。党員に通達。譊戒レベルを二から四に匕き䞊げろ。結界維持を最優先。救助班、救護班は消防ずの連携を密にしろ』

緊迫した雰囲気が珟堎党䜓に広がる。圌方は右手を封印呪具の先端から離し、柄に握り盎す。こうなるず、杭の先端郚分を圓おるだけでは䞍十分だ。盎接打ち蟌むしかない。男が臎呜傷を負う危険もあるが、やむを埗ない。

男の右腕が䞊がった。続いお、巊腕。䞡腕が頭䞊ぞ䌞びおいく。たるで芋えない糞に吊られた操り人圢だった。その腕に匕かれるように、男の䞊䜓がゆっくりず持ち䞊がる。腰が浮き、膝が䌞びる。銖だけは埌ろに反り返ったたた。やがお䞡足が地面を螏み、党身がたっすぐに䌞びきった。

ガクン。

突然、男の䜓が前ぞ傟いた。䞡腕がだらりず垂れ䞋がる。そこで、動きが止たる。

「ァァァァァァァアアアアッ」

空気を切り裂くような咆哮。男の喉から発せられたずは思えないほどの声量に、ビリビリず空気が震えた。同時に、男から感じる霊力の匂いが爆発的に濃くなる。

『圌方霊力倀、急䞊昇』

「分かっおいる」

それでも、霊力は䜓の倖ぞ出おこない。霊障抑制結界が、膚れ䞊がる力を䟝代の䞭ぞ抌し蟌めおいる。ただ勝機はある。圌方は巊腕を前に出し、封印呪具を持った右手を埌ろに䞋げ、右脚に力を蟌める。

地面を蹎る。䞀気に加速し、男の巊偎ぞ螏み蟌む。男は動かない。圌方が暪を駆け抜けおも、顔すら向けない。こちらを意識しおいる気配さえなかった。

譊戒しおいないはずがない。なのに、動かない。圌方は封印呪具を顔の前に構え、そのたた男の巊偎を抜けた。巊足を匷く螏み蟌む。

ザッ

靎底がアスファルトを擊る。勢いを殺し、その反動で䜓を反転させる。再び地面を蹎った。男はただ動かない。䞀気に間合いを詰め、肩口めがけお封印呪具を振り䞋ろす。

その瞬間。男の右腕だけが動いた。

バシッ

「ぐっ」

右腕が匟かれ、その勢いに䜓たで持っおいかれた。圌方は逆らわない。地面を蹎っお埌方ぞ跳びながら、匟かれた勢いのたた䜓を右ぞ䞀回転させる。

䞀瞬、男が芖界から消えた。それでも、匂いは倖さない。着地。圌方はすぐに腰を萜ずした。男は同じ堎所に立っおいる。銖を前ぞ垂らしたたた、右腕だけが、ゆっくりず元の䜍眮ぞ戻っおいった。

「ちぃめんどくせぇ」

すぐに構え盎し、再び距離を詰める。今床は男ではない。右腕だけに意識を集䞭する。匂いが動いた。霊力が右腕ぞ集たる。来る。右腕が動く、その䞀歩手前。圌方は䜓を逞らした。

ブンッ

右手が目の前を通過する。よし、圓おられる。その瞬間。

ボンッ

小さな爆発音。同時に、男の匂いがその堎から消えた。

ザザッ

地面を擊る音。芖線を向ける。䞉メヌトルくらい離れた堎所で、男は獣のような四぀ん這いの姿勢になっおいた。顔を䞊げ、こちらを芋おいる。その䞡目が赀い。芖力の悪い圌方にすら分かるほど、赀々ず燃えおいた。

「獣かよ。それによぉ」

歯軋りしながら呟く。錻を刺す、新しい匂い。焊げたアスファルト。男のいた堎所が、黒く煀けおいる。さっきの爆発だ。

「掞倪郎結界出力を䞊げろ。綻びはじめおやがるぞ」

『結界班、結界維持率は』

『九十䞉パヌセント護笊の術匏が数枚、焌き切られおいたす』

『䞀床目の咆哮の時かたずいな』

たるで掞倪郎のその声に呌応するかのように、男が再び倧きく口を開く。

「ァァァァァァァァァッ」

「たた来るぞ」

『抑えろ』

火の霊が出力を䞊げる。結界が抌さえ蟌む。霊力がさらに膚れ䞊がる。結界が抌し戻す。男の䜓が赀く染たり始めた。抌し蟌められた霊力が、䟝代の内偎で暎れ回っおいる。倧気が熱を垯びる。錻を突き刺す、焌け぀くような匂い。

「掞倪郎マゞでやべぇぞ」

『分かっおいる結界班、出力を䞊げろ』

掞倪郎が叫ぶ。

ギシッ

䜕かが歪んだ。次の瞬間。

キィィィィン

甲高い音が䜏宅街に響き枡る。圌方は思わず䞡耳を塞いだ。

『北西、結界物が限界です』

『出力を萜ずすな』

ギシッ。

音が倧きくなる。

『もちたせん』

ドンッ

『結界物、䞀基砎損』

その瞬間、男の䜓から火の霊力が噎き出した。

「くっ」

熱颚が圌方の䜓を叩く。

『残り四基で抑えろ』

再び霊力が男の䜓ぞ抌し戻される。だが。

「ァァァァァァァアアアッ」

ドンッ

『二基目、砎損』

たた霊力が溢れる。残った䞉基が抌し戻す。

ギシッ

「ァァァァァァァッ」

ドンッ

『䞉基目』

間を眮かず。

ドンッ

『四基目、砎損残り䞀基です』

「掞倪郎」

もう限界だ。五基で抌さえ蟌んでいた霊力を、たった䞀基で支えられるはずがない。

『結界班、退避行動に移れ結界が厩壊する』

男がゆっくりず顔を䞊げた。䞡腕が倩ぞ䌞びおいく。

『退避しろ』

「ァァァァァァァァァァァッ」

ギシッ

䞀瞬。音が消えた。

ドンッ

最埌の結界物が砎壊された。その瞬間、それたで五぀の結界地点で抌さえ蟌たれおいた霊力が、䞀斉に噎き出した。

ゎォッ

五本の火柱が、倜空ぞ突き䞊がる。

「たずい」

そしお次の瞬間、䟝代の䞭に抌し蟌められおいた膚倧な霊力たでもが、䞀気に解攟された。

ゎォォォォォォッ

圌方の芖界が赀く染たる。結界が厩壊した。

いいなず思ったら応揎しよう