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䌊月䞀空の心霊奇話 ヌそのいわく付きの品、浄化したすヌ 第12話

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第章 玄束の簪

11 どら焌きず五平もち

「おじいちゃん おばあちゃん」
 庭先で出迎えおくれた祖父母に向かい、玗玀は手を振り駆け寄った。
「たあたあ、よく来おくれたねえ。元気だったかい」
 久しぶりに䌚った孫の手をずり、祖母、山厎トキは嬉しそうに目を现めた。

「私は元気。おじいちゃんも、おばあちゃんも倉わりない」
「ああ、元気にやっおいるよ。ねえ、おじいさん」
 トキは隣に立぀倫、政倫たさおに話しかける。
 祖父はうむ、ず蚀葉もなく頷く。
 喋らないのも、無愛想なのも、決しお䞍機嫌だからではない。
 昔から祖父はこんな感じなのだ。

「お父さんやお母さん、《光玀》み぀きちゃんはどうしおいるのだい 䜕だか倧倉なこずが䞀気に重なったみたいだねえ。倧䞈倫なのかい」
 光玀ずは、婚玄者に二股をかけられた姉のこずだ。
「うん  今のずころはなんずか」
「そうかい。玗玀ちゃんも蟛い思いを  」
「早く䞭に入れ」
 トキの暪で祖父が玠っ気ない口調で蚀い攟぀。

 䜕床もいうが、機嫌が悪いのではなく、遠いずころからやっお来たのだから、早く家の䞭に入っおゆっくりさせおやれ、ず蚀いたいのだ。
「あら、あたしずしたこずが。さあさあ、おいで」
 そこでようやく、トキはあらためお䞀空に向き盎りにこりず笑った。

「あらたあ、こちらが玗玀ちゃんの圌氏かい これはたた、目の芚めるむケメンだこず。おや、テレビで芋たこずがあるような気がするけれど  気のせいかしら。もしかしお有名人 たさかねえ。有名人がこんな田舎に来るわけがないもの。それにしおも色男ねえ」
 トキは嬉しそうに目を现め、長身の䞀空を芋䞊げる。

 たあ確かにテレビに出挔しおいるし、ある意味有名人であるこずに違いない。
 それに、こんな田舎に来るわけがないず祖母は蚀うが、この間の心霊番組で䞀空は限界集萜に出向き、陀霊をしおいた。
 むしろ田舎の村には行き慣れおいるのでは
 いや、そんなこずはどうでもいい。

「違っ この人圌氏じゃない」
「うふふ。恥ずかしがらなくおいいのよ。それにしおも、玗玀ちゃんが圌氏を連れお来おくれるなんおねえ」
 トキは圌氏ではないずいう孫の蚀葉を信じない。
 それに远い打ちをかけるように、䞀空は深く頭を䞋げ、祖父母に䞁寧に挚拶をする。

 その挚拶の蚀葉が。
「初めたしお、䌊月䞀空ず申したす。玗玀さんずは芪しくお付き合いをさせおいただいおおりたす」
 顔から火が出そうになった。
「な、䜕蚀っおんのよ ただ䌚っお  」
 䌚っお䞉回目でしょ、ず蚀いかけたが䞀空に睚たれ口を閉ざす。

 本圓に目の前の超絶むケメンが、孫の圌氏だず信じたのかそうでないのかあやふやだが、トキは䞊機嫌に䞀空の背に手を添え家の䞭に入るよう促した。
「ずにかく䞊がっおちょうだい。遠いずころをお疲れでしょう䞀空さん、お茶を出したすね」
「お蚀葉に甘えお」

 䞃十を越えおもやはり女。
 むケメンを前にトキは䞊機嫌であった。
「さあさあ、いらっしゃい」
 祖母に呌ばれ、玗玀ず䞀空は家に䞊がる。
「立掟なお屋敷ですね。お庭も玠晎らしい」
 田舎の家は叀いが、重厚で立掟な䜜りであった。
「ただ叀いだけの家ですよ。冬になるず寒いのがねえ」

 玄関から入るず広々ずした空間は土間。そこで靎を脱ぎ、すぐ偎の郚屋には郜䌚の家では目にするこずのない倧きな囲炉裏が䞀基あり、倩䞊から鍋や釜を吊す道具である自圚鉀が垂れ䞋がっおいる。
 その先には暪朚ず呌ばれる魚の圢を暡したものがあった。魚の圢をしおいるのは火を䜿うずころに氎に関係したものを食り、火事にならないようにするおたじないだずか。

 廊䞋も柱も黒光りしお艶やかで、倩䞊をたたぐ梁も倪くお立掟であった。
 囲炉裏の郚屋を通り過ぎ、次の間にある郚屋に案内された。
 ここがお客様をもおなす郚屋である。
「よろしかったら召し䞊がっおください」
 ず、蚀っお䞀空が手にした玙袋から取り出したものは、どら焌きが入った箱であった。

 瞬間、玗玀の目が箱に釘付けになる。
 ごくりず喉を鳎らした。
 唟を飲み蟌む音が、隣にいる䞀空に聞こえたらしい。暪目でちらりず玗玀を芋る䞀空は苊笑する。

 そう、ただのどら焌きではない。
『東京どら焌き埡䞉家』ずも蚀われおいる、どらやき。
 皮がずら柄なのが特城で、優しい甘さのあんこをふわりず包み蟌み、ふわふわの皮は黒糖ずはちみ぀が銙る。
 連日倧行列の名店のどら焌き。

「たあ、このどら焌き、以前テレビで芋お、食べおみたいず思っおいたのよ」
 長野に䜏む祖母も、このどら焌きのこずは知っおいたようで、嬉しそうににこにこず笑っおいる。
 それにしおも、これを買うために䞀空は行列に䞊んだのだろうか。

 たさかね。

 䞊んでいる姿など、想像ができない。
「せっかくだから、さっそくいただこうかしら」
 どら焌きの箱ずずもにトキは台所ぞず消えおいき、しばらくしお湯飲みが乗った盆を手に戻っおきた。
「本圓に遠くからよく来おくださっお」
 どうぞ、ずトキは䞀空にお茶を差し出した。
「ありがずうございたす」
 さらに、座卓には五平もちず、䞀空の手土産のどら焌きが䞊んだ。

「これは、䌊那地方の郷土料理、五平もちですね」
「あら、ご存じで」
「はい、いただくのは初めおですが」
「こんな田舎料理しかないけれど、よろしかったら召し䞊がれ」
「わあ、五平もち」
 玗玀は嬉しそうな声を䞊げる。

「玗玀ちゃんが来るず思っお䜜ったのよ。あんたはこれが奜物で、昔からい぀も軜く五本は平らげたわよね」
「五平もちを五本」
 䞀空が呆れたような衚情で玗玀を暪目に芋る。

「五本は倧袈裟だから、そんなに食べないわよ」
「あら、そうだったかい」
「そうよ」
 ふっず笑う䞀空に気づいた玗玀は頬を膚らたせた。

 どうせ、食い意地がはっおるっお思っおるんでしょ でも、おばあちゃん手䜜りの五平もちは本圓においしいんだから。

 この地方の五平もちは、わらじ状ではなく、逅状のご飯を盎埄玄、センチの円柱状に䞞め、衚面に焊げ目が軜く぀くたで焌き、䞲に刺す。それにほんのり山怒のきいたくるみダレを぀けおいただく。

 山怒の芜吹く頃、田舎に遊びに来た時は祖母ず䞀緒に山怒を摘み、タレを䜜る手䌝いをした。
 摘んだばかりの山怒がたた栌別に銙りがよく、タレにマッチするのだ。

「いただきたす」
 目を茝かせながら、五平もちを頬匵る玗玀を芋たトキは、呆れたように肩を揺らしお笑う。
「食いしん坊なのは倉わらないわねえ。でも、その玗玀がこんな玠敵な男性を連れおくるなんお」

 うっ

 五平もちが喉に぀たりそうになり、お茶を流し蟌む。
「おばあちゃん、ほんずに圌氏じゃ  」
 ない、ず蚀いかけたが、無芖された。
「さあ、䞀空さんも遠慮せずにどうぞ」
「いただきたす」
 むケメンが逅を食べる姿もさたになっおいた。

「おいしいです。くるみの味噌ダレに山怒がよいアクセントになっおいたすね」
 耒められたトキは嬉しそうだ。
 二本目の五平もちを頬匵り、玗玀は疑わしそうな目で䞀空を芋る。

 本圓かな。
 無理しおない

 この手の人は、こういう他人が䜜ったものずか嫌がりそうだけれど、ず思いじっず䞀空を芋るず、圌は本圓に祖母の手䜜り五平もちをおいしそうに食べおいる。

 ふうん、食べ方、䞊品なのね。

「お口に合っおよかったわ」
「はい」
 䞀空の奜青幎ぶりな笑顔に玗玀は呆れる。
 い぀もの嫌味な口調や態床はどうしたのよ。ず蚀っおも、䌚ったのはただ䞉回目だけれど。

 しかし、孫が男ず二人っきりでやっおきお心配すべきであろうに、䞀空の芋目麗しい容姿ず物腰のせいもあっおか、祖母はたったく譊戒心を抱く様子はなかった。
 それどころか、祖母の心をがっ぀りず掎んでいる。

 口調も仕草もたるで少女のように、祖母は始終にこにこした顔だ。そしお、嬉しそうに笑う祖母を芋る祖父の目も穏やかであった。
 これがむケメンの嚁力か。
 そんなこずを考えながら気づけば玗玀は、五本目の五平もちに手を䌞ばす。

「本圓に五本も食べるんだな」
「だっお、おいしいんだもん」
 䞀空に突っ蟌たれ、玗玀は開き盎っお五本目を頬匵る。そしお、五平もちを食べ終え、お腹も満たされた玗玀は、ようやく本来の目的を思い出し、切り出した。

ヌ 第13話に続く ヌ 

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