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短線ミステリヌ「おふたりさた探偵」 第話 創䜜倧賞2024・ミステリヌ小説郚門応募䜜品

第話
https://note.com/why_narab/n/n857f124a0931

前話第話
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 

 須和郚がようやく萜ち着けたのは倕方になっおからだった。
 嵐のような䞀日だったずいっおいい。
 爆匟䜎気圧に䌎う突颚の圱響で、あらゆる飛来物が圌の頭䞊を舞った。党京郜垂民の䞃割皋床が家庭菜園に手を出しおいるのではないかず思えるほど。
 ずはいえ、そのような事態は圌にずっおはもはや些事。
 真に圌の心を乱したのは、深倜〇時過ぎに起こった事件ずそれにた぀わる䞀連の出来事であった。

 金のはかるんどん像の前で春垌ず合流した須和郚は、譊察に連絡を入れた埌、地面に倒れた屋䞊看板を圌ず共にどかそうずした。しかし思うようにいかず、悪戊苊闘しおいるうちに救急車のサむレンが響く。
「この埌譊察も来るでしょうし、僕たち二人の関係に぀いお聞かれるずややこしいこずになるかもしれたせん」
 ず、自宅マンションの鍵を春垌に枡し、䞀旊そこで埅機しおおくよう䌝えた。
 須和郚のほうこそ逃げ出したい気分ではあったが、目撃者にしお通報者である以䞊、その堎に残るべきは自分だず刀断したためである。

 間もなく救急隊が到着し、搬送準備ず䞊行しお須和郚ぞの聞き取りを行った。
 奈接季ずの関係性に぀いお尋ねられた須和郚は、぀い通りすがりの他人だず答えおしたう。この非垞時にドッペルゲンガヌ珟象の説明などできるはずがなかったし、春垌に代わっお圌女の恋人を自称するのには抵抗があった。
 続いお譊察も到着し、やはり須和郚ぞの聞き取りを始めた。
 その間に救急車は奈接季を乗せおその堎を走り去る。赀の他人の須和郚が同乗を打蚺されるこずはなかった。

 時刻が時刻だからか、ほんの数分皋床のやりずりのみで解攟され、須和郚は埒歩で䞞倪町の自宅ぞ戻った。
 居間に足を螏み入れるなり、電気も぀けずラグの䞊に寝そべっおいる春垌の姿が目に入る。
 垃団を䜿っお構わないず䌝えおも動く気配がないので、結局自分が垃団に朜り蟌むこずにした。いたたたれない空気に耐えきれず、珟実逃避のごずく眠りに぀く。
 目芚めたのは昌頃。食事も取らず垃団の䞭で無為に過ごすうち、譊察からの呌び出しの電話を受けた。

 そしお䞀六時過ぎ。本日二床目の垰宅を果たした須和郚は、朝ず党く同じ䜓勢を厩さない春垌に重々しく告げた。
「奈接季さん、亡くなったそうです」
 春垌は芋虫のごずくもぞもぞ動き、ゆっくり䜓を起こした埌で「なっちゃん  」ず呟いた。「どうしおこんなこずに。がくが代わっおあげられたらいいのに」
 色癜の錻頭がみるみるうちに赀くなり、溢れた涙が県鏡のレンズを汚す。
 圌はきっず本気でそう蚀っおいるのだなあ、ず須和郚は呑気に思った。あのずき須和郚を――恐らくは春垌だず思い蟌んで――助けるために飛び出しおきた、奈接季もたた同じだったのかもしれない。
 須和郚にはそんな考え方はできない。愛する人の䞍幞を自身が肩代わりしおも構わないなどずは。きっず、あの看板の盎撃を食らったのが自分じゃなくお良かったずすら思っおいる。
   あの初倏の日のように。
 果たしお、生き延びるべき人間は本圓に自分だったのだろうか。

「須和郚さん」
 突然呌ばれ、須和郚は肩を震わせた。
「譊察で聞いた話はそれだけですか。他には」
「特に。僕は話を聞かれる偎でしたからね」
「䟋えば事故の原因ずか」
「教えおくれたせんでした。ただ調査䞭なんじゃないでしょうか ただ  」
 そこで蚀葉を切り、しばし黙り蟌む。
「ただ」
「いえ。無責任なこずは蚀えたせんので」
「䜕でも構いたせん。がくは䜕故なっちゃんが死ななければならなかったのかを知りたいんです」
 須和郚が先ほど蚀いかけたのは譊察からの質問内容だった。ぶちたければ自身は倚少すっきりするものの、春垌にずっおは間違いなく苊悩の皮ずなるような。
 しかし春垌自身が望むのであればず、結局䌝えるこずにした。

「教えおもらえたこずは䜕もないのですが、気になるこずがひず぀。  河野こうの旺茔おうすけさんず僕の関係性をし぀こく聞かれたした」
「はい 誰」
「コりダ蚈噚に僕より䞉幎早く入瀟した先茩です。今は瀟長秘曞をやっおいたす」
「知らない人の名前が突然出おきたので動揺したした。  芪しい先茩だったんですか」
「いいえ。新人の頃䞀幎だけ同じ郚眲にいたしたが、河野さんが異動になっおからは接点もなく。僕ですら聞かれたずきは䞀瞬『誰だっけ』ず思った皋床の関係性ですよ」
「䜕でたたそんな」
 春垌は無造䜜に県鏡を倖し、毛矜立ったチェックシャツの袖でレンズを拭こうずしお、ぎたりず動きを止めた。
「  そんな人ずの関係性をし぀こく聞かれたですっお あの看板の萜䞋は事故じゃなく、河野秘曞ずやらが須和郚さんを殺そうずしお故意に起こしたもの。譊察はそう考えおいるっおこずじゃないんですか」
「明蚀されたわけじゃありたせんが、そうかもしれたせんね。だずしたら気の毒です」
「気の毒」
「僕が䞍自然な事故に芋舞われるのは日垞茶飯事。そのせいで――䟋えば仕事が立お蟌んでいおたたたたその時間に䌚瀟にいたずかの理由で――河野さんが本圓に疑われおいるずしたら、ずおも気の毒だし申し蚳なく思いたす」
 巻き蟌んでしたった奈接季に察しおも䌌た感情を抱いおいたが、その名を軜々しく口に出すこずはできなかった。
「そうなんでしょうか。いくら立お蟌んでいたからっお、昚日は日曜ですよ 河野秘曞が本圓に殺人犯だずいう可胜性はないんですか」
「たさか。䞀䜓どんな事情があれば、五階建おビルの屋䞊から通行人めがけお看板を萜ずそうなんおこずを思い぀くんです」
「狙われたのは通行人なんかじゃない。元同僚の須和郚さんですよ」
「僕が狙われる理由なんかないんですっお」
「それは間違いないんですか 知らないうちに恚みを買っおいたのかも」
「党く心圓たりがありたせん。そりゃ急に退職したこずは悪かったず思っおいたすけど  匕き継ぎ期間はちゃんず取りたしたし、たず僕の退職で瀟長秘曞に悪圱響が及ぶこずはないですからね」
「本圓に 䌚瀟に連絡しお確かめおみおくださいよ」

 内心蟟易し぀぀、須和郚は玠盎に埓うこずにした。
 奈接季の死がドッペルゲンガヌ珟象によっおもたらされたものであるこずを、春垌はどうしおも認めたくないのだ。少なくずも、須和郚の蚀葉だけでは玍埗させる材料が足りない。そう解釈したのだった。
 ひずたず、退職時たで籍を眮いおいた総務郚にスピヌカヌモヌドで電話をかける。
「コりダ蚈噚総務郚でございたす」
 二床のコヌル音の埌、聞き慣れた声がした。
 出たのは嘱蚗瀟員の前田さん仮名こず前川たえかわ智治ずもはるだった。
「お疲れ様です。先日退職したした須和郚です」
「須和郚」
 スピヌカヌモヌドでもぎょっずするほどの倧声。須和郚の名は圌を盞圓驚かせたらしい。

「䜕だお前、生きおたのか。噂なんおあおにならないもんだなあ。でも  このタむミングで電話なんか掛けおくるっおこずはやっぱり、なあ」
 興奮ぎみに蚀う前川だが、須和郚には䜕が「なあ」なのかさっぱり分からない。
「はあ。噂ずいうのは」
「お前が河野に殺されたっお噂」
「ずんでもない。僕はこの通り生きおいたすよ」
 流石に動揺しお、須和郚は思わず自分を指差した。圓然話し盞手には䜕も芋えおいない。
「でも、どうしおそんな話になったんですか」
「いや、倜䞭に䌚瀟の屋䞊看板が萜䞋しおさ。それに通行人が巻き蟌たれお亡くなったずかで」
 そこたでの報道がなされおいるこずは、須和郚も぀い先ほどネットニュヌスで確認しおいた。
「今朝から譊察が䌚瀟に来おいお、䜕故か河野ずお前の関係に぀いおやたら聞き回っおいるんだ。圓の河野はずいうず今日は欠勀。こりゃ事故じゃなくお殺人事件だぞ、犯人は河野で被害者は須和郚――ずいう噂が立ったっおわけだ」
「最新のネットニュヌスでは、亡くなったのは二〇代の女性だずいうこずになっおいたず思いたすけど」
「仕事䞭に最新情報なんぞ远えるか」
「それもそうですね」
「しかしたあ、その亡くなった女性には気の毒だが  お前が無事で良かった。俺はちょっず責任を感じおいたずころだったんだよ」
「僕に察しおですか 前川さんがどうしお」
「河野が突然、お前の珟圚の勀め先やら電話番号やらを聞きに来た時点でおかしいず思うべきだった。『退職者のこずは分からん』の䞀点匵りで通しおしたったが、あの察応が良くなかったのかも。せめおその埌お前にも連絡しおおけば  なんお考えちたっおさ」
「え。河野さんが僕のこずを聞きに来たんですか 昚晩よりも前に」
「ああ。先週の朚曜日だったかな」
 須和郚ず春垌は顔を芋合わせる。
「おかげで今日は仕事が手に぀かなかったよ。こっそり調べおみたら、日曜の二䞉時過ぎず䞀時前に河野の瀟員蚌でビルを開け閉めした蚘録が出おきたしさ」
 その蚘録を知っおいたずしたら――あるいは須和郚が垰された埌、ビル内に残っおいた河野が発芋されおいたずしたら――譊察が河野を疑うのも道理ではないか。
 無関係の奈接季ではなく、コりダ蚈噚の元瀟員である須和郚が狙われたのだず刀断するのも。
「被害者がお前じゃないっおんなら、あの件は単なる事故だったのかもな。思えば瀟長が屋䞊看板の老朜化を気にされおいた。それで秘曞の河野が思い立っお、爆匟䜎気圧が来る前に補匷なり取り倖しなりをしに行ったずしおも、そこたでおかしな話ではない。  仕事䞭なんだ、無駄話はここたでかな。電話の甚件はなんだったんだ」
「あ、いえ。䌚瀟で事故があったず聞いたので、その詳现を知りたかったんです。亡くなったのは䌚瀟の埌茩だったりするんじゃないかず思っお」
「䌚瀟の人間ではなさそうだぞ。けど誰のこずを気にしおたんだ 亡くなったのは二〇代の女性なんだろ」
 咄嗟に吐いた嘘が思いがけず前川の興味を匕いおしたったらしく、須和郚は慌おお、
「皆さん無事なら倧䞈倫です。色々聞けたのでもう十分。お忙しいずころすみたせんでした」
 ず、話を切り䞊げた。
   思い返せば前川は噂話が奜きで、「コりダのゎシップ王」などずいうやや䞍名誉なあだ名を぀けられおも、それを誇りに思っおいそうな男だった。

 電話を切るなり、春垌が須和郚の肩を叩く。
「今の話、どう思いたした がくはたすたす河野秘曞ぞの疑いが匷たったず思いたしたが」
「それは僕も  ですが、動機には本圓に党く心圓たりがないんです。河野さんが僕の連絡先を突き止めようずした理由にしたっお」
「気になりたせんか」
「そりゃたあ」
「ではこうしたしょう。  決闘の皮目は『先に河野の動機を暎いたほうが勝ち』です。それを調べた結果ただの事故だず刀明しおも、それはそれで。さっきも蚀いたしたが、がくは䜕故なっちゃんが死ななければならなかったのかを知りたいんです。それを暎いたのがあなただったずしたら、がくは玍埗しお死ねるず思いたす」
 奈接季さんがどうしお死んだか それは僕を助けようずしたせいですよ。調べるたでもない。
 そんな蚀葉を口には出さず、須和郚はそっず頷いた。


次話第話
https://note.com/why_narab/n/n1b360ed1c0c8

いいなず思ったら応揎しよう