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「良い会社」なのに売るべきか?米国株サテライト投資で学んだポートフォリオ棚卸しの重要性

※本記事は、米国株・個別株投資に関する個人的な調査メモです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載している業績数値、バリュエーション、投資判断、ポートフォリオ方針等は、執筆時点の公開情報および個人的な分析に基づくものであり、正確性・完全性を保証するものではありません。投資判断は必ずご自身で一次情報を確認し、自己責任でお願いします。

こんにちは、unipastaです。サテライトに入れる銘柄のスクリーニングをClaudeを使ってやっていたのですが(前の記事参照)

そもそも保有しているサテライト銘柄はこれくらいちゃんと考えて買っていないので、棚卸したほうがよいのではと思い至りました(今日も家から出られなくて暇だったとも言います)。

なぜ今回ポートフォリオの棚卸しをしたのか


いま自分の投資プロセスをClaudeで自動化していく実験をしているのですが、

公開で投資するにあたって考えている(た)ことを書くと、やはり自分に対する規律が強くなります。プライベートなメモだと、なんとなくごまかせるところも、公開するとなるとちゃんと言語化せざるを得ません。

Noteでのアウトプットを始める前に適当に買った現在のサテライト銘柄は以下の5つです。

  • IONQ + IONL:サテライトの37.4%、投資損益 -39%

  • TEM:26.8%、損益 -9%

  • TYL:16.2%、損益 +10%

  • SOFI:16.2%、損益 -14%

  • RXRX:3.3%、損益 -33%

一部は、かなり薄い投資仮説で買っています。「AIバイオが面白そう」「なんとなく良さそう」「テーマとして伸びそう」という感じです。(損益見て個別株の下手くそさに嫌気がさしますね。。コアでは年初来FANG+とTQQQとフツナスが大活躍してるので、下手くそはそれだけやってろ説はあります。。。)

そこで、今回の棚卸しではシンプルにこの問いから始めました。もし今日この銘柄を持っていなかったとして、私はいまClaudeで実装したdue diligenceを経て新規で買うだろうか?


今回使ったフレームワーク

新規ポジションを見るとき、私はざっくり7つの軸で見ています。

  1. 顧客集中度:単一顧客が売上の5%超ではないこと

  2. 収益性:GAAP黒字 and/or FCF黒字(できれば)

  3. バランスシート:ネットキャッシュ、または低レバレッジ

  4. AIポジショニング:AIに代替される側ではなく、AIを実装する側

  5. 顧客の質:ソブリン、または投資適格級の相手

  6. ポートフォリオ・フィット:AIインフラ・テーマとの整合性

  7. 顧客集中度のトレンド:安定、または分散方向

既存ポジションの棚卸しでは、これに加えて3つのレンズを足しました。

非対称アップサイドがあるか:10xの可能性があるか。少なくとも+50%以上の十分なアップサイドが見込めるか
サンクコスト・チェック:今日この株価で新規に買うか。
Thesisを一文で説明できるか:なぜこの銘柄が私のポートフォリオに入っている必要があるのか。


1. RXRX:Easy Sell

まずはRecursion Pharmaceuticals、RXRXです。

AI創薬を掲げるclinical-stageのTechBio企業です。ポジションサイズはサテライトの3.3%、現在は-33%。

エントリーした時の仮説は、正直かなり雑でした。

「AIが創薬を変える」
「RXRXはその中でも野心的なAIプラットフォームを持っている」
「臨床データが良ければ非対称アップサイドがある」

くらいです。

今回あらためて見直すと、かなり厳しかったです。

まず、収益性は大きくアウトです。直近四半期だけでNet lossは2.02億ドル。黒字化は少なくとも5年以上先で、しかも臨床成功に依存します。

次に、バランスシート。現金は7.54億ドルありますが、年間キャッシュバーンは約3.9億ドル。単純計算で2年程度のランウェイです。すでにATM facilityから3.875億ドルを引き出しており、2027年までに追加希薄化が起きる可能性はかなり高そうです。

そして一番大事なのは、ポートフォリオ・フィットが弱いことです。

RXRXはAIインフラではありません。AIを使う研究所です。私がサテライトで取りたいのは、AIインフラのボトルネックや長期的な計算資源のレイヤーに近いところです。さらに、競争環境も楽ではありません。TechBio領域ではInsilicoやSchrödingerなど、よりフォーカスされた競合もいます。

リードアセットであるREC-4881も、対象疾患はFAP、Familial Adenomatous Polyposisです。米国患者数は約5万人。承認されれば価値はありますが、ピークセールスは3〜5億ドル程度と見られ、アップサイドはあるものの、無限ではありません。

結論は、フレームワーク上は売却です。ただし、売却タイミングは少し考えました。ポジションサイズはサテライトの3.3%と小さい。仮にゼロになっても、全体へのダメージは限定的です。一方で、Digestive Disease Weekが5月2〜5日にあり、昨年はそこでPhase 2データを発表しています。また、Q1 2026決算は5月6日予定です。

なので、結論としては、

売却する。ただし、5月6〜9日の週、決算と短期カタリストを見た後に実行する。


2. IONQ:Conviction Hold

次はIonQです。トラップドイオン方式の量子コンピューティング企業です。IONQとIONLを合わせて、サテライトの37.4%。現在は-39%。

私のサテライトの中では、一番投資仮説を説明しやすい銘柄です。

ざっくり言うと、

量子コンピューターは、AIインフラのさらに長いサイクルで見た計算資源レイヤーであり、IONQはその中で最も見やすいpure-playである

という仮説です。

IONQは、99.99%のtwo-qubit gate fidelityという世界記録を持ち、現金は33〜35億ドル。4〜5年分のランウェイがあります。RPOは前年比で7700万ドルから3.7億ドルへ拡大。顧客にはAWSやAstraZenecaも含まれます。Q4 2025の売上はガイダンス中央値を55%上回っており、ガイダンスを保守的に出して上回る文化もあります。

棚卸し結果は以下です。

収益性はアウトです。Adj EBITDAは年間で-3.1〜3.3億ドルの赤字ガイダンス。これはサテライトで非対称アップサイドを取りに行く以上、受け入れているトレードオフです。一方で、バランスシートは強いです。35億ドルのキャッシュがあり、数年分のランウェイがある。ゼロになるリスクは、構造的には低いと見ています。

AIポジショニングもかなり良いです。多くのソフトウェア企業はAIに代替されるリスクがありますが、量子コンピューティングはむしろAI時代の計算需要の延長線上にあります。

取引相手の質も良い。ソブリンや投資適格級の顧客が混ざっています。

ポートフォリオ・フィットも高いです。AIインフラの長期テーマとしては、かなり中核に近い。

今回悩んだのは「売るか」ではなく、5月6日のQ1決算前に買い増すかでした。

ここでは、4シナリオで考えました。

期待値をざっくり計算すると、約-4%でした。良くはないですが、ポジションサイズ、非対称アップサイド、決算後の情報価値を考えると、Holdが妥当と判断しました。決算前の追加はしません。


3. TYL:Hold (Category change)

次はTyler Technologies、TYLです。政府向けSaaSの会社で、裁判所システム、公共安全、自治体記録などを提供しています。ポジションはサテライトの16.2%、現在は+10%。今回「カテゴリーの間違い」を教えてくれたのがこの銘柄でした。

棚卸し結果はかなり良いです。顧客集中度は非常に良い。多数の政府系顧客があり、単一顧客依存は小さい。収益性も強い。GAAP黒字、FCF黒字。SaaS売上は21四半期連続で20%以上成長。バランスシートも良いです。Debtはゼロ、現金は3.16億ドル。6億ドルのconvertibleを返済し、2.5億ドルの自社株買いも行っています。

AIポジショニングも悪くありません。政府向けの業務にAIを実装していく側であり、AIに代替される側というよりは、AIを活用する側です。

問題は、ポートフォリオ・フィットです。TYLはGovtechです。AIインフラに隣接はしていますが、コアではありません。そして、さらに重要なのが、非対称アップサイドが弱いことです。

TYLの時価総額は約150億ドルです。10xするには1500億ドル企業になる必要がありますが、それはgovtech市場全体のサイズを考えてもかなり難しい。ブルケースでも、12〜18カ月で+60〜75%程度が上限かなと思います。期待リターンとしては+25%くらい。これはディフェンシブ・グロースとしてはとても良いのですが、サテライトで求めたいものとは少し違います。

実は私は、このポジションに対して以前から少し違和感がありました。「良い会社だけど、サテライトとしては少し安定成長すぎてキャラ違いなのでは?」という感覚です。

今回の棚卸しで、結論は、分類変更です。ポートフォリオ内に「コアプラス」というカテゴリーを作ることにしました。

整理すると以下です。

  • Core
    インデックスETF。Beta exposure。大きな下落でも基本売らない。

  • コアプラス
    個別株だが、インデックスに近い性質を持つ高品質銘柄。Quality compounder、defensive growth。10年保有前提。期待リターン25〜40%でもOK。

  • Satellite
    4〜5銘柄の集中投資。非対称アップサイドを狙う。AIインフラが主テーマ。

ポジションは正しくても、カテゴリーが間違っていることがあります。カテゴリーは飾りではありません。サイズ、売却基準、何を「成功」とみなすか。その後の意思決定を全部決めます。分類を間違えたポジションは、必然的にマネジメントも間違えます。


4. TEM:決算待ち

次はTempus AI、TEMです。AIを活用したprecision medicine、特にoncology diagnosticsやpharma data partnershipを展開する会社です。ポジションはサテライトの26.8%、現在は-9%。

棚卸し結果は、かなりボーダーラインでした。

良い点は明確です。

Q4 2025は、初めてAdj EBITDAが黒字化した四半期でした。+12.9百万ドルです。2026年ガイダンスでは、通期Adj EBITDAが+65百万ドル。初の通期黒字化が見込まれています。Q4売上は前年比+83%。Net Revenue Retentionは126%。既存顧客からの拡大がしっかり出ています。Total Remaining Contract Valueは11億ドル超。複数年の見通しもあります。

現金は7.59億ドルあり、短期的な資金調達圧力も大きくなさそうです。

一方で、気になるのは顧客集中度です。

AstraZenecaはwarrantを保有しています。Sanofi、Roche、Merck KGaAなども重要顧客です。ただ、10-Kでの上位顧客集中度の開示は限定的で、ここがやや不透明です。

TEMは、AIを実装する側であり、precision medicineというAIに代替されにくい領域にいます。

事業のinflectionも本物っぽい。ただし、顧客集中度の問題と、Q4黒字化が構造的なものなのか、一時的なものなのかは確認が必要です。

結論は、Q1 2026決算待ちでHold。

判断基準は事前に決めます。

  • 売上が3.45億ドルを上回る

  • 顧客集中度の開示が改善する

この場合は、買い増しを検討。

一方で、下記の場合は減らします。

  • 売上が3.20億ドルを下回る

  • AstraZenecaとの関係に懸念が出る


5. SOFI:今回一番難しかった銘柄

そしてSoFiです。デジタルファーストのnational bankであり、lending、banking、investing、crypto、business bankingまで含むfintech super-appです。

ポジションはサテライトの16.2%、現在は-14%。正直に言うと、このポジションは「感覚」で入りました。

「会員数が伸びている」
「bank charterがあるのは強い」
「これは長期で良さそう」

こういう感じです。

でも、これは投資仮説というより、感覚です。今回あらためて見ると、ビジネスの質はかなり高いです。顧客集中度は非常に良い。会員数は1470万人で、特定顧客に依存していません。収益性も強い。GAAP黒字は7四半期連続。Q1 2026のNet incomeは1.67億ドルで倍増。Adj EBITDAは3.4億ドル、前年比+62%、marginは31%。バランスシートも強いです。National bank charterによる資金調達コストの優位性があります。

会員数は1470万人、前年比+35%。Productsは2220万、前年比+39%。Cross-buyは43%。Rule of 40は18四半期連続で達成し、Q1 2026は72%。

普通に、かなり良い会社です。

ただし、AIポジショニングは微妙です。SoFiはAIを使う会社ではありますが、AIそのものがmoatではありません。Credit decisioningの改善には効きますが、AIインフラ銘柄ではありません。

取引相手の質も、消費者信用という意味ではsub-IG aggregateです。Charge-offは2.04%で管理可能ですが、consumer credit cycleへのエクスポージャーはあります。

そして何より、ポートフォリオ・フィットが明確に悪い。SoFiはconsumer fintechです。私のサテライトの主テーマはAIインフラです。フレームワーク上は、5つの軸をクリアし、2つの軸で落ちるイメージです。

特に大きいのは、一文で説明するテストです。

なぜSoFiが、私のポートフォリオに具体的に必要なのか。これを、AIインフラ・サテライトの文脈ではうまく説明できませんでした。


Single-Thesisか、Multi-Thesisか

多くの個人投資家は、自分には明確な投資仮説があると思っています。でも実際には、多くの場合、それは仮説ではなくバイブスです。

今回SoFiについて考える中で気づいたのは、私は自分がsingle-thesis investorであるかのように振る舞っていたけれど、実はそれを明確に選んだことはなかった、ということです。

私のサテライトはAIインフラ寄りです。

でもそれは、私が「AIインフラ以外は一切持たない」と決めたからではありません。単に、これまで自分が一番上がると思っているがAIインフラだったからです。


棚卸し後のサテライト構造

今回の棚卸し後、私の投資規律はこうなりました。(自分への約束ごとという意味で明文化できてよかった)

高いドローダウン耐性を前提にした、長期サテライト投資家を目指す

ポートフォリオの設計:

・ベータはインデックス・コアで取る(全体の8-9割)

・アルファは4〜5銘柄に集中したサテライトで狙う。主戦場は、AIインフラ(半導体、ネットワーキング、量子、電力。)そのうえで、防御力のあるcompounderには、少額のCore Plus枠を置く。

・Primary thesisの外にある銘柄も、完全には排除しない。ただし許容するのは、事業品質が例外的に高い1〜2銘柄だけ。そして、その保有理由は明示されていなければならない。Exit triggerも、事前に決めておく。


今回のアクションまとめ

今回の棚卸しで、以下のようにアクションを整理しました。そういえばむかしアナリストとして働いていた時も、投資アクションの日記をつけろとか、自分の投資スタイルに忠実に行動しろとか叩き込まれましたが、Claudeと壁打ちすることで結局同じところに行きつけているのは感慨深いですね。技術の進歩です。

  • RXRX
    売却。ただし、Q1 2026決算と短期カタリストを確認したうえで、5月6〜9日の週に実行。

  • TYL
    保有継続。ただし、サテライトではなく「コアプラス」に分類変更。

  • TEM
    Q1 2026決算待ち。売上と顧客集中度の開示次第で、追加または縮小。

  • IONQ
    5月6日決算をシナリオツリーで見ながらHold。決算前の追加はしない。

  • SOFI
    明示的なopportunistic positionとして保有継続。Exit triggerを事前コミット。


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