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子がロンドンA&Eのお世話になった話(5年のうちに2度目)


夜間の怪我

先日、息子が風呂場で転んで眉の上を切った。傷が深く出血も多かったので、応急止血をしながら「111」(救急)に電話した。

夜10時を超えていたが、機械音声のスクリーニングを突破して、すぐに人につながった。

はい、顔色は普通です。体温も普通です。いえ、吐いてません。意識も明瞭ですが、傷跡が残るのが心配なのですぐに処置してもらいたいのです。

15分程度だったかな、細かい質疑に答えた末に「処置が必要ですね、近くのA&Eを案内します」と、救急病院を紹介してもらえた。

我が家は車がないがバス停が近い。そして深夜も路線バスが走っているのが、ロンドンのよいところ。

40分後には紹介された病院のA&Eに到着して「111でリファーラルをもらいました」と告げ、生年月日・氏名・住所で本人確認をしたら、小児用の待合室(Pediatric waiting room)に通された。

NHS(国民保険)では、16歳未満までが小児扱いになるらしい。周りはずいぶん小さな子ばかりだったが、大混雑の大人の待合室よりも落ち着く。

到着後10分くらいでスクリーニングの看護師面談があり、念のための痛み止めを貰った。それから20〜30分で処置室へ。

出血も止まっていたようで、大柄なアフリカ系のお医者様が、手際よく、医療用ボンドと保護テープで処置してくれた。「昔なら縫うところだったけど、今はのり・・(医療用ボンド)があるからよかったね!」と言われた。

ただ、そののり・・は水に溶けるので5日間は絶対に濡らしちゃだめとのこと。体は洗っていいけど、洗髪はがまん。数週間は運動禁止。

処置が終わるとそのまま出口前のバス停に直行して帰宅した。事件発生から帰宅まで、2時間半ほどで終わった。NHSありがとう、深夜バスの運転手さんありがとう、夜勤のお医者様たち、ありがとう。

我が家がA&Eのお世話になるのは、初めてではない。数年前に娘が石畳の道で転んで骨折した時も、「これは日本で救急にかかるより早いな(特に子供が優遇される感じがすごい)」と思った記憶だ。

ただ、それらは前払いで国民保険料を支払っているからいつでも利用できるというわけであって、実際に「完全無料」というわけではない。

NHS利用の手引き

以下は、これからロンドン移住をする人のご参考までに。(企業駐在の人はある程度は会社が手続きしてくれるのかもしれないけど。)

  1. 外国人の場合、NHSを利用するためのIHS(Immigration Health Surcharge)の支払いは、ビザ承認の際に相当期間分が一括で徴収される。2024年に値上げがあり、家族4人・数年分だと軽の新車が買えるくらいの値段になる。逃れる術はない。でも、アメリカとは違い、いざという時に財布を気にせず医療にかかれる保険制度はありがたい。

  2. 住所が決まったら、なるはやで近くのGP(かかりつけ医)に登録する。自己責任の最優先事項である。このサイトで郵便番号を入れたら近くの候補が出る。はっきり言ってどこもあまり変わらないので、よほど評判が悪くなければ近さ優先でいい。この時、家族の申請をまとめてするのだが、子供の予防接種履歴は提出しなければならないので、日本を発つ前にかかりつけのクリニックか自治体に英文証明書を発行してもらおう。

  3. GP申請が数日〜1週間前後で承認されたら、個人ごとにNHS番号が発行される。診療予約も、処方薬の受け取りも、救急も、これで利用可能になる。どこでもデータベースで調べられるようで、生年月日・名前・住所の口頭での本人確認で済むが、たまにNHS番号を聞かれることもある。子供の学校やデイキャンプの登録で番号を聞かれることもある。物理カードはないので、いざという時すぐわかるように、番号を控えておこう。

  4. そして、もし定期的な投薬や検査の必要な持病がある人は、GP登録が完了次第、それを確実に伝えるための初回診察の予約を取ること。これも自己責任である。私の場合、GP登録時に日本の医療情報や紹介書を提出したのに何も言われないのでこの国の標準医療がそうなのかと思っていたのだが、1年くらい経ってから、別の検診の際に、運よくGPが「あなた…定期検査必要ですね?」と気付いてくれて、それ以降は大きい病院で毎年日本より丁寧なチェックを組んでもらえるようになった。一度認定されるときっちりフォローしてもらえるので、気になる事は最初にしっかり相談するのがおすすめ。

  5. そして、急な怪我等の際にはまず「111」で大病院のA&Eのリファーラルをもらう。ただ、その中でも、一刻を争う命の危険なら「999」に電話して直接救急車を呼ぶか、リファーラルなしで最寄りの病院のA&Eに飛び込むと良い。

ちなみに、私は今まで2回「111」を使って2回ともスムーズだったが、それは患者が子供だったからかもしれない。友達の体験談で、大人が当事者の場合、酷い怪我の状況を伝えてもA&Eに繋いでもらえず「夜明けを待ってGPに行け」と言われたケースを知っている。

彼はそこで直接病院に出向き、骨まで見えている傷を見せ納得させて手当てをしてもらった。最終的に自分を守るためには自分で行動しよう。

コメント参照のうえ追記: 本来、リファーラルがないとA&Eに出向いても門前払いされるわけではなく、直接出向いて基本問題ないようだ。ただ、111を通すと適切な施設につないでもらえるからどこ行けばいいか分からない時にはよいのと、A&Eの到着予定を取ってもらえるから長時間放置されるリスクを減らすことができるのということらしい。

そんなかんじで、あっちこっちで「自己責任」というキーワードがちらつくものではあるが、英国のNHSは、基本的には本当に医療介入が必要な人にプライオリティがつく、ありがたい制度だと思う。

軽い不具合への塩対応

一方で、日本と比べてずっと不便というかドライだなあと感じるのは、日常的な風邪などの軽微な不具合の時である。

  1. 「死にはしないけど念のため」「早く楽になるために薬が欲しい」程度の場合、GPの予約を取るだけで数日〜数週間待ちになる。特にインフルエンザやノロウイルスなどが流行しているタイミングでは、予約の希望を出しても返信を待つうちに治ってしまうこともある。更には、処方を出してもらえても「薬の在庫がありません」となることもある。本当にやばくなったら「111」に連絡しろ、というわけだ。

  2. ただ、そのぶんロンドンの薬局は裁量が大きい。相談次第で薬を出してくれることもあるし、インフルエンザの予防接種なども薬局でできる。処方箋がない場合は自己負担になるが、プライベートクリニックに行くよりだいぶ安いし早い。

  3. また、ロンドンの街角にはどこでもハーブやサプリなどのいわゆる代替医療のショップも多い。息子の風邪が長引いてしつこい咳に悩まされていたけど、GPには「はちみつなめて治して」とあしらわれた時(本当にそう言われた!)、藁にもすがる思いでそのような店に行ったら「薬ではないけど効くよ」と勧められた何かのシロップは、すごく効いた。

  4. どうしても即日薬出して欲しい時はプライベートクリニックに行くと早いが、うっかり無武装で行くと財布がすっからかんになることもあるので、心配な人は任意保険に入っておこう。

プライオリティの明確な英国の医療制度

総じて、英国NHSは「すべての治療を無制限に公費でカバーすることは不可能」と割り切り、はっきりとプライオリティをつける。そこで移民として暮らしていると、国がなんでも面倒を見てくれるのは当たり前じゃないということを意識するようになる。

結局、医療制度の維持にはそれだけのコストがかかる。そこで皆のために働いて生活をしている人たちがいる。リソースは有限なのだ。というところで、保険料の支払いや納税というのは、良き社会の構成員の義務だと思うようにも、なるのである。

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