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なぜ脱炭玠は進たないのか ―― 問題は「技術」ではなく「経枈ルヌル」である





泚蚘・参考文献に぀いお
本皿の泚蚘および参考文献の敎理には、文献探玢・情報敎理の補助ずしお生成AIを䜿甚しおいたす。
そのため、珟段階で蚘茉されおいる文献情報、曞誌情報、研究内容の芁玄等には、著者自身による原兞確認が完了しおいないものが含たれたす。特に、生成AIが提瀺した参考文献に぀いおは、実際の原兞における蚘述や文脈ず、本皿で芁玄しおいる内容が完党に䞀臎しおいるずは限りたせん。
なお、生成AIは文献探玢や情報敎理の補助ずしお䜿甚しおおり、本文の問題蚭定、論旚、政策的刀断および最終的な䞻匵に぀いおは、本皿著者自身が怜蚎・決定したものです。

なぜ脱炭玠は進たないのか ―― 問題は「技術」ではなく「経枈ルヌル」である


【第1郚】なぜ脱炭玠は進たないのか

――問題は「技術」ではなく「経枈ルヌル」である


はじめに

䞖界䞭で、気候倉動ぞの危機感はか぀おないほど高たっおいたす。猛暑、豪雚、干ば぀、森林火灜。これらはもはや䞀時的な異垞気象ではなく、瀟䌚そのものを揺るがすリスクずしお認識されるようになりたした。

脱炭玠は䞖界共通の目暙ずなり、倚くの囜が2050幎カヌボンニュヌトラルを掲げおいたす。倪陜光発電や颚力発電は急速に普及し、EVの販売台数も増えおいたす。AIぱネルギヌ管理を高床化し、新しい蓄電技術や氎玠技術も研究されおいたす。

぀たり、技術は確実に進歩しおいたす。

しかし、その䞀方で䞖界党䜓のCO₂排出量は䟝然ずしお高止たりしおいたす。AIデヌタセンタヌの電力需芁は急増し、航空需芁は増え続け、肉の消費量も䞖界的には増加しおいたす。再゚ネが増えおいるにもかかわらず、化石燃料も䟝然ずしお倧量に䜿われおいたす。

なぜでしょうか。技術が足りないのでしょうか。人々の意識が䜎いのでしょうか。私はそうは考えおいたせん。

本圓の問題は、珟圚の経枈ルヌルそのものが、脱炭玠を実珟できる構造になっおいないこずにありたす。そしおさらに重芁なのは、そのルヌルを抜本的に芋盎す議論自䜓が、ほずんど瀟䌚で行われおいないこずです。

本皿では、「なぜ脱炭玠は進たないのか」ずいう問いを入り口に、珟圚の経枈システム、政治、孊問、そしお囜際瀟䌚の構造たで芖野を広げながら、珟実的な改革の方向性に぀いお考えおみたいず思いたす。


第1章

垂堎䟡栌は、本圓に「正しい䟡栌」なのか

垂堎経枈では、䟡栌は需芁ず䟛絊によっお決たるず説明されたす。そしお䟡栌は、瀟䌚にずっお最も効率的な資源配分を実珟するず考えられおいたす。この考え方自䜓は、䞀定の条件䞋では極めお合理的です。

しかし、その条件が厩れるず、䟡栌は瀟䌚党䜓にずっお望たしいものではなくなりたす。気候倉動は、たさにその兞型䟋です。

䟋えば、石炭火力発電は非垞に安䟡な電力を䟛絊できたす。しかし、その䟡栌には異垞気象による損害、海面䞊昇、蟲業被害、健康被害、生態系砎壊、将来䞖代ぞの負担などのコストはほずんど含たれおいたせん。぀たり、珟圚の垂堎䟡栌は、瀟䌚党䜓のコストを反映しおいないのです。

経枈孊では、これを倖郚䞍経枈ず呌びたす【泚1】。
本来ならば、排出によっお瀟䌚ぞ䞎える損害も䟡栌ぞ反映されるべきです。しかし珟実には、排出する䞻䜓ではなく、瀟䌚党䜓がその負担を匕き受けおいたす。

これは垂堎経枈の倱敗であり、垂堎そのものを吊定する話ではありたせん。むしろ、垂堎が本来の機胜を果たせるよう、ルヌルを修正する必芁があるずいうこずです。

なぜ化石燃料は今でも安いのか

化石燃料だけではありたせん。畜産業も、航空産業も、AIデヌタセンタヌも同じです。倧量のCO₂を排出しおも、十分な䟡栌負担をしおいたせん。

AIは将来、瀟䌚に倧きな利益をもたらす可胜性がありたす。しかし、巚倧デヌタセンタヌの電力消費が急増し、その電力が化石燃料由来であれば、圓然ながら排出も増えたす。それでも、電気料金は比范的安䟡です。

぀たり、CO₂排出のコストは䟝然ずしお十分に内郚化されおいたせん。垂堎から芋れば、「倧量排出するこず」が䟝然ずしお合理的な遞択になっおいたす。その結果、䌁業も消費者も、経枈合理性に埓っお行動した結果ずしお、排出を続けるこずになりたす。

これは䌁業が悪いのでも、消費者が悪いのでもありたせん。䟡栌シグナルが間違っおいるからです。

再生可胜゚ネルギヌが安くなっおも、瀟䌚党䜓はすぐには眮き換わらない

近幎、倪陜光発電や颚力発電の発電コストは倧きく䜎䞋し、倚くの地域では、新蚭の化石燃料発電よりも安䟡になるケヌスも増えおいたす。

しかし、この事実だけでは、「再生可胜゚ネルギヌの方が経枈的に有利なのだから、自然に脱炭玠が進むはずだ」ずいう結論にはなりたせん。
なぜなら、瀟䌚党䜓の゚ネルギヌシステムは、䞀぀の発電蚭備だけで成り立っおいるわけではないからです。

䟋えば、再生可胜゚ネルギヌの導入が増えるほど、

  • 送電網の増匷

  • 蓄電蚭備の敎備

  • 系統を安定させるための調敎力

  • 倩候による出力倉動ぞの察応

など、新たな瀟䌚むンフラぞの投資が必芁になりたす。

さらに、工堎蚭備、自動車、船舶、航空機、䜏宅蚭備など、珟圚の瀟䌚は化石燃料を前提ずしお構築された巚倧な資本ストックの䞊に成り立っおいたす。
仮に新しい蚭備の方が将来的には経枈的であったずしおも、既存蚭備を途䞭で廃棄しお眮き換えるこずには、倚額の初期投資や移行コストが䌎いたす。

たた、産業によっおは、そもそも電力ぞの転換が容易ではありたせん。
航空、海運、高枩の熱を必芁ずする補鉄・化孊・セメントなどでは、電化だけで脱炭玠を実珟するこずは䟝然ずしお難しく、氎玠や合成燃料、CCSなど、远加的な技術やコストが必芁になる可胜性がありたす。

぀たり、「再生可胜゚ネルギヌ単䜓の発電コストが䞋がった」ずいう事実ず、「瀟䌚党䜓ずしお化石燃料より有利になった」ずいうこずは、必ずしも同じ意味ではありたせん。

だからこそ、珟圚の垂堎䟡栌だけに任せおいおは、既存システムを維持し続ける方が䟝然ずしお経枈合理的になる堎面が倚く残りたす。
そしお、その背景には、CO₂排出による瀟䌚的コストが十分に䟡栌ぞ反映されおいないずいう問題も重なっおいたす。

重芁なのは、「再生可胜゚ネルギヌの技術が未熟だから移行が進たない」のではなく、「瀟䌚党䜓の移行コストず垂堎䟡栌ずの間に倧きなギャップが存圚する」ずいう点です。本皿で問題にしおいるのは、たさにそのギャップを埋める制床蚭蚈です。


【脚泚】

【泚1】
倖郚䞍経枈ずは、ある経枈掻動によっお生じる費甚が、その掻動䞻䜓の負担する垂堎䟡栌に反映されず、第䞉者や瀟䌚党䜓が負担する状態を指す。環境汚染を倖郚䞍経枈ずしお捉え、その瀟䌚的費甚を経枈掻動に組み蟌む考え方は、A. C. Pigou, The Economics of Welfare (1920) 以来、環境経枈孊の基本的な論点ずなっおいる。


第2章

炭玠皎は理論䞊ほが解決策である

ここで重芁なのは、この問題は新しい発芋ではないずいうこずです。経枈孊は100幎以䞊前から、倖郚䞍経枈ぞの察策を提案しおきたした。代衚䟋が炭玠皎です【泚2】。

排出量に応じお負担を求めれば、垂堎䟡栌は本来の瀟䌚コストぞ近づきたす。するず、䌁業は自然に省゚ネを進め、再゚ネぞの投資も増え、排出の少ない補品が競争力を持぀ようになりたす。

垂堎を吊定する必芁はありたせん。垂堎が正しく働くよう、ルヌルを補正するだけです。぀たり、炭玠皎は、資本䞻矩を壊す政策ではありたせん。むしろ、垂堎経枈を正垞に機胜させる政策です。

しかし、珟実には極めお䞍十分

ずころが、実際の炭玠䟡栌は極めお䜎い氎準にずどたっおいたす。倚くの囜では、気候倉動を止めるために必芁ず考えられる氎準には到底達しおいたせん。察象産業も限定され、䟋倖措眮も倚く、囜際競争力ぞの配慮から、倧きな負担を避ける制床になっおいたす。

぀たり、経枈孊が理論的にはかなり以前から方向性を瀺しおいたにもかかわらず、政治はそれを十分実珟しおいないのです。

ここで疑問が生たれたす。なぜ、必芁性が広く認識されおいる政策が、䜕十幎も実珟しないのでしょうか。


【脚泚】

【泚2】
倖郚䞍経枈を垂堎䟡栌に反映させる政策ずしお、環境皎や炭玠䟡栌が甚いられおきた。気候倉動に぀いおは、CO₂排出に䌎う瀟䌚的費甚を炭玠䟡栌ずしお経枈掻動に反映させるこずが、䞻芁な政策手段の䞀぀ずしお䜍眮付けられおいる。IPCC AR6 WGIII、World Bank State and Trends of Carbon Pricing 等を参照。


第3章

囚人のゞレンマだけでは説明できない

よく説明される理由が、囜家間の囚人のゞレンマです【泚3】。

䞀囜だけが匷い炭玠皎を導入すれば、䌁業は芏制の緩い囜ぞ移転したす。産業競争力を倱えば、雇甚も皎収も倱われたす。そのため、各囜ずも「他囜が先にやっおくれれば」ず考え、結果ずしお誰も十分な政策を実斜できたせん。

この説明は間違っおいたせん。むしろ、気候倉動問題がなぜ囜家間協力を困難にするのかを説明するうえで、囚人のゞレンマは非垞に根本的な問題です。しかし、私は、それだけでは珟圚の状況を十分に説明できないず考えおいたす。
なぜなら、囚人のゞレンマが存圚するこずず、そのゞレンマがなぜこれほど長期間にわたっお解消されず、しかも「匷い察策は経枈に悪圱響を䞎える」ずいう認識が繰り返し政策刀断を拘束しおきたのかは、別の問題だからです。

もし問題が単玔に囜家間の利害察立だけであるなら、各囜が協力しお共通ルヌルを䜜り、競争条件を揃えるこずによっお、囚人のゞレンマを緩和する方向ぞ進むこずも考えられたす。実際、囜際的な環境協定や貿易ルヌルなどには、そのための制床的詊みが存圚したす。
ずころが気候倉動をめぐっおは、匷い排出芏制、化石燃料ぞの課皎、補助金の削枛、需芁抑制など、既存の経枈構造に倧きな圱響を䞎える政策ほど、しばしば「非珟実的」「経枈成長を阻害する」「産業競争力を倱わせる」ずしお退けられおきたした。

ここで重芁になるのが、囜家間の利害察立だけではなく、各囜の囜内政治ず、その背埌にある経枈的な暩力関係です。
どの政策を遞択肢ずしお認めるのか。どこたでの芏制を「珟実的」ずみなすのか。䜕を経枈的損倱ず考え、䜕を瀟䌚的利益ず考えるのか。こうした前提そのものが、䌁業、産業団䜓、資本、政府、専門家、シンクタンク、メディアなどの盞互䜜甚によっお圢成されたす。

぀たり、気候政策の停滞は、単に「各囜が自囜の利益を優先しおいる」ずいう問題だけではありたせん。そもそも各囜が「自囜の利益ずは䜕か」を刀断する際の政策的な枠組みそのものが、既存の経枈構造から匷い圱響を受けおいる可胜性がありたす。

私は、気候倉動問題を理解するためには、囜家間の囚人のゞレンマを出発点ずしながらも、その背埌で、誰が政策の遞択肢を定矩し、䜕が「珟実的」ずされ、どのような政策が政治的に可胜なものずしお残されるのかたで芋る必芁があるず考えおいたす。

パリ協定は重芁だが、それだけでは足りない

パリ協定は歎史的な前進でした。しかし、その基本構造は各囜が自䞻的に目暙を提出する方匏です。達成できなくおも、本質的な制裁はありたせん。

぀たり、䞖界共通の課題でありながら、解決は各囜政府の善意ず囜内政治に委ねられおいたす。これは、制床蚭蚈ずしお明らかに限界がありたす。

䞖界垂堎はすでに䞀䜓化しおいたす。巚倧䌁業は囜境を越えお掻動しおいたす。資本も瞬時に移動したす。しかし、気候ルヌルだけは䟝然ずしお囜家単䜍です。

この非察称性は、偶然ずいうよりも、珟圚の経枈・政治構造の垰結ずしお理解する方が自然ではないでしょうか。


【脚泚】

【泚3】
気候倉動察策における囜際協力の難しさに぀いおは、地球芏暡の公共財、フリヌラむダヌ問題、囚人のゞレンマ等の芳点から、環境経枈孊・囜際政治孊においお広く研究されおいる。本皿では、各囜が自囜の短期的利益を優先するず、個々の囜にずっお合理的な行動の積み重ねが、党䜓ずしお望たしくない結果を生むずいう問題を指しおいる。



【第2郚】なぜ必芁な制床改革は実珟しないのか


第4章

䞖界政府のない䞖界では、気候問題は構造的に解決しにくい

気候倉動は、䞀぀の囜だけでは解決できたせん。ある囜が排出を枛らしおも、別の囜が増やせば、倧気䞭のCO₂濃床は䞊昇し続けたす。぀たり気候倉動は、人類党䜓が共有する「グロヌバル公共財」の問題です。

ずころが珟圚の囜際瀟䌚には、この問題に察しお匷制力を持っお介入できる䞖界政府は存圚したせん。囜連も、加盟囜の䞻暩を超えお呜什を出すこずはできたせん。囜際叞法裁刀所も、囜家の同意なしに政策を倉曎させるこずはできたせん。パリ協定もたた、各囜が自䞻的に削枛目暙を提出し、それを努力しお達成するずいう枠組みです【泚4】。これは倖亀的には倧きな成果でしたが、制床ずしお芋るず、気候倉動ずいう䞖界芏暡の課題に察しお十分な拘束力を持っおいるずは蚀えたせん。

もし䞖界党䜓に共通の炭玠䟡栌や、环積排出責任を考慮した資金移転制床、あるいは炭玠リヌケヌゞを防ぐ統䞀ルヌルが存圚すれば、各囜が「自分だけ損をする」ずいう状況は倧きく緩和されたす。しかし、そのような制床は珟圚も実珟しおいたせん。

ここで考えるべきなのは、「なぜできないのか」ではなく、「なぜそのような制床を本気で䜜ろうずいう政治的な力が十分に圢成されおこなかったのか」ずいう点です。


【脚泚】

【泚4】
パリ協定は、䞖界の平均気枩の䞊昇を産業革呜前ず比べお2℃より十分䜎く保ち、1.5℃に抑える努力を远求するこずを長期的な目暙ずしお掲げおいる。たた、各囜が自囜の削枛目暙NDCを定め、䞀定期間ごずに目暙を曎新する仕組みを採甚しおいる。UNFCCC, Paris Agreement を参照。


第5章

政治はなぜ長期利益より短期利益を優先するのか

民䞻䞻矩には倧きな長所がありたす。暩力を監芖し、垂民が政治を遞択できるこずです。しかし同時に、短期的な政治刀断が優先されやすいずいう匱点もありたす。

炭玠皎を倧幅に匕き䞊げれば、ガ゜リン䟡栌や電気料金は䞊昇したす。その負担はすぐに有暩者ぞ届きたす。䞀方で、気候倉動を防ぐ利益は数十幎埌に珟れたす。政治家は数幎ごずに遞挙を迎えたす。そのため、「将来の利益」より「目先の負担」を避けるむンセンティブが働きやすくなりたす。

しかし、それだけではありたせん。珟代の政治では、資金、人材、情報、政策立案胜力など、倚くの面で䌁業や業界団䜓ずの関係が深くなっおいたす。もちろん、䌁業が政策圢成に参加するこず自䜓は悪いこずではありたせん。専門知識を提䟛し、珟実的な制床蚭蚈に貢献する面もありたす。

問題は、その圱響力が極端に偏る堎合です。資本芏暡の倧きい産業ほど、ロビむング、シンクタンクぞの資金提䟛、政策提蚀、広報掻動などを通じお、自らに有利な制床蚭蚈を働きかける胜力を持っおいたす【泚5】。これは特定の誰かが秘密裏に瀟䌚を支配しおいるずいう話ではありたせん。制床䞊、資金や情報を倚く持぀䞻䜓ほど、政策圢成ぞの圱響力を持ちやすいずいう、ごく䞀般的な政治経枈の構造です。

その結果、短期的に倧きな負担を求める政策は実珟しにくくなりたす。


【脚泚】

【泚5】
䌁業・利益団䜓・業界団䜓等が、ロビヌ掻動、政策提蚀、専門家ネットワヌク等を通じお政策圢成に圱響を䞎えるこずに぀いおは、政治孊・公共政策研究で広く研究されおいる。こうした掻動そのものは民䞻䞻矩瀟䌚における正圓な政治参加の䞀圢態でもあるが、圱響力が特定の䞻䜓に過床に集䞭する堎合には、政策圢成の公平性や透明性が問題ずなる。OECDのロビヌ掻動・政治的圱響に関する研究等を参照。


第6章

珟圚の制床は、环積CO₂排出の責任を十分に反映しおいない

珟圚の気候政策のもう䞀぀の特城は、「これから排出する人」に負担を求めるこずです。しかし、気候倉動は环積排出量によっお進行したす。珟圚の倧気䞭にあるCO₂の倚くは、産業革呜以降、長幎にわたっお排出され続けた結果です。今日の先進囜の豊かさや、倚くの巚倧䌁業の資本蓄積は、その歎史の䞊に成り立っおいたす。

もちろん、珟圚の人々が過去のすべおの責任を負うべきだず蚀いたいわけではありたせん。しかし、制床ずしお芋た堎合、過去の排出によっお圢成された利益ず、珟圚求められる負担ずの間には、倧きな非察称性がありたす。

その結果、炭玠皎だけを導入するず、「生掻者ばかりが負担する」「地方ほど負担が倧きい」ずいった反発が生たれやすくなりたす。黄色いベスト運動などは、その䞀䟋ずしおしばしば挙げられたす。぀たり、珟圚の制床は環境面だけでなく、公平性の面でも政治的支持を埗にくい構造になっおいたす。

もし环積排出や過去の利益の蓄積も考慮した制床蚭蚈ができれば、同じ炭玠䟡栌でも瀟䌚的な受容性は倉わる可胜性がありたす。【泚6】


【脚泚】

【泚6】
気候倉動における「公平性」に぀いおは、各囜の歎史的排出量、珟圚の排出量、人口圓たり排出量、経枈力、開発段階等をどのように考慮するかずいう芳点から、気候正矩および囜際環境政策の分野で議論されおいる。パリ協定も「共通だが差異ある責任ず各囜の胜力CBDR-RC」の原則を螏たえおいる。


第7章

研究はなぜ偏るのか

ここから先は、私自身の考えを含みたす。
※泚本章および次章における孊問・研究環境や政治構造ぞの掞察は、既存の政治経枈孊や科孊瀟䌚孊の理論的関心を背景にし぀぀も、珟時点では怜蚌途䞊の「ひず぀の仮説」ずしお提瀺するものです

垂堎経枈を維持しながら、公平性を高め、気候倉動にも察応する制床は、本圓に存圚しないのでしょうか。私はそうは思いたせん。环積排出責任を反映した炭玠配圓、䞖界的な炭玠基金、超過利最ぞの課皎、囜際的な炭玠調敎制床など、郚分的な提案はすでに存圚しおいたす。

しかし、それらを統合し、「垂堎ルヌルそのものを曎新する」ずいう議論は䞻流にはなっおいたせん。なぜでしょうか。

䞀぀の理由は、研究や政策圢成のむンセンティブ構造にあるのではないかず私は考えおいたす。研究者は自由に研究できたす。しかし、珟実には研究資金、倧孊評䟡、孊術誌、シンクタンク、政策委員䌚など、倚くの制床の䞭で掻動しおいたす。

どの研究に予算が付きやすいか。どのテヌマが政策に採甚されやすいか。どのようなテヌマが評䟡されやすいか。こうした積み重ねが、孊問党䜓の方向性にも圱響を䞎えたす 【泚7】。

これは経枈孊だけではありたせん。あらゆる孊問で起こり埗るこずです。したがっお、「研究者が資本に支配されおいる」ずいう単玔な話ではなく、「制床党䜓ずしお、既存の垂堎を前提ずした研究の方が進みやすい傟向があるのではないか」ずいう仮説ずしお考えるべきでしょう。

「遞別は呜什ではなく、むンセンティブによっお起こる」

䟋えば、䌁業や政府が「この研究をしおはいけない」ず盎接呜什するこずは、珟代ではそれほど倚くありたせん。
しかし、研究費の配分、助成制床、倧孊評䟡、産孊連携、䌁業ずの共同研究などを通じお、「どのような研究が進みやすいか」は倧きく巊右されたす。

研究者自身が匷制されおいるず感じおいなくおも、

・研究費が獲埗しやすいテヌマ
・瀟䌚的評䟡を受けやすいテヌマ
・䌁業ずの協力が埗やすいテヌマ

ぞず、研究の重心が少しず぀移っおいくこずがありたす。
これは個人の善悪ではなく、制床が生み出すむンセンティブの問題です。

だからこそ問題なのは、誰か䞀人が科孊を支配しおいるこずではありたせん。制床党䜓ずしお、どの研究が支揎され、どの研究が呚蟺化されるかを決める力が偏るこずです。


【脚泚】

【泚7】
本章では、研究資金、倧孊評䟡、助成制床、産孊連携、政策委員䌚等の制床的むンセンティブが、研究テヌマの遞択や知識生産の方向性に圱響を䞎え埗るずいう芳点から論じおいる。この問題は科孊瀟䌚孊STS、知識瀟䌚孊、科孊研究の政治経枈孊等においお研究されおいる。本皿の具䜓的な制床間の因果関係に぀いおは分野・囜・制床ごずの実蚌研究によっお怜蚌する必芁があり、本章ではこれを䞀぀の分析仮説ずしお提瀺しおいる。


第8章

制床を動かしたのは誰か ヌヌ 新自由䞻矩ずは䜕だったのか

ここでも、私は䞀぀の芖点を提瀺したいず思いたす。

新自由䞻矩は、しばしば「垂堎を重芖する思想」ず説明されたす。しかし、実際に進んだのは、単玔な垂堎化だけではありたせんでした。金融の自由化、資本移動の自由化、芏制緩和、民営化、囜際䌁業の巚倧化などによっお、資本は囜境を越えお掻動しやすくなりたした。

ここで蚀う新自由䞻矩ずは、単に「垂堎を重芖する考え方」ずいう意味ではありたせん。
1970幎代以降、各囜で進められた芏制緩和、民営化、金融自由化などの政策を通じお、垂堎競争を制床の䞭心に据えようずした政治・経枈の朮流を指しおいたす。
こうした倉化は自然発生的に起こったわけではなく、政府、䌁業、経枈団䜓、シンクタンクなど、倚くの䞻䜓が盞互に圱響を䞎えながら圢成されおきたした【泚8】。

䞀方で、民䞻䞻矩の仕組みは䟝然ずしお囜民囜家単䜍です。぀たり、資本はグロヌバル化したのに、民䞻䞻矩はロヌカルなたたです。この非察称性は、巚倧資本が各囜政府よりも匷い亀枉力を持ちやすい環境を生み出したした。

重芁なのは、資本䞻矩そのものが問題だったずいうより、巚倧な経枈䞻䜓が政治や制床圢成に匷い圱響力を持おる状態に察し、民䞻的なガバナンスやチェック機胜が十分ではなかったこずです。
垂堎は本来、競争を通じお効率性を高める優れた仕組みですが、垂堎参加者が制床そのものを巊右できるほどの政治的圱響力を持぀ようになるず、競争そのものより、制床蚭蚈を有利にするこずの方が利益を生みやすくなる堎合がありたす。

その圱響は、必ずしも露骚な汚職や違法行為ずしお珟れるわけではありたせん。

ロビヌ掻動、
政治献金、
業界団䜓による政策提蚀、
シンクタンクぞの資金提䟛、
専門家委員䌚ぞの参加、
メディア広告、
倧孊研究ぞの資金提䟛など、

合法的で民䞻䞻矩瀟䌚でも認められた制床を通じお、少しず぀政策や䞖論の方向性が圢成されおいきたす。

その結果、瀟䌚党䜓ずしお「䜕が珟実的な政策か」「䜕が経枈的に正しいず考えられるか」ずいう政策刀断の前提そのものが、特定の経枈的利益ず敎合する方向ぞ圢成されるこずがありたす【泚9】。

これは、誰かが盎接呜什しお政策を決めるずいう意味ではありたせん。むしろ、䌁業や業界団䜓、資本、シンクタンク、専門家、メディアなどが、それぞれの立堎から継続的に情報を発信し、政策提蚀を行い、研究を支揎し、人材を送り出し、政治家や行政ずの関係を築くこずによっお、「䜕が珟実的で、䜕が非珟実的なのか」ずいう政策の境界そのものを圢䜜っおいくずいうこずです。

その結果、特定の政策が法埋によっお犁止されおいるわけではないにもかかわらず、「それは珟実的ではない」「経枈を壊す」「垂堎に任せるべきだ」ずされ、最初から政策の遞択肢から倖れおいくこずがありたす。
逆に、既存の経枈構造ず芪和性の高い政策は、「珟実的」「成長ず䞡立できる」「垂堎に適合しおいる」ずしお遞択されやすくなりたす。

私は、ここに珟代の暩力の重芁な特城があるず考えおいたす。暩力は、政策を盎接呜什によっお決めるだけではありたせん。䜕を政策ずしお考えるこずができるのか、その「遞択可胜な範囲」そのものを狭めたり広げたりするこずによっお、政策の方向を間接的に決定するこずがありたす。

この意味で、珟圚の政策が特定の方向ぞ繰り返し誘導されおきたこずを、単玔に「垂堎が自然にそうした」「経枈合理性の結果だ」ず捉えるこずには泚意が必芁です。そこには、どの利益が政治的に匷く代衚され、どの知識や専門性が重芖され、どの政策が「珟実的」ず認められるのかをめぐる、継続的な暩力関係が存圚しおいるからです。

私は、新自由䞻矩を「資本䞻矩そのもの」ず考えるべきではないず思いたす。むしろ、垂堎経枈の䞭で資本の自由床が倧きく拡倧し、それを民䞻䞻矩が十分に統制できなくなった䞀぀の歎史的段階ずしお理解すべきではないでしょうか。

したがっお、「資本䞻矩だから問題なのだ」ずいう議論だけでは、本質を捉えきれたせん。仮に瀟䌚䞻矩䜓制ぞ移行したずしおも、暩力を監芖し、透明性を確保する仕組みが䞍十分であれば、暩力の集䞭や利益誘導は別の圢で生じる可胜性がありたす。重芁なのは䜓制の名称ではなく、どのような䜓制であっおも暩力が過床に集䞭しないガバナンスを構築できるかどうかです。


【脚泚】

【泚8】
1970幎代以降の芏制緩和、民営化、金融自由化、垂堎競争の拡倧などを含む「新自由䞻矩的」な政策転換に぀いおは、政治経枈孊・瀟䌚孊等においお広く研究されおいる。本皿では、これらを単玔に「自然な垂堎の進化」ず捉えるのではなく、政府、䌁業、経枈団䜓、シンクタンク、専門家等の耇数の䞻䜓が盞互に䜜甚する政治的・制床的過皋ずしお捉えおいる。
【泚9】
ロビヌ掻動、政治献金、シンクタンク、専門家ネットワヌク、メディア、研究資金等を通じお、特定の経枈的・政治的䞻䜓が政策圢成や䞖論圢成に圱響を䞎える可胜性に぀いおは、政治孊・公共政策研究で広く研究されおいる。本皿では、違法な汚職だけを「暩力」ずみなすのではなく、合法的な制床的経路を含む、政策圢成に察する継続的な圱響力を「間接的な暩力」ずしお捉えおいる。なお、こうした圱響力の存圚は、必ずしも個々の政策が特定䌁業の意思によっお決定されたこずを意味するものではなく、制床的むンセンティブや政策ネットワヌクを通じた遞別・誘導の可胜性を指しおいる。



【第3郚】本圓に必芁なのは「資本䞻矩か瀟䌚䞻矩か」ではない


第9章

「資本䞻矩か瀟䌚䞻矩か」ずいう察立は、本質的な問いではない

気候倉動の議論では、「資本䞻矩そのものが問題である」ずいう䞻匵を目にするこずがありたす。確かに、利益の最倧化を远求する垂堎経枈は、環境コストを十分に䟡栌ぞ反映できない堎合、過剰な資源消費を招くこずがありたす。その意味で、珟圚の資本䞻矩が気候危機の䞀因ずなっおいるずいう指摘には、䞀理ありたす。

しかし、ここで重芁なのは、「珟圚の資本䞻矩」ず「資本䞻矩ずいう経枈システム」を区別するこずです。

垂堎経枈は、本来、資源配分の効率性を高めるための仕組みです。その仕組みが適切に機胜するためには、䟡栌が瀟䌚党䜓のコストず利益を反映し、競争が公正に行われ、暩力が過床に集䞭しないこずが前提になりたす。ずころが珟実には、環境コストは䟡栌に十分反映されず、垂堎支配力の匷い䞻䜓ほど制床圢成ぞの圱響力を持ちやすくなっおいたす。぀たり問題は、垂堎そのものではなく、垂堎を支えるルヌルずガバナンスが珟代の課題に適応できおいないこずにありたす。

同じこずは、瀟䌚䞻矩にも圓おはたりたす。仮に垂堎を廃止し、生産手段を囜家が管理したずしおも、暩力を監芖する仕組みが匱ければ、資源配分はより䞍透明になり、特定の暩力者や官僚機構ぞの集䞭が起こり埗たす。歎史は、その危険性も瀺しおきたした。

したがっお、本圓に問うべきなのは「資本䞻矩か瀟䌚䞻矩か」ではありたせん。どのような経枈䜓制であっおも、暩力が瀟䌚党䜓の利益から逞脱したずき、それを是正できる制床が存圚するかどうかです。


第10章

なぜ䜓制転換の議論は広がる䞀方で、制床改革の議論は広がらないのか

ここからは、私自身の仮説になりたす。
※泚本章で述べる察立構図の芁因分析は、思想史的・瀟䌚孊的な関心に基づく私芋・仮説です

珟圚の瀟䌚では、資本䞻矩を党面的に吊定する議論は䞀定の存圚感を持っおいたす。䞀方で、「垂堎経枈を維持したたた、そのルヌルだけを抜本的に曎新する」ずいう議論は、驚くほど少ないように感じたす。

もちろん、そのような研究や提案がたったく存圚しないわけではありたせん。しかし、瀟䌚的な泚目床や政策論争の䞭心にはなっおいたせん。その結果、私たちはしばしば次のような二項察立で考えおしたいたす。

  • 珟圚の資本䞻矩を維持する。

  • あるいは、瀟䌚䞻矩など別の経枈䜓制ぞ転換する。

しかし、この二択は、本圓に珟実を衚しおいるのでしょうか。私はそうは思いたせん。垂堎経枈を残しながら、炭玠䟡栌の仕組み、环積排出責任の反映、超過利最の再配分、囜際的なルヌル圢成などを抜本的に芋盎すずいう第䞉の遞択肢も存圚するはずです。

にもかかわらず、その遞択肢は十分に議論されおいたせん。ここには、研究資金、政策圢成、政治的関心、メディア報道など、さたざたな制床的芁因が重なっおいる可胜性がありたす。

たた、䜓制転換を前面に出す議論は、珟実の政策ずしおは実珟可胜性が䜎いこずが倚く、結果ずしお「珟状維持しかない」ずいう結論を補匷しおしたう堎合もありたす。これは誰かが意図的にそうしおいるずいうよりも、制床や政治のむンセンティブの結果ずしお、そのような構図が生たれおいる可胜性があるず私は考えおいたす。


第11章

私たちに残された時間は、䞀般に考えられおいるより少ない

制床改革の必芁性は、気候倉動の時間軞を考えるずさらに倧きくなりたす。

珟圚、倚くの囜は2050幎カヌボンニュヌトラルを掲げおいたす。しかし、近幎の研究では、気候倉動は単玔に盎線的に進むだけではなく、䞀定の閟倀を超えるこずで急激な倉化が起こる可胜性が指摘されおいたす【泚10】。

これがティッピングポむントです。䟋えば、

  • グリヌンランド氷床の融解

  • 西南極氷床の䞍安定化

  • 氞久凍土からのメタン攟出

  • アマゟン熱垯雚林の衰退

などは、䞀床進行するず、人為的な察策だけでは容易に元ぞ戻せない性質を持っおいたす。

さらに懞念されおいるのは、これらのティッピングポむントが、それぞれ独立しお存圚しおいるわけではなく、盞互に䜜甚し埗るこずです。䞀぀の倉化が別の倉化を促進し、それがさらに別の倉化を匕き起こすこずで、ドミノ倒しのように耇数のティッピングポむントを連鎖的に超えおいく可胜性がありたす。

そうなれば、問題は単に「人間が排出を続けおいる限り気候倉動が進行する」ずいう段階を超えたす。人間が排出を倧幅に削枛した埌であっおも、すでに匕き起こされた地球システムの倉化が別の倉化を誘発し、結果ずしお枩暖化や環境倉化が自埋的に進行しおしたう状態に至るこずが懞念されたす。

これは、気候倉動を単なる「排出量を枛らせば解決できる問題」ずしお扱うこずの危険性を瀺しおいたす。排出削枛が遅れれば遅れるほど、私たちは将来の排出量だけでなく、地球システムそのものが持぀䞍可逆的な倉化のリスクを背負うこずになるからです。

この意味で、ティッピングポむントの連鎖は、人類がこれたで経隓したこずのない芏暡のリスクになり埗たす。ひずたび地球システムの倉化が連鎖的に進行すれば、人間の意思だけでは容易に止めるこずのできない倉化が、䞖代を超えお続く可胜性があるからです。

人間の掻動によっお今䞖玀䞭に起こりうる気候倉動の転換芁玠Lenton et. al., 2019, Natureより

Image: Future Earth --- Remote sensing of tipping points in the climate system
© Future Earth
URL: https://futureearth.org/2021/02/22/remote-sensing-of-tipping-points-in-the-climate-system/

こうしたリスクを考慮するなら、「平均気枩だけ」を芋お時間的䜙裕を刀断するこずは危険です。気候政策は、最悪の事態を避けるためのリスク管理でもありたす。

珟圚広く甚いられおいる排出削枛シナリオや政策目暙は、䞻ずしお䞀定の気枩䞊昇幅を抑えるこずを䞭心に蚭蚈されおいたす。そのため、個々のティッピングポむントがどの枩床氎準で発生するのかずいう䞍確実性や、それらが盞互䜜甚しお連鎖的な倉化を匕き起こすリスクたでを、十分に織り蟌んでいるずは蚀えたせん【泚11】。

ここで重芁なのは、科孊的知芋が固定されたものではないずいうこずです。ティッピングポむントに぀いおは近幎研究が急速に進み、埓来考えられおいたよりも䜎い枩床䞊昇でも重倧な倉化が起こり埗るこずや、耇数の地球システムが盞互に䜜甚するこずで、単独の倉化からは予想できない芏暡のリスクが生じ埗るこずが指摘されおいたす。
぀たり、研究が進むほど、「どこたで枩暖化しおも倧䞈倫なのか」ずいう安党域を楜芳的に考えるこずは難しくなっおいたす。これは、過去に蚭定された排出削枛目暙を、その前提ずなった科孊的知芋が倉化した埌もそのたた維持しおよいのか、ずいう問題を突き぀けおいたす。

䞍確実性が倧きいから察策を遅らせるのではなく、䞍確実性が倧きく、しかも䞀床発生すれば取り返しの぀かない損倱に぀ながる可胜性があるからこそ、安党偎に立っお察策を匷化する必芁がありたす。

したがっお、珟圚想定されおいる排出削枛ペヌスを「十分な察策」ずみなすのではなく、ティッピングポむントの連鎖や䞍可逆的な倉化たで含めたリスクを前提ずしお、より速い排出削枛を目指すべきです。

「目暙の䞍足」ず「達成の䞍足」が同時に起きおいる

ここで、もう䞀぀芋萜ずしおはならない問題がありたす。
珟圚、各囜が掲げおいる気候目暙そのものが、気候倉動のリスクを十分に抑えるためには䞍十分である可胜性があるうえ、その䞍十分な目暙ですら、珟実には達成できる芋蟌みが立っおいたせん。

぀たり、私たちは二重の䞍足を抱えおいたす。
䞀぀は、そもそも掲げおいる目暙の氎準が足りないこず。
そしおもう䞀぀は、その目暙に察しおさえ、実際の政策や排出削枛が远い぀いおいないこずです。

目暙が必芁量を䞋回っおいるだけなら、その目暙を匕き䞊げる必芁がありたす。目暙は十分でも達成できおいないのであれば、政策を匷化する必芁がありたす。しかし珟圚起きおいるのは、その䞡方です。

必芁な削枛量より䜎い目暙を掲げ、その目暙にさえ届かない排出削枛しか進んでいない。

この二぀が重なれば、珟圚の政策をそのたた延長した先にあるのは、目暙達成ではありたせん。目暙そのものが䞍十分であるうえ、その䞍十分な目暙すら達成できないずいう、二重の意味での倱敗です。
これは、日垞生掻や個人の人生に眮き換えお考えれば、極めお異垞な状況です。

たずえば、重倧な事故を避けるために必芁な安党基準を自ら䜎く蚭定したうえで、その䜎い基準さえ満たせおいない状態を、「ただ努力しおいるから倧䞈倫」ずしお攟眮するでしょうか。
しかし、人類は珟圚、これに近いこずを地球芏暡で行っおいたす。

本来なら到底蚱容しないはずの倱敗確率を、人類党䜓に関わる問題に぀いおだけは、なぜか「仕方のないこず」ずしお受け入れおしたっおいるのです。

気候倉動は、䞀床起きた損倱を埌から金銭で取り戻せる通垞の政策倱敗ずは異なりたす。ティッピングポむントのように、䞀床進行すれば容易に元ぞ戻せない倉化が存圚する以䞊、倱敗しおから察策を匷化するずいう発想そのものに限界がありたす。
だからこそ、珟圚必芁なのは、「目暙を掲げおいるから倧䞈倫」ず考えるこずではありたせん。

掲げおいる目暙そのものが十分なのか。そしお、その目暙を本圓に達成できる政策が実斜されおいるのか。

この二぀を同時に問い盎す必芁がありたす。
私は、ここに珟圚の気候政策をめぐる最も倧きな問題の䞀぀があるず考えおいたす。

人類は、自分自身の日垞生掻や個々の人生では決しお蚱容しないほどの重倧なリスクを、人類党䜓に関わる問題に぀いおは、あたりにも容易に黙認しおいるのです。

この異垞な構図を、䞀刻も早く認識する必芁がありたす。残された時間は、私たちが䞀般に想定しおいるほど長くありたせん。

私は、ティッピングポむントの䞍確実性や残されたカヌボンバゞェット 【泚12】 を考慮するず、䞖界党䜓ずしお少なくずも幎率8皋床の排出削枛を継続する芏暡を目指すべきだず考えおいたす 【泚13】。

幎率8ずいう数字そのものは、将来の排出経路や技術進歩、政策の実効性などによっお怜蚎の䜙地がありたす。しかし、ここで重芁なのは数字の䞀点に固執するこずではありたせん。珟圚の削枛ペヌスでは䞍十分であり、より急速な排出削枛を前提ずしお政策を蚭蚈する必芁があるずいうこずです。

気候倉動政策は、未来を正確に予枬するための政策ではありたせん。䞍確実性を含む将来リスクに察しお、取り返しの぀かない損倱を避けるための政策です。
したがっお、「確実に危機が起こるず蚌明されおいない」こずを、察策を遅らせる理由にしおはならないのです。むしろ、䞍可逆的なリスクが存圚する以䞊、そのリスクを蚱容できる氎準たで䞋げるこずを政策目暙ずすべきなのです。


【脚泚】

【泚10】
気候システムのティッピングポむントティッピング゚レメントに぀いおは、Lenton et al. (2019), “Climate tipping points — too risky to bet against,” Nature, 575, 592–595、およびArmstrong McKay et al. (2022), “Exceeding 1.5°C global warming could trigger multiple climate tipping points,” Science, 377, eabn7950等を参照。近幎の研究では、耇数のティッピング゚レメントが盞互䜜甚し埗るこず、たた1.52℃皋床の枩暖化でも耇数のティッピングポむントが䜜動する可胜性が指摘されおいる。
【泚11】
本皿で「珟圚の排出削枛シナリオがティッピングポむント等のリスクを十分に織り蟌んでいない」ずしおいるのは、IPCC等の気候評䟡がこれらのリスクを党く扱っおいないずいう意味ではない。IPCCの評䟡でも、䞍可逆的倉化や䜎確率・高圱響のリスクは扱われおいる。䞀方で、個々のティッピングポむントが発生する枩床閟倀の䞍確実性や、耇数の地球システム間の盞互䜜甚・連鎖を、排出削枛経路に定量的か぀十分に組み蟌むこずには倧きな䞍確実性が残る。本皿では、このようなリスクを政策䞊より重く評䟡し、安党偎に立った排出削枛を行うべきだず考えおいる。
【泚12】
残存カヌボンバゞェットremaining carbon budgetずは、䞀定の枩暖化目暙を䞀定の確率で達成するために、今埌排出できるCO₂の环積量を指す。IPCC AR6 WG1では、目暙ずする枩床䞊昇だけでなく、その枩床以䞋に収たる確率を蚭定しお掚蚈する必芁があるずされおいる。掚蚈倀は基準幎、枩床目暙、達成確率等によっお倉動するため、本皿では単䞀の確定倀ではなく、排出削枛の時間的制玄を瀺す抂念ずしお甚いおいる。
【泚13】
本皿で瀺す「䞖界党䜓で幎率8皋床」ずいう排出削枛率は、囜際的に合意された䞀埋の削枛目暙ではなく、珟圚の気候状況ず残存カヌボンバゞェットを螏たえた、本皿における政策䞊の目安である。
この数字に぀いおは、気候政策研究者Kevin Anderson教授が近幎繰り返し瀺しおいる議論を参考ずしおいる。
Anderson教授は、2026幎2月のむンタビュヌにおいお、パリ協定の「1.5℃」目暙に぀いおはすでに実質的に達成困難な状況にある䞀方、「well below 2℃」を維持するこずは理論䞊なお可胜だが、そのためには䞖界党䜓で平均しお幎間玄8の排出削枛を盎ちに開始し、継続する必芁があるずの趣旚を述べおいる。たた、2025幎12月のスコットランド議䌚における蚌蚀でも、2℃にずどめるためには䞖界党䜓で毎幎8の排出削枛が必芁ずの芋解を瀺しおいる。(⁠Climate Uncensored)
重芁なのは、幎率8ずいう数字を「正確に8でなければならない」ずいう意味で捉えるこずではない。排出削枛を1幎先送りすれば、その分だけ残されたカヌボンバゞェットを消費し、その埌に必芁ずなる幎間削枛率はさらに倧きくなる。したがっお、この数字はむしろ、「珟圚の政策が想定しおいる数皋床の緩やかな削枛では、2℃目暙さえ維持するこずが極めお困難なずころたで時間的䜙裕が倱われおいる」こずを瀺す指暙ずしお理解すべきである。
本皿では、この最新の議論を螏たえ、さらにティッピングポむント等の䞍可逆的リスクを考慮しお、安党偎に立぀ために「少なくずも幎率8皋床」ずいう目暙を蚭定しおいる。これは科孊的に確定した唯䞀の正解を提瀺するものではなく、珟圚の状況の厳しさを過小評䟡しないための政策䞊の基準である。
なお、Anderson教授の過去の研究・講挔における削枛率の数倀は、察象ずする枩床目暙、起点ずなる幎、カヌボンバゞェットの掚蚈、公平性の配分方法等によっお異なる。本皿では、それらを区別したうえで、2026幎時点の䞖界党䜓に関する最新の議論を䞻たる根拠ずしおいる。
Climate - Prof Kevin Anderson | National Emergency Briefing


第12章

グリヌン成長だけで間に合うのか

こうした議論に察しおは、「技術革新によるグリヌン成長で解決できる」ずいう意芋がありたす。確かに、再生可胜゚ネルギヌ、省゚ネルギヌ技術、電動化、AIによる効率化などは極めお重芁です。これらなしに脱炭玠は実珟できたせん。しかし、それだけで十分かどうかは別の問題です。

グリヌン成長論の根拠ずしお挙げられるのが、デカップリングです。デカップリングずは、GDPが成長しおも資源消費やCO₂排出が増えない、あるいは枛少する珟象を指したす【泚14】。

䞀郚の囜では、確かに囜内排出量が枛少しながら経枈成長を維持した䟋がありたす。
これは重芁な成果です。しかし、慎重に評䟡する必芁がありたす。

第䞀に、倚くの改善は、゚ネルギヌ効率の改善や石炭から倩然ガスぞの転換、再生可胜゚ネルギヌ導入など、比范的取り組みやすい分野で達成された可胜性がありたす。いわゆる「手の届く果実」を収穫した段階ずも考えられたす。効率改善は初期ほど効果が倧きく、その埌は改善䜙地が小さくなる傟向がありたす。

第二に、囜内排出量だけを芋るず、補造業を海倖ぞ移転した効果を芋萜ずす堎合がありたす。ある囜が囜内の工堎を枛らしおも、その補品を海倖から茞入しおいれば、䞖界党䜓の排出は枛っおいないかもしれたせん。このため、消費ベヌスで排出量を評䟡するず、デカップリングの皋床は生産ベヌスより限定的であるずいう研究もありたす【泚15】。

぀たり、デカップリングは重芁な進展であり、グリヌン成長の可胜性を瀺す珟象でもありたす。しかし、問題は、その速床ず芏暡です。珟圚確認されおいるデカップリングの速床ず芏暡は、気候倉動を抑制するために必芁な䞖界党䜓の排出削枛量には到底届いおいたせん。
したがっお、「経枈成長ず排出削枛を䞡立できる囜が存圚する」ずいう事実から、「䞖界党䜓でも経枈成長を維持したたた必芁な速床で脱炭玠できる」ず結論づけるこずはできたせん。

たた、この点を評䟡する際には、もう䞀぀重芁な芖点がありたす。
䞖界党䜓で芋るず、再生可胜゚ネルギヌは急速に普及しおきたした。
それにもかかわらず、化石燃料の消費量は䟝然ずしお高い氎準を維持し、囜際的には増加しおいる地域も少なくありたせん。

぀たり、倚くの堎合、再生可胜゚ネルギヌは既存の化石燃料を倧芏暡に眮き換えたずいうより、経枈成長や人口増加に䌎う新たな゚ネルギヌ需芁を補う「远加電源」ずしお機胜しおきたした。
その結果、再生可胜゚ネルギヌは増えおいおも、䞖界党䜓のCO₂排出量は期埅されたほど枛少しおいないのです。
この点は、「再生可胜゚ネルギヌが増えれば、自動的に脱炭玠が進む」ず考えるこずの難しさを瀺しおいたす【泚16】。

䞖界の䞀次゚ネルギヌ消費量゚ネルギヌ源別

出兞Our World in Data – Global energy substitution

さらに重芁なのは、䞖界党䜓の゚ネルギヌ構造です。
私たちが日垞的に目にするのは発電の話題が䞭心ですが、電力は䞖界の最終゚ネルギヌ消費の䞀郚玄2割に過ぎたせん。
産業甚の高枩熱、鉄鋌・化孊・セメント補造、航空、海運、長距離茞送など、倚くの分野では䟝然ずしお化石燃料ぞの䟝存が倧きく残っおいたす。
したがっお、仮に電力郚門で再生可胜゚ネルギヌが急速に普及したずしおも、それだけで゚ネルギヌシステム党䜓が脱炭玠化されるわけではありたせん。

䞖界の䞀次゚ネルギヌ䟛絊では、化石燃料が䟝然ずしお玄8割を占めおおり、再生可胜゚ネルギヌは急速に拡倧しおいるものの、゚ネルギヌ党䜓に占める割合はなお限定的です。特に、倪陜光・颚力が急増しおいる䞀方で、それらはたず電力郚門最終゚ネルギヌ消費の玄2割を䞭心に普及しおおり、゚ネルギヌシステム党䜓を眮き換える段階にはただ至っおいたせん。

â–Œ むメヌゞ゚ネルギヌ構成

化石燃料 ████████████████████████ 80%
再゚ネ  ███████       玄15%
その他  ██         玄5%

さらに、゚ネルギヌ効率の改善が必ずしも資源消費党䜓の削枛に぀ながるずは限らないこずも知られおいたす。
経枈孊では、この珟象は「ゞェボンズ・パラドックス」あるいはリバりンド効果ずしお議論されおきたした【泚17】。

技術革新によっお゚ネルギヌ利甚が効率化するず、利甚コストが䞋がり、新たな需芁や消費を生み出すこずで、結果ずしお゚ネルギヌ消費党䜓があたり枛らない、あるいは増加する堎合がありたす。
もちろん、この効果の倧きさに぀いおは研究によっお評䟡が分かれたす。
しかし少なくずも、「技術効率の改善だけで、䞖界党䜓の資源消費やCO₂排出が自動的に枛少する」ず考えるこずには慎重であるべきでしょう。

぀たり、技術革新による効率改善は脱炭玠の重芁な手段ではあっおも、それ自䜓が脱炭玠を保蚌するものではありたせん。需芁が増え続ける限り、効率改善だけでは化石燃料消費を枛らせないからです。脱炭玠を実珟するには、「より効率よく䜿う」こずだけでなく、「䜕をどれだけ䜿うのか」を瀟䌚党䜓ずしお倉えおいく必芁がありたす。

排出ギャップ。あるべき状態ず珟状には倧きな開きがありたす。
赀やオレンゞがNDCパリ協定玄束の合蚈に基づくものですが、珟圚はその䞊、濃い青のラむンを進んでいたす。削枛目暙2°C、1.5°Cラむンは公匏的な芋積もりなので甘めずなっおいたす。

Image: UNEP, Emissions Gap Report 2025
© United Nations Environment Programme (UNEP)
URL: https://unepccc.org/emissions-gap-reports


【脚泚】

【泚14】
デカップリングには、GDPが増加する䞀方で排出量が枛少する「絶察的デカップリング」ず、排出量は増加するもののGDPより䜎い速床で増加する「盞察的デカップリング」がある。IPCC AR6 WGIII等でもこの区別が甚いられおいる。本皿では、経枈成長ず環境負荷の分離が実際に確認される堎合があるこずを認め぀぀、その速床・芏暡・持続性が、䞖界党䜓で必芁ずなる排出削枛量を満たすかどうかを問題ずしおいる。
【泚15】
消費ベヌス排出量consumption-based emissionsは、囜内で実際に排出された量ではなく、茞入品等の生産過皋で生じた排出を最終消費地偎に垰属させお算出する考え方である。これにより、補造業の海倖移転などによっお囜内排出量が枛少した堎合でも、消費に䌎う排出を含めた実質的な排出負荷を評䟡できる。䞀方、炭玠リヌケヌゞは、ある囜・地域の気候政策によっお生産や排出が他地域ぞ移転する珟象を指し、䞡者は関連するものの同䞀の抂念ではない。
【泚16】
再生可胜゚ネルギヌの導入量が増加するこずず、䞖界党䜓の化石燃料消費が同じ芏暡で枛少するこずは同矩ではない。IEAの近幎の゚ネルギヌ需絊分析でも、倪陜光発電等が䞖界の゚ネルギヌ需芁増加を倧きく支える䞀方、石油・倩然ガス・石炭の需芁が同時に増加する状況が確認されおいる。本皿では、再生可胜゚ネルギヌの拡倧を吊定するのではなく、「再゚ネが増えた」ずいう事実だけから「化石燃料が眮き換えられた」ず結論するこずはできない、ずいう意味でこの点を指摘しおいる。
【泚17】
゚ネルギヌ効率の改善が、゚ネルギヌ需芁の枛少をそのたた意味しない珟象は、ゞェボンズ・パラドックスおよびリバりンド効果ずしお研究されおいる。効率改善によっお利甚コストが䜎䞋するず、利甚量や生産量が増加し、削枛効果の䞀郚が盞殺される堎合がある。ただし、その効果の倧きさや、効率改善が最終的に総゚ネルギヌ消費を増加させるかどうかは、察象ずなる技術、垂堎、時間軞等によっお異なる。本皿では、「効率改善だけでは排出削枛を保蚌しない」ずいう意味でこの問題を扱っおいる。



【第4郚】私たちは䜕を倉えるべきなのか


第13章

「脱成長」は経枈を止めるこずではない

ここたでの議論から、私は䞀぀の結論に至りたす。

珟圚想定されおいるグリヌン成長だけに䟝存しお、必芁な速床ず芏暡の排出削枛を実珟するこずは困難です。

だからずいっお、経枈成長そのものを吊定する必芁はありたせん。むしろ目指すべきなのは、経枈成長の䞭身を倉え、資源ず゚ネルギヌを倧量に消費し続けなければ成立しない成長から、少ない資源投入でより倧きな瀟䌚的䟡倀を生み出す経枈ぞ移行するこずです。

ここで重芁なのは、「成長」ずいう蚀葉の意味を敎理するこずです。GDPは経枈掻動の芏暡を瀺す指暙ですが、人々の幞犏や瀟䌚の持続可胜性そのものを枬る指暙ではありたせん。医療、教育、文化、犏祉、デゞタルサヌビスなど、人々の生掻を豊かにする掻動は、必ずしも倧量の資源や゚ネルギヌを必芁ずしたせん。

䞀方で、倧量の資源採掘、䜿い捚お消費、過剰な物流、過床な広告による需芁喚起などは、GDPを抌し䞊げおも環境負荷を倧きくしたす。したがっお、本圓に必芁なのは「経枈を瞮小するこず」ではなく、物質・゚ネルギヌ集玄型の成長から、人間の犏祉や知識、文化を䞭心ずした発展ぞ軞足を移すこずです。

その意味では、私は「脱成長」ずいう蚀葉が誀解を招きやすいずも感じおいたす。目指すべきなのは「反成長」ではなく、「資源消費ぞの䟝存からの成長の脱华」です。
ただし、珟実には、技術革新や効率化だけでは排出削枛が間に合わず、短期的に資源や゚ネルギヌ消費そのものを抑制しなければならない局面がありたす。

その堎合、䞀定期間、GDPの量的拡倧を抑制する政策、すなわち脱成長的な政策を遞択肢から倖すべきではありたせん。

重芁なのは、脱成長を「瀟䌚を貧しくするこず」ず同䞀芖しないこずです。削枛すべきなのは、瀟䌚の豊かさそのものではなく、環境負荷の倧きい消費や、必ずしも人々の生掻の質を高めない資源・゚ネルギヌ利甚です。

したがっお、必芁なのは「成長か脱成長か」ずいう二者択䞀ではありたせん。短期的には環境負荷の倧きい経枈掻動を瞮小しながら、同時に、医療、教育、公共亀通、䜏宅、文化、情報、再生可胜゚ネルギヌなど、資源投入に察しお倧きな瀟䌚的䟡倀を生み出す分野ぞ経枈掻動を移しおいくこずです。

その意味で、脱成長は最終的な瀟䌚モデルずいうよりも、持続可胜な豊かさぞ移行するための䞀぀の政策手段ずしお䜍眮付けるべきだず考えたす。


第14章

本圓に足りないのは「お金」なのか

脱炭玠政策に反察する議論では、「そんな財源はない」ずいう蚀葉が繰り返されたす。しかし、本圓にそうでしょうか。

䞖界党䜓を芋れば、金融資産は数癟兆ドル芏暡に達し、超富裕局が保有する資産も過去最倧玚ずなっおいたす【泚18】。䞖界のGDPも䟝然ずしお拡倧を続けおいたす。぀たり、人類瀟䌚には膚倧な資本が存圚しおいたす。

そしお、もう䞀぀重芁なのは、その資本ずずもに、枩宀効果ガスの排出もたた倧きく偏っおいるずいうこずです。

Oxfamの2023幎の報告曞 Climate Equality: A Planet for the 99% によれば、䞖界の最富裕局1は、2019幎の消費ベヌスの排出量の16を占めおおり、これは䞖界人口の䞋䜍66、玄50億人が排出した量ずほが同じです。たた、最富裕局10で芋るず、䞖界の消費ベヌス排出の玄半分を占めおいたす 【泚19】。

消費ベヌスのCO2排出量の割合、2019幎

出兞Oxfam, Climate Equality: A Planet For The 99%, 2023幎

この数字が瀺しおいるのは、気候倉動が単玔に「人類党䜓が等しく排出しおいる結果」ではないずいうこずです。排出には極めお倧きな偏りがあり、その偏りは所埗や資産の偏圚ずも重なっおいたす。

もちろん、これは「富裕局だけが排出削枛をすればよい」ずいう単玔な話ではありたせん。しかし、少なくずも、脱炭玠に必芁な資金を考える際に、「瀟䌚党䜓に財源が存圚するか」だけを問題にするのは適切ではありたせん。

誰が資本を保有しおいるのか。誰が倧きな排出を生み出しおいるのか。そしお、脱炭玠ぞの移行に必芁な費甚を誰が負担するのか。

これらは、切り離しお考えるこずのできない問題です。

぀たり、問題は資本の総量そのものではありたせん。資本がどこに集䞭しおいるのか、排出がどこに集䞭しおいるのか、そしおその構造を倉えるための負担を誰が担うのかずいう、分配の問題なのです。

珟圚も倚くの囜で、化石燃料産業には巚額の補助金や皎制䞊の優遇措眮が残っおいたす 【泚20】。短期的な利益を远求する金融資本ぞ資金が流れやすい䞀方で、長期的な脱炭玠むンフラや気候適応には十分な投資が行われおいるずは蚀えたせん。

もし、环積CO₂排出によっお埗られた利益や、独占的・寡占的地䜍から生たれる超過利最の䞀郚を適切に瀟䌚ぞ還元し、それを䞖界芏暡の脱炭玠投資ぞ振り向ける制床が構築できれば、生掻者ぞ過床な負担を集䞭させずに移行を進める䜙地は十分にありたす。

これは、「富を没収する」ずいう話ではありたせん。垂堎経枈を維持しながら、垂堎が十分に反映できおいない瀟䌚的コストず利益を制床によっお調敎するずいうこずです。経枈孊で蚀えば、倖郚性の内郚化ず、適切な再分配の組み合わせです。

重芁なのは、「匱者が犠牲にならなければ脱炭玠は実珟できない」ずいう前提を疑うこずです。瀟䌚に必芁な資源は存圚したす。䞍足しおいるのは、それを公正か぀効率的に配分する制床です。


【脚泚】

【泚18】
䞖界の所埗・資産分配に぀いおは、World Inequality Database / World Inequality Report等が、所埗・資産の䞊䜍局ぞの集䞭床を継続的に掚蚈しおいる。本皿では、富裕局の所埗・資産集䞭が単に栌差の問題にずどたらず、消費、投資、政治的圱響力、政策圢成等を通じお環境負荷や瀟䌚制床にも関係する可胜性があるずいう芳点から扱っおいる。
【泚19】
Oxfam International, Climate Equality: A Planet for the 99% (2023). 本報告曞は、Stockholm Environment InstituteSEIの分析に基づき、2019幎の所埗階局別の消費ベヌス枩宀効果ガス排出量を掚蚈しおいる。報告曞によれば、䞖界の最富裕局1玄7,700䞇人は2019幎の䞖界の消費ベヌス排出量の16を占め、これは䞖界人口の䞋䜍66玄50億人による排出量ずほが同芏暡である。たた、最富裕局10は䞖界の排出量の玄50を占めるずされる。
ここでいう「消費ベヌス排出量」は、囜内で盎接排出された量だけでなく、最終的な消費に䌎うサプラむチェヌン䞊の排出等を消費偎に垰属させたものである。そのため、囜別の生産ベヌス排出量ずは異なる。なお、これらの数倀は2019幎を察象ずしおおり、珟圚の排出分垃をそのたた瀺すものではないが、䞖界の排出が所埗階局によっお倧きく偏っおいるこずを瀺す資料ずしお参照しおいる。
【泚20】
化石燃料ぞの補助金に぀いおは、IEA、IMF等が、明瀺的な財政支揎だけでなく、䟡栌補助、皎制䞊の優遇、環境倖郚性を十分に䟡栌ぞ反映しないこずによる暗黙的な補助等を含めお掚蚈しおいる。したがっお、「化石燃料補助金」ずいう数字を比范する際には、どの範囲の補助を含めおいるかを確認する必芁がある。


第15章

「資本䞻矩を曎新する」ずいう遞択肢

私は、気候危機を前にしお必芁なのは䜓制革呜ではないず考えおいたす。必芁なのは、資本䞻矩を珟代に合わせお曎新するこずです。

その曎新には、少なくずも次のような芁玠が含たれるでしょう。

第䞀に、CO₂排出の瀟䌚的コストを䟡栌ぞ十分に反映するこずです。これは炭玠皎や排出量取匕だけでなく、囜際的な炭玠䟡栌制床や炭玠囜境調敎措眮なども含みたす。

第二に、环積排出責任を制床ぞ組み蟌むこずです。気候倉動は長期にわたる环積排出の結果であり、その恩恵を受けおきた䞻䜓ず、これから負担を求められる䞻䜓ずの公平性を考える必芁がありたす。

第䞉に、脱炭玠ぞの移行コストを生掻者だけぞ集䞭させないこずです。垂堎の䞭で蓄積された超過利最や、倖郚性によっお生たれた利益の䞀郚を掻甚し、瀟䌚党䜓で移行を支える仕組みが必芁です。

第四に、民䞻䞻矩が資本に察しお十分なガバナンスを発揮できるようにするこずです。䌁業掻動は瀟䌚に䞍可欠です。しかし、䌁業も垂堎も、瀟䌚党䜓のルヌルの䞭で機胜する存圚です。そのルヌル圢成が、䞀郚の䞻䜓に過床に巊右される状態では、垂堎本来の競争や効率性も損なわれたす。

最埌に、気候倉動のようなグロヌバル課題に察しお、囜家単䜍を超えた協調の仕組みを匷化するこずです。䞖界政府を盎ちに構築するこずは珟実的ではありたせん。しかし、炭玠䟡栌、囜際基金、技術移転、炭玠リヌケヌゞ察策など、囜家間で実効性を持぀制床を段階的に敎備しおいくこずは可胜です。


おわりに

私たちが本圓に議論すべきこず

脱炭玠が進たない理由は、「技術が足りないから」ではありたせん。「囜民の意識が䜎いから」でもありたせん。もちろん、「資本䞻矩だから」ずいう単玔な話でもありたせん。

問題は、珟圚の経枈ルヌルず政治制床が、気候倉動ずいう新しい珟実に適応できおいないこずです。

垂堎は、本来優れた仕組みです。しかし、それは適切なルヌルがあっお初めお機胜したす。珟圚の垂堎は、CO₂排出ずいう巚倧な倖郚性を十分に䟡栌ぞ反映できおいたせん。さらに、グロヌバル化した資本に察しお、民䞻䞻矩のガバナンスが十分远い぀いおいないずいう構造的課題も抱えおいたす。

だから必芁なのは、垂堎を捚おるこずではなく、垂堎を支えるルヌルを曎新するこずです。そしお、その曎新は、気候倉動察策だけではありたせん。経枈の効率性ず公平性を䞡立し、民䞻䞻矩をより実質的なものぞ近づける改革でもありたす。

本皿では、孊問、政治、資本、囜際制床の関係に぀いお、䞀぀の仮説を提瀺したした。すべおの読者が同じ結論に至る必芁はありたせん。しかし少なくずも、私たちはこれたで、「技術をどう開発するか」や「個人が䜕を我慢するか」に぀いおは数倚く議論しおきたした。その䞀方で、「垂堎を支えるルヌルをどう蚭蚈し盎すか」ずいう議論は、十分ずは蚀えたせん。

気候危機は、゚ネルギヌ問題であるず同時に、経枈制床の問題でもありたす。だからこそ、これから最も重芁になるのは、新しい技術だけではありたせん。

新しい経枈ルヌルを蚭蚈するこず。

そしお、そのルヌルが民䞻䞻矩の䞋で継続的に芋盎され、暩力や資本が過床に集䞭しないよう監芖されるガバナンスを育おるこずです。

私たちに残された時間は決しお倚くありたせん。しかし、技術も、資金も、知識も、すでに人類は持っおいたす。足りないのは、それらを結び付ける制床ず、その制床を本気で議論する瀟䌚的意思です。



関連蚘事提案等

â–Œ 持続可胜䞖界ぞ移行するための党䜓ロヌドマップ [Survival Redesign]

â–Œ 民䞻䞻矩2.0の提案資本のハックを無効化する



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â–Œ 地球の限界をオヌバヌしおいる珟状に぀いお

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関連蚘事状況の分析等

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関連蚘事 [English version]

â–Œ Overall Roadmap for Transitioning to a Sustainable World [Survival Redesign]: 



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