英国で医師1.2万人が「海外へ」──世界で始まる医師争奪戦、日本は大丈夫か?
イギリスで衝撃的なニュースが報じられました。
2025年、12,255人もの医師が海外で働くための手続きを申請し、過去最多を更新したのです。
しかも、この数は前年より約20%増え、2020年の2倍以上となっています。

これは単なる一時的な出来事ではありません。
世界では今、「医師の国際争奪戦」が始まっています。
「1.2万人が辞めた」ではない
まず重要なのは、この数字の意味です。
報じられた12,255人は、
海外で診療するために必要な「Certificate of Good Standing(CGS)」を申請した医師
の人数です。
つまり、
実際に移住した人数
ではなく、
海外勤務を真剣に検討し、準備を始めた人数
です。
もちろん全員が海外へ移るわけではありません。
しかし、
「海外へ行きたい」と考える医師が過去最多になった
という事実は非常に重い意味を持っています。
コロナ後、毎年増え続けている
特に興味深いのは、その推移です。
CGS申請件数は
2020年 5,152件
2021年 5,576件
2022年 6,950件
2023年 8,661件
2024年 10,685件
2025年 12,255件
と、コロナ禍以降、毎年増加しています。
わずか5年間で約2.4倍。
これは偶然ではなく、構造的な変化と考えるべきでしょう。
10年前は年間約5,000件だった
実は、この傾向は以前から始まっていました。
2010年代前半には、全医師のCGS申請は年間約5,000件程度と報じられていました。
つまり、約10年で
約5,000件 → 約12,000件
へと倍以上になっています。
英国医療界では、まさに「Brain Drain(頭脳流出)」という言葉が定着しています。
行き先はどこか?
人気の移住先は
オーストラリア
カナダ
アイルランド
UAE(アラブ首長国連邦)
アメリカ
などです。
特にオーストラリアは、
高給与
短い労働時間
良好なワークライフバランス
から、英国医師の最大の移住先となっています。
以前に、米国医師がバーンアウトして、NZに移住した記事を紹介したこともありました。
なぜ英国医師は海外へ行くのか
背景として挙げられているのは、
長時間労働
バーンアウト
人手不足
NHSへの不満
より高い給与
より良い生活環境
です。
英国は英語圏であり、大英帝国連邦のオーストラリアやカナダへの移住ハードルが比較的低いことも大きな要因です。
日本ではどうか?
現時点では、日本は状況がかなり違います。
日本人医師が海外へ行くケースはありますが、
その多くは
研究留学
ポスドク
リサーチフェロー
海外大学での研究
です。
私自身もボストンで研究留学をしていましたが、日本人医師は非常に多くいました。
しかし、その多くは数年後に日本へ帰国します。
日本では
海外流出
と
海外からの帰国
がかなり相殺されている可能性があります。
日本の本当の課題は別にある
日本の医師数は、
今年の医師数
=去年の医師数
+国家試験合格者
-死亡・引退
+海外からの帰国
-海外への流出
という式で考えられます。
この中で、
海外流出は現時点では比較的小さく、
最も影響が大きいのは
高齢医師の引退
です。
2030年前後からは、
1970〜80年代に大量養成された世代が65歳を迎えます。
日本では、英国のような海外流出よりも、
高齢医師の大量引退
の方が医療提供体制に与える影響ははるかに大きいでしょう。
ここら辺は以下で詳しく書いています。
それでも英国のニュースは重要
だからといって、日本には関係ない話ではありません。
医師も世界的には高度専門職です。
待遇や働き方が国際比較される時代になれば(いやすでに気付いている医者は多いと思いますが・・・)、
日本でも
英語教育の普及
海外資格取得ルートの整備
国際共同研究の増加
などによって、若手医師の海外志向は今後強まる可能性があります。
おわりに
英国では、海外勤務を希望する医師が
年間5,000人程度だった時代から、12,000人を超える時代
へ入りました。
これは単なる数字ではありません。
世界中で医師の獲得競争が激しくなっていることを示す象徴的な出来事です。
日本では現時点で海外流出は限定的ですが、
これからの医療政策は国内だけを見て考える時代ではなく、
「世界の医師市場」の中で日本を考える時代
に入りつつあるのかもしれません。
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