田舎の医師不足医療機関のリクルート担当者はこれを読め:NZに移住した米国医師の記事から考える。もはや高年収すら提示できない令和の医療で田舎はどう考えるべきか




米国で燃え尽きた医師がニュージーランドへ移住しているという記事を読んだ。

https://www.wsj.com/real-estate/luxury-homes/timaru-new-zealand-american-doctors-eca3fe8d


記事のポイント

  • 米国ではCOVID-19以降、医師のバーンアウトが深刻化

  • 原因は

    • 患者数増加

    • 人手不足

    • 医療訴訟リスク

    • 保険制度の複雑さ

    • 患者が医療費で破産していくことへの精神的負担

  • ブランドン医師はPTSDを発症し、同僚は自殺。

  • 医療そのものは好きだが、「アメリカで医療をやること」が耐えられなくなった。

なぜニュージーランドなのか

記事によれば、

  • 英語圏

  • 多くの診療科で追加資格が不要

  • 2025年から海外医師の登録を簡素化

  • 医師不足なので歓迎される

  • 公的医療中心で診療報酬請求がシンプル

  • 医療訴訟が少ない

  • 有給休暇6週間

  • 病欠は実質無制限

  • 勤務時間がかなり短い

などが理由です。

興味深いのは、

年収は35%減ったが、それでも生活満足度は大幅に上がった

という医師も紹介されています。


日本との比較


日本

  • 医療費が安い

  • 訴訟は米国ほど多くない

  • 国民皆保険

  • 医療費未払いは少ない

しかし

  • 医師不足

  • 当直

  • 長時間労働

  • 書類仕事

  • 地域偏在

が問題です。

つまり

アメリカほど制度疲弊ではないが、労働環境は依然として厳しい

という位置づけでしょう。


ニュージーランドも万能ではない

記事ではメリットばかりではありません。

例えば

  • 給料は下がる

  • 家族と離れる

  • 配偶者が仕事をやり直す必要

  • アメリカの商品が手に入りにくい

  • 運転が逆

なども挙げられています。


日本への示唆


  • 在宅医療

  • 老健での看取り

  • オンライン診療

  • 病院依存から地域包括ケアへの転換

は、実は医師のバーンアウト対策にもなりえます。


都市部の病院勤務医が疲弊する理由は

  • 救急が多すぎる

  • 入院患者が多すぎる

  • 社会的入院

  • 高齢者の軽症救急

が積み重なっているためです。

これらを地域で受け止められれば、医師の働き方も改善できます。



日本でも都市部の多忙な勤務医は田舎に来る可能性がある

私は、日本でも同じことが起こり得ると思う。

都市部の大病院で働く勤務医は、かなり疲れている。

救急、当直、外来、病棟、手術、ICU、クレーム、書類、会議、管理業務、訴訟リスク、医療安全、働き方改革対応。

もちろん病院によるが、40代、50代の勤務医には、かなり疲弊している人が少なくない。

彼らは必ずしも「医師を辞めたい」と思っているわけではない。

むしろ、医療そのものは好きだったりする。

ただ、

「この働き方をあと20年続けるのは無理」

と思っている。

ここに、地方医療機関のチャンスがある。

田舎の医師リクルートは根本的に発想を変えるべき

地方の医療機関は、医師採用でよくこう考える。

「給料を上げれば来るのではないか(医者はどうせ金の亡者だろ?)」

もちろん給料は重要だ。

しかし、今の医師、とくに中堅以上の医師に刺さるのは、必ずしも高年収だけではない。

むしろ重要なのは、

「人生を取り戻せるか」

である。

たとえば都市部で、

年収1800万円。
当直月6回。
救急対応あり。
オンコールあり。
患者・家族対応でストレス多い。
残業多い。
通勤片道1時間。
子どもと夕食を食べられない。

こういう生活をしている医師がいたとする。

一方、地方で、

年収1500万円。
当直なし。
オンコール月数回。
通勤15分。渋滞無し。
17時帰宅。
子どもと毎日夕食を食べられる。
一戸建てほぼ無料。
患者・家族対応でストレス少ない。
自然が近い。


こういう条件なら、年収が下がっても移る医師はいると思う。
もちろん万能だとは思わない。
そもそも都会の医者に万能に効いたとして、そんなにたくさんの医者は田舎に不要であろう。
全員に突き刺さる必要はない。
1/100に響けば十分だ。

結婚と同じだ。
めちゃくちゃモテる必要はない。
合う一人が見つかればいいだけで、99/100に好かれなくても何も問題はない。

話を戻る。
大事なのは、地方が売るべき商品は「給料」ではなく「生活」だということである。

医師に売るべきものは「ポスト」ではなく「人生」

いなkの医療機関の求人票は、だいたい面白くない。

「内科医募集(全身見れれば外科医も可)」
「年収応相談」
「当直応相談」
「地域医療に貢献」
「自然たっぷり」

これでは刺さらない。

本当に伝えるべきなのは、こういうことではないか。

17時に帰れます。
当直はありません。
オンコールは分担制です。
外来は1日何人です。
病棟は何床です。
救急搬送は年間何件です。
土日は基本休めます。
有給は実際に取れます。
住宅を用意します。
通勤は車で10分です。
夏は東京より涼しいです。
子どもを自然の中で育てられます。
釣り、登山、スキー、温泉、家庭菜園ができます。
医師として無理なく長く働けます。
お試し勤務できます。とりあえず非常勤勤務OKです。定期非常勤継続でもOKです。週3日+当直1で社会保険つけれます。
もちろん合わなかったら就職しなくても・辞めてもらって問題ないです。

これである。

医師不足の地方医療機関は、医師に対して「助けてください」と言いがちだ。

しかし、疲れている医師に「助けてください」は刺さらない。

刺さるのは、

「ここなら、あなたは医師を続けながら、ちゃんと人間として暮らせます。田舎の方が結構お得じゃないですか?」

というメッセージである。

狙うべきは若手だけではない

地方医療機関は、若い医師を欲しがる。

しかし、若手医師は専門医取得、キャリア形成、症例経験、学位、都市部志向などがあり、地方に定着させるのは簡単ではない。

むしろ狙うべきは、40〜55歳くらいの都市部勤務医ではないか。

この層は、

専門医取得済み。
臨床経験豊富。
子育て中。 または 子育て終わりに近い。
親の介護も見え始める。
管理職疲れがある。
当直がきつくなってくる。
自分の人生を考え直し始める。
勤務医をやめたいが、開業も難しそう。借金怖い。労務管理・人事とか無理、やりたくない。

つまり、地方移住の潜在層である。

彼らに対して、

「地域医療を支えてください」

ではなく、

「あなたの労働人生の後半戦を、もっと人間的な環境でやりませんか。これまであなたがやってきた得意なことを活かしつつ。」

と提案する。

これはかなり有効だと思う。

地方医療機関がやるべきこと

第一に、働き方を本当に改善すること。

当直なしと書いておいて、実際にはオンコール地獄では意味がない。
残業少なめと書いておいて、実際には医師が何でも背負う体制では意味がない。

求人広告を作る前に、まず職場を変えなければならない。
それができなければ今働いている人が辞めてしまう。
今いる人を大切にできない職場に未来はないだろう。
それがわからない・できないところは選ばれない。

第二に、数字を出すこと。

「働きやすいです」ではなく、

外来数。
病棟担当数。
救急搬送件数。
当直回数。
オンコール回数。
平均退勤時間。
有給取得率。
常勤医師数。
非常勤医師数。
医師事務作業補助者の配置。
看護師、薬剤師、リハ、MSWとの分業体制。

これを明示する。

誰かの主観は要らない。それが働きやすいか判断するのは応募者だ。判断には数字が必要である。


第三に、生活情報を出すこと。

家賃。
住宅補助。
保育園。
学校。
習い事。
スーパー。
新幹線駅・空港までの距離。
冬の雪。
車の必要性。
休日の過ごし方。

医師は一人で移住するわけではない。
家族も動く。

配偶者と子どもが納得しなければ、医師は来ない。

第四に、短期滞在制度を作ること。

いきなり移住はハードルが高い。

まずは、

1週間勤務。
1か月勤務。
週末見学。
家族同伴の地域体験。
夏休みだけ勤務。
二拠点勤務。

こういう入口を作るべきだ。

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