強まる東アジア通貨と金との順相関!
トランプ米政権による相互関税発動以降、対米黒字を多く抱える中国(香港)、日本、台湾などの東アジア通貨が大きく買われる展開が続いている。その一方で、米国第一主義への反発から外貨準備の運用先を米ドルから他の資産に移す動きも活発化している。特に金への選好がグローバルサウス諸国中心に強まっており、東アジア通貨高と金高が共存する地合いとなっている。その背景を香港ドルと日本円を例に採り上げ、今後の金相場の行方を解説する。
1.香港金融管理局(HKMA)が大規模介入
今年に入り、中国政府による景気刺激策を好感して、香港株式市場へ資金流入が加速した結果、香港ドルが、図表1の通り、一本調子で上昇、HKMAの介入の上限となる7.75香港ドルに接近したことで、5/2・5/5に合わせると過去最大の1,000億香港ドルを超えるドル買い香港ドル売り介入を実施した。併せて、HKMAは、「香港の為替基金が、米ドル以外の資産への分散を進めている」と発表している。HKMAの外貨準備高は、4,000億ドルを超えており、今回積み上る外貨準備の分散化を発表すると、アジア市場において金相場が、図表2の通り、急伸することとなった。


2.金高に反応する日本円
先月来、金相場がアジア時間に上昇すると、日本円が連れ高となるケースが増えている。先月の日本長期国債への外国人投資家の買い越し額が、月間で過去最高の6兆円に達したことで、米中対立激化による米ドル離れの一環として、中国政府中心に日本国債への外貨準備シフトが進んでいるとの見方を裏づける統計となっている。その結果、ドル円相場は、先月一時140円割れを示現する動きとなった。
3.金上昇ほど上昇しない日本円
今週、金相場が、3,200ドル台前半から3,400ドル台半ばまで6%以上上昇したのに対し、円相場は、対ドルで2%程度の上昇に留まっている。これは日本の大幅な国際収支赤字を背景に、日本企業のドル買い需要がドル円相場の下値を支えている背景がある。
4.史上最高値を窺う金円相場
金が6%上昇する間に、円が2%しか上昇しない場合、金は対円で4%上昇することになる。その結果、金は対ドルでの史上最高値の3,500ドル台までは、まだ100ドル以上の距離があるのに対し、金円相場は、5/7一時、先月付けた史上最高値に接近する上昇となっている。
5.トランプ関税が押し上げる金とドル円相場
トランプ関税導入による米中対立の激化や世界的な米国離れの動きが、金相場を押し上げている。一方、日本の対米自動車輸出が実質滞っている現状では、日本の貿易需給が今後一層ドル買い超に傾くことで、ドル円にも上昇圧力が加わることとになる。金の小売価格はこの1年で70%上昇し、17,000円を超えているが、早晩、2万円の大台に到達することとなろう。
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2025年5月7日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
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