テニス上達メモ607. 無意識のプレーはどこで育つのか?
サッカーの躍動を見ていると、そこに「考えるフォーム」は見えない。
感じるままに動く体。
テニスも同じで、意識しすぎるほど体はズレる。
その無意識は、どこで育つのか。
▶イチローも羨んだサッカー
これは私も、趣旨は違いますが、イチローさんに同意。
「サッカーは〝チームのために〟という感じがする。それがうらやましい」
「野球は個人で成績を出さないと、ボロカス言われてクビにされちゃう」
こう語るイチローさん。
とはいえ私がサッカーを羨ましく思う理由は、少し違います。
▶熱狂のサッカーと静寂のテニス
テニスは個人競技。
トレーナーやコーチなどとともにサポートチームで動くにせよ、やっぱりコートで戦うのは「個人」です。
これは競技特性の違いだから仕方がないけれど、サッカーが羨ましいのはインプレー中にもサポーターが「声援」を、がんがん送れるところ。
やっぱり、否が応でも盛り上がります。
狂喜乱舞といったら言いすぎかもしれませんけれども、恥も外聞もなく人の喜ぶ本能が剥き出しになるサッカーの盛り上がり方は、もはやそれ自体がひとつの「競技」。
テニスでは、これができません。
▶テニスに求められる「独特の集中力」とは?
それは文化の違いというよりも、競技特性の違いによる。
いいか悪いかは別として、テニスはそれくらいシーンとした中でボールに集中しないと、競技として成り立たないのです。
ですから客席が少しざわつくだけで、アンパイアは「Quiet please, thank you」などと促すのでしたね(関連記事「集中持続力を伸ばす」)。
▶タイミングをかき消す「意外なノイズ」
1000分の4秒を捉えるインパクトの瞬間は、かくも繊細。
声援であっても、打球タイミングをかき消します。
それが、いちばん身近で騒ぎ立てる頭の中のノイズ(セルフトーク)であれば、言わずもがななのです。
▶ロディックが引き起こした「地響き」
とはいえだからこそ、ポイントが途切れた瞬間に発せられる歓喜が爆発するのも、またテニスなのでしょう。
こちらで触れた敏腕編集者が、全米オープンを記者席で現地取材していたときのこと――。
地元選手のアンディ・ロディックが1ポイントを取るたび、地響きのような歓声で、テーブルにあるペットボトルの水がビーンと振動したと、心を震わせました。
▶ブラジル代表――彼らは「フォーム」を意識している?
ついでに言うと、たとえばW杯・サッカー(本日、日本代表の前に立ちはだかった)ブラジルチームの選手が躍動しているプレーを観ていたら、まさか「フォームをいちいち意識している」とは、思えませんでした。
皆さんはいかがでしたでしょうか?
風のように駆け抜け、稲妻のように切り返し、得点を取っては波乗りダンスで歓びを表現。
感じるままに、本能のままに動いているように、私の目には映りました。
▶初めから無意識でいい
「インサイドキックは、軸足を定め、蹴り足はボールに対して直角の面で」などと、プレー中に考えているのでしょうか?
子どものころに意識してやっていたから、成長した今は無意識でできるようになったという一般的な見解は、私は違うと思っています。
ストリートで育った彼らは、初めから無意識。
少なくとも私には、そのように映りました。
▶無意識のプレーはどこから来るのか――ヴィニシウス・ジュニオール
ブラジル代表のエースとして活躍するヴィニシウス・ジュニオールは、リオデジャネイロ郊外の、貧困地区も点在する「サン・ゴンサロ」で生まれました。
そんな彼は近所のストリートで、泥と埃にまみれながらサッカーに明け暮れたといいます。
本能のままに、感じるままに動くからこそ、あの躍動的なプレーを引き出せるようになった――。
ストリートのヒーローは、初めから無意識だったのです。
▼『テニス・ベースメソッド――フォームを直さない上達論』

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テニスゼロ代表 吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero