【短編小説】ねこカウンセラーの特別案件
前回好評だった短編小説の続編書いてみました👇
「はい、つぎのかた、どうぞニャ〜」
今日もぼくのねこカウンセリングルームは、公園のベンチで営業中だ。
段ボールの看板「相談100円」は、昨日の雨でだいぶヨレている。
でも客足は、いい。
悩みは、雨でも晴れでも湧いてくるものらしい。
まずやって来たのは、前にも来たサラリーマンのお兄さん。
スーツは前よりシワが減り、目の下のクマも薄い。
「先生…会社、行きました」
「ほう、それはえらいニャ」
「行かなくても世界は回るって言われて…なんか、気が楽になって」
「にゃるほど」
彼は少し笑って、今日は100円玉ではなくカリカリをそっと置いていった。
よくわかってるではないか。
そこへ、ランドセルの女の子もやって来た。
あの絵を描くのが好きと言っていた子だ。
「ねこ先生、聞いて!お友達ができたの!」
「おぉ、やったにゃ。」
「休み時間にね、わたしが描いてた猫の絵を見て、かわいいって言ってくれて…そこから話すようになったの!」
「それは良い縁ニャ。猫の絵は世界を救うニャ」
「ありがとう先生!」
嬉しそうに走っていく小さな背中を見送りながら、ぼくは少し誇らしくしっぽを振った。
そんな夕方。
見覚えのある香りが風に乗ってきた。
あの、失恋して泣いていた女性だ。
今日は、髪がすこし整っていて、目も腫れていない。
「先生…この間はありがとう」
「うむ。今日は泣いてないニャ」
「うん、まだ思い出すとつらいけど…ちゃんとごはん食べて眠れてます」
「それは上出来ニャ。栄養と睡眠は基本ニャ」
「ね、先生」
「??」
「わたし、また恋できますか」
彼女の声は震えていたけれど、目はまっすぐだった。
ぼくはしっぽをゆっくり左右に振った。
これは、ねこカウンセラーにとっての確信のしるしだ。
「できるニャ。なぜなら…」
「??」
「今日のあなた、ちゃんと前を向いてるニャ。」
彼女は静かにうなずき、100円玉を一枚、そしてもう一枚、そっと置いた。
「また来てもいい?」
「うむ。」
少し笑った彼女は、公園の出口へ歩いていった。
歩幅は昨日よりも、ずっと軽かった。
太陽が沈み、空が群青に染まるころ。
ぼくはベンチの上で丸くなり、今日の依頼をふり返った。
サラリーマンのお兄さんは、少し楽になった。
女の子には、おともだちができた。
失恋の女性は、前を向いた。
「今日も、いい仕事したニャ」
そう呟いたとき、ふいに足音が近づいてきた。
ちいさな影がぼくの前にちょこんと座った。
黒い毛並み。
まだ子猫だ。
「…せんせい」
「おや、君も相談かニャ?」
子猫はおそるおそる言った。
「ぼく、ひとりぼっちになっちゃった」
風が止まり、夜の匂いが深くなる。
ぼくはゆっくり立ち上がり、子猫の隣に座った。
背中に寄り添うと、子猫の体がびくっと震え、それから少しだけ緩んだ。
「だいじょうぶニャ。君のとなりには、ぼくがいるニャ」
子猫は小さく「うん」と言った。
うむ、新しい依頼が増えたニャ。
明日はもっと忙しくなるかもしれない。
でも、それでいいのだ。
ぼくの仕事は、悩みを消すことではなく。
ちいさな夜に、ちょっとした安心を灯すこと。
「さあ、まずは名前を考えるところからだニャ」
世界は今日も、にゃんとか回っている。
最後に…
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