【短編小説】ねこカウンセラー1回100円
「はい、次のかた、どうぞニャ〜」
今日も、ぼくのねこカウンセリングルームは大盛況だ。
といっても、場所は町の公園のベンチ。
看板は段ボールにマジックで書いた「ねこカウンセラー相談1回100円」。
本当はカリカリ1袋が希望だけど、人間社会には通貨制度があるらしいので、仕方ない。
最初にやってきたのは、サラリーマン風の男性。
目の下にはくま。
スーツには、昨日の夜を引きずったようなシワ。
「先生…僕、会社行きたくないんです」
「それはいいことニャ」
「えっ、いいこと!?」
「会社に行かなくても、世界はまわるニャ。地球が止まったら、その時考えよう」
彼は笑って100円を置き、少し軽い足取りで去っていった。
うむ、今日もひとつ救ったニャ。
次に来たのは、小学生の女の子。
ランドセルよりも悩みが重そうだ。
「ねこ先生、わたし、友だちができないの」
「ふむ、好きな遊びは?」
「絵を描くこと。でも、みんな鬼ごっことかサッカーしてて…」
「にゃらば、絵を描けばいいニャ」
「でも、ひとりぼっちだよ」
「ぼくもひとりで日向ぼっこするニャ。でも、それを孤独とは言わない。」
女の子はしばらく考えて、うなずいた。
「ありがとう、先生」
「礼はいらないニャ。」
「うん!」
夕方、ひとりの女性がやってきた。
髪はボサボサ、顔は泣きはらしたように赤い。
「先生…失恋しました」
「にゃるほど」
「三年付き合ってたのに、急にごめん別れようって…」
「彼はどんな人ニャ?」
「だらしないところはあるんだけど、優しくて…」
「にゃるほど。支えてあげるのは卒業ニャ。恋はお世話じゃないニャ。いっしょにゴロゴロできるかが大事ニャ。また、しんどい時はここにくるニャ。」
「…卒業」
「うむ。これから毛づくろいは、自分のためにするニャ」
彼女はハンカチで涙を拭き、100円玉を2枚置いていった。チップらしい。ありがたい。
夜になると、ぼくはベンチの上で丸くなる。
街灯の下、通りすがりの人たちが笑っていく。
「まだやってるよ、あの猫」
「行ってみようかな、相談してみようかな」
そう言いながら、みんな少し笑顔になっていく。
それでいいのだ。
ぼくの仕事は、悩みを消すことではない。
「今日もいい仕事したニャ」
ぼくはあくびをひとつして、夜空を見上げる。
満月。
明日は予約がいっぱいだ。
恋愛相談、職場の愚痴、ダイエットの悩み全部まとめて受け止めてやる。
ベンチにハンカチの忘れ物があった。
香りをくんくんと嗅いだ。
きっと、あの失恋の女性だ。
「涙の匂いの中にも、希望はちゃんと混ざってるニャ」
そうつぶやいて、しっぽを小さく揺らしながら眠りについた。
最後に…
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