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週刊アンチ・ドーピング通信 #16|"要注意!"肉を食べただけで─FIFA W杯で8人が陽性


はじめに

こんにちは、TechKeepです。今週のアンチ・ドーピング情報をお届けします。

前号の第15号「夏の「点滴」に要注意」では、点滴の"量"(M2.2)という 投与方法 の落とし穴を取り上げました。

今回のテーマは、もっと身近な ── 「食べたもの」 です。

数日前、2026年 FIFAワールドカップ で、ある代表チームの選手から禁止物質 クレンブテロール が検出されました。原因とみられたのは、なんと 「メキシコで食べた肉」

「肉を食べただけでドーピング違反になるの?」── この素朴な疑問を入り口に、"うっかり"の中でも特殊な 食肉由来のクレンブテロール 問題を、JADAの注意喚起とあわせて解説します。


トピック① 「肉を食べただけで陽性」── 実際に起きていること

食肉由来のクレンブテロールによる陽性は、別々の大会で・古くから現在まで くり返し報告されてきました。ここでは代表的な 2つの事例 を挙げます。

  • 2026年 FIFAワールドカップ(数日前の事例):メキシコに滞在した ある代表チームの8選手 から、低濃度のクレンブテロールが検出されました(報道では"非定型(atypical)"の結果とされます)。同じチームで複数の選手が同時に低濃度 という状況は、個々のドーピングよりも 共通の食事(汚染肉) を示唆します。滞在中の肉が原因とみられ、制裁は科されない見込み と報じられています(個人名は非公表)。

  • 2011年 FIFA U-17 ワールドカップ(メキシコ):検査した208人中 109人 と、複数の国・チームにまたがって広範にクレンブテロールの痕跡が検出されました。これほど広く共通して出たことから、FIFA・アンチ・ドーピング当局は「個々の組織的ドーピングではなく、共通の原因=汚染肉」と結論づけました。

いずれも、複数の選手に共通して検出されたことなどから、意図的なドーピングではなく 食事による意図しない摂取 と考えられた事例です。


トピック② なぜ「肉」から検出されるのか

クレンブテロールは、本来は 気管支拡張薬(β2作用薬) の系統ですが、強い 筋肉増強作用・脂肪燃焼作用 を持ちます。

この作用ゆえに、メキシコ・中国・グアテマラ などでは、家畜の赤身を増やす 成長促進剤 として飼料に混ぜられることがあります(多くの国で違法ですが、実態として残っています)。こうした肉を食べた競技者の体内から、微量のクレンブテロールが検出されることがある のです。

💊 このクレンブテロール、WADA禁止表での分類は S1(蛋白同化薬) です。「気管支拡張薬なのになぜS1?」── その詳しい理由は、次号の第17号で深掘りします。


トピック③ 「食べただけ」でも責任は問われるのか

ここで立ちはだかるのが 厳格責任(Strict Liability) の原則です。

  • 検体から検出された物質については、意図や知識の有無を問わず、アスリート本人が責任を負う ── これがアンチ・ドーピングの大原則です。

  • つまり「知らずに肉から摂ってしまった」場合でも、まず疑われるのは競技者本人 になります。

ただし、食肉汚染については 救済的な運用 があります。

WADAは 2019年5月食肉由来と思われる低濃度のクレンブテロール尿中5 ng/mL未満)が検出された場合、これを 非定型(atypical)の結果 として扱い、競技者の メキシコ・中国・グアテマラなどへの渡航歴や食事状況を確認 して食肉汚染の可能性を調査する ── 符合すれば アンチ・ドーピング規則違反としない ── という運用を通知しました(出典:WADA「Stakeholder Notice regarding meat contamination」(2019年5月30日公表・6月1日施行))。今回の FIFAワールドカップの事例で制裁が見込まれないのも、この運用によるものとみられます。

⚠️ ただし"自動的に無罪"ではありません。渡航歴や食事の状況が分析結果と符合すること が前提です。だからこそ「記録」が身を守ります。


トピック④ 競技者の自衛 ── JADAの推奨行動

JADAは「特定地域で生産された食肉に関する注意喚起」(2011年・2020年)を公表し、WADAの通知に従って、これらの国(メキシコ・中国・グアテマラ)に競技会やトレーニングで滞在する競技者へ、次の行動を推奨しています。

  1. 競技会主催団体または国際競技連盟が指定するレストランで食事を摂る

  2. 指定のレストラン以外で食事をする場合は、複数名で食事をしたうえで、食事の内容・時期・場所を記録する

🔗 出典:JADA 特定地域で生産された食肉に関する注意喚起

💊 薬剤師・サポートスタッフのポイント

  • 海外遠征(特にメキシコ・中国・グアテマラ)では、食肉のリスク を選手に事前に伝える

  • 「天然だから」「食品だから」安全とは限らない ── これは食肉にもサプリメントにも共通する考え方

  • 万一に備え、いつ・どこで・何を食べたか を記録しておくよう助言する


🎯 試験対策ポイント(JSPO-AT 専門科目検定試験)

  • 厳格責任(Strict Liability) は最重要論点。「意図・知識・過失の有無を問わず、検体内の物質に責任を負う」が原則。食肉由来でも、この原則がまず適用される。

  • 2023年度(令和5年度)問103「サプリメントについて誤っているのはどれか」で、「原材料が天然成分や自然食品由来であるものはドーピング禁止物質を含むことはない」が 誤りの選択肢 として出題されました。"天然・食品由来=安全"ではない という考え方は、サプリメントだけでなく食肉にも通じます。

  • クレンブテロールの食肉汚染そのものは、過去問での単独出題は確認できていませんが、厳格責任+コンタミネーション(意図しない混入) の理解として押さえておきたいテーマです。


まとめ

今週のポイントをまとめます。

  • クレンブテロールは、汚染された食肉から意図せず検出されることがある(メキシコ・中国・グアテマラ等の成長促進剤由来)

  • 2026年 FIFAワールドカップ・2011年 FIFA U-17 ワールドカップ(メキシコ)でも、汚染肉が原因とみられる陽性が報告された

  • 厳格責任 の下では、食事由来でも まず疑われるのは競技者本人

  • WADA・JADAには 救済的な運用(低濃度+渡航歴・食事状況の符合で違反としない)があるが、"自動的な無罪"ではない

  • 自衛策は 指定レストランでの食事食事の記録(内容・時期・場所)

  • 「天然・食品だから安全」は通用しない ── 試験でも問われた考え方(2023年度 問103)

次回の第17号では、この クレンブテロールが属する「S1:蛋白同化薬」 を深掘りします。「ドーピング」と聞いて多くの人が思い浮かべる、代表的な禁止物質のクラスです。


著者プロフィール

TechKeep_pharma
JADA認定スポーツファーマシスト・薬剤師
IRONMANみなみ北海道2024完走
アスリートへのアンチ・ドーピング相談・教育活動を行います。
Kindle書籍「薬剤師・薬学生のためのアンチ・ドーピング入門」準備中
X:https://x.com/TechKeep_pharma
note:https://note.com/techkeep_pharma


ご利用にあたって

禁止表国際基準は最低年1回、WADAコードも随時改定されます。
当アカウントは正確な情報発信を心がけていますが、最新情報は必ず GlobalDRO(医薬品の禁止状況検索データベース)・JADAの公式情報でご確認ください。
ドーピング違反に関わる最終判断は、アスリート自身の責任において行われます。

※ note自動翻訳は機械的翻訳のため、専門用語が必ずしも WADA公式英語表記と一致しない可能性があります。正確な情報は WADA公式(wada-ama.org)または JADA公式(playtruejapan.org)をご参照ください。

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