【14-1】ジークアクス全12話真相考察① シュウジがララアを殺し続けた理由と、それを蹴っ飛ばしに来たマチュに触れるまでの軌跡
ジークアクスとは、どんな物語だったのか
本作は、マチュの成長を軸として展開する。しかし、彼女に最も影響を与えたイトウシュウジこそが、この世界の背骨だ。
この不思議な少年は、隠された真相のほぼ中心にいて、全てを観測している。そして正体不明だ。
この少年が、どんな事情でララアを殺し続け、そして、死んだララアがなぜ生き返り続けたのか。その真相を考察したい。
ジークアクスは、鶴巻監督が意図的に作った「自由に解釈して遊べる砂場」だ。
シュウジの正体をはじめ、物語にはあえて説明のない隙間が多く、しかし支柱となる描写は多い。ここで各自が、自分なりのジークアクスを創れるようになっている。
この遊び方に則(のっと)って、本考察ではシュウジの正体を「ある世界で結ばれたシャアとララアの息子」と仮定して進めたい。
様々に「それは違う」という「砂場の違う遊び方」のご提案もあると思うが、ただ一本のガイドラインとして、あくまで参考に読んで欲しい。
基本的なスタイル
本考察では、監督の性格や過去作、歴史など、物語の外側の資料を参考にしない。映像作品である以上、描かれている映像だけで、何が言いたいかは描ききっているはずだからだ。
したがって、劇場先行上映版と、アマゾンプライムビデオでの本編視聴のみを参考に、ジークアクスの多くの謎を読み解いていく。
ただ、ベースとなっている機動戦士ガンダム関連の歴史などは、解釈の足場として含め、また外部情報であっても、解説の強度が増す部分については、あくまで参考、または余談として添えたい。
機動戦士ガンダムジークアクスは「映像だけで全部わかるはずだよ」という問題集に近い。これに挑んでみようと思う。
ジークアクスの物語が始まる前に世界で何が起きていたのか
「ララアが作った世界だった」という第12話のどんでんがえしを見たとき、違和感があったと思う。
「なぜ、ガンダムに乗っているアムロのカットインがないのだろう」だ。
モビルスーツ戦の間に、シャアも、ララアも、そしてセイラはボンヤリと、表情が描かれている。だが、アムロだけは、顔が描かれない。
ララアを失った絶望アムロが先に作った宇宙だった
「機動戦士ガンダム(1979)」の物語(いわゆる正史)にかなり近い世界で、ガンダムのアムロ、赤いゲルググのシャア、そしてGファイターのセイラと、エルメスのララアが会する戦闘があった。テレビ版機動戦士ガンダム第41話「光る宇宙」での激しい交戦である。
この戦闘の最後で、ララアはシャアを守るためにアムロのビームサーベルに貫かれ、戦死した。
このとき、アムロとシャアの中に激しい絶望と後悔が生まれる。
劇中でも、アムロは「とりかえしのつかないことをしてしまった」と茫然としながらボロボロと泣き、シャアはコンソールを打ちたたいた。
二人は悔やむ。
アムロは「ララアを殺してしまった」こと。
そしてシャアは「最後にあきらめてしまった」ことだ。
この後悔によって、2人(特にアムロを中心)から一つの宇宙が生まれる。
ジークアクス世界が「ララアが作ったシャアが死なない世界」であったように、その向こう側には、ほぼ同じ構造で「アムロによるララアが死なない世界」が作られていたのだ。
我々が、第12話の回想で見た、あの戦闘があった世界である。ララアが死なず、ゲルググに乗ったシャアが戦死する。
正史とは異なる、枝分かれした展開だ。詳しく見ていこう。
ジークアクス第12話で、シュウジがマチュにこの世界のはじまりを見せるとき「機動戦士ガンダム第41話」の映像が使われる。1980年(昭和55年)当時の作画によるものだ。
この世界で、アムロはやはりエルメスのコクピットを貫いてしまい、ララアを死なせてしまう。
「ララア!」叫ぶアムロの脳からフラッシュが走る。このとき、枝分かれした稲妻の一筋が、ジークアクス第12話で回想された、2025年(令和7年)作画のシャア専用ゲルググ対ガンダムの戦闘シーンを生み出している。
ララアを殺してしまった激しい後悔で、このときのアムロは別の世界を作ってしまったのだ。
あの回想で、同シーンを昭和作画と令和作画に分けたのはそのためだ。
ジークアクスは劇場公開時から「絵柄が二つあるということは、世界が二つある」ことを語っている。
また、令和作画の宇宙は、その世界の一人称である創造主がアムロなため、ガンダムは出てもアムロの顔は出ない。
アムロが後悔ともに作り上げた宇宙は「ララアが死なない世界」だ。
そして、そこにいま一人、激しい後悔を持ち続けた男が干渉する。
シャアだ。
この宇宙には激しいシャアの後悔が強力に関わっている
こちら正史シャアも、ほとんどジークアクスに出てはこない。しかし、彼の悔いは強固な呪いとなって、ジークアクス世界を縛る。
その動機となる戦闘を振り返ってみよう。
「シャア、覚悟」と叫ぶアムロのガンダムが、マグネットコーティングによる圧倒的な機動でシャアに迫る。右腕ごと武器を失ったゲルググに回避の術はない。このときシャアは「うう」と唸りながら体を縮こめ、ガンダムのサーベルが届くのをコクピットで待つことしかできなかった。大きく開いてしまった彼我の戦力差を悟り、彼はあきらめたのだ。
ララアは、そこに飛び込み、自らシャアの盾となった。機動力を失ったゲルググを突き飛ばし、腕も足もないエルメスで、ビームサーベルに貫かれることを彼女は選んだ。戦うことをあきらめたシャアのために。
ララアを守れなかったこと、自身の未熟さが彼女を死なせたことに、シャアはコンソールを叩き、慟哭する。アムロとララアの交歓を知り、嫉妬と怒りに駆られた未熟な行動、そして強者を前に戦いを諦めた結果、彼女を死なせてしまったのだ。
自分がアムロより強ければ、という悔しさ。
どうしてあのときララアを守って戦い抜けなかったのだという悔恨。
だからこそ「逆襲のシャア」に至っても「お前が殺した」と、シャアはアムロを責めるしかない。
この後悔は、永遠に彼の中に残り続けている。
「機動戦士Ζガンダム」第50話で、ハマーンとシロッコに腕と脚を切り落とされながらも、ここでシャアは驚異的な粘りを見せた。
「まだだ、まだ終わらんよ」
かつて強力なニュータイプに攻め込まれ、諦めた自分がどれほど大切なものを失ったのか。それを思い知った苦い苦い後悔があるからだ。
なぜあそこで、諦めずに戦わなかったのか。
その悔恨がこの宇宙を強力につかんで固めている。
この結果、アムロの願いである「ララアが死なない」に、シャアの願いである「死ぬまで戦い抜く」が加わった、恐ろしく強固な決意に固められた宇宙が生まれたのだ。
これが、ジークアクス第12話において、令和作画で描かれた宇宙である。
「ララアが死なない」「シャアは死ぬまで戦い抜く」
これを二大原則として創造された宇宙。ここは、上記二点が硬い強制力となって作用しつづける。
ガンダム(アムロ)がララアを殺しそうになっても、シャアが死に物狂いで戦い続けて絶対にララアを死なせない世界だ。
ジークアクス12話で我々が目撃したように、アムロのビームサーベルから、シャアは見事にララアを守って戦死した。二人の後悔が精算され、アムロもシャアも大満足な結果である。
ところが当のララアは、シャアの死を目の前で見せつけられ、気が狂うほど絶望した。
そして、アムロがこの方法を実現した原則を逆にたぐり寄せて、同じように「シャアが死なない世界」を作り出してしまった。
ララアは自分が作った宇宙でアムロやシャアと同じかそれ以上の強烈な執着でシャアを死なせまいとする
しかし、一段上の世界での二大原則が「ララアが死なない」「代わりにシャアが死ぬまで戦い抜く」なので、どうやっても、運命はそこに収束するのだ。それでもララアは何度もシャアを救おうと世界創造を繰り返す。
実はここにもう一人、激しい後悔とともに干渉している人物がいる。
セイラである。
神の顔は描かれないという無像主義で顔面がボケるセイラさん
「優しいキャスバル兄さんに戻って欲しい」セイラの願いはそれだ。
しかし、アムロとシャアが作った世界では、目の前でその兄が死んでしまう。
シャアのゲルググ撃墜シーンは、ララア視点で描かれているが、妹セイラのショックも凄まじく、やはり彼女の脳裏にも激しいニュータイプフラッシュが出たことだろう。
一年戦争のほとんどを、兄を追うことに費やしたセイラの絶望は重く「シャアが死ぬ」世界をひっくり返す方法を探して、彼女はララアの作った世界にたどり着いたのだ。
「兄が死なずにすんだ世界があるはず」
「あと、その上で、やさしいキャスバル兄さんにもどってほしい」
その考えで、セイラはむしろララア(シャアが死なない世界実現)に加勢してジークアクス世界に入り込んでいく。
令和作画版ガンダム対ゲルググ戦の回想で、セイラの顔がはっきり描かれないのも、ジークアクス本編でのソロモン落下阻止戦(第二次ソロモン会戦)でセイラの顔がボンヤリとしか描写されないのも、彼女がこの世界の観測点であるララアよりもやや高次元から来て、それぞれの宇宙に干渉しているためだ。
映画「ベン・ハー」などで、イエスキリストの顔を写さない演出がある。神聖、または別次元から来た存在の容貌は現地の人間には細密に認識できない、という意味なのだろう(もしくは反偶像主義)。同様の理(ことわり)で演出されているのだと思う。
何にせよ、セイラの目的は、キャスバルを優しい兄に戻すことだ。
さらにもう一人、頭から煙がでるほど悩んでいる人物がいる。
ララアである。
三人目のララア
ジークアクスには三人のララアが登場する。地球の娼館で働いていたララア、シャアの死に絶望して様々な宇宙を創りジークアクス現地ではシャロンの薔薇の中で眠りつづけるララア、そして、テレビ版機動戦士ガンダム第41話で、いままさにビームサーベルに貫かれそうになった瞬間にジークアクス世界に繋がり、魂だけがアルファサイコミュを通じてメッセージを送ったり、シャアにひらめきを与えるなどしてきた実行者としてのララアである。
娼館ララアと薔薇ララアが別なのはわかるけれど、最後のは何? と思うことだろう。
ジークアクス第12話で、それまで斜めになって寝ぼけていた薔薇のララアとは、あきらかに別の、シャキッと起きていて「ありがとう、こちら側のニュータイプさん」と別れを告げるララアがいる。詳しくは後述するので、もう少し待って欲しい。
なににせよ、ジークアクスの舞台は、この四人の願いと、激しい後悔が骨組みとなって成立した。
中心的人物であるララアは、シャア生存ルートを試みるが、元の宇宙を作ったアムロとシャアの決意が固すぎて、どうやってもシャアは死んでしまう。
やりなおしてみたが、やはり絶望するララア
再び絶望に陥るララア。シャア無しには、もう自分の人生が考えられないくらい依存している最愛の人の死を、彼女は二度も味わう。
上位の神であるアムロ(16歳)は思う。「ごめんよ。でも、君が死ぬ世界を、僕は見たくないんだ」
このままララアが絶望し「シャアは死ぬ」という宇宙の原則に屈服してしまうと、彼女が作った宇宙でもその原則が確定してしまう。
ところが「冗談じゃないわ」と、シャア絶対生存推進派のセイラが連れて来た5人目の人物がいた。
イトウシュウジである。
シュウジの正体
冒頭で書いたとおり、彼の正体には諸説あるが、この解説内では仮に「シャアとララアが結ばれた未来世界で二人の間に生まれた子供」として進める。(ほかにもこの世界のアムロだとか諸説あり)(あまりに諸説が多くて確定情報が「観測者」「ガンダムの妖精」しかないため、解説に一本筋を通すための仮定である)
どこかにある「シャアとララアが幸せに結ばれた世界」の0079。一年戦争後、二人に子供ができたとすると、シュウジの誕生は早くて0081となる。そして0093には12歳だ。
「僕は向こう側からやってきた」とジークアクス第11話の最後に言ったあと「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」が流れている。
ジークアクス本編と逆襲のシャアは直接的には関係がない。
つまり、あれは「シュウジはその曲が流れる宇宙世紀から来た」という隠された設定を示す演出だ。
明言しない演出法として「いま言ったことは直後に写ったものが答え」という手法がある。
パッと思いつくのがガールズ&パンツァーで「なんでタカシはあの子に夢中なの」というセリフの直後に五十鈴華さんが写っているので、どうもアリサの片恋相手は大洗の操縦士に夢中なのだなとわかる。たしかコンテに描いてあった。(もっと他にメジャーなたとえがあると思うけど、思いつく外部作品がこれしかなくてすまん)
後述するが、ジークアクス本編においても、この演出原則は何度も踏まれている。
このときのシュウジは12歳の少年である。
シャアとララアの子供なので、おそらく他に本名と呼べるものがあるはずだ。両親はジオンの王子と娼婦なので、ジークアクス最終話のように立場を捨てて結婚し、ひょっとすると宇宙世紀の日本で暮らしていたのかもしれない。
「イトウシュウジ」とは、シュウジ本人が名乗る偽名か、あるいは日本での名前なのだろう。
機動戦士ガンダムZZの最終回にリイナを連れてきた感じで、またセイラに連れてこられたシュウジが、目の前で自分の母親が発狂寸前に絶望している土壇場を見る。
ここでララアが絶望しきってしまえば、自分が生まれる宇宙は無くなるのだ。シュウジは、セイラからの説明と、自分の存在が消えそうな感触からそれを悟る。
シュウジが外部から「ララアの世界」に干渉できるのは、セイラやアムロと同じく別次元人であり、この世界の延長から来ているからだ。アムロが立ち止まって「ララアの死なない世界」を作っている世界に、彼は割り込むように飛び込んできたのだ。
先述のセイラさんから送り込まれたと考えると、プリキュアで「別次元の国から使命を託されて妖精が現世に落っこちてくる」という構図にちょっと似ている。
シュウジがララアとシャアの子供である理由
シュウジの年齢は、劇中では明示されていない。
しかし、マチュが同い年への接し方をしている。彼女の直感を信じるなら、シュウジの年齢は17歳。
そのマチュが「(シャアから)シュウジと同じ匂いがする・・・・・・かも(11話)」と感じ、そして9話のララア初登場時に、シュウジとまったく同じ画角とポーズでマチュに接した演出がある。
これらの点(他多数あるがそれは後述)から、本考察では「シュウジは、シャアとララアの子」として進める。
シュウジ=アムロとベルトーチカの子供説が存在するのも分かる。
シュウジはガンダムに乗っているし、正史第一話のフラウボウみたいな感じで女の子に御飯の世話をしてもらっているし、コンチを自分で作るなど機械いじりの趣味もある。なるほどアムロの子供では? とも思う。
それが父親の悔恨を晴らすために、サイコフレームといっしょにララアを救う世界を作った説。こちらも魅力的だが、でもシュウジはシャアとララアの子説という砂場遊びを続けたいので、こちらのルートは通らない。
余談 赤目シュウジのキャラクターデザイン
シュウジの赤い瞳は、まず「普通の人間ではない」ことを初見で示す配色だ。そして「凍りついた感情」の色でもある。
絵柄が二つあることで、二つの世界の存在を匂わせてきた本作だが、シュウジはさらにその向こうに存在している。
このジャンプを示すため、ジークアクス世界には存在しない赤目の人物として表現されている。
なお、ガンダム正史においても明確に彼ほど目の赤い人物は存在しない。設定上ジークアクス世界が「別棟」として構築されている証しでもある。
なお、マチュの髪色は赤紫で、これも通常はありえない色だが、12話の母タマキのスマホ待ち受け画面に映る幼少マチュは、母と似た黒っぽい髪色であり、染髪していることがわかる。(サイド6軍警の照合した個人データでも赤紫だし、ソドンでも赤紫を維持していてプリンになってないのは凄いね)
ありえない目の色から分かりそうなシュウジの正体を、彼と並走してきたマチュの髪色が、うまくカモフラージュしている設定だ。
話を戻そう。
ジークアクス第12話で、赤いモビルスーツ(とモビルアーマー)が連なり破壊されるシュウジの回想がある。
あれが「代表的な」ララアの取り組みだ。
縦にならんだ赤い彗星の被撃墜履歴
ほんの少し前まで娼館で9歳から17歳まで過ごしてきたララアというバックボーンを考えると、あのガノタ(ガンダムのことばかり考えているオタク)が唸る豊かな乗り換えパターンは、シュウジか、あるいは加勢しているセイラの入れ知恵(ひらめき?)があったのかもしれない。
あるいはシュウジがマチュに語ったように「数え切れないほどの」試行錯誤があって、場当たり的にララアが試した施策が何千何万と重なり実った成果なのかもしれない。
順番に追ってみよう。
赤いグフとシュウジの恐怖
おそらく最初の試みだ。大河原邦男氏による正史ガンダム世界とほぼ変わらないモビルスーツデザインの世界で、ララアはシャアをグフ搭乗に導く。もちろん赤く塗ったグフだ。
先述のように、ララアが完全手探りでやったのか、あるいはシュウジやセイラなどの入れ知恵があったかはわからない。
自分が作った世界で、ララアは電子機器に干渉できる能力を発見する。
これを活かして、彼女はシャアのガルマ謀殺をどうにか阻止する。ガウの索敵に、ドーム球場跡地に潜むホワイトベースの存在が偶然にも(死に物狂いでガルマにひらめきを投げ込んで気づかせるララアの姿を想像しよう)ひっかかり、シャアがガルマ殺しを実行できないまま木馬を取り逃がすルートが始まる。
もしくは、正史の通り、ホワイトベースにガウが撃墜された後「ガルマの仇討ち部隊」として、赤い彗星がグフを支給されてランバラルの任務を続行したのかもしれない。
ドズルは「ガルマは死んだ。なぜだ!」というギレン演説を聴きながら「シャアが無能だからだ!」と叫んだ説があるが(徳光先生、愛しています)、V作戦前には祝勝会を開いてくれるくらいシャアを高く評価している。
シャア評価が無能側にひっくり返らなかったら、あるいはランバラルにグフが届かないララア暗躍のトラブルがあったら、シャアの元にグフが届く可能性がある。
しかし、白いモビルスーツに両腕を斬られ、そのままシャアは死亡する。
正史でも、ランバラルほどの男が、まだニュータイプとして覚醒していなかった少年アムロにモビルスーツ戦で敗北している。
シャアがグフに乗る歴史でも、単純に機体性能差を練度で埋めきれなかったのだ。
ゲルググに乗るまでもない戦死である。
そして、ララアの精神は再び絶望に塗りつぶされた。
目の前で、精神が崩壊していく母親を、12歳のシュウジは咄嗟に止めようとする。
あまりにも胸をえぐる、悲嘆に狂乱した母の号泣。抱き止めようとしても、子供の力だ。振りほどかれ、投げ飛ばされる。
そしてこのララアには、シュウジが自分の子供だなどとわからない。いまここにいるララアは、17歳の少女なのだ。
いつまでも甲高く続く悲鳴。シュウジは、このままララアが死んでしまうのではないかという底なしの恐怖に震える。
同時に目の前でこの宇宙が、音を立てて崩壊しはじめるのが見えた。
はじめてニュータイプ能力が、物理的な力でサーベルを弾いた瞬間
考察開始からすぐ、ごく簡単に「アムロが宇宙を作った」とか「ララアも宇宙を作った」とか「電子機器に干渉できる」とか書いたが、ニュータイプが意思の力だけで物理的に干渉することは可能だろうか。
実は、この点についてはガンダム世界内で可能性を示されている。
機動戦士ガンダム第41話の戦闘で、エルメスと強固に結びついたララアのニュータイプ能力が、0079の時点ですでに物理干渉を実現した描写がある。
ゲルググのビームナギナタが、セイラのGファイターコクピットを切り裂きそうに交差した瞬間だ。
「いけません大佐」または「大佐、いけない!」と叫んだララアの思念が、物理的な力となって、この瞬間にビーム刃の軌道を弾いている。
シャアが刃を逸らしたのではない。描写を確認してほしい。本当に精神が物理的な作用として働いた、超能力じみた発動の瞬間が描かれている。
この描写は、本当にこのときだけなのだが「逆襲のシャア」において、この原理は応用展開される。
後にアクシズショックとよばれる、高密度のバイオチップで鋳造されたサイコフレームに数十人がかりでようやく起こした物理現象を、ララアは、この旧式モビルアーマーと自身の能力だけで起こしているのだ。
一般に、電波を通さないミノフスキー粒子散布空間で、ビットを電気的にコントロールする「だけ」なのが、ニュータイプとサイコミュの能力である。決して、物理的作用を起こすことなどありえなかった。しかし、ララアはこれができる領域にまで到達したのだ。
サイコミュによる物理的干渉で別の宇宙を作ってしまうのは、飛躍と言えば飛躍だが、最初のガンダムで「ニュータイプ能力は物理的に影響しうる」と、すでに描かれているので、これを根拠としたい。
ララアの絶望が定着しないための残酷な切除手術の繰り返し
ララアの能力は、物理的な干渉を可能にする。彼女が造った世界であればなおさらそれは容易だ。
シャアが活躍しているとき、その力はささやかなもので、電子機器への干渉が精一杯だ。
しかし、絶望で狂いかけている今は違う。ララアの心に同調して、おそろしい速度で宇宙が崩壊していく。
初めて見たシュウジには何が起きているのかわからない。
そこに現れたのが、3人目の(アムロのビームサーベルに殺されそうになっている)(あるいは時が見えている)ララアだ。
ララアにしてみれば、シュウジは愛しいシャアとの子供である。シャアを守って死を遂げたことに、後悔はない。それでも、二人に子供ができる甘い甘い夢に、彼女は吸い寄せられたのだ。
そして、その少年はどうしていいかわからず、ガタガタと震えている。
この宇宙を二段飛ばしで俯瞰しているララアには、解決法が分かった。
このシャア生存宇宙を創ろうとして失敗したララアを、いったん殺せばいい。
とんでもない提案を、やはり高次元から来ているのでボンヤリした顔のララアが、潘恵子の声でシュウジに語る。
ここでシュウジが母親を殺せば「シャアが死ぬ」という運命は確定しない。そして「ララアは死なない」という宇宙の原則が働いて、ララアは生き返る。そして、新しい夢が始まるのだ。
これを繰り返せば、シャアの死は確定せず、ララアの精神は、絶望によって崩壊することなく、リセットされ、健やかな夢に戻れる。
ララアを殺せば、彼女の精神は守れる。しかし、シュウジにしてみれば、目の前にいるのは、自分の愛する母親だ。シュウジは本当に母親を愛していて、だからこそ0093から「彼女を救うためなのよ」というセイラの要請に応えて会いに来たのだ。
その母親を、夢のなかとはいえ、殺すことができるだろうか。
しかし、やるしかない。
ララアのごく近くで、ニュータイプ能力が極大化しているシュウジには、このままでは母親の精神が潰れることが分かってしまう。
そして、生き返るという未来も理解できてしまうのだ。
シュウジは、母親を殺した。
12歳の少年が、自分の手で。
自分の命の半分、いや、そのほとんどと言っていい人を、シュウジは殺害した。
母親の精神を守るため、という動機だとしても、いま彼の手の中から厳然とした結果が転がる。ララアの亡骸は、生命感なくシュウジの眼前に横たわったままだ。
母親の遺骸にすがって「ごめんなさい」「ごめんなさい」とシュウジは泣いて詫び続ける。吐き、泣き、また吐く。
救いに来たなどと言って自分で殺すことになったことを、少年は受け止められない。
しかし、彼の行動は、原則通り次の宇宙に繋がった。エルメス内で、ララアは一瞬だけ目を覚まし、そしてすぐに新しい夢を見始めたのだ。
シュウジの手の中で焼け焦げ、見る見るうちに白骨化したララアの遺骸が、サラサラと灰になっていく。しかし、目の前で生き返ったララアは別の世界を作って、シャア生存ルートの夢を追い始めた。
シュウジは白骨化したララアの遺骸を抱いたまま、その夢を追って跳ぶ。
その白骨に、崩壊した世界でもろともに死んだ宇宙世紀百億人類の白骨が、絡まりながら引きずられているのを、シュウジは知らない。
高次元ララアは、それを黙して見送る。
シャア専用ヅダはどこで爆発するのか
12話で、シュウジの回想にならんだ赤いモビルスーツ群の中で、一番下にグフがあり、ヅダはその上にいる。他機体を見る限り、時系列の逆順だ。
となれば、この世界でのヅダは、グフより後期まで開発されていたことになる。おそらく、この世界では、ジオン正式採用のコンペにヅダも勝ち残っているのだ。
このとき競った相手は、おそらく旧ザク(ザクⅠとも言われる)だ。後に動力パイプの配置などが見直されたザク2が汎用兵器化したように、この世界のヅダにもエンジンのオーバーロード問題に改良が加えられていると思われる。
MSイグルーで爆散したヅダが旧ザクのポジションなら、ここでシャアが乗っているのは、ザク2S型くらいの名機に仕上がっている。もともとヅダの基本性能はザクよりも上だ。さらにシャア専用ザクなみに指揮官用性能が向上しているなら、総合的な機動性もザクより高い。
ララアがこれに乗せたのは、ガンダムのパイロットが未熟なうちに叩いてしまおうという算段からだ。
ただ、ヅダの信頼性を上げたからと言って、大気圏突入のタイミングで仕掛ける場合は、事情が違う。
「古今に例のない」とシャア本人が言っているくらいの環境で、データなどあるはずもない。ジオニック社のザク(クラウン機)は赤熱化するまで耐えられたが、シャアのヅダは「ここらで引くか」と思うほんの少し前に、エンジンに異常が出てしまう。
ザクに大気圏突入能力がないように、ヅダには大気圏上層部で高熱にさらされて戦闘に耐えるエンジン維持能力がなかったのだ。
加えて、正史のガンダムは運悪くガンダムハンマーでの戦闘を強いられたが、予備のビームライフルがもし準備されていたら一気に戦況は傾く。
ヅダへの異常な負荷と、敵のビームライフル。この二つが重なって、シャアはガンダムに撃墜される。未熟な時期のアムロに、ザクより少し強い機体をぶつける早期決戦プランは、しかし失敗した。
再び絶望に引き裂かれそうになるララアを、そうなる前にシュウジが殺す。
二度目の殺害。このときもシュウジは絶叫しながら嘔吐した。最愛の母を殺す感触が、どうしても手から消えない。のたうちまわっているうちに、ララアはまた世界を作って、そこに転移する。「これが永遠に続くの」と震えながら、這いずって追いかけるシュウジ。
モビルアーマー規格への変更
モビルスーツをどう強くしたところで、ガンダムの強力さに届かない。
次の世界でシャアが乗ったのはビグロ、続いてビグザムである。モビルアーマーだ。
規格自体を乗り換え、新常識で戦いを挑むが、ズゴック戦あたりで既にアムロはメキメキと強くなっているので、これらの撃墜は不思議ではない。実際のガンダム正史でも、苦戦しながらもアムロはこれらモビルアーマーの撃墜を果たしている。
ガンダムパイロットの異常な成長。ジオン既存のモビルスーツでは追いつけないのだろうか。高次元ララアも腕を組んで考える。
余談 判断が間に合ったドズル
ところで、シャアがビグザムに乗るということは、正史ガンダムで「遅すぎる援軍」と言われたシャアが間に合ったということになる。
ここでもおそらくララアの干渉があり、連邦軍のソーラーシステムが展開前に存在を知られたり、彼が「国中の笑いものになる」と思わず、早い段階でキシリアに援軍を要請していた可能性がある。
ドズルがソロモン防衛を失敗した原因はこれに尽きるが、シャアがビグザムに乗った世界では、ドズルは冷静な判断を実行できたのかもしれない。
ドズルの状況判断は適確で指揮能力も高い。その彼の唯一の判断ミスが、土壇場でキシリアとの権力闘争を考えたことだ。
結局ドズルは、ソロモンが危なくなってから、妻子を逃がすために援軍を要請している。
戦力をズタズタにされすぎる前に、彼はシャアの確保に成功し、ビグザムを託したのだろう。
ただ、ジークアクス世界というジオン勝利世界でもソロモンは陥落しているので、結局は敗北していると思う。そういう意味では、シャアだけがララアによる「ひらめき」で、命令前からいち早く駆けつけていたのかもしれない。
しかし、これも失敗する。巨大モビルアーマーの撃墜を見たララアが、悲嘆に狂乱しはじめた。
その直前に、シュウジは現れ、彼女の命を絶つ。そして座り込む。
もう立ち上がる気力もない。その場に崩れ落ちて、あれだけ流した涙が、まだしぼり取られる。
そしてララアは新しい世界を作る。
反復される強迫的な繰り返し。「じごくだ」シュウジはカラカラになった喉で呟き、そしてララアを追う。
シュウジの目的は、ララアが満足する結果をもたらすことだ。
具体的には、シャアが生き延びて現地ララアと幸せな結婚をし、自分を生むこと。これだけが成功であり、シュウジにとって、失敗条件はそれ以外の全てだ。
彼はリセットを繰り返し、おそろしく細い勝利条件の実現を目指す。
泣きながら進む、シュウジの綱渡りはつづく。
大きな歴史改変ガルバルディα
ゲルググでのガンダム対決に至る前に、なんとかしようとしてきた歴史はすべて失敗した。
その上でもゲルググでは勝てなかったので、ここでララアは歴史をじわりと改変させる。
ガンダム正史になかった「ガルバルディα」を開発させたのだ。
ガルバルディは、ギャンとゲルググの中間のような機体だ。
ギャンは、弾幕ミサイルとランスまたはビームサーベルでの格闘性能重視の機体。射撃能力の高かったゲルググに乗っていたシャアが、ガンダムのビームサーベルに焼き殺されたので、あの扱いづらそうなビームナギナタではなく、ギャンのように格闘性能さえ高ければいい勝負ができたのでは、という目論見があったと思う。
そういう意味ではギャンでもよかったわけだが、これはマクベがどうしてもシャアにだけは譲らなかったのだろう。
ララアは電子機器にも、そしてこの段階ではモビルスーツ開発歴史にも干渉できるようになったが、人間の心を変えるのは難しい。ジークアクス本編でも、マクベはシャアを(嫉妬からか)拒否している。
結果として、ガルバルディ開発という変化球になったのだろう。
しかし、これも撃墜される。ララアが観たゲルググ撃墜と、それほど変わらない結果だったのだろう。
ララアは絶望し、シュウジはこれを殺す。彼の真っ赤になった目から、ついに血の涙が一筋ながれる。
ララアのトラウマ(シャア死の絶望)が再現されないよう意識を刈ってきたシュウジに、母殺しのトラウマは確実に蓄積されていた。
それはリセットされるララアと異なり、彼の精神を酷く蝕んだ。
血涙が一本の薔薇のツタとなって、エルメス内のララアに絡みつく。
いったいどれだけのララアを、シュウジは殺してきたのだろうか。少なくとも、シャロンの薔薇内の、ツルの本数分は死のリセットがあったはずだ。
ガルバルディをきっかけに変化が現れた。世界を破壊し再構築するたびに、モビルスーツの形が徐々に「本来は存在しない形」に変わっていったのだ。
程度はわずかで、高次元ララアの試行錯誤と、シュウジのトラウマが蓄積されても、少しズレるのが精一杯だ。
しかし彼女はそれを続けてきた。数え切れないほどの繰り返しの果てに、正史デザインはズレにズレて、サザビーに至っては山下いくと版になっている。
ちょっとおさらい。第一原則「ララアが死なない」と第二原則「シャアが死ぬまで戦い抜く」の宇宙
薔薇のララアは、高次元ララアの力を借りて、夢の中で「シャアが生き延びる世界」を作る。
しかし、先述のようにこの宇宙は「シャアが死ぬまで戦い抜く」という原則でできている。それが強固すぎて崩せず、ララアの作った世界でも、どうやってもシャアは死ぬ。
その絶望がララアの心を砕く前に、シュウジはララアを殺す。
鬼滅の刃無限列車編で、悪夢から目覚めるために炭治郎が自害する壮絶なシーンがある。「夢の中で死ぬと目が醒める」それを願って、シュウジはララアを手にかけた。
ところが、ララア自身がアムロによる第一原則「ララアが死なない」の上に存在するため、彼女はその法則に従って蘇り続ける。
シュウジとララアは、このループに囚われて抜け出せなくなってしまった。
別次元人の干渉なので、この宇宙を作ったアムロにも、シュウジの行為が止められない。
「ララアも、いつかシャアの死を受け入れてくれる」
アムロはそう考えて、このループを観測しつづける。
我々が悪夢を見てうなされ、ショックで目を醒ますようなもので、シャアの死というショックでララアは瞬間に覚醒してしまう。
醒めた目でシャアの死を観測すれば、この世界はそれで確定してしまう。
この先には、ララアの精神崩壊が確定的に待っている。
この直前にララアの意識を刈り取ることで、ララアは気絶し、再び不確かな夢の世界に戻る。
古いギャグ漫画やアニメで、目が醒めそうになった人物を殴ってもう一度昏倒させたり、あるいは目覚めそうになるたび睡眠薬を投与するような、そんな状況だ。
大もとのララアは眠りながら、新しい世界を創り始める。
シュウジはまたそれを追って、シャアが死ぬ絶望の世界が成立するまえに、ララアを殺して再び夢の世界に押し込む。このループを続けてきた。
二つの反復脅迫で蓄積されていくシュウジのトラウマ
ララアは同じ行動を続ける。心理学的には「反復強迫」とよばれる症状だ(と思う)。
過去のトラウマ体験を無意識のうちに繰り返す行動パターンで、PTSDの症状として有名だ。トラウマへの防衛反応として、心を閉ざし、感情を麻痺させ、同じ生活や状況を繰り返すことで、トラウマを「再演」し、コントロールしようとする心理メカニズムである。
ララアは「シャアが戦い抜いて死ぬ」という絶望の再演を、無意識に行っている。彼女は観客であり劇団の座長だ。そして同じ演目を、ハッピーエンドが来るまで繰り返し上演する。
その中で、事情が分かっている演者はシュウジ一人だ。
薔薇ララアは、高次元ララアと改訂したはずの脚本が、結局は破綻して訪れる終幕「いつもの終わり」を見る前に、シュウジに殺されリセットされる。
シュウジは最愛の母親をこの手で殺したというトラウマを、そのたびに蓄積される。殺しながら「どうにかララアのこころを守れる方法はないか」と、トラウマ行為を再演しながら、コントロールする方法を模索している。
触れれば血がでそうな棘をびっしりとつけた、痛々しいトラウマがララアを包む。決して、ララアには触れない距離感で。
こうして、母親を殺し続けて歩んできた血まみれのシュウジは、目に光を灯すことをなくしてしまった。シュウジは、ふと自分の足元を見て、からみつく白骨に気が付く。振り向けば、闇の向こうに無数の白骨。
わずかな変更を重ねて出渕裕の向こう側に到達したララア
果てしない繰り返しの果てに、少しずつズレていったララアの世界で、サザビーのデザインは出渕裕版から、山下いくと版にまで変化を果たしている。
この山下サザビーに搭乗する世界で、シャアはこれまでとは破格の長期生存を果たした。
ガンダムと良い勝負をしたモビルスーツといえばジオングだが、シュウジの回想には出てこない。あの並びには「これに乗って撃墜死した」という機体しか残らないためだろう。この世界のシャアはサザビーに乗るまで生き延び、最終的にはνガンダム(白いモビルスーツ)に撃墜され、この回想にも残った。
「シャアは戦い抜いて死ぬ」という原則は「ララアが死なない」に次ぐ、この宇宙の第二原則だ。ちょっと変更を加えた程度では揺るがない。
搭乗モビルスーツを変える干渉は、ララアにしてみれば精一杯の軌道変更なのだが、それでもシャアは死ぬ。
「もともとあった歴史」に戻そうとする運命の強制力が、ララアの作った世界に追いすがってくるのだ。
ララアも、そしてシュウジも、どうやってもその運命から逃げられない
シュウジはララアを殺す。
そして血涙のような赤い薔薇のツタがまた一本。ララアは健やかなまま眠り、夢を見つづけ、シュウジだけが血を吐くような歩みをして、追いすがる。
しかし、サザビーまでのルートには大きなヒントがあった。百式である。
ガンダムタイプ(百式)で気が付いたガンダムに乗れという大飛躍
夢を見るララアの横で、高次元ララアは分析する。
百式という赤くないモビルスーツに乗っていたとき、シャアは白いモビルスーツ(キュベレイ)に撃墜されたが生き延びた。
赤くないモビルスーツなら、シャアは白いモビルスーツに撃墜されても死なないのでは。
そう思ったララアは、ここでさらに気がついた。百式開発中の名称は「デルタガンダム」である。
赤いジオン系モビルスーツではなく、ガンダムタイプに乗れば、白いモビルスーツに撃墜されても死なないのだ。ゼータ時代(グリプス戦役)をくぐって、この道をララアは発見した。
逆襲のシャア時代(第二次ネオジオン抗争)でも、最終的にシャアが戦死したのは、モビルスーツがサザビーだったからだ。
型式番号からもわかるとおり、MSN-02(ジオング)からMSN-03(ヤクト・ドーガ)に発展し、MSN-04(サザビー)と、どうしようもないほどジオン系の赤。
対して、リック・ディアス(ガンマガンダム)か百式(デルタガンダム)に乗っているうちは、なるほど死んでいない。ララアはこれに気がついた。
「シャアをガンダムに乗せる」
この大飛躍によって、ついに、ジークアクスルートが誕生したのだ。
シュウジがボロ布になるほどの試行錯誤の果てに、モビルスーツデザインはかなり変わった。大河原邦夫ガンダムが、山下いくとガンダムに変わるまでに、数え切れないほどの回数だけ、わずかなズレが積み重ねられた。結果として我々が知らずに観たジークアクスの宇宙は、正史から大きく距離を開けている。
アムロの想定からは逃れられないものの「シャアが戦い抜いて死ぬ」という第二法則からは、ギリギリ外れるようになってきたのだ。
ララアがこれを狙ってやったのかは、わからない。だが、結果として根気強くずらしていったのは間違いない。
「シャアの死なない世界」へのステップは、いつしか、宇宙の半分くらいの位置ずらしが完了していて「シャアが戦い抜いて死ぬ」という原則が届かない位置まで、ついにたどり着いたのだ。
そして0079年9月18日。シャアによるガンダム強奪が成功する。
この改編成立を確信して、ララアはエルメスごとこの世界に現れようと転移を準備する。
それを追って、シュウジもジークアクス世界に足をかける。
ララアを殺し続けてきた、血まみれの手を、グローブで隠して。
上位神アムロはシュウジを見てなんとも思わないのか
そんなわけがない。一年戦争時のアムロはまだ15歳の少年だ。11月5日が彼の誕生日だから、41話の時点では16歳だと思われる。
その彼から見ても、シュウジはあまりにも痛々しく、アムロは自分の作った宇宙ごと、この世界をあきらめようとしていた。
12話でシュウジが「向こう側の世界を巻き込んで崩壊する」と言ったのは、それを知っているためだ。この場合の「向こう側」は正史ではなく、アムロが作った宇宙。ジークアクス第12話の回想で登場した、ララアが死なず代わりにシャアが死ぬアムロ大満足世界だ。
しかし、シュウジとララアの悲劇を見続けたあまり「もうやめよう。この世界は消して、ララアの死を受け入れよう」とアムロは思っている。
「シャアをガンダムに乗せればいいのでは」という大ジャンプ計画が立ち、実験場(ジークアクス世界)も出来上がり、さあこんどこそ成功させるぞ、というタイミングだった。
アムロがスーパーリセットをかけようとしている。主幹ブレーカーで全電源をバチンと切るみたいに、この世界をなかったことにしようとしている。
それを察知したシュウジは、とっさにエルメスの実体をジークアクス世界に逃がした。
アムロの諦めリセットから逃げてジークアクス世界にやってきたシュウジとララア
アムロが追ってこられないように、向こう側宇宙とジークアクス宇宙のつなぎ目に、エルメスという「栓」をして、シュウジは追っ手を逃れたのだ。
エルメスの時間が凍結しているのはそのためだ。時間凍結によって「入る→出る」といった移動の因果律を動かさない。結果として、アムロはその「エルメスが時間凍結という鍵をかけてしまったゲート」を通っての干渉ができなくなった。
ジークアクスは、たまに日本神話モチーフの用語が見られるが、これもイザナギの黄泉の国訪問に似ている。
イザナミから逃げたイザナギは、黄泉比良坂に千引きの岩を引きずって道を塞ぎ、黄泉の国との行き来を閉ざすのだ。この千引きの岩が時間凍結されたエルメスである。
ひょっとしたらアムロは「ララアを守るためにシャアを殺す。1000回でも殺す」と言い、ララアは「なら私は大佐が生きる世界を1500回つくりなおす」という問答があったかもしれない。(いや、これは神話側に寄りすぎだね)
ジークアクス世界に逃げ込んだシュウジは、ここで頑張れば、今度こそララアの満足する世界が出来ると思っている。シャアがガンダムに乗りさえすればいいのだ。
赤いガンダムと赤い彗星の快進撃
そして、実際に彼は乗って、快進撃を始めている。シュウジはこの希望に賭けて、観測を続ける。
アムロは栓となったエルメスの向こう側で、少し怒っている。「ララアが死なない」という原則のせいで、彼女は何度も死ななければならない。この宇宙はリセットすべきだ。そう思っている。
ところが「あら、いいじゃない」と言ってアムロにタッチしてくるセイラさんがいる。彼女としては、兄キャスバルが死なずに、やさしい兄さんにもどる世界を見てみたいからだ。
おそらくシャアも後方で腕組みしながら「私もガンダムにさえ乗れば、アムロ、君にも勝てると思うのだ」と言わなくていいことを言い、アムロも「そこまで言うなら」と、この逃避行を大目に見ることにしたのだと思う。
高次元ララアも積極的に介入していることだし、今度こそ上手く行くかもしれない。
だが、これまでがあまりにも悲劇的すぎた。これが最後だ。ダメそうだったら、もうすぐにでもこの宇宙を消してしまおう。アムロはそう思いながら、ジークアクス世界のシャアを見つめる。
満を持して、エルメスはこの宇宙に顕現した。シスルナ宙域に現れたエルメスはジオンに発見されて「シャロンの薔薇」と呼ばれ、グラナダに格納される。
これもまた、シャアのガンダムを強くする一助となるだろう。ララアは大人しく捕まって研究されながら、シャアの死なない人生を夢の中から見つめる。
ジークアクス世界の一年戦争で、シャアは信じられないほどの戦果を上げた。向こう側の世界から、テレビを見ている高次元シャアも、笑いが止まらない。
ところが第二次ソロモン会戦において、赤いガンダムに乗ったシャアが、よりにもよって、ソロモンをシャロンの薔薇にぶつけると言い出した。
計画通りのはずなのに、急に予想外の動きで全部ぶっ壊す現地のシャア
飲んでいたジュースを一斉に噴き出す上位神アムロと他三名。
これまで散々やりなおしてきたララアも、死ぬほど驚いている。
シャアの行動は、月面都市グラナダにいるキシリアを狙っての判断だが、そこにはいままで死ぬほど苦労して運んできたエルメス(宇宙の中心)があるのだ。
ララアはエルメス内にあって時間凍結中のため動けない。上位神アムロも高次元シャアも神的位置にいて手も足もでない。
「こンのクソ兄が」という気持ちを抑えて、とりあえずセイラが、ジークアクス世界での同位体である軽キャノンのセイラに乗り移り、兄に一発キツいツッコミを入れるためにハンマー装備で乗り込んだ。
セイラさんのハンマーとアムロのゼクノヴァ
単機なのは、当然ながら命令違反だからだ。しかしセイラは元々から兄のことになると見境なく命令違反で出撃する性格なので、異世界の神が乗り移って異常行動をしても違和感がない。
ソロモン内部で待ち伏せして、シャアの宇宙的馬鹿を止めに入るセイラ。しかし彼の赤いガンダムは、さすがの操縦技術で軽キャノンを撃退してしまう。
「どうして! 兄さんのためなのよ!?」という不本意な顔のセイラがこのとき描かれるが、異次元人なので、顔の描写はやはりボンヤリ。
セイラさんのツッコミが効かず「やっぱりこの宇宙は無し」と舞台の電源を切ろうとしたアムロの手を、シャアがとっさに掴む。「ここは一旦、仕切り直しをしてみてはどうだろう」と汗びっしょりで言うので、アムロはここで次元を超えた強制介入を試みる。
ゼクノヴァである。
アムロがゼクノヴァを発動し、シャロンの薔薇は緊急避難として、地球の海に投げ込まれた。
我々はゼクノヴァの桃色光芒の奥に、黄色い光を見ている。
これは「ララ音」のせいもあってララアの黄色い服に見えてしまい「ゼクノヴァはララアが引き起こしている」と考えがちだが、本考察ではこの最奥にある黄色い光こそ、この世界の一段上の原因者であるアムロの宇宙から射す光の色だと考える。
ジークアクス第11話ラストでも、この黄色い光の向こうから、大河原ガンダムが登場しているのだ。
ゼクノヴァは彼の事情で引き起こされている。ただ、この宇宙でアムロと直接接点があるのはエルメスしかないため、これがトリガーとなったのだ。
話を戻そう。ソロモンがえぐれる瞬間にチャポンという水音がして、えぐられた内部に水色の光が満ちる。
およそ同時に、グラナダのシャロンの薔薇(キシリアの参謀長が言うには「オブジェクト」)も消失している。このエルメスはジークアクス第9話において地球の海底で発見されているのはご存知の通り。
「さて、シュウジくん」
上位神アムロは「はー、やれやれ」と溜め息をついてから、一部始終を見ていたシュウジに振り向く。
あきらめきれないシュウジの元に頼もしい助っ人が
筆者の予想だが、このときまでシュウジはジークアクス世界で実体を得ていないと考える。なので12歳のままだ。
このときのアムロは0079年末にエルメスをブッ刺したアムロなので16歳の若々しい古谷徹さんの声。シュウジはこのアムロしか知らないので、ジークアクス第12話でエンディミオンユニットが青年アムロ声で喋ったとき「誰だ」という反応になる。
アムロはシュウジに問う。
「ララアには、もう、このままシャアの死を受け入れてもらうしかないよ」
シャアは死んだんだ、とゼクノヴァ空間に拘束中のシャアと赤いガンダムをみつめながらアムロ。
「・・・・・・」
悔しくて、うつむくシュウジ。
せっかくここまでやってきたのに、到底あきらめきれず、口をついて本心が漏れる。
「でも、僕は彼女の心を守りたいんだ」
断固として抵抗するシュウジの所に「男の子はこれくらいの方がいい」とばかりに、また別のオブジェクトが飛来した。
ゼクノヴァ空間に突然現れたのは、これもまた正史にかなり近い世界の0093で、アクシズショックによって存在があやふやになっていた「νガンダムのコクピットの一部」だ。
後にエンディミオンユニットと呼ばれる、サイコフレームの塊であり、ここにはアムロの意思が宿っている。
この辺の解釈の素材になるネタが公式から出てくるまでなんとも言えないが、この12年も先の未来技術が、時間を超えて飛来したのだ。
近い所で言うと、ジークアクスのひとつ前世界で、山下いくと版サザビーと戦ったνガンダムのアムロが、そのサイコフレームの働きで次元を越えてここに来たのかもしれない。すでに滅んだ前世界の、大人のアムロ(29歳)だ。
とは言っても、サイコフレームに閉じ込められている精神体にすぎない。
山下サザビー世界でもアクシズショックに類似した現象があって、シュウジがララアを殺して世界がキャンセルされる前に、アムロの意識は「時」を見て、そして越えて来たのだ。
これも考察が追いつかないが、なぜかそのとき、エンディミオンユニットはランチに積まれて現れている。シュウジはそのランチを奪い、このゼクノヴァ空間から、シャアを連れて脱出した。彼はこのとき初めて、ジークアクス世界での実体(肉体)を得ている。
ジークアクス劇中に、ランチは二回登場する。シュウジの隠れ家と、そしてこのソロモン宙域だ。
第二次ソロモン会戦(シャアとシャリアが突っ込んで爆弾を仕掛けた戦闘)の連邦艦爆発シーンで手前に映っている。この二回しかない。単純に繋がっていると考えて進めよう。
(ただ、特徴的な前照灯の形が違うので、エンディミオンユニットとともに転移してきた0093のランチかもしれない。いろいろ資料を探ったが、0093にランチはデザインが無いようだけど)
ゼクノヴァ空間内で、上位神アムロに拘束されているシャアをひっつかみ、シュウジは赤いガンダムとエンディミオンユニットが積載されたランチと一緒にゼクノヴァ空間から抜け出す。
シャアとシュウジは親子と明かさぬまま地球に飛ぶ
エルメスが転送されたルートを辿るつもりだが、その先がどうも地球の海底らしいとわかって、シュウジはノーマルスーツを着ていないシャアをどうしようか考える。
全天周囲モニタとリニアシートができていない時代「モビルスーツ」と言われるくらいで、ガンダムのコクピットは実に狭い。ここに二人は無理なので、とりあえずこのランチにシャアを押し込む。そして脱出。(※原則として,映像作品のみを参考に考察してきましたが、うっかりドラマCDの内容を知ってしまったので、この描写のみ参考にしています)(それでも、シュウジ実体化の機会は、このソロモンゼクノヴァからの脱出時しかないと推測します)
「アムロさん、この世界は大丈夫です。うまく行くルートは必ずあります。僕がかならず成功させます」
そんなことを言って、あるいはまったく無言のままに。
アムロもセイラも次元が違いすぎてゼクノヴァや神がかりなどの超常現象を通じてしか干渉できないが、シュウジはシャアとララアが結婚した未来の存在だ。次元としてはこの世界の延長線上にいる。だから彼は肉体を持つことができた。
赤いガンダムと、エンディミオンユニットを積んだランチ、シャアとシュウジ。彼らが現れたのは地球の海だった。エルメスとソロモンの一部が沈む海底である。
士官服のシャアが誰にも見つからずに宇宙空間から脱出できた理由と親子サバイバル
ソロモンでのゼクノヴァに巻き込まれたシャアは、そのとき士官服を着ており、ノーマルスーツを持っていなかった。そのまま5年発見されず、本人はシロウズと名を変えてのうのうと生きている。
本作放送中に「シャアはソロモンでのゼクノヴァでどこに行ったのか」が推理されたが、地球に転移する以外に、ノーマルスーツ無しで赤いガンダムを降りることはできない。記録も残さずに赤いガンダムでエアロックに入る方法はまず無いからだ。本考察では、この線で進めたい。
ここからしばらく、シャア20歳とシュウジ12歳の、そうとはシャアだけが知らない親子サバイバルが始まる。
シュウジは0093の世界から来ているので、おおよそ未来の歴史を知っている。
一方で、シャアもゼクノヴァ空間に飲まれているとき「時」を見ており、かすかに上位神とも対話しているため「未来から来たんだ」というシュウジの話が何とか呑み込めた。
この旅の中で、シュウジは世界の成り立ちについて「全ては、あなたのためなのだ」と話す。
第11話での2人の会話を見ていると「これを言われるのは二回目だ」という感じの受け答えに見える。
この地球での日々(0080から0085までの5年間)で、何度かシュウジはシャアを説得したのだろう。
ララアの願いに応えて(あとセイラさん)穏やかで優しい人生を送って欲しい。(その末に僕を生んで欲しいが、ララアを困らせてきたこのオヤジが何かムカつくので、素直に言いづらい)
余談 9話で海底エルメスの横にあった不自然な岩塊がソロモンのまるいえぐれ部分なのか
ソロモンでのゼクノヴァで、赤いガンダムとエルメスは消えた。それぞれ二度の転移があったわけではない。おそらく、一つのトンネルを通って、両者は同じ場所に転移していると思う。
実際、ジークアクス第9話で、海底に沈むシャロンの薔薇のすぐ近くに不自然な岩塊があった。これがソロモンの一部かもしれない。
だが、これだとイオマグヌッソによって転移させられたアバオアクーも地球のどこかにあるはずなのだ。もしそうなら、さすがに大災害になってると思われる。
ゼクノヴァ中に、アムロがフィルタリングを施してエルメス・赤ガン・シュウジ・シャアだけを転送したと、本考察では考えたい。このフィルタリングは、最終回でイオマグヌッソが消えるときにも実行されている。
余談 ジークアクスに潜水機能と揚収用リフトバッグが設計されていたのはシャロンの薔薇が海底にあると開発者のシャアが知っていたから
何にせよ、同一ゼクノヴァで転移した赤いガンダムは、シャロンの薔薇の位置を知っていたし、乗っていたシャアも、その存在位置を知っていた。
シャアは後にジークアクスとジフレドを開発する(ティルザ・レオーニ女史との会話でジフレドの完成を「我々の仕事」と言っている)。
だからこそ、彼が開発に関わったジークアクスには、潜水機能も、そこからの浮上機能(リフトバッグ)も設計してあったのだ。
では、なぜシャアは「知っていたシャロンの薔薇の場所をシャリアに伝えなかった」のか。
それは、自分がシロウズとしてアルファ殺しを揃えるところまで、シャロンの薔薇を隠しておく必要があったためだろう。
シャアは、ジオンを欺きながら、イオマグヌッソに送還システムを慎重に組み込んでいく。これが完了するまで、他の誰にも発見されてはならなかったのだ。
地球で連邦の腐敗を見ながら人類の指導者になる決意をするシャア
話を戻そう。
エルメス、そしてシュウジたちは地球に突然転移した。彼がマチュに「海で泳ぐ魚のように」と例えたのは、このときに海を知ったからかもしれない。(もともとシャアとララアの子供なら、地球で暮らしていた可能性も高いけど)
エンディミオンユニット(サイコフレーム)を積んだランチと、赤いガンダム。シュウジとシャア。
ゼクノヴァ空間で見た未来の様子と、シュウジの「ジオンが負けた世界の話」から、シャアは「この世界の理(ことわり)」を理解していく。
シュウジの優れたニュータイプ能力も、シャアに向こう側世界の存在を強烈に理解させたのだと思う。シュウジは親子と明かせないまま、旅を続ける。
地球潜伏期間中、赤いガンダムを隠したまま、日常的に持ち歩いていた金塊などを駆使し、シャアはまず地球で戸籍を手に入れた。シロウズという年格好の似た青年の戸籍だ。ジオン工科大くらいは出ていると思う。
地球滞在中、連邦軍が反攻計画を練っていることを察しつつ、シャアはその内部をさぐる。連邦情報局のバスク・オムなどは、かなり強く計画を推し進めているようだ。その中で、シャアは連邦の腐敗を見る。
やはり、自分が人類を導かねばならない。
シャアは決意し、父の思想を学びなおす中で、ひとつの結論にたどり着く。
Zガンダムでのダカール演説で、彼は「人は長い間、この地球という揺り籠の中で戯れてきた。しかし、時は既に人類を地球から巣立たせる時が来たのだ」と語っている。
ダイクン思想をもって人類を導くなら、まずこの揺り籠から出なければならない。ララアがシャアを守るために作ったこの揺り籠から。
エルメス送還プランを考えたのは、この頃だろう。本当にどこまで行ってもシャアである。シュウジに感づかれないように(あるいは子供と侮って)シャアは行動する。
イオマグヌッソ建造を前提とした送還計画が、彼の手によって秘かに始まった。
サイコガンダムが常識では不可能なほど時間を巻いて開発できた理由
手持ちで応用できるのは、このサイコフレームだ。シロウズという工学者青年の戸籍を利用し、一部分(おそらく切れっ端)を連邦軍のニュータイプ研究施設に提供。これを連邦側でも研究させる。
一年戦争で煮え湯を飲まされ続けた連邦は、ジオンのサイコミュ技術が欲しくてたまらない。ましてやこれは12年は進んだサイコミュテクノロジーの塊だ。技術者は目の色を変えてこれに飛びつき、最終的にサイコガンダムを完成させている。(詳しくはサイコガンダム登場回考察で)
シャアは、この横流しを足がかりに資金と研究者のネットワークを手に入れつつ、同時に連邦の腐敗を横目に見ながら、未来の改革を強く夢に見る。
しかし、巨大化する野望が、いつかシュウジに察知された。
人為ゼクノヴァの原理を見出し再現性のある開発を進めるシャア
シュウジはゼクノヴァについて「薔薇の少女のためにも、強制送還はダメだ! アムロという何もかもを終わらせるやべー奴が潜んでいるからこの栓を抜いちゃだめなんだ! 薔薇の少女のためにも!」と熱心に説得するが、逆にシャアは「ふむ(うわー、憑りつかれてるなあ)」と話を引き出しながらゼクノヴァのメカニズムを理解し、送還プログラムを構築する。
夜だったと思う。シャアは赤いガンダムで、海中のエルメスに接触を試みる。
ここで、ガンダム搭載のアルファサイコミュという共通規格を利用し、エルメスに送還プログラムを流し込めないか試したのだ。改良すれば行けると確信を得て、シャアはもうひとつ実験を試みる。
エルメスの破壊だ。
ビームサーベルを抜き、コクピットめがけて突進する。
予想通りのことが起きた。
このときも、アムロの意思による緊急避難が入り、ゼクノヴァはシャアが思った通りに発動した。
「やはりな」とシャア。このメカニズムを応用すれば、意図的に向こう側へのゲートを開ける。シャアは確信した。
あとは、エルメスだけを転送するためのサイコフレームによる隔壁(本作後半で、イオマグヌッソの内壁に張り巡らせてあった緑白色の壁。大量生産できるところまで解析したサイコフレームである)が必要だ。そうしないと、この宇宙ごと向こう側に消えてしまう可能性がある。
完成品素材が手元にあるとはいえ、舞台は0080だ。サイコフレームを量産するには、まだ技術革新が足りない。
地球滞在時に連邦にも試料を横流しして研究させ(実際ジオンに負けているので、死に者狂いで研究している。金もジャブジャブ手に入る)、精度は低いながらサイコフレームは製造できるようになった。
この技術を利用して0085にできたのが、低品質なのでボンヤリ光るサイコガンダムの内部フレームである。ただ、侮りがたい話で、パージした装甲の裏側にも配置されており、これでリフレクタービットまで実現している。
シャアは、連邦がつかんだ低精度のサイコフレーム精製技術(試料と資料)をランチに詰め込んで、ゼクノヴァを利用して宇宙に上がる。
国が傾くほどの予算でこれを高精度に精製し、イオマグヌッソを作らせる。同時に「時間凍結」を解除するためのモビルスーツも開発する必要があった。この手元に残してあるサイコフレームの中心部を応用すれば、できるはずなのだ。
そんな計画を立てているシャアの考えを知ってか知らずか、このエルメス破壊実験のゼクノヴァで転送された先がサイド6の17バンチコロニーである。
17バンチ事件の真相と親子の別れ
中立コロニーに突然出現した赤いガンダム。ジークアクス開発に必要なエンディミオンユニットは、ランチに積んだままで抱えてきた。
シャアも行く先を予想できていなかったので仕方がないが、ソロモンで灰色の幽霊とともに大暴れしたモビルスーツの転移現象は、サイド6で大事件となった。
「今度はコロニー内部にか!」と出現先をコントロールできない不安定さを叫ぶシャア。
大混乱の中で、ランチに潜んでいたシュウジが現れ、最後に確認する。
「どうしても、ララアを拒絶するというのか」
「くどいぞ、シュウジ」
硬い意志を理解したシュウジは、5年間辛抱づよく続けてきた説得をあきらめ、赤いガンダムを奪って、シャアの元を飛び出して行く。
シュウジが赤いガンダムを盗んだのは、これにアルファサイコミュが搭載されているからだ。エルメスを強制送還するためのプログラムが、この共通規格からなら実行できてしまう。逆に、これさえ奪ってしまえば、シャアは計画を実行できない。そう思ったのだ。
一方で、シャアがこれを見逃したのは、自分から注目が逸れる囮として有効なことと、赤いガンダムによるゼクノヴァはコントロールが難しく不安定だと思い知ったためだ。
エンディミオンユニットを使ったジークアクスを建造する方が確実である。実はランチの中からこっそりエンディミオンユニットや先述のサイコフレーム技術関連資材は荷下ろししておいた。
17バンチ事件は、ミノフスキー粒子の反転現象などを記録する設備がない環境で起きたため、ジオンからゼクノヴァとしては認定されていない。
しかし、キシリアが探し求めていた赤いガンダムの出現情報である。矢も盾もたまらずといった、相当に強引な介入があり、あわや戦争かという所まで行ったのだろう。
それも、シュウジが赤いガンダムを盗み出したことで立ち消えとなった。
その後もシュウジの赤いガンダムは17番地コロニーやイズマコロニーなど、あちこちのコロニーに現れている。
ガンダムとランチだけでは、コロニー間の移動はできても、地球に向かうことはできない。彼は、なんとか地球行の方法を探して飛び回り、サイド6のあちこちで目撃されている。
グラナダに移ってジークアクスとジフレドを開発させるシャアとその開発理由
シャアはシュウジを「薔薇の中で眠る少女(ララア)に取り憑かれた」と評している。地球での日々で、ニュータイプ能力を評価し、同志になれるほどには接近したが、ある時から薔薇の少女に異常に執着するようになったというシャア側から見た変容だ。ニュータイプ能力しか見ていないあたりが非常にシャアっぽい。
実際にはシャアに接近してララアの言うとおりに大人しく生きろと言いたいシュウジだったが、シャアのララア返還の意志が頑なすぎて、薔薇の少女の話しかしなくなったというドラマを端的に表しているのだと思う。
シャアの頑なさに絶望して「話すだけ無駄」と判断し、先述の理由でシュウジは送還の鍵となる赤いガンダムを強奪したのだ。
金はあるシャアが、これだけは残ったエンディミオンユニットをもとにジークアクスを開発していく。
赤いガンダムは、先述のとおり不安定すぎるからだ。アルファサイコミュという共通規格がなくとも、オーパーツという共通規格を持ったエンディミオンユニット搭載のモビルスーツなら、エルメスには干渉できる。こちらは障壁となっている時間凍結を解除させて、プログラムを流し込むツールにできるのだ。
17バンチからグラナダに移動し、彼はジークアクス建造という別プランを実行する。
おそらくはそれまで名前のなかったサイコフレーム中央部に「エンディミオンユニット」という名前が与えられ、ジフレド頭部サイコミュビットに「ルナ」「アルテミス」というこちらも月由来の名前がつけられたのは、両モビルスーツの開発が(元々からジオンのモビルスーツ開発工廠のある)グラナダで行われていたためであろう。
イオマグヌッソという巨大ゼクノヴァ装置を建造させるには、転移兵器としての魅力をキシリアに見せなければならない。
ジフレドは、そのための発射トリガーだ。これも作らせた。後述するが、こちらは同時にエルメス破壊を目的としたモビルスーツでもある。
シャアはこのエルメスという名前を知らない。シャロンの薔薇はジオン側の呼称だ。シャアは薔薇の少女送還という裏計画に、別称を名付ける。
シュウジの話によると、このオーパーツは世界の第一原因らしい。このオブジェクトから世界は創られたのだ。
ギリシャ語で「第一」を意味する言葉から、これを「アルファ」とシャアは呼称する。(「アルファであり、オメガである」という第一原因の属性を示す聖書の言葉があるが、なんかシャアは聖書とかの言葉は使わない気がするんよ)
こうして「アルファ殺し」の構想は組みあげられていく。
シャアは、あくまでシロウズとして、レオ・レオーニ博士に接近し、イオマグヌッソ開発に入り込んだ。一方で、シャリアにグラナダでのジークアクス開発を指示している。
キシリアの膝元であるため、シャアが生きていることは、おおっぴらにはできない。しかし、あのときと同じワインを送れば、彼には伝わる。暗号化した指示書でも書いて同封してあったのだろう。
2人は、共通して「ガンダムクァックス」という呼称を用いている。現場では「ジークアクス」と呼ばれている名前が、開発初期は違っていたのだ。この二人が、かなり初期から関わっていたという痕跡であろう。
一人で泣きそうになって頑張ってるシュウジを助けに来たんだ
ところでシュウジには、シャアのような金で買った社会的立場がない。手持ちの財産は、赤いガンダムと、そのコクピットに転がっていた数枚の金貨だけだ。
そして、赤いガンダムを盗んだからと言って安心はできない。シャアからは「ジークアクスを作って、潜水機能もつけて、いい頃合いになったら地球のエルメスを見つけに行ってやるぞウヒヒ」という意思を感じる。
シャロンの薔薇を、シャアから引き離すために探しだしてどこかに移す必要があるのだ。シャアは場所を知っている。大人しくしているうちに、地球へ行って確保しなければ。
シュウジは、どうにかして地球に行ける方法を探しながら、とりあえず金貨で絵の具を買った。理由については後述しよう。そうしてスプレーアート(グラフティ)を描いているうちに、マチュと出会い、クランバトルの賞金でスペースグライダーを買い、地球へ行くというプランを提案されている。
これしかないな、とシュウジも思う。
そうこうするうちに、レオ・レオーニ博士を隠れ蓑にしたシロウズ(シャア)の計画はキシリアの認可を受け、第7話では、サイド6を資金源としたイオマグヌッソ建造予算に目処が立っている。
ジークアクス、ジフレドともに機体は完成し、あとはパイロット次第。シャアの計画も、最終段階に入りつつあった。
上位神四人は、これを見て頭を抱える。
せっかく生存大勝利ルートが確立したのに、そのシャア本人がララアを拒絶しようとしているのだ。アムロは意を決してシュウジを呼び出す。
サイド6サイコガンダム戦の裏側で起きたささやかなゼクノヴァのその裏事情
ニャアンという少女が「マチュもガンダムも全部捨てて、ここから一緒に逃げようっ!」と叫んで全力で抱きついているが、アムロはお構いなしだ。
わあ、シュウジ君おおきくなったわね、ちょっと前まで小学生くらいだったのに、もう17歳なの? ソロモンのときからもう五年だものね、よその子の成長は早いわとか思っているおばさんムーブのセイラさん(実際、シュウジの叔母さんにあたる)をちょっとどけてアムロが語りかける。
「もうダメだ。シュウジくん、イオマグヌッソは作られてしまう。途中まではよかったが、あいつ(シャア)のせいで台無しだ。明確な拒絶だよ。残念だが、もとの世界もろとも消そうと思う」
「待ってください。まだマチュたちがシャアを説得してくれるかも知れない」
なぜか他人と思えない雰囲気のエンディミオンユニットが、横からそうだそうだと上位神アムロに食ってかかる。やってみなければわからん、と自信ありげに言い切り、語り掛けてきた。
いまニャアンを放り出してコクピットを開けた。こっちに向かって走ってくるマチュを救い上げて、かならず一人前のニュータイプに鍛え上げ、シャアを説得するから、ここはひとつこのユニットの顔を立ててくれないかい若いアムロ君。
「・・・・・・わかった」
エンディミオンユニットの申し出を、渋々に承諾する上位神アムロ。
「だが、シャアの計画が最終段階に入って、もし向こう側とこちら側の栓が抜け(エルメスが時間凍結から解放され)て、(強制送還プログラムによって)ゲートが開いてしまったら、もう限界だ」
シュウジの伏せた目が「そうなったら、僕がまたララアを殺す」と黙して語りながら、頷く。
シャア説得という使命に失敗したシュウジは、後任をマチュに任せて退場した。正確には、アムロによって向こう側につまみだされてしまったのだ。赤いガンダムごと。サイド6にニャアンを置いて。
シュウジが行った先は、ララアが時間凍結によって栓をしているすぐ向こう側だ。そこには、上位神アムロの象徴体である大河原ガンダムが待っている。
シュウジは、もうここから見ていることしかできない。セイラさんが叔母さんらしく「大変だったわね」と労ってくれるが、緊張は解けない。
シュウジはあきらめていないからだ。
最終的には、この大河原ガンダムを、いまや17歳のシュウジより年下となったアムロ少年16歳(なお上位神)から奪取して、これでエルメスを破壊する。ジークアクス世界でシャアが見せてくれた解決方法だ。
ガンダム奪取である。
僕もアレをやればいいのだ。
そしてエルメスごとララアが死ねば「シャアがララアを拒絶した世界」も砕けて消える。そうして、またリセットすればいいのだ。
これまでの夢のようなやりなおしとは違う。
実体でエルメスがここに来ている。
実体のララアを殺すのだ。
この宇宙が「ララアは死なない」世界だとしても、どれほど苦しい思いをするかわからない。
アムロも、ララアを殺した瞬間はひどく苦しんだらしい。こんな世界を作ってしまうくらいに。
でも、僕はやるしかない。
ララアの願いを叶えたいんだ。
アムロは自分が作った世界を間違いだったから消そうと思っている。
だが、シュウジには「どこかに僕が生まれる幸せなルートがあるはずなんだ」という確信があるのだ。
その妄執にシュウジは蝕まれている。何度目か数え切れないほどのララア殺しの決意に、これまで巻き添えに滅ぼされてきた宇宙の人々が、白骨となってすがる。骸骨がカタカタと鳴る。
お前だけ幸せにしてなるものか、と。
こうして、ジークアクス本編第7話までの、裏側の物語は終了する。
そして、このシュウジを救うために、表側でマチュは戦うのだ。
シュウジを救う反復強迫の治療について
シュウジがララア殺害を繰り返すのは、反復脅迫ではないかと先述した。これが心理的な症状なら、治療法はあるのだろうか。
シュウジの中には、ララアへの愛や苦しみや悲しみの感情が詰め込まれている。本編のシュウジは、これをまったく表に出していない。抑制を繰り返しすぎて、本人も始まりの動機を思い出せないでいる。
しかし、それを思い出させてくれたのがマチュだ。
最終回で、巨大な白いガンダムの手を掻い潜り、シュウジの中に飛び込んだ彼女が囁く。
最終回で描かれたシュウジの解放と最初のガンダムですでに描かれていた物語の完結
「ララアのことが好きなんでしょ?」
この言葉は、ただのきっかけだ。
何より大切だったのは、寄り添って、シュウジの事情を共有してくれるマチュの来訪そのものである。
シュウジが誰にも頼れず、これしかないとララアを殺したとき、絶望的な身体反応があったはずだ。胸がつぶれるような痛み。吐いても吐いても収まらない苦悩。その孤立と苦痛にマチュは寄り添う。
精神的な絶望が、身体的な希望によって軽減される。
それをシュウジは感じ、驚いて顔を上げる。
トラウマによって失われてきた安全なつながり。それが、マチュとの抱擁でこころに蘇る。なつかしい暖かさ。彼の孤独と絶望、ガン決まりになっている心理的な過覚醒が和らげられていく。
誰でもいいわけではない。サイド6でのニャアンではダメだった。信頼できるパートナーとのハグであってこそ、トラウマや頑なになった心は解きほぐされる。
思えば最初から、シュウジはマチュのことが好きだったのだと思う。
その芽は、ララアの心を守るという固い地面が塞いで、種から出ることを許されなかった。
第5話でのシュウジは、あまりにも傷つきすぎてきて、実体で半裸の美少女二人に挟まれても、何も感じなかった。
「母親を殺し続けている自分はいったい何者なのか」「誰のために、何のためにここにいるのか」「この繰り返しに意味はあるのか」と苦しみ続けて、生存の欲求、そして性欲の類いも失い果てていたのだ。
だからこそだ。好きだと自覚したマチュとのハグが、ついにトラウマの再演を断ち切った。
マチュが、本当にシュウジを信じていて、彼を好きでいたという、そのパワフルで純粋な信頼が、彼にあのキラキラ空間でこそ100%伝わったのだ。
おそらくは初恋の、幼く、純粋で、愛らしい恋の形。
「ララアを殺さなくてはいけない。彼女を守るために」という、引き金を引く現場にマチュは飛び込んで、その手を握る。
「それはシュウジが繰り返してきた苦しみに囚われているだけで、変えられるんだよ」とマチュは彼のルールを再構築する。
「私たちは毎日進化する」
「守ってもらう必要なんてない」
「強いニュータイプに」
シュウジからすれば、シンプルな、そして強力な宣言。
繰り返される歯車(ギヤ)を、マチュは蹴ッ飛ばして切り替える。
シュウジが、あれほど望んで、そして得られなかった希望への進化。
殺すしかなかった絶望のサイクルが、いまやっと外されたのだ。
シュウジは、やっと次へ進める。変化が許される。あまりにも長かった決まったステップの終了。
それが信じられなくて、シュウジはふとララアを見る。
彼の目にはようやく光が戻って、光の中にララアの顔が見えた。
彼女の中に、もう絶望はなくなっていた。
人は誰でも、失った希望が日々の繰り返しの中で戻ってこないだろうかと、裏口のドアを開けたままで夢を待ちわびている。
でも、人生はそこから出るときに動き出すのだ。
マチュ自身がその扉を破り、飛び出してみせた。
シュウジも、ララアも、それが分かる。
彼女にメッセージを送って導いてきた高次元ララアにも、おそらくは、シャアの生存に執着していたセイラにも。
シュウジとララアは、感謝と愛を告げる。
「ありがとう、こちら側のニュータイプさん」
「君が好きだよ」
そうして二人は「向こう側」に帰っていった。
向こう側は、変わらずシャアが死んでいなくなった世界だ。
あきらめきれなかった思い出の再演、どこかに都合のいい未来はないかと、すがって繰り返した悪夢。
そこに飛び込んできて、思いっきり蹴ッ飛ばしていったマチュ。
ララアは、シャアの死を、満足できないまでも受け入れていく。
そのララアを、シュウジは俯瞰して見下ろす。
彼は、ララアとは別次元からきた観測者だからだ。シュウジは、マチュによって悪夢のルーチンから外れ、自由になった。
そこから「ララアの願いが叶って満足する世界」を探しに旅立ち、そして彼はついに見つけた。アムロに殺されることを従容と受け入れた、高次元ララアの導きだったのかもしれない。
それこそが「機動戦士ガンダム」の第41話。
シャアを守ってララアが死ねた世界だ。
誰にとっても運命の悲劇であったあの死が、それでもアムロと会話しながら満足げに「ああ、時がみえる」と昇天したララアには、本望だった結末。
ここに到達して、シュウジはついに「ララアの満足な生と死」を見届ける。彼はもう、この死に干渉しない。
「正史ガンダムにイトウシュウジが出てこなかった」という事実をもって、シュウジの物語は完成するのだ。
あとがき
長い考察にお付き合いいただいてありがとうございます。
3万字ほどの本考察はジークアクスの、頭と、背骨と、シッポです。この後で、身の部分として「ララアの見つめる一年戦争」「五年のシャア失踪期間での連邦サイコガンダム開発とイオマグヌッソ建造」「イズマコロニーでの青春」「娼館と月面都市」「イオマグヌッソの攻防」「その後のジオンと二人」を読み解きます。
本文全体で、30万字ありました。
なるべく短く削っていきたいと思ってはおります。
この考察①は、全体の十分の一ほどにあたります。
このあと、ジークアクスを観て多くの人が抱いたであろう100近い疑問に答えながら、本編の解説と考察をしてまいります。「なんじゃこりゃ」と思った全てのシーンに、一応の解説が可能です。代表的な所では(すでに①で考察されているものもありますが)────。
・シュウジは何者なのか
・シャアはどうやって「この世界の理」を理解できたのか
・ハロがジークアクスに詳しすぎるのはなぜか
・そのハロをカネバンが持っていたのはなぜか
・コンチはなんだったのか
・17バンチ事件とは
・結局、ファーストの時空とは違う話だということか
・シュウジはシャロンの薔薇が地球にあることをどうして知っていたのか
・シャアはシュウジとどこで出会ったのか
・シロウズ服のシャアといっしょにいるときのシュウジって、幼くないか
・シャアはいつ戻ってきたのか
・セイラの顔がハッキリ映らないのはなぜか
・シャアのゲルググとガンダムが戦うとき、ガンダムだけパイロットが映らないのはなぜか
・ソロモン内部で待ち伏せしていたセイラは、本当にあのセイラでアルテイシアなのか
・シュウジはなぜララアを愛しているのか
・シャア専用ヅダはやっぱり爆発するのか
・シャロンの薔薇はどうして地球に転移したのか
・あのメールの送り主は誰で、どういう意図で送ったのか
・戦勝国なのにジオンがサイド6より経済的に弱いのはなぜ
・フラナガン博士はいまどこにいるの
・サイド6で消えたシュウジはどこに行ったのか
・シイコのマヴはどういう人だったのか
・シイコはなぜ微笑んだ
・無口でたまにボソッと語るタンギはどういう意味のキャラなのか
・ガルマはどうなったのか
・ミネバは存在するのか
・あの落書きはどういう理由でやっていたのか
・「ガンダムが言っている」って、結局はどういうことだったのか
・ジークアクスという名前が仮名だった意味はなにか
・コンチはどうしてあんなに餃子を包むのが上手いのか
・アンキーは何者?
・シャアが、イオマグヌッソ開発に関われたのはどうしてだろうか
・シュウジの隠れ家のランチはどこから来たのか
・マチュの父親はどういう人物だったのか
・指名手配犯の血縁者のスマホは押収されたり監視されたりしないのか
・赤いガンダムは補給もなしに五年も動いていたのはどうして(→核融合炉なめんなよ。あと補給とかしとらんわ)
・サイコガンダムの中身はどうなっているのか
・サイコガンダム装甲のファンネル化は異常すぎないか
・バックハグしたジークアクスはなんだったのか
・ゼクノヴァが意図して起こせるようになったのはなぜか
・時の止まったエルメスにどうやって発射装置をとりつけたのか
・ギレン派スパイのアサーヴはイオマグヌッソの目的を理解していたが、当のギレンが知らなかったのはなぜ
・ギレンのクローン強化人間計画はなんだったのか
・ゼクノヴァで消えたソロモンの一部やアバオアクーは、どこに行ったのか
・イオマグヌッソにはなぜ劇場があるのか
・ジオン敗北の世界が存在することを、どうしてキシリアは知っていたのか
・ジフレドとニャアンの関係はなんだったのか
・アルファ殺しとは何だったのか
・どうしてコモリ少尉が突然に説明役になったのか
・ジークアクスの肩のブラックホールみたいなのは何なのか
・「人間だけがアルファを殺す」とはどういう意味なのか
・キシリアはどうして一人でシャアを待ち伏せしていたのか
・キシリアの金髪あこがれ回想は必要だったのだろうか
・なぜガンダムは巨大化したのか
・なぜ赤いガンダム(シャア)とチベ(キシリア)の間に急にサイド6の戦艦が突っ込んできたのだろうか
・ララアはシャアが死んだ世界に満足できたのか
・0085に出番のなかったマクベは今後どうするか
・マチュとヒゲマンって、ちょっとイイ感じじゃなかった?
・続編ってあると思う?
などなどです。
前提からして「これ本当に正解なの?」と筆者も思っているので(文章が半笑いのところは特にそう)「変な二次創作」だと思って、みなさんの同意できる部分のみつまみ食いしてください。
本考察は、アマプラで配信された「機動戦士ジークアクス」本編のみを頼りに書いております。
劇場パンフや、ソフトに付属するドラマCDやコンテなどは考慮に入れておりません。
「配信動画だけでここまで変な方向に打球を飛ばして二つ向こうのグリーンにホールインワン」という珍プレイをお楽しみ下さい。
次回「一年戦争編」
シャアが焼いた後たいへんな苦労をして復旧したソドンブリッジのコアデータに、01ガンダムやアレックスの開発情報があって、それを使ってキケロガは0079に全天周井モニター(0080のアレックスが最初)を装備できた話などなどです。
