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【14-2】ジークアクス全12話真相考察② あの一年戦争の裏側を流れたあらゆる思惑とニュータイプを探すために作られたハロの使命


特殊な原則の下でララアが奮戦する一年戦争のはじまり

 考察①で書いたように、ジークアクス世界は、アムロが創った「ララアが死なない」「シャアが死ぬまで戦い抜く」という二大原則でできた宇宙だ。
 その世界でシャアはララアを庇って死に、それに絶望したララアは、同じ仕組みで「シャアの死なない世界」を作り出す。
 しかし、一つ上位の宇宙原則が強いため、どうやってもシャアはガンダムと戦って死んでしまう。
 ララアは、シャアを様々なモビルスーツに乗せるプランを試しながら、その原則をずらしていき、ついに「シャアがガンダムに乗ればいい」という起死回生の名プランにたどりつく。

 そうして生み出されたのが、ジークアクスの世界だ。
 この世界には三人のララアがいる。地球で生きている娼館ララア、エルメス内で眠っている薔薇ララア、そして、シャアに「ひらめき」を与え、様々な電子機器に干渉できる能力をもった高次元のララアだ。

 今回の考察②では、ジークアクス世界のはじまりである一年戦争を舞台に「なんとかシャアが死なない世界にしてみせる」と意気込む、主にこの高次元ララアの奮闘を追っていこう。

0079ガンダム奪取以後の一年戦争とシャア快進撃のはじまり

「シャアがガンダムに乗ればいい」
 この大正解を実現するためのお膳立てを、ララアは慎重に積み上げる。

 まずは暴走したジーンザクの電子機器に干渉して、出撃不能状態にしておく。その上で、シャアの脳裏に「私が行こうかな」というひらめきを、投げて投げて投げまくる。

 サイド7側にも準備が必要だ。アムロの排除である。本作では、サイド7の民間人は疎開ずみだ。万が一にも、アムロに席を埋められては困るからである。
 第一話でマチュにメッセージを送れるくらいなので、疎開命令を細工するなど、ララアは万全の状況を整えている。

 そして、待ちに待った0079年9月18日。
 正史でアムロがガンダムに乗り込んだ日が来た。

 もちろん、ガンダムのコクピットハッチを開放しておくのも忘れない。ガンダムの計器にも火を入れてある。なにせララアは電子機器に干渉できるのだ。本当に、あとはシャアがここに乗り込めばいいだけの準備が整っている。

 長い繰り返しの果てに、やっとたどり着いたジークアクス世界。シャアが生き延びられますように。ララアはありとあらゆる神に祈りながら、シャアを待つ。

 そして、彼はついに来た。

 その後の大躍進はご存知の通り。そしてシャア本人も「ひらめき」の影響を感じつつ、行ける所まで突っ走る。

ガンダム対ガンダムを見つめる死にそうに不安なララア

 出港指示の連絡が(おそらくはララアに)妨害され立ち往生しているペガサス級を奪い、シャアは宇宙に出る。迎え撃つルナツーの部隊を睨んで一言。「ワッケインにしては対応が早い」

 シャアは、ルウム戦役で彼の指揮スタイルを知っている。対応の遅いワッケイン。あるいは硬直的であった提督。正史ガンダムでも、ホワイトベースをルナツーで拘束するなど、彼は柔軟性に欠ける人物であった。
 ジオン軍の新兵器「モビルスーツ」の実戦投入にも対応が遅れ、レビル将軍拿捕がこの世界でもあったかもしれない。このルウム戦役で将軍麾下のワッケイン艦隊のうち五隻を沈め、シャアは少佐になっている。
 ジークアクス世界でも、彼は同じ階級だ。ここまで、だいたい正史と同じ歴史なのだろう。

 01(ゼロヒト)ガンダムと呼ばれる1号機が迎撃に出てくる。おそらくシャアの乗機が「02(ゼロフタ)ガンダム」なのだろう。
「このモビルスーツが、今後の戦略の鍵となるかもしれんな」

 我々が劇場でヘンな笑いを搾り取られていたこのシャア快進撃を、夢の中のララアは祈るような気持ちで見ている。いままで、シャアは何度もガンダムに撃墜されてきたのだ。

 しかし、シャアはいままでとは違うはずだ。そして見事に大佐は乗りこなしてくださった。
 01ガンダム撃破を見て、ララアの魂は歓喜に包まれる。まさに、このモビルスーツが鍵なのだ。いままで開かなかった、シャア生存ルートを開くための。

せっかくのルートに水をさすドズルを軽く始末するララア

 シャアが生き残るために、ジオンの勝利も固めておきたい。連邦が、いつまたガンダム級のモビルスーツを開発して、真っ白に塗って送り込んでくるやもしれないのだ。
 奪取したガンダムを分解分析して、連邦最新の技術情報をもとに、ジオンのモビルスーツ全体を強くしておく必要がある。

 思惑は叶って「大佐の提案が通りました。ジオニックの新型は開発を中止、ガンダムのリバースエンジニアリングによる、量産計画が決済されました」とマリガンがシャアに報告している。
「そうか、それは良い知らせだ」「しかしドズル中将は反対されていた筈だが」
「キシリア様が説得された、と言う話です」

 シャア提案の背後にはララアがいるため、これに反対したドズルは、セイラの軽キャノンに撃墜されている。
 これもひょっとするとララアが細工した可能性がある。スレッガーとアムロがやっと倒したビグザムを軽キャノンで倒せたのは、ララアがビグザムのただでさえ短い稼働時間をさらに短くするなどえげつない電子的介入があったのかもしれない。

 いずれにせよドズルは死亡し、ゲルググ(シャアが死んだ縁起の悪いモビルスーツ)開発はストップした。
 結果として似ても似つかない、正史ジムっぽいモビルスーツが生まれ、名前もそれに奪われている。ジオン純正のモビルスーツ開発は、リックドムで打ち止めとなった。なお、ギャンだけはマクベの意地で完成させられたのだと思う。

地球でも大暴れする赤い彗星

 ただ、0079時点ですでにプロトタイプ(?)のゲルググがソドンに配備されている。ドズル中将存命中に、シャア少佐はこれを押し切れたのだ。
 この階級差で、ジオン上層部に強い発言ができるだけの相当な武勲を、シャアは(ガンダムによって)挙げていたからだ。

 正史になぞらえれば、おそらくガルマを守り切り、オデッサ作戦に参戦し、黒い三連星の手柄をまるかじりし、ひょっとするとジャブローにもガンダムで潜入し、やっと量産にこぎ着けた軽キャノンを串刺しにし「ガンダム一機の働きで(中略)戦争が勝てるなどと言うほど甘いものではないんだぞ!」と言って襲い掛かるウッディ大尉のファンファンを叩き潰したのかもしれない。

 これらとんとん拍子の大活躍で、シャアは二階級昇進し、大佐となっている。
 なお、正史の昇進は、マッドアングラー隊での(本人としては退屈そうな)活躍もあるが、キシリアの政治的抜擢によるものだ。

恐ろしい強運をもつ赤い彗星をガッチリ抱き込んで動き出すキシリアの野望

 そのシャアを、キシリアが呼ぶ。「軍を離れたガルマのお守りでもさせたいのか?」とマリガンに問うシャア。このときのマリガンの返答「まさか」が、笑っていない。本当に笑っていない。心の底から冗談じゃないと思っている。

「大佐が特別な人でおありなら、お一人でも戦局は変えられるはず」とマリガンは言う。
 このときの彼は、画面の下手側にあって、上手側のシャアを見ている。この構図のマリガンには、シャアに逆行する強者ポジション、つまりキシリアの代弁者ということになる。
 この過大な期待を、キシリアはシャアに抱いている。

 キシリアは、ザビ家のトップに立つため、軍事的政治的な動きを始めていたからだ。最終的には、ギレンを毒殺し、残ったガルマのいる地球にもイオマグヌッソのゼクノヴァ砲を撃ちこもうとしていた。キシリアの「全員殺してでも自分が独裁する」という覚悟が、すでに固まっている。
「その野望のためですよ。あなたも分かってるんでしょ?」と言わんばかりの表情でマリガンはシャアを見る。

余談 えっ、ずっとあの色で?

 ソロモンでガンダムの再塗装がある。つまり、これまでガンダムは例の目立つ囮カラーのままで、北米、オデッサ、ジャブローと暴れ回り、戦果を挙げてきたのだ。
 連邦からすれば悪夢である。連邦のかっこよさを俗っぽく表現した栄光のトリコロールカラー機がバケモノになって襲ってくるのだ。
 そして、同じく妹セイラの軽キャノンが同じ囮カラーに特別に塗られている。これは、性能で劣る軽キャノンだが、なんとか「こっちが本家トリコロールじゃい」と見せつけてくれたまえ、というメンツが大事な連邦軍の腐れっぷりによるものだと思う。
 セイラにしてみれば、自分の兄が連邦軍を蹂躙しまくっている罪深いカラーを背負って戦わなくてはならないのだ。それでも彼女はドズルを討ったので(ララアの小細工もあったと思うが)本当にご苦労様です。

 このときからセイラは、時代の潮流に流されるままに戦いから逃れられないでいる。最後に、ジオンの王女として立たされたときの暗い表情は、ここから直結した自虐かもしれない。

連邦の学習型コンピュータとシャロンの薔薇によって、サイコミュもブラウブロも小型化した

 ソロモンが陥落し、ジオン本土決戦がせまる芳しくない戦況下で、ガンダムの耳の所にサイコミュが増設されている。本来はエルメスに組み込まれるはずだった部品だ。
 正史では、ブラウブロ、エルメスと来て、ようやくジオングでモビルスーツ内に収まったシステムを、エルメス前にガンダム頭部へ収めたのだから無茶な話である。正史一年戦争以上の、驚異的なメカニズムの発展速度だ。

 サイコミュシステムが小型化できた鍵は、本作では語られなかったが「学習型コンピュータ」の融合が考えられる。
 鹵獲したガンダムに搭載されていた学習システムには(正史と同じなら)、パイロットの操作パターンをラーニングし、機体を適応させる機能がある。
 サイコミュの脳波制御(ニュータイプの精神波で機体を操縦)と類似点が多く、この技術的融合が小型化を大きく助けたと思われる。(ゼロサイコミュも小型化され、ブラウブロが、全高・重量ともに半分程度のキケロガになっている)

 そして、ガンダム奪取後にシスルナ宙域で発見されたシャロンの薔薇だ。
 時間凍結のため、コクピット内部の分解などは難しかったが、未完成だったアルファサイコミュの、その完成見本がそこにあったのだ。ありえないタイムパラドクスだが、戦時とあって、謎解きより開発が優先されている。
 ニュータイプとして出現したシャアが、積極的に協力したことも開発を早めたのだろう。

どんなに強化しても心配なララアの用意した下駄と盾

 赤いガンダムのサイコミュ搭載で、本機はさらに強力になった。ララアの心配が開発にも作用したのだろう。

「逆襲のシャア」までずっとそうだが、とにかくシャアは前線に出る。
 彼の性格もあるが「シャアがいなければ何ともならない」とか「シャアさえ出れば突破口が開ける」といった状況に、応えてしまうのがシャアなのだ。
 ララアもよく分かっているので、彼を守るため、開発者に様々な閃きを与えて、ガンダムを強化する。

 それでも、ララアはまだ不安だ。シャアがアッサリ死ぬ過去を、見すぎてきた。そして、彼はいまだに戦場にいるのだ。

 サイコミュという下駄を履かせた。次は、盾となる仲間を呼ばなければ。
 それも、シャアについていける盾だ。

 そうして、ララアに用意された盾がシャリア・ブルである。
 木星でいろいろあったところを「あなたにはシャアを死なせないための使命があるのです」とやはり電子機器に干渉してトラブルから救い出している。

シャアの中にヒトラーの尻尾が見えたシャリア

 シャリアはギレンの命令で、木星帰りにソドンに異動してきた。
 木星トラブルで精神的に空っぽになっていたシャリアに、シャアが道を示す。
「それは私と組むことだ」
 そして握手。生きる意味を見失った男に、シャアの野望が注入される。
「ニュータイプ全体の未来のために。ひいては人類全体のために」

 シャアは希望の未来を語るが、それはすなわちザビ家を滅ぼして自分がジオンの(最終的には人類の)指導者になるという、軍内部にあっては巨大すぎる危険な野望だ。それに気がついたシャリアは、ワインボトルを傾けたまま動けないでいる。
 緊張と警戒の中、本気なのか? とシャアの心を探る。
 シャアにも、うっすらとその「探り」が分かる。

 このあとの握手で、二人は手袋をしたままだ。

 シャアは自分のザビ家暗殺が、ギレン・キシリアの両方に挟まれている(両方とつながっている)シャリアにダダ漏れしないように。

 そしてシャリアは、このときすでにシャアがギレンのような独裁者になって「人類全体のため」とうそぶいて大虐殺をやらかす未来を予見し、その未来を自分だけだが気づいていることを、悟られないように。

「戦争に勝って、その後は」とシャリアはシャアに問う。
 はぐらかされたその答えを、シャリアは知っている。彼は直前にギレンに会っているのだ。

 正史ガンダムで「勝ってな、どうする」とデギン公王に同じ質問を向けられたギレンは答えた。
「せっかく減った人口です。優良種のみが残るようにします」
 ヒトラーの尻尾はそう言う。作戦許可を押し切れて、高揚したギレンから、つい本音が漏れたシーンだ。彼はこのジークアクス世界でも同様に考えていて、直前に会っていたシャリアに、その本心が漏れていたのだろう。

 シャリアは、同じ感触を、この若い野心家の遠い未来に感じている。
「よくない」こころを覗かれた感じを察したシャアがたしなめる。
 ただ「何にせよ、この戦争に負けるわけにはいかない」だけは同意だ。

 彼はシャアにぴったりとついていく。
 戦争勝利の突破口を開くために。
 そして、このあまりにも危険な男が尻尾を出すまで、決して見失ったり、逃がしたりしないように。

複雑な思惑を隠しているけどとりあえずこの盾(シャリア)に相応しい機体の開発を

 さて、シャアの盾が、とりあえず用意できた。しかしシャリアの乗機は、おそらくリックドムである。詳しくは第五話にて解説するが、ガンダムと並べるには、あきらかに戦力不足だ。そこで、アルファ型以前のサイコミュ搭載機キケロガである。

 サイコミュの開発ナンバーは、ガンダム頭部に増設された「アルファ型」が一番だが、そのひな形として「ゼロ型」があった。これがキケロガに組み込まれており、コクピット内にはその表示がある。
 キケロガの完成が急がれたのは、リックドムでは、先陣をゆずらずに突っ走るシャア(と赤いガンダム)の随伴機としては不足だったからだ。

 ひょっとすると、ブラウブロという大型モビルアーマー計画がすでにあり、先述のサイコミュ小型化技術の応用で、現在のサイズに収まり、キケロガと改名されたのかもしれない。

 復旧されたV作戦のコアデータにNT-1アレックス(初の全天周囲モニタ採用機体)の情報もあり、そこから開発した全天周囲モニタも導入された。
 サイコミュ搭載ガンダムでカッ飛んでいく赤い彗星を、見失わないためである。

 無人攻撃機ビットを六発くくりつけた運用テストがはじまる。太陽を背にして接近し、シャアはガンダムからビットを放つ。
 ソロモンに停泊中の連邦主力艦隊が次々と撃沈されていく。

余談 ランチが確認できるの、このときだけなんよ

 このとき爆発するサラミスの近くに、吹っ飛ばされるスペースランチが見える。このデザインは正史のスペースランチと、ほとんど変化がない。

 0085にシュウジの隠れ家にランチらしきものが見えるが、このランチとはデザインが異なる。

「ジークアクス0079のランチは、正史ガンダムのものとデザインが同じ」そして「0085にシュウジの隠れ家にあるランチはどちらのランチとも違う(特徴的な前照灯の形状がまったく違う)」のだ。

 つまり、彼のランチはそのどちらとも違う世界から来ている。考察①にも書いたが、これは0093から来たものであると筆者は考える。まあ、それはともかく。

大興奮キシリア様とそれが悔しいマクベ司令と連邦の悪あがき

 ニュータイプとサイコミュの凄まじい戦果に、キシリアが興奮する。シャロンの薔薇を発見し、そのテクノロジーが軍事転用できると踏んで研究を始めさせた日を思い出す。ほんの二ヶ月ほど前のことだ。そして、初の実戦投入である。「すごいものだな」と声が笑う。

 一方で、信奉しているキシリア様が、この若造ペアを可愛がっているのでムカつきを隠せないマクベ(たぶん40歳くらい?)が、艦隊を率いてルナツー攻略に発進した。一個戦隊が投入された量産ビグザムが猛威をふるって、ルナツーは見事に陥落する。

 正史のようなモビルスーツ開発の迷走がなく、資源活用と技術革新が上手くいって、この量産ビグザムは実現したのだろう。
 欠点のあったドズル機が改良され、このルナツー戦で大きな実績をあげたため、その信頼性で0085でも13号機まで増産されている。

 指揮を執りながら、マクベとウラガンの「作戦からシャアを外したのは嫉妬によるのではないか」という会話がある。この頃から、キシリアがシャアを特別視していることは囁かれていたのだろう。

 キシリアは、芳しくない戦況の打破を、シャアとシャリアに期待している。彼らの登場と、サイコミュシステムの実用化をきっかけにジオンは反攻に転じており、マクベにも必要以上の気合いが入っていた。その甲斐あってルナツー攻略は見事勝利したが、彼はその裏をかかれることになる。

 連邦による、月面都市グラナダへのソロモン落としの敢行である。
 ルナツーに気合いを入れすぎ、総力を投じすぎていたジオンには、この作戦を阻止する現場の予備戦力が無い。

 しかし、月面都市への質量兵器使用は、どうみても戦争犯罪だ。ルナツー陥落が決定的であり、敗戦が決した側の最後の悪あがきである。
 休戦するにしても、少しでも相手の戦力を削いで交渉条件を有利にしたい。
「負けてもタダではすまさない」と思い知らせるのは、将来的な脅威の抑制も狙える。(しかし、連邦軍の悪あがきではある)

 標的となった月面都市で、脱出を拒否し、その悪あがきを迎え撃つキシリア。女傑の振る舞いであるが、恐くない訳がない。
 このときの恐怖は、グラナダ上空を周回し続けるソロモンの歪な影とともに、彼女にイオマグヌッソの建造を決意させたのだと思う。

 そして、ただ一隊のこっていたのがシャアの艦隊だ。
 先述のように、マクベは自分の判断と嫉妬心が曖昧になっている。ここで手柄を丸かじりできる状況にシャアが残っていたのは、考察①に書いた通り、この世界が「ララアが死なない」という原則をもつため、グラナダ地下のオブジェクト(シャロンの薔薇)を守ろうとする強制力の働きかもしれない。

シャアに演技力が要求されるソロモン落下阻止作戦の開始

 マリガンも驚愕するくらい、誰も準備しているはずもないソロモン破断作戦を、この土壇場でサラリと示すシャア。この破壊でソロモンの重心位置を変え、落下軌道を変更する作戦だ。

「ドズルを討つためにソロモンの構造を熟知」あるいは「ソロモンを落としてグラナダのキシリアを討つ」などを準備してきたシャアだ。連邦がソロモンの核パルスエンジンを点火し、グラナダへ向けたコースをとった瞬間に全貌を見通せた。

 マクベの驚愕を見ても、これが完全に連邦の奇襲であったことがわかる。
 シャアは、キシリアの命令を待たずに連邦の意図を正確に読み解き、小規模艦隊を独自判断で発進させた。

グラナダから脱出できない形にハメられたキシリアの意地

 避難指示、脱出用のチベが準備を終えた頃には、シャアはソロモンに向かっている。これを見て、キシリアはこう言った。

「率先して逃げ支度では志気に関わろう」

 シャアの「見事すぎるジオンへの忠誠」に刺激されて、私も女傑らしく振る舞わねばな、と考えて出た言葉。果たしてそうだろうか?

 ザビ家はジオン・ダイクンを暗殺し、権力を簒奪している。その被害者側の子息がシャアだ。
 それにもかかわらず、彼はジオン公国軍のエースとして忠誠を装い(実際は復讐のため)、この場面で待機命令を無視して小規模艦隊でソロモンへ「殴り込み」を敢行している。

 キシリアは自身の優柔不断を横目に、シャアが果敢に動いたのを見た。
 ザビ家という加害者の家系を守るため、被害者のシャアが「ジオンへの忠誠」を見せつける。キシリアは、この皮肉な構図に罪悪感や複雑な感情を抱きつつ、シャアに依存せざるを得ない。
 キシリアにとってシャアの行動は、ザビ家のありようを強烈に問う鏡なのだ。

 だからこそ、キシリアは動けない。

 加えて、ギレンと政治的に対立している状況で、大きな失敗を犯せないこともある。
 仮に、艦隊を発進させて失敗した場合、キシリアが月面都市消失の全責任を負うことになる。追求は激しく立場を失うだろう。
 しかし、シャアが先に発進している。後追いで命令を出せば、成功すればキシリアの功績となり、失敗すれば独断専行したシャアを断罪する逃げ道ができる。

 しかも、シャアがいち早く動いたことで、落下阻止の可能性も出てきた。
 これが上手くいったら、シャアを「ジオンの救世主」として祭り上げ、自分の派閥を強化するプランをうっすら夢想してもいる。

 あと個人的な絆(幼少期に母になる夢を見た甘い記憶など)を持て余しながら、キシリアは「ジオンの命運は、赤い彗星に委ねられたな」と、声を落として呟く。
 このとき彼女は顔を伏せて、声に出さずにつぶやく。

 そんな甘い話があるか。

 シャアの真の目的がザビ家への復讐であることは、薄々知っている。
 シャアは、このままソロモンを落として復讐を成し遂げるか。あるいは、まさか自分を許して救ってくれるのか。

 生殺与奪を握られて、キシリアは「頼むぞキャスバル坊や」と言うしかない

消える人間から使命が継承されるリフトグリップ移動の構図

「ソロモン攻略の件、事前に御自身でも施策しておられましたな」
 ソドン内部の通路をシャアが先行し、シャリアが追従する。

 同じ構図の演出が、後にマチュとシャリアに置き換えて描かれる。
 シャアに共感し、ついていくシャリア。
 シャリアに共感し、ついていくマチュ。
「このあとでいなくなる人物から使命や思想が継承される」という演出だ。

 シャアから、ジオンを、人類を、ニュータイプをどうにかしないといけない、という使命がシャリアに移る。そして、それは形を変えてマチュへと移っていく。

 シャリアからは「ソロモン攻略の件」と言われている。第三者に聞かれた場合は、この落下阻止作戦のことに聞こえる。シャリアが保険をかけた言い方をしているのに「戦争が終わったら次はザビ家だ」と、先行するシャアは、そんなことを口走る。

 シャリアの疑義はシャアにはバレておらず、彼はシャリアを信頼してこんなことまで打ち明けている。
 シャアの野心は、その信頼でシャリアに受け継がれ、後に彼はギレン・キシリア同時排除を画策しつつ、ニュータイプのための世界を目指すことになる。

第二次ソロモン会戦を駆けるキケロガ

 シャアの作戦が始まる。
 キケロガの有線制御式メガビーム砲が、敵艦隊を薙ぎ斬って路を開いていく。

 パイロットの思念制御で砲の向きを定め、連続照射しながら旋回させることで、広範囲の敵を一気に薙ぎ払う強力な攻撃だ。ケーブルで巨大モビルアーマー本体からエネルギー供給ができる分だけ、無線ビットより威力が段違いに高い。

 キケロガの操縦桿(コントロールパネルや操縦システム)が、ごくシンプルな構造になっている主な理由は、戦闘操作の多くをサイコミュシステムが担っているからだろう。
 全天周囲モニタが採用されており、射撃は思考制御。操縦桿はごくシンプル。コクピットのインターフェースは、ほとんど脳波受信機だけでできているのでは、と思うほどだ。

 シャリアのような高能力ニュータイプが搭乗する場合、ほとんど思考だけで機体を「拡張された身体」のように扱える。
 本編でのジークアクス操縦は、この高度な応用だ。第一話でエグザベは、起動しないサイコミュを頼らず、手動で動かして戦闘したが、マチュはほとんど手の平をあてて考えているだけで、有機的な動きを実現している。

謀反の片棒を担がされているドレン

 シャリアとシャアが血路を開いて行く。
 そこに乗り込むソドン。強襲揚陸艦としての見事な運用の開始だ。

 木馬の前脚部分をドアノッカーとして使うペガサス級の面目躍如。宇宙空間は無重量だが、質量はある。それをぶつけて隔壁を突破し、船体への衝撃を吸収するシステムがいい仕事をしている。
 おそらくだが、衝撃で割れる可能性の高いガラス窓や食器類は置いていないだろう。(軍艦としては常識か?)

 ホワイトベースを元にしているが、この運用からシャリアの机が壁面に固定されているなど、ソドンの内装は対ショック仕様になっているのが分かる。

(思えばホワイトベースは、食器皿もルナツーのようなプレートでなく、一枚一枚用意されていたし、ブライトの机も据え置きだったね。地上でラル隊のザクを振り落とすとき「かまいません」と逆さまになったミライさんの操艦は、想定外の運用だったと思うけど大丈夫だったのだろうか。今回も、立ったままの操舵士は、固定ベルトなどを使用しただろう。ミライさんもさすがに使ったと思う)

「よく保たせた、ドレン」
 キャメル、スワメル、トクメル。ドレンが過去に艦長を務めていた(であろう)船たち。なじみ深く愛着ある艦隊を犠牲にして旗艦を守り抜き、彼はソロモンにソドンを揚陸せしめた。その私情なき身を切る忠誠をシャアは讃える。

 しかし、この忠義を踏みにじって、彼の中でこの作戦は失敗前提で組み立てられている。シャア自身はザビ家が滅びてくれるならジオンなどどうなってもいいのだ。

ザクにもガンダムにもこれを押すと敬礼するよというファンクションキーがあるらしい

「大佐、あとは頼みます」
 シャリアは、蹴散らした守備艦隊ににらみを利かせるために外で待機する。
 自爆ザクの設置作業中、トクワン隊の援護を指示し、単独行動となるシャア。

 このとき、ザクが敬礼して離脱している。ミノフスキー粒子環境下で通信が使えない場合にそなえて、いくつかの簡易なハンドサインがモビルスーツにはプリセットされているのだろう。
 ガンダムも、第12話でキシリアに同様(ただし左手)の敬礼動作をしていた。ザクを参考に作られたガンダムは、その操縦系もかなりコピーされていたらしい。

 ちいさな共通点だが、この継承は戦争がもたらす技術盗用とエスカレーションを象徴している。ジオンのザクが連邦に鹵獲され、逆工学でガンダムが開発されたことで、ジオンの技術が敵味方を超えて循環し、戦争を永続化させるループがはじまったのだ。

 この循環で、破壊はより強力になり、人間性は喪失され、兵器製造は腐敗していく。最終的に、シャアはそこにつけ込んで、イオマグヌッソの一部機能を簒奪したのだ。

 第12話では、シャアが赤いガンダムでキシリアの乗る艦艇の前に立ちはだかり、左手で敬礼しながらバズーカを構える。ジークアクスでのセリフは「あなたは良い上官だった。これからはギレン総帥と仲良く」で、直後にキシリアを撃ち、ザビ家をほぼ全滅させる展開となった。

 正史でもそうだったが、左手敬礼は軍事的に侮辱や敵意を示す非公式なジェスチャーだ。敬礼は先述のようにミノフスキー粒子下のハンドサインとして描かれつつ、皮肉をこめた別れに使われている。

 戦争の加速が、ザビ家の責任に帰着していく。ザビ家はジオニズムを歪め、戦争を引き起こした。ダイクン家を滅ぼされたシャアが、キシリアに「あなたたちの戦争がもたらした技術の連鎖で、自分たちが滅ぶのですよ」と返礼しているのだ。

 力による簒奪を否定する敬礼。そして、第一回キシリア暗殺チャンスと、最終暗殺機会の両方にこのファンクションキーが使われているのが面白い。

人類の革新を目指すシャアとそれがちょっと迷惑なララア

 ソロモン内部に戻ろう。自爆ザクの制御機を外し、落下阻止作戦をキャンセルするシャア。連邦とジオンが共倒れになれば自分にも勝ちの目が出てくる。つまりシャアはザビ家を全滅させることで、ジオニズムの簒奪を正し、自分が正当な継承者として立つことを目指している。

 連ジの共倒れを願うのは、ジオン勝利がザビ家を強化するだけだからだ。シャアはジオン=ザビ家の軍隊だと思っていて、あまり戦争勝利に固執していない。

「逆襲のシャア」でもそうだったが、シャアは(アクシズ落としで)両軍が共倒れになった後で新世界秩序を樹立し、「人類全体の革新」を策謀している。彼の中にずっとある野望だ。

 しかし、この自爆ザクキャンセル行為は、一年戦争を見守りつつ「シャアに生き延びて欲しい」と思っているララアにしてみれば、まあまあ余計な行動である。
 いまザビ家を討てば、ジオンは弱体化してシャアを守る組織が瓦解するし、人類の指導者にでもなった日には、テロの標的だからだ。
 しかし、放っておいてもザビ家が強くなっては最終的にはシャアを始末するか、キシリアが婿取りに使うという、創造主の想い人が寝取られるまさかの衝撃展開にたどり着くので、ララアはヤキモキしながらこの経過を見つめる。

 いや、そもそも宇宙中心があるグラナダ地下のエルメスを破壊するのがそもそもダメだ。「しかたがないわね」と言って、事情を共有する四人の上位神の一人、セイラさんが腰をあげる。

例によって無像主義で顔の映らないセイラさん

 セイラは、正史アバオアクー戦でシャアの気配を感じ取るくらいに才能があったので、現地セイラが自力でたどり着いたともとれるが、本考察では、上位神セイラの憑依説で行きたい。

 赤いガンダムとセイラ機が交戦するが、サイコミュとシャアの地力で、軽キャノンはアッサリと撃退されてしまう。シャアがアルテイシアの姿をモビルスーツの装甲越しに発見するのはこのときだ。同時にキャノンの砲撃でシャアは土砂に埋もれ、しばらく動きを封じられてしまう。

 あのタイミング(自爆ザクキャンセル完了)でセイラ機が出現したのは、あちらの事情でいえば命令違反だ。セイラさんは昔からシャアと接触するためなら命令違反を犯してガンダムで出撃する人柄なので、周囲もきっと「まただよ」とか思っている。

 セイラの命令違反は、0080ポケットの中の戦争のクリスチーナ・マッケンジーにちょっと似ている。上位神に憑依されていたとはいえ、これを理由に連邦のエースも、クリス同様に後方へ左遷されている可能性がある。命令違反による戦後の人事配置は、後にシャリアらと接触する流れに繋がりそうだ。

二番ゼクノヴァ行きまーす

 さて、考察①に書いたように、セイラが失敗したので、アムロによるゼクノヴァが発生する。この宇宙の中心であるエルメスと、赤いガンダムごとシャアを転移して、一旦の仕切り直しだ。

 ゼクノヴァの際に「これは私では無い。いったい誰の精神に反応しているんだ」とシャアは言っていた。「誰なのだお前は」「むこう側から来たというのか」という独り言。
 あくまで感覚なのだが、シャアがこういう言い方をするのは男性に対してだと思う。女性に対してはもうちょっと優しいはずだ。単純に考えてゼクノヴァの向こう、黄色い光の中に見えたアムロとの対話だと筆者は思う。

 ここで発話されている以上のいくつかの会話があり、シャアはここで「この世界の理(ことわり)」を、いくらか理解する。

 水音ともに深い海の底に転移する赤いガンダムとシャロンの薔薇。
 せっかくうまく行きそうだったルートが、残念な結果に落ち着いたことを暗示するかのように、光の届かない暗い水底に薔薇は沈んでいく。

 一年戦争は、こうして終わった。

余談 テムレイにいっときだけ訪れた夢のような日々

 シャアにガンダムを奪取されたテムレイは、あの後どこに行ったのだろうか。
 シャアがブリッジを焼いてしまったため、コアデータが死ぬほど欲しいソドンとしては、捕虜の中にガンダム開発の技術士官がいれば、同行させていると思う。

 正史同様のタイミングとすれば、ガンダムが大地に立ったのが9月18日、そして数十機もの戦果を挙げて、翌1月3日に消えている。この短期間に、ビームライフル連射ができないなど不具合をかかえる新型モビルスーツを(ザク技術があったとはいえ)敵軍側だけで、こんなにも速やかに運用できはしない。そのため、捕虜となったテムレイが、ジオンに命令されつつ協力していた可能性がある。

 テムレイ視点で想像してみよう。監禁を解かれて格納庫に来てみれば、目の前で自分が作った最高の機体に、ジオン最高のパイロットが乗ってくれているのだ。そして、想定以上の大戦果を出し続けている。
 ここまで性能を引き出して操縦してくれるパイロットが、連邦のどこにいるだろう。テムレイは敵軍に囲われているため、かろうじて「バンザーイ!」と叫ばないでいるのが精一杯なのでは。技術者冥利に感激するテムレイの大満足顔が目に浮かぶ。

 ただ、やはりそれは仁義に外れる道なので、彼は早いうちに死んだと思う。

宇宙の理を悟ったシャアの戦後地球生活

 ルナツーとソロモンを失った連邦は、戦争継続を断念。ジオン公国に休戦を申し入れた。0080年1月3日。連邦の撤退で戦争は終わったが、シャアはその阻止作戦で戦闘中行方不明となる。

 考察①で書いたとおり、この後でシャアはシュウジに助けられて地球に転移する。エルメスと同じトンネルを通って行くので、インド近くの海底だろう。なお、このときエンディミオンユニットが積載された0093ランチもいっしょだ。これについては本当に仮説もいいところなので、公式からの発表が待たれる。

 シャアは、シュウジとどこかの海岸にたどり着き、重いだけのビット二機と目立つガンダムを隠す。
 街へ出る前に、この不思議な少年とシャアはさまざまな話をしたと思う。
 ゼクノヴァで垣間見た世界の秘密。薔薇の少女の意思によって、自分が生かされていること。にわかに信じがたいが、シュウジのニュータイプ能力は確かで(説明は要領を得ないが)シャアにもだいたいの事情は理解できた。

 彼は、ララアを元の世界に返すことを考える。せっかくMIA(戦闘中行方不明)になったのだから、この身軽さを活かさない手はない。

 シュウジは思いとどまるよう説得してくるが、知ったことではない。
 動機は二つある。

ララア送還計画の理由

 一つは考察①でも書いた通り、ザビ家を滅ぼした後で、ダイクン思想(人類が地球という揺り籠を出て宇宙に進出することでニュータイプになるという考え)を中心に、シャアは人類の指導者となろうとしている。
 なので「ララアが守ってくれる揺り籠」から、そもそも自分自身が出なければならないのだ。こちらは、いわば公然の動機。

 そして、いま一つの個人的な動機は、虚しさだ。
 マチュが情報サイトで閲覧したシャアの情報によると、彼の撃墜数は、正史より凄いこと(60機以上)(ソロモン戦以前の正史だと20機くらいでは?)になっている。
 だが、彼が積み上げた撃墜数の背後に「ピンチのときには電子機器に介入するララア」がいた疑惑が拭えない。
 敵モビルスーツの照準機能を狂わせる、機体の稼働時間をすぐ限界にして据えもの斬りにさせる、それこそシャアの脳裏にニュータイプ音を響かせて、敵の殺気を知らせたり、罠を回避させるなど、そんなお節介があったのではないか。
 シャアは、この特別扱いを気に入らない。

 ララアにしてみれば、気が狂うほどの繰り返しの果てに辿り着いた「ここがダメならもう全宇宙を破壊したる」くらいに追い詰められているから当然の施策だ。
 最強モビルスーツ、ガンダムを手に入れたとはいえ、ノコノコと最前線に出て来て飛んだり跳ねたりしているシャアを、死に物狂いでお守りしてきたララアの気持ちがシュウジにはよく分かる。

 しかし、シャアは自分の武勲をかえりみて、急に虚しくなったのだ。
 チートによる圧倒的な余裕勝ちの虚しさである。バランスのよかった熱中できるゲームへの熱が、ボーナスポイントを振り分けきってほぼ無敵になると急に冷め果てることがあるが、あれに似ているかもしれない。
 撃墜王は、彼の称号であり、同時に彼自身の誇りでもあったのだ。

 この、ララアの庇護から出なければ。
 そのために、シャロンの薔薇を「向こう側」へ送還する(もしくは破壊する)。

ヨダレを垂らしている連邦軍のほっぺたをサイコフレームでペタペタ叩くシャア

 シャアは行動を開始する。まず、地球にいてサイコフレームの切れ端を持っている利点を活かし、連邦軍に接触する。
 持ち歩いている金塊を資金とし、シロウズという工学者の青年の戸籍を買い、サイコフレーム(ただし中央部は残してエンディミオンユニット周辺の切れ端)をバラまく。
 サイコミュにさんざん煮え湯を飲まされてきた連邦が、これに飛びつき、最終的にサイコガンダムを作り出した。

 7話で登場したサイコガンダムが装甲を外したとき、その下から筋肉繊維に似た、薄ボンヤリひかる部材が見える。これこそ、シャアが提供したサイコフレームが低レベルながら再現できた証拠だ。

 ジオンが勝利したジークアクス世界では、正史のように連邦へサイコミュ技術は流出しない。なのに正史より二年も早くサイコガンダムが出現している。
 これは、シャアによって12年も未来のサイコミュ技術が提供されたからだ。ただ、緑白色に輝きを放つ本来のレベルにはかなり遠い。このへんは、また6~7話あたりで語ろう。

 ムラサメ研究所で低精度ながら再現できたサイコフレームの試料と、それら研究によって得られた資金と研究者ネットワーク、そしてエンディミオンユニットを持って、シャアは次の段階に移る。

ゼクノヴァを人間の手で起こすひそやかな実験

 まず、ゼクノヴァを任意に起こして、シャロンの薔薇を送還するプログラムを作る。

 時間凍結されたエルメスとは、アルファサイコミュ同士で共振を起こせば繋がるようなので、強制送還プログラムが完成すれば、これを流し込める。
 もしアルファサイコミュがなくとも、別世界から来たオーパーツであるエンディミオンユニットなら、これも繋がる。(アルファサイコミュと繋がるのでオメガサイコミュと命名した)ただし、この場合は直結とはいかないので、時間凍結を解除する必要がある。

 そして、ゼクノヴァを発生させる条件も、シュウジの話を総合すると絞れてきた。てっとり早いのは、エルメスの破壊未遂である。上位神の干渉(ゼクノヴァ)は、だいたいこのタイミングで起きる。

 そうと決まれば話は早い。どうせ飛ばされるのだから持てるだけの装備(地球重力下では使えないビットや、エンディミオンユニット積載ランチなど)を持って、赤いガンダムで海に潜る。

 海底のエルメスに、まずプログラム送信テスト。いける。ちゃんとPingが帰ってくる。アルファサイコミュ同士は、無条件で空間を超えてつながっているようだ。

 深呼吸して、次に破壊テストだ。ビームサーベルを抜いて、突っ込むシャア。思った通りにゼクノヴァが起きて、再び赤いガンダムとシャアは(こっそりシュウジが乗り込んでいたランチごと)17バンチコロニーに転移した。

これが17バンチ事件の真相だ(たぶん)(たぶんね)

 17バンチ事件は、悲劇であったとサイド6では認識されている。
 カムランさんも「ゼクノヴァの原因究明に関してはジオンに優先権があるからと言って、17バンチ事件の二の舞は……」と言及しているので、本件がゼクノヴァであるのは間違いないところだ。

 そして、そのゼクノヴァで、赤いガンダムが17バンチコロニーに突然出現したのだ。
 中立コロニーのため、ジオンによるミノフスキー粒子反応の計測はされず、これはコモリ少尉も数値的裏付けのあるゼクノヴァにはカウントできていない。

(特に向こうからこちらに出現するゼクノヴァについては、最終回の大河原ガンダム襲来時までまともなデータは取れていない)

 ソロモンで消えた赤いガンダム5年ぶりの発見。目撃情報がサイド6内の裏ルートからジオンに流れ、キシリア様から相当きつい指示「なんでもいいから行け! あとはどうにかする! (→後に外交問題化)」が飛んだと見える。慌ててジオンの観測班が、かなり強硬な姿勢でコロニーに突入したのだろう。

 シャリアもソドンでこれを追う。タイミングは、ジークアクス劇中世界0085のごく最近だ。

 ここには、シュウジも飛ばされてきている。ソロモンのゼクノヴァから五年が経過し、彼は17歳になっている。
 地球で使わなかったため、ビット群にはまだかろうじて燃料が残っているし、核融合炉は無補給でも五年やそこらで動力は切れない。

 考察①の事情があって、シュウジはシャアから赤いガンダムを奪取する。
 マチュとニャアンが「盗んだとか」と言っているのはこの事実への直感だ。

 二人は、この混乱で袂を分かつ。シャアは手元にサイコフレームの核心部、シュウジは赤いガンダムとランチを持って、二人の親子は別れることとなった。

シュウジを囮にグラナダへ移ってキシリアをたぶらかし金を出させるシャア

 キシリアが血相を変えて派兵したジオンが到着する前に、シュウジの乗った赤いガンダムは飛び去った。
 そして彼はあちこちのコロニーに現れて目撃され、コロニー外壁へのグラフィティや、クランバトル参戦によりおおよその居場所を特定される。
 最近は、イズマコロニーが拠点らしい。ソドンはその情報を頼りに、サイド6に来たのだ。

 赤いガンダムが、イイ感じに囮になってくれている間に、シャアは暗躍する。
 先述の手土産(地球で連邦に研究させた複製サイコフレーム技術、純度の高い中心部エンディミオンユニット、研究者ネットワーク、連邦からまきあげた資金、ゼクノヴァの原理とコントロール方法のノウハウ)を使って、ゼクノヴァを利用した転移兵器イオマグヌッソの建造計画をキシリアに流したのだ。レオ・レオーニ博士を隠れ蓑に、正体を明かさず。

 キシリアは、政治闘争に勝利し、ザビ家のトップに立つことを考えている。この野望に眩んだ目にとって、シャアのプランは実に魅力的に見えた。後にゼクノヴァと呼ばれるソロモンの奇跡を、キシリア自身も、ごく間近で目撃しているのだ。

 計画の陣頭指揮自体は、シャリアに執ってもらう。

いいようにシャアに操られる愛の奴隷シャリア(誤解)

 劇場先行上映版を初見した時は、男惚れしたシャリアが、消えてしまったシャアの存在をいつまでも忘れられないでいるそのジットリとした愛のとんでもねえ深さを讃えたものだが、最終回後にこうして冷静に見てみると、比較的早い段階で、シャリアはシャアの生存を確信しているのがわかる。

 生存報告は、また五大シャトー級のワインを送って本人性を担保すれば十分。このころのシャアはまだ地球にいて、比較的にボルドーの左岸とか入手はしやすい。また、金塊にモノを言わせたのだと思う。

 そして布張りの木箱にでも指示書が潜ませてあったのだろう。シャリアとしても従わざるを得ない。彼がシャアの野望を継承しているのは、確かだからだ。

 シャリアの仕事は、ジークアクスとジフレドの建造である。
 エンディミオンユニット、ルナ、アルテミスの名前からして、開発は月面都市グラナダの工廠だろう。

「アルファ殺し」と仮称して開発させた二機のサイコミュ搭載モビルスーツは、それぞれ「時間凍結を解除して送還プログラムを流し込む」使命と、「シャロンの薔薇からゼクノヴァのエネルギーを搾り取って破壊する」という使命がある。
 後者は、実際に転移兵器としてキシリアにこの巨大な設備を作らせる囮でもあった。

あったかもしれないゼクノヴァ兵器量産計画と物語を動かしたその障害

 シャロンの薔薇を使った転移兵器には、重大な問題がある。
 強力で魅力的だが、代替性がなさすぎるのだ。

 鍵となるシャロンの薔薇は、現在も行方不明中だし、見つかったとしてもいつまたプイッと消えてしまうかもしれない。見つけ出したら、構造解析して量産しておきたい。

 ところが、グラナダ時代から手を焼いたやっかいなガードシステム「時間凍結」がある。なので、まずこの解除方法が研究されてきた。

 同じオーパーツであるエンディミオンユニット(考察①の通り、シャアが持ち込んだ)を利用し、ニュータイプによってこれを起動させられれば、時間凍結への干渉は可能、という結論が出た。
 これに従って、ジークアクスを開発していく。

 しかし、このエンディミオンユニットが非常に気むずかしく、起動できるニュータイプがどこを探してもいない。
 ジークアクスを建造し、起動できるパイロットをまずは育成しよう──という話になった。そのために準備されたのが、フラナガンスクールである。

 なお、赤いガンダムとシャロンの薔薇でゼクノヴァはまあまあ起こせる。しかし不安定極まりないし、そもそも両方とも見つかっていない。
 そうこうするうちに、ジークアクスもジフレドも建造が完了した。

 赤いガンダムとシャロンの薔薇を捜索しながら、ジークアクスとエグザベ(スクール首席で、最もオメガサイコミュ起動の可能性が高い人材)を乗せて、ソドンはサイド6へ来た。

 エンディミオンユニットを、起動させうるニュータイプを探して。

 ここまでが、一年戦争からジークアクス第一話までの物語である。

余談 ドレンはどこに行ってしまったのだろう

 シャアの腹心ドレンが0079で完全に消えてしまっている。ソドンの艦長も女性に変わっていた。ドレンが消えた理由は何か。

 彼は、ソロモン落下阻止戦の折に、シャアに騙されてザビ家暗殺の片棒を担がされそうになっている。あまりにも謎の多すぎたこの作戦に、彼は疑問を持つ。そして、シャリアがシャアの存在を確信していること、シャリアがザビ家暗殺というシャアの狙いを知っていたことを、オールドタイプの、しかし戦士の直感でドレンは見抜いたのだ。

 なんとしてもシャア本人に問いただしたい。愛着ある巡洋艦を二隻、部下ともどもに無くしているのだ。ドレンはシャアの生存情報を追い、ごく近くまで迫り、そして届かずに殺されたのだと思う。

 ソドン内部には、シャアのスパイがいる。シャアが第11話で、初対面のマチュを「君は確か、ガンダムクアックスのパイロットだな?」と分かったのは、ソドンから情報が送られているからだ。
 顔や情報の出ているキャラクターかどうかは分からないが、その彼によってドレンは消され、表舞台から消えている。

余談 どうしてサイコフレームの増産が必要だったのか

 先述の通り、ゼクノヴァはコントロールが難しい。基本的には、上位神アムロが起こす奇跡現象だからだ。

 ただ、エルメスが鍵になっているのは間違いないので、これをサイコフレームで覆い、上位神から隔離することで、コントロールしやすくしているのだと思われる。

 完成したイオマグヌッソの下部構造が、緑白色のブロックで構成されている。あれこそが、高精度で復元されたサイコフレーム部材なのだろう。レオ・レオーニ博士に取り入って、シャアが作らせたものだ。

 これは外部(上位神アムロ)からの干渉を防ぐ意味と(実際にはあまり役に立っていなかったが)、イオマグヌッソ内のシャロンの薔薇のみを転移させるための障壁の役割があったと思う。
 ちゃんと包まないと、この宇宙そのものが(より広いと思われる)向こう側に落っこちてしまう可能性があるからだ。

余談 ガンダムクァックス

 作中で、シャアとシャリアだけが、ジークアクスを「ガンダムクァックス」と呼んでいる。開発初期の呼び名なのだろう。
 後に「ジークアクス」とプロジェクト全体で呼ばれるようになっても、二人が共有する名前は「ガンダムクァックス」なのだ。

 そもそも、第12話での再会がアッサリしすぎなので、本当はちょくちょく会っていたのじゃないかとすら思う。

0085ジオンの立場と重大だったハロの使命

 ジークアクス第1話で、シャアは大佐のままだ。MIA(戦闘中行方不明)という扱いなら、特進して中将になっているはずである。
 おそらくはキシリアの「生きていると信じたい気持ち」と、ジオン勝利とは言えあまりにも辛勝なため、連邦に「ソロモンは失ったが赤い彗星は連邦の白い軽キャノンが撃墜した」などと、再戦の勢いをつけたくない動機があるのだろう。

 5機でエースと呼ばれる世界で60機以上を撃墜したジオンの赤い悪魔と、それを駆る赤い彗星。それがジオンにまだ潜んでいると思うだけで、連邦は反攻作戦を足踏みして躊躇うだろう。
 シャリアも「連邦に勝利した後は、ザビ家の内紛だ」と言っていたように、キシリアが、決定的な政治的地位とパワーを獲得するまでの間、開戦を足止めするためにも、赤い彗星という抑止力には働いてもらわねばならない。

 こうした時間稼ぎで何を探しているのかと言えば、オメガサイコミュを起動させられる適格者である。

フラナガン博士はあのあと何をしてどこに居るの問題

 正史ではジオン敗北によってフラナガン機関は消滅し、フラナガン博士本人の消息も不明。その後も登場しないため死亡説が囁かれている。
 しかしジークアクス世界では生存し、健全なニュータイプパイロットを輩出する養成学校フラナガンスクールを運営しているようだ。
 スクールの目的は、ジークアクスとジフレドのサイコミュに適応するパイロット探しである。

 そもそも、フラナガン博士はサイコミュ研究の第一人者だ。正史で彼が作ったサイココミュニケーター(サイコミュ)は、ニュータイプの脳波(感応波?)を機械言語に翻訳し、増幅するシステムである。設備と教育を兼ね備えたフラナガンスクールが設立され、ジークアクスの物語がはじまる前に、「オメガサイコミュを起動できるニュータイプ探し」が始まった。

母数が足りない脳波サーベイの難航

 基準となるニュータイプ脳波は、シャアのときに採った脳波データと、明確にニュータイプだと分かるシャリアの脳波データ(サンプル採られまくったろうなあ)しかない。
 他にニュータイプといっても、たまにシャリアが「この子はなんとなくセンスがあると思う」というあやふやな直感で引き抜いてくるコモリ少尉(後にすごく覚醒した)くらいしかおらず、結局はほとんどシャアとシャリアの脳波から採られた共通の波長が「ニュータイプ脳波の基準」とされたのだろう。

 研究によって「オメガサイコミュはニュータイプの脳波に反応する」ところまでは分かっている。シャリアもコモリも試したがダメだったので(合ってたら乗ってる)、広くジオンのパイロット全員が調べられた。

 しかし適合者がおらず、ジオン国民全員が調べられた。きっとキシリアのニュータイプ能力は、この頃から見つかっていたと思う。

 国力は連邦の三十分の一と言われるジオンは、そもそも人口自体がかなり少ない。候補者は見つかったが見込みが薄いため、次いで難民にも脳波サーベイが行われた。
 ピックアップされたニュータイプ候補生が集められ、そうして始まったのがフラナガンスクールであったと思われる。

ハロの仕事

 ところが、そうして集められたフラナガンスクールのトップエリート、エグザベオリベであっても、ジークアクスのオメガサイコミュは起動しない。
 キシリアはこの計画に完全に本気になっているので、軍人、難民以外の場所からも適合者を探そうと考える。

 悩んだ末、市販のハロに「ニュータイプの脳波を測定し、よさそうな民間人がいたら、最寄りのサイコミュ関連施設ないし装置に誘導する」というシステムが搭載されバラまかれたのだ。おそらく、キシリアの特命である。

 民間人への調査ももちろん行われたが、基本的にジオンは嫌われているので(サイド6はお仲間だろ、と建前を全面的に信じてる素直なエグザベ君の言とは違い、後の章で記述するが、それなりに嫌われている)、市販のハロに装置を隠して、野に放つしかなかったのだ。

 ミノフスキー粒子により通信環境が保証されないので、AI独自の判断でハロは近くの人間の脳波を測定し、イイ感じのニュータイプがいれば、多少強引にでもサイコミュに繋ごうとする。(たまに人格が乗り移ったような挙動をするのは、内部にエンディミオンユニットと親和性の高い機構が組み込まれているからでは)(あと正史ガンダムでも「アムロ、脳波レベル、オチテル」など、脳波が測れることは示されているね)

「考えすぎ」というご心配も分かるが、そもそもこの考察は全部こういう「考えすぎ」でたどりついた話の連続である。

 実際、このハロはマチュという適合者を、ジークアクスというサイコミュ端末の近くまで連れて来て物語を動かした実績がある。

 さらに、ハロがシャロンの薔薇とジークアクスのデータを持っているのは明白だ。機密情報のかたまりである機体について、潜水能力や耐久深度など、度を超えて詳細な情報を持っている。
 少なくとも、ニュータイプ発見機として対象者をサイコミュに繋いだ後は、許可が出て情報が解放されているのだろう。

 また、ハロはエルメスを見て「薔薇」と言っていた。コモリが「チューリップ」と言っていたように、現地でエルメスの外観を見た場合「薔薇」という比喩は、いかなAIといえども出てこない。
 つまり、ハロは事前にエルメスの形状を「シャロンの薔薇」と認識するようプリセットされているのだ。おそらくキシリア派がグラナダで、ジークアクス研究中に並行してハロ(の内部機能)を開発したためだろう。

 ジークアクスのハロは、ニュータイプ発見機として、特注または改造されて、民間居住区にバラまかれている。
 マチュもハロを奇異に思わず驚いていなかったし、コンチもペットロボットだとエグザベに認識されていたので、この世界では普通にハロは流通しているのだろう。
 目的は、先述のようにジークアクスを起動できるニュータイプを発見すること。

それを、アンキーという女社長が持っている。

アンキーとニュータイプの接点

 アンキーは元ジオンの人間で、フラナガン機関などにかすかに繋がりがある。フラナガンのあるパルダの地名がサラッと出てくる所や、素人には尻込みしそうなサイコミュモビルスーツを二台も抱えてクランバトルをできるのは、サイコミュやニュータイプに彼女自身が詳しいからだ。おそらくかつての関係者なのだろう。

 いまだにつながりはあり、彼女が所有していたハロもまた、フラナガン機関が製作して渡したニュータイプ発見機だと予想される。(このあたりは次章「マチュの青春」で語ろう)

 マチュというパイロットを見つけ出したハロは、そのまま彼女に付いていってしまったが、最終回でアンキーは新しくハロを所有していた。
 これも「またニュータイプを見つけてひと稼ぎするか」という考えだろう。マチュとシュウジが、よっぽど稼いだのだと思われる。

 ところで、第9話にて、このハロがコクピットに置き去りにされ娼館に持ち込まれなかったのは、娼館ララアと出会ったら、その凄まじいニュータイプ能力を感知して猛烈なアタックをするため演出的に置き去りにされたのだと思う。

 なお、その場合でも、エンディミオンユニットに鋳込まれているアムロの意思は、ララアを戦場に連れ出したくないから、ハロが強引に連れてきてララアを座らせても、起動はしないかもしれない。
 このアムロは、ララアを殺さないパイロットの登場を、ユニットの中でずっと待っているからだ。

コンチは何だったのか問題

「コンニチハ」の短縮形でコンチ。「ハロー」を縮めたハロと同じ意味のこのペットロボットは、0093頃の未来でシュウジが作り、持ってきたものだと思う。

 なので、時代的には、ハロから13年分は進んだ技術が使われているはずだ。
 餃子を作れるマニピュレータはもちろんだが、パラメトリックスピーカー技術が、コンチには導入されていると思う。二つの音波を別々のスピーカーから発し、相手の耳介付近で合成して音声にする秘匿技術だ。このため他の人には意味不明な電子音に聞こえている。(ニャアンたちがコンチの機械音声を翻訳できているとも思えないので、本考察では、彼女らの耳ちかくでは言語として音声が聞こえている説をとる)(ガンダムとシュウジが会話するシーンをコンチが見ている演出があるので、アルファサイコミュ(を通じた高次元ララア)も、シュウジとパラメトリックスピーカーで会話をしているのかもしれない)

 コンチのカラーが、逆シャアでシャア総帥が来ていたノーマルスーツと似た配色なのも、0093由来のほのめかしに見える。ララアの服の色かもしれないが。(安彦さんの描くララア服は、肌色との混同をさけるためか、襟の縁取りが赤になってるね)

 シュウジの「地球に行きたい」という意志に呼応して、コンチはすぐさまスペースグライダーの価格表をプリントアウトした。ハロも、マチュの思考を読んだことがある。
 先述のとおり、ハロはニュータイプを探すため民間にばらまかれた「ニュータイプ脳波測定機能」があって、この機能はそれの応用だろう。
 コンチがシュウジの体温を測ったときも、数値以外にメンタル表現のアイコンがあった。シュウジの脳波を測定して感情を分析する能力をあたりまえに持っている。

 ハロとコンチには、明確に似た機能がある。
 完全に妄想だが、最終回後もずっとマチュが持っていたハロが、向こう側へ行ってしまったシュウジを追う過程でいつしか壊れ、その部品を再利用して、未来のシュウジが作ったのがコンチという流れだと、両機の機能が似通っている点にも納得がいく。この説が妥当かどうかは、14-14あたりに予定している最終回解説で確かめてもらいたい。

 ただ、これが本当なら、マチュは最終回の海の向こうで、シュウジに会えたことになる。この四角く愛らしいペットロボットが、物語のハッピーエンドの揺るぎない証拠となっていてくれたら嬉しい。



 次回から、ようやくジークアクス第1話に入る。
 一部からは、クソガキ、狂犬、犯罪者などと言われていたマチュだが、本考察を書き進めていくうちに、彼女が何を考え、どこを歩いてきたかがわかって、しみじみと愛しく思えるようになった。
 この少女が、どれほど豊かな心情を通過してきたか。そこに確かにあった、彼女の青春を追っていこう。


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