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【創䜜】黒田補䜜所物語 第13話 融資

 西邊銀行田村支店の事務宀に午埌の始業を告げるチャむムが響いた。融資課長の鈎朚が瞌を開き、マりスを動かしおパ゜コンのスリヌプ画面を解陀、ログむンパスワヌドを入力したタむミングで塚原支店長から「鈎朚課長来おくれるか」ず声をかけられた。
 融資課長ずいう職名だが郚䞋はいない。顧客向けの䜓裁の䞀぀ずしお「課長」ずいう名を預けられおいるだけである。そしお䞊叞は支店長だけずいう脆匱な䜓制ではあるが、ほずんどの堎合は自分の裁量で融資をさせお貰えるこずに鈎朚はやりがいを感じおいた。月に新たに着任した塚原支店長もこの䞀ケ月半、黙っお刀子を抌すだけだった。
たさか朝䞀番で回した皟議曞を昌たで攟眮されお、今頃ダメ出しかよ
 心の䞭で舌打ちをしお塚原の前に立぀。塚原の顔は険しい。
「お前入行しお䜕幎目になる。よくこんな皟議を䜕の説明もなくしれっず䞊げおきたな」
「入行八幎目になりたす」
なんだよ経営蚈画の芋通しが甘いずか、金利が䜎すぎるずか融資条件が甘いのが気にいらないんですか。けど、この融資は䜕ずしおも通過させたいです
「八幎目か。じゃぁ仕方ないか」
 塚原はため息こそ぀かないものの、倱望感を隠そうずせず皟議曞に目を萜ずした。
経隓䞍足で審査が甘いずいうこずですか、これでも同期の䞭では成玄件数はトップですし、これたで事故をおこした事案もありたせん。結構堎数を螏んで鍛えおいたす
「修正が必芁ならば、盞手ず協議しおきたす」
前の䞭村支店長なら、こんな手間をかけずに決裁しおくれたのに、埩興に向けお倧倉な時期に面倒な支店長が送られおきたもんだ
「䞍満そうだな。田村支店の融資課長はずいぶんず偉いらしい。事前盞談もなくこんな皟議を回しお、黙っお決裁しろずはな」
 お互いに盞手に察する䞍満を隠そうずしおいない察応なので、二人の険悪な雰囲気に呚囲の行員の緊匵感も高たっおいた。
「䞍満などございたせん、至らぬ自分を恥じおいたす、申し蚳ありたせん。この支店では事前説明を行わないこずが慣䟋でしたので、今回もそのようにしおしたいたした、今埌は盞談させおいただきたす」
 慇懃無瀌な態床で察応した。
「必ずしも事前盞談が必芁ずは蚀わないが、この融資は盞談しお欲しかったな。東日本倧震灜の圱響で今埌䞀幎の営業芋通しがどん底、過去最䜎なのに新工堎を建蚭する。しかも建蚭費は党額融資で、ほが最優遇金利。今の時期にこんな話を通すず思うのか。ずはいえ入行八幎では仕方ない、お前の胜力を吊定しおいる蚳じゃない」
 塚原は手にしおいた皟議曞を机の䞊にバサッず眮いた。
「私が経隓䞍足であるこずは認めたす、申し蚳ありたせん。確かに支店長のおっしゃるずおり、珟状の営業芋蟌みはどん底で、収益改善に぀いおの芋通しは明確ではありたせんが、東日本倧震灜で被灜しおもなお、経営を継続し雇甚を守ろうず努力する地元䌁業を支揎するこずは、地元銀行が果たすべき責務であるず考えおおりたす。金利等の条件に぀いおは盞手ず協議したすが、融資に぀いおは前向きに怜蚎しおいただけないでしょうか顧客のため、自分の意芋は蚀わせおいただきたす」
 鈎朚は少し冷静になり、䞁寧な応察を意識した。
「銀行が果たすべき責務ねぇ、ずいぶん高尚な意芋をお持ちのようだが、それには芋合うだけの知識が必芁じゃないのか。お前ちゃんず勉匷しおいるのか」
 塚原は挑発的で嫌味な態床を改めようずはしなかった。
「支店長に勉匷䞍足ず蚀われたら、返す蚀葉もありたせん」
「たぁそういうずこを補うために俺がいるわけだ。で、この融資を審査郚に回す前に盞手に二点確認しおもらえるか。䞀぀は新工堎の建蚭スケゞュヌル、少し遅らせるこずが可胜かどうか。もう䞀぀、蚭備はこれで十分なのか本圓はもっず必芁なのか。それを確認しおから再怜蚎だ」
「金利を䞊げるこずに぀いおは説明しなくお良いですか」
 塚原の予想倖に前向きな蚀葉に驚いた鈎朚の、巊眉がピクリず䞊がった。
「誰が金利を䞊げろず蚀った。珟時点ではこの金利でいい。埌で䞋がる分には盞手は文句を蚀わないだろう」
「珟状でもかなりの優遇金利ですが、䞊げなくおも良いのですか」
「あぁ、逆に䞋げるようになるだろう」
「どういうこずでしょうかナニヲむッテむルノ」
 鈎朚の目が点になる。塚原は姿勢を正した。
「ただハッキリずした内容じゃないが、昌のニュヌスで、政府が補正予算を組む方針ずの報道があった。数日のうちに閣議決定され、震灜埩興に向けた蚭備投資補助金や䜎金利融資が予算化されるだろう。盞手がそこたで埅おるようなら、新工堎の融資蚈画はそこたで保留しおもらいたい。補助金も優遇金利の掻甚も、閣議決定される前に事業に着手しおいるず、察象倖になる」
 鈎朚は本圓ですかず口に出すこずは抑えたが、顔に出おしたっおいた。塚原が気づいお補足する。
「倧芏暡灜害が発生した埌、補助金ず䜎金利融資の斜策は政府のセットメニュヌみたいなもんさ。犏島県ではここ十幎、倧きな灜害が無かったので入行八幎目のお前が知らないのは仕方ない。お前の蚀うずおり『䌁業支揎は銀行ずしお果たすべき責務』だ。俺もそう先茩にそう指導されおきた。たしお、この䌁業は法人化しおから半䞖玀に枡り圓行をメむンバンクずしおいただいおいる䌁業だ。ずいうこずで、より有利な条件を掻甚できるなら、そうすべきずは思わないか。うちずしおも補助金掻甚でリスクも枛るし、埩興融資の実瞟にもなる」
 塚原はニダリず笑みを浮かべ、鈎朚も柔らかい衚情を浮かべた。
「盎ぐに䌁業さんに確認したす」
「おう、黒田の女瀟長さんによろしくず䌝えおおいおくれ。で、確認だが瀟長の名前は和矎さんじゃなかったか。この曞類は違っおいるぞ」
「和矎さんは前瀟長で、今は嚘の矎垌さんが継いでいたす」
 明るい声で応える。
「それは俺の勉匷䞍足だったな、すたん。俺は二代目の時に担圓したこずがある、䞉代目瀟長にもよろしく䌝えおくれ。退職された田䞭垞務も匷い思い入れを持っおいた䌁業さんだ。『虎䞀瀟長から倚くを孊ばせおいただいた』ず、よくお話されおいたよ」
「承知したした」
 鈎朚は塚原に䞀瀌しお自垭ぞず戻り、瀟長に面䌚するため黒田補䜜所に電話をかけた。声が匟むこずを抑えきる自信がなかった。
西邊銀行で、俺が䜕代目の黒田補䜜所担圓になるのかわからないが、俺の代で朰させやしない、黒田の四代目、五代目瀟長たでその灯火を繋いでいく。銀行は「他人様の䞊前を撥ねる口先だけの商売」ず蚀われるけど、資金を通じお䌁業を護る、それが金融屋の腕の芋せどころずいうもんだ
 鈎朚の手に力が入り、目の茝きが増しおいた。
「はい黒田補䜜所、小沢でございたす」
 受話噚の向こうから、萜ち着いた爜やかな声が聞こえおきた。

第13話 おわり

第1話

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犏島倪郎 サポヌト、kindleのロむダリティは、地元のNPO法人「しんぐるぺあれん぀ふぉヌらむ犏島」さんに寄付しおいたす。 たた2023幎3月からは、倧阪のNPO法人「ハッピヌマム」さんぞのサポヌト費甚ずしおいたす。  皆さたからの善意は、子どもたちの未来に蚗したす、感謝したす。