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勝利至上主義への回帰 26/27レアル・マドリー展望

さて、今年も開幕を待つ26/27シーズン。
初戦はラ・リーガ第2節RCDEスタジアムで行われるvsエスパニョール戦だ。

昨シーズンアロンソと歩むことを決めたマドリーだったが約7ヶ月で終焉し、その後はファブリカの指揮をとっていたアルベロアへ。
そのアルベロアを持ってしても結果は出ず、無冠に終わったマドリーは原点回帰しモウリーニョへとバトンを戻した。

こんな凸凹マドリーが今季どんな化学反応を見せてくれるのか楽しみである。

この記事は、なるべく長年のマドリディスタも、W杯をきっかけにサッカーを見始めて選手を辿るうちにマドリーに辿り着いた人、別のクラブを応援していて隣のチームがどうなっているのかを知りたい人、全員に対してなるべく同じ入口から読めるように書いたつもりではある。

26/27のマドリーがどんなチームで、何を賭けているシーズンなのか、それでは一緒に占っていこう。


25/26シーズンのおさらい

新しいシーズンを占う前に、まず終わったばかりの1年を振り返っておきたい。

25/26のマドリーは、開幕時に描いていた青写真とはまるで違う場所に着地したチーム。というか、天国から一転して地に落ちたといってもいいだろう。

結果的に監督が二度変わり無冠に終わり、そして夏に大きな決断が下されることとなったシーズンだ。

この1年に何が起きたのかを整理すると、これから始まる第二次モウリーニョ政権で期待されることは自ずと見えてくるはずである。

アロンソ体制の理想と7ヶ月での終焉

シャビ・アロンソが監督としてやってきたとき、多くのマドリディスタが「新しい時代」を予感したと思う。

レバークーゼンでの無敗優勝、これまでの監督と毛色の違うポジショナルな思想、そしてレジェンドとして去ったベルナベウへのカムバックなど、センセーショナルな要素が散りばめられていた。

実績と物語の両方を持つレジェンドが、いよいよマドリーの舵を握った。

彼が持ち込んだのは、ボール保持とハイプレスを軸にした『流動性』×『非対称性』のスタイル。
ボールと相手の位置を見ながらそのつど立ち位置を作り、片側に6〜7人を集めて「密集側」で崩し、防がれれば逆サイドの広大なスペースへ一気に振る。
左右対称で構える相手守備に、必ず歪みを生む仕掛けだった。

しかし、思想は結果とすれ違い始めた。
第7節アトレティコ戦の敗戦を除いて全勝で走っていたが、10月のクラシコの1シーンで全てが変わった。(ちなみに試合は2−1で勝ちました)

ビデオセッションの長さへの不満複数の主力との衝突などを含むロッカールームの綻びが報じられ、まだ夏に描いた青写真の輪郭が消えないうちに、就任わずか7ヶ月でクラブはアロンソを切った。

美学と揺るぎない自身のスタイルを持ち込もうとした1年目の実験は、志半ばで終わった。

アルベロア体制の緊急登板と繋いだ日々

アロンソの後を受けたのは、ファブリカで下部組織の指揮を執っていたアルバロ・アルベロアだった。
かつてマドリーの右サイドバックとして数々のタイトルを掴んだ元選手であり、クラブの色を誰よりも知る人物である。

トップチームでの監督経験はまだ浅く、シーズン途中での緊急登板は本人にとっても想定外だったはずだ。

彼に求められたのは、革命ではなく主力選手との修復だった。
アロンソ体制で瓦解した重鎮のフラストレーションを鎮め、選手たちが慣れ親しんだ形に戻し、シーズンを最後まで走り切らせる。

その起用においてもポジティブな側面としてはファブリカ産の若手を積極的に起用したことだったが、その裏返しでスペイン人主力選手との間に亀裂を残したのは、結果的に大きな誤算となった。

序盤の会見ではアルベロアらしいマドリディスモと心中する発言が多く、彼自身の好感度はよかったが、上述した瀕死一歩手前の状態。

すでに主要タイトルの争いからは離され、残る戦線に必死にしがみつきながらピリピリとした記者会見に臨む展開が見られた。
加えて後任がモウリーニョ召集へ傾いていたため、次第にアルベロアが会見でも無敵の人になっていった。

派手な結果は掴めずに、アルベロアという人間の監督キャリアにも傷をつけてしまったのが心残りだ。

2年連続無冠という結末

シーズンの結末を一言でいえば、無冠。
ラ・リーガ、コパ・デル・レイ、そしてチャンピオンズリーグといったすべてのコンペティションでトロフィーに手が届かないままシーズンを終えた

そしてこの結末が傷に染みるのは、これが24/25シーズンから続く「2年連続」だからだ。

マドリーというクラブは、無冠のシーズンをそうそう受け入れられる場所ではない。なんなら近年は2年に1回UCLのトロフィーを掲げていたから尚更だ。感覚がバグっちゃったマドリディスタも多いことだろう。

もちろん、無冠のシーズンにも収穫はあった。
チームの平均年齢は若く、次の時代を担う顔ぶれが見えてきたことは確かだ。
だがそれは、来季以降のマドリーが手にする「未来」の話であって、25/26というシーズンそのものを慰める材料にはならない。

この2年間で失いかけた「勝つこと優先する」を、クラブは夏に真正面から取り戻しにいくことになる。

クラブの方針転換とモウリーニョへの道筋

25/26シーズンの終わりを迎えた時点で、クラブは根本的な方針転換を迫られていた。アロンソに託した革命という実験は7ヶ月で終わり、アルベロアという緊急登板でシーズンは辛うじて閉じた。

2年連続無冠という現実。次に必要なのは、思想でも実験でも若手育成でもない、勝つことを限りなく約束してくれる監督だ。

そこで白羽の矢が立ったのが、ジョゼ・モウリーニョ
第一次政権(2010〜2013)以来、13年ぶりのベルナベウ復帰である。

バルセロナ全盛期を相手に「勝ちを取りにいく」ことを徹底し、ラ・リーガとコパ・デル・レイを掴んだSpecial Oneが、成熟した監督として戻ってくる。

夏の間に、その方針転換はすでに動き始めている。
W杯が始まる前に移籍市場を賑やかにさせ、スカッドを着々と一新していく。

第二次モウリーニョ政権とは何なのか。その中身は、次のセクションで詳しく見ていきたい。

第二次モウリーニョ政権の展望

ここからが本題である。26/27のマドリーが何を目指し、何を試されるチームなのか。
その中身は結局、モウリーニョという名前が意味するものと切り離せない。

第一次政権(2010〜2013)の記憶を軽く辿ったうえで、現時点で見えている輪郭を追いかけていきたい。

「構想外」通告に浮かぶ起用哲学、夏の補強と放出が示す方向、そしてこのスクワッドで彼が具体的に何をしようとしているのか。

なお、なぜ今マドリーがモウリーニョを呼び戻したのか、それが欧州の潮流に対してどんな回答なのかについては、軽く25/26シーズン総括記事にてすでに記載済み。

この節はそちらを前提として、あくまで26/27に向けた実務的な展望に集中する。

第一次モウリーニョ政権の記憶

2010年にモウリーニョがマドリーの監督としてやってきたとき、バルセロナはペップ・グアルディオラのもとで欧州のサッカーそのものを書き換えていた。

ティキ・タカに完敗し続けたマドリーが必要としたのは、対等以上に張り合える組織。インテルで当時最強だったバルセロナを止めてCLを掴んだばかりのモウリーニョは、まさにそのために呼ばれた。

そして彼が就任してからの3年間で残したものは、決して小さくない。

11/12シーズンには勝点100を叩き出してラ・リーガを制覇。バルサの連覇の流れを止め、彼らの前でトロフィーを掲げた。しかも当時の得点に関与する選手のスタッツなんてえげつなかった。

前年の10/11にはコパ・デル・レイもクラシコの決勝で奪取し、その流れそのものを一時的にひっくり返してみせた。

しかしそれ以上に、記憶に残っているのは当時の異質な空気の方かもしれない。
クラシコがピッチ内外で常に勃発し、記者会見ではトラッシュトークの応酬。
「Special One」を自称し、当時はそれを裏付ける結果とキャラクターの両方を持っていたこと。

まぁ何はともあれ、酸いも甘いもすべてを含めて、モウリーニョが率いた3年間だったのかなと。

そして、今年2026年の夏に呼び戻されたということは、少なくとも彼の圧倒的なカリスマ性を期待しているとクラブが判断したということでもある。

26/27の移籍市場IN/OUT

【IN】
✅ ジョゼ・モウリーニョ監督(←SL Benfica)
✅ ベルナルド・シルバ(←Manchester City FC)
✅ イブラヒム・コナテ(←Liverpool FC)
✅ マルク・ククレジャ(←Chelsea FC)
✅ ドゥン・フリース(←Inter Milan)
✅ カルロス・エスピ(←Levante UD)
✅ ヤン・ディオマンデ(←RB Leipzig)

✅ エンドリッキ(←Olympique Lyonnais)※ローンバック

【OUT】
✅ シャビ・アロンソ監督(→Chelsea FC)※シーズン途中契約解除
✅ アルバロ・アルベロア監督(→Fulham FC)

✅ ダニ・カルバハル(→契約満了)
✅ ダビド・アラバ(→契約満了)
✅ ダニ・セバージョス(→契約満了)

✅ ゴンサロ・ガルシア(→Fulham FC)
✅ フラン・ガルシア(→Real Betis)
✅ ニコ・パス(→Como 1907)
✅ マリオ・マルティン(→Getafe CF)

✅ セサール・パラシオス(→Fulham FC)※ファブリカ登録
✅ フラン・ゴンザレス(→Sevilla FC)※ファブリカ登録
✅ ビクトル・バルデペニャス(→ACF Fiorentina)※ファブリカ登録

✅ フランコ・マスタントゥオーノ(→ACF Fiorentina ローン)

このリストを土台に、次項からチームの向かう先を読み解いていきたい。

補強・放出リストから読むチームの向かう先

このインアウトを眺めてまず気づくのは、加入した選手のほとんどが即戦力である、という事実だ。
ベルナルド・シルバ、コナテ、ククレジャ、フリースいずれも欧州トップレベルで実績を積んだ選手ばかりで、育成に時間をかけるプロジェクト型の獲得=若手枠への投資はライプツヒから獲得したディオマンデのみ。エスピに関しては、ストライカーポジションに大型の選手を配置したいという明確なオプションなので投資枠とは若干違うのだろう。
「今の勝利に貢献できるか」で判断するモウリーニョ像と、この夏の補強リストは完全に一致していると見える。

特にディフェンスラインの再構築に明確な意思が見える
CBコナテ、LSBククレジャ、RSBドゥンフリースなどディフェンスラインの各ポジションに、経験豊富な駒を1人ずつ積み上げた。
カルバハル契約満了で空いた右サイドを補填し、CBとLSBもローテーションで回せる厚みを確保。
「まずは守備から」というモウリーニョのDNAが、夏の段階から陣容に染み込ませてある。

そしてもう一つの目玉が、ベルナルド・シルバの獲得だ。
豊富なスタミナかつ適正なポジショニング、テンポを作れる30代の司令塔。クロースとモドリッチが去った2シーズンからずっと空いていた「試合をコントロールする選手」に、ようやく答えが用意された。
完全な後継とは言えないかもしれないが、少なくともラストピースはこれで揃っていると言える。
(これ以上に獲得を個人的に熱望したのが同じくマンチェスターシティ所属のロドリであるのだが、お隣のライバルクラブへの移籍が決まった)

放出側のメッセージも明確。
カルバハル・アラバ契約満了で3連覇組の残滓が完全に消え、セバージョスの退団でアロンソ及びアルベロア体制で立ち位置を失っていた選手も整理された。
マスタントゥオーノのフィオレンティーナへのローンは、モウリーニョから明確に発された『経験を積む必要がある』のシグナルとして受け止めている。

つまりこの夏、マドリーは勝つために最短ルートを取れるチームへと確実に姿を変えてきた。
残る問いは、この駒立てで実際にどこまで戦えるのか。次項で、そのスカッドを見つめていきたい。

このスカッドで何が変わり、何が試されるのか

これまでの項で見てきた通り、モウリーニョ復帰による夏の補強・放出は、マドリーの重心を大きくシフトさせていることは明確だ。
もちろんモウリーニョだけでは語ることのできない無冠続きやこれから起こりえる選挙にも要因はあるだろう。
ここでは実際にピッチ上で何が変わり、逆に何が試されるのかを、開幕前の視点で予想しておきたい。

まず変わるのは、チームスタイルだ。
アロンソ的な美学的保持と流動性はモウリーニョの手元では続かず、代わりに戻ってくるのは構造化されたチーム、堅い守備ブロック、そしてきれいに崩すことにこだわらないゴールへの最速ルート。
元々のトランジション思考のチームへと回帰する形が予想される上に、セットプレーの比重も明らかに上がるだろう。

中盤に関しては正直熾烈なポジション争いが待っている。
ベルナルド・シルバの獲得でその分、ギュレル、バルベルデ、カマヴィンガ・チュアメニといった中盤陣は、ゲームメイクを一手に引き受ける必要がなくなり、より前を向いてプレーできるようになる。
彼らにとっては朗報であると同時に、中盤の2〜3枠をどのようにして形成していくのかは開幕してからのお楽しみだ。

一方で試されるのは、エンバペ・ヴィニシウス・ベリンガムのビッグ3だ。アロンソ体制でも自由を得ていた3人が、モウリーニョの下ではチームのためのプレーをより強く求められることとなるだろう。
個人戦術の使い所と守備への貢献度は間違いなく厳しくなる。彼らがこの規律を受け入れつつ個の輝きを維持できるかが、シーズンの成否を大きく分けるといっても過言ではない。

もう一つの試練が、ロッカールームだ。
マネジメントが重要と言われるマドリーにおいて、アロンソやアルベロア体制で瓦解した一部選手とのフラストレーションをどう管理するのか
モウリーニョは再接続ではなく再統率で応える人物と思っているが、それが今のマドリーで機能するかは未知数。
加えて、モウリーニョが丸くなったとは言え、基本揉めた選手に対してドライな部分は変わらない。シーズンを通して干される選手が出てきても不思議ではない。
第一次政権期にはペペ・ラモス・クリスティアーノといった強い個性を束ねきった彼だが、同じ手が今のスカッドで通じるかどうかは、開幕してみないと見えてこない。

つまり26/27のマドリーは、変わる部分と試される部分が、モウリーニョという名前を軸に交差する年になる。
そしてその新しいチームを迎えるロッカールームには、もう黄金期の記憶を身体で覚えている選手はいない。
次のセクションで、その時代の切り替わりについて考えてみたい。

3連覇組を見送って

先述した項の終わりで触れた黄金期の記憶を身体で覚えている選手はもうロッカールームにいないというのも今季もマドリーに大いに関連する。

2016〜2018年のUCL 3連覇を積み上げた選手たちであるクリスティアーノ、ラモス、カゼミーロ、マルセロ、ベイル、ベンゼマ、ナチョ、クロース、モドリッチ、そしてカルバハル。

UEFA Champions League 11回目優勝
UEFA Champions League 12回目優勝
UEFA Champions League 13回目優勝

彼らには、あの3年間のマドリーが刻まれていた。ピッチ上のプレーだけでなく、勝利への貪欲さ、ロッカールームの規律、大舞台での立ち居振る舞いなど言葉にしにくいすべてを、彼らは知っていた。
その最後のピースが、この夏カルバハル契約満了で去った。

3連覇組は完全にロッカールームを後にした。このセクションでは、その時代の移り変わりを、3つの角度から見つめていきたい。

カルバハル退団で完結した、ひとつの時代

黄金期を支えたメンバーの中で、最後までベルナベウに残っていたのがダニ・カルバハルだった。

2012年にレバークーゼンへと武者修行に行き、翌年からベルナベウへと復帰すると右サイドバックの定位置を獲得。以降13年間、右サイドを走り続けた。
3連覇組の中でも主役のタイプで語られる選手ではなかったかもしれないが、彼の活躍なしではこの時代もこの先の時代でも優勝は成し得なかった事実だ。それくらい彼の存在は大きかった。

そんな彼のマドリー人生の最終章は、決して穏やかなものではなかった。2024年にACLを断裂し、そこからは怪我続きのシーズン。
それでも復帰を果たし、25/26シーズンの終盤に再びピッチに立った。
そして2026年夏、契約満了でクラブを去った。レアル・マドリーは拍手を受けてピッチを去ることが難しいクラブだが、彼を大歓声のベルナベウで送り出せたのは彼に対する最大の敬意の表れだ。

これで3連覇組は完全にロッカールームから姿を消した。英雄であるクリスティアーノから始まった退団劇はカルバハルを最後についに完結した。

今でも彼らのプレーを鮮明に覚えている。
とにかくマドリディスタとしてその時代の選手を画面を通して見られたのは、私の人生の中で極上の喜びだった。
そしてマドリーというクラブは今、あの3年間を経験としてではなく歴史として受け継ぐ側になった。次に走り出す物語は、彼らのものではない。

NEO銀河系のいく末は

3連覇組が完全にロッカールームから消えたと書いたが、残された選手達に何もないのかというと、それは違うだろう。
エンバペ、ヴィニシウス、ベリンガム、バルベルデ、クルトワを筆頭とする選手達は、すでにそれぞれ十分な実績と勝利体験を積み上げてきた
CLタイトルもW杯決勝の舞台も知っている。
個々のネームバリューにおいては、当時の銀河系軍団と比べても決して見劣りしないと思っている。

しかしまだ、彼らには○○時代のマドリーというラベルがないようにも感じる。
過去を遡れば銀河系=ギャラクティコは常に、後から振り返ってあの頃のと呼びたくなる、チームとしての色があった。
今のロッカールームには、その色がまだ立ち上がっていない。むしろ2年連続無冠は、彼らの世代で起きた事実である。

かつての銀河系軍団も、豪華なネームバリューをタイトルに変換できずに苦しんだ時期があった。
個性に依存することがチームとしての強さに直結しない。それはマドリーというクラブが何度も経験してきた不治の病でもある。多分これからもそうなるだろうけど。
そして世界一外野がうるさいこのクラブでは、名前だけでは決して満たされない。26/27シーズンは、彼らがその古い病を越えて、NEO銀河系を本物の時代として結晶させられるかを問われる年だ。

そんな役者たちが担うべき次の10年の顔ぶれを、次項で改めて眺めてみたい。

次の10年を担う世代への引き継ぎ

NEO銀河系の5人だけでは、次の10年は作れない。
彼らを支え、押し上げ、そしていずれ主役の座を受け継いでいく若い世代が、必ずどこかで芽を出していなければならない。

その芽は、実は今のロッカールームにすでに複数存在している。カマヴィンガ、チュアメニ、ロドリゴなど20代前半で既に主力の一員として何度もタイトルを掴んできた選手たち。
ミリトンは長期離脱を経験しながらもCBの中軸として戻ってきた。
昨シーズンに自身の居場所を掴んだギュレル。さらに今夏戻ってきたエンドリック、加入したハウセンやディオマンデといった若手も、この輪郭の中にいるのだ。

彼らに共通しているのは、すでにトップレベルを経験している若手だという事実。
10代・20代前半のうちからCLの舞台に立ち、W杯を戦い、修羅場をくぐってきたこの蓄積が、次の10年への確かな土台になる。

もちろん、蓄積がそのまま時代に変わるわけではない。
ここでもマドリーというクラブが繰り返し直面してきた問いである『個の集合をチームの色に変換できるか』が突きつけられる。

26/27シーズンは、その噛み合わせが試される年だ。マドリーというクラブは、いま時代の切り替わりのど真ん中にいる。

ポジション別選手紹介

ここまでで、モウリーニョ体制の輪郭、この夏の移籍市場、そして時代の切り替わりについて書いてきた。ここでは、26/27シーズンをピッチで戦う選手たちを簡単に紹介していく。

GK

  • #1 Thibaut Courtois

世界最高のゴールキーパーと呼ぶことに、もはや誰も疑問を持たないだろう。
2mの身長ながら飛び抜けた反射神経と圧倒的なエアボールの回収が見どころ。ボールを弾く場所もしっかりしており、『ゴールを守る』ことに長けたGKである。
懸念点としては、若干負傷回数が増えてきたかなといった程度。
チーム内で一番安定した結果を出している選手の1人。

  • #13 Andriy Lunin

クルトワが健康である限り、出場機会は極めて限られるが彼の離脱期間中に何度もマドリーのゴールを守り、2nd GKでは収まりきらない実力を証明したウクライナ人。至近距離からのシュートブロックが得意かつ、モダンなGKとして足元のスキルやフィード能力も搭載。ただ、セットプレー時の判断にはまだ改善が必要。妻がうるさいことで有名。

RSB

  • #12 Trent Alexander-Arnold

昨シーズンにフリー移籍でリバプールから加入した選手で、マドリーでの愛称は『トレント』。
ピンポイントのクロスや中長距離のフィードが得意な稀有なSB。一方で対人守備やスペースカバーといった対応は課題として指摘されることが多く、加入初年度のシーズンは繰り返される怪我にも悩んだ。
2年目となる今シーズン、彼が本領を発揮できるかが問われる。

  • #24 Denzel Dumfries (New)

今夏インテル・ミラノから加入したオランダ人。
189cmの恵まれたフィジカルを武器に、右サイドを縦にえぐる推進力、そしてクロスやセットプレーでの高さが最大の売り。
守備面ではポジショニングの粗さが時に指摘されるものの、戦えるサイドバックとしてカルバハル退団後の穴を埋める即戦力として大きな期待がかかる。

CB

  • #2 Raúl Asencio

空中戦や球際で身体を張れるアグレッシブなプレースタイルで、FW顔負けのスピードはスペイン人では珍しい。
まだ若く、経験値を積み重ねながらCB陣の主力候補として存在感を増していく1年になる予定だったが、モウリーニョ就任で立場は危ういポジションへ。
逆境を力に変えることができるか、彼のメンタルが問われる1年になりそう。

  • #3 Éder Militão

マドリーDF陣の中でも屈指のスピードとフィジカルを兼ね備えたブラジル産CB。特に最近ではセットプレーにおけるヘッドでの得点機会が増えてきた印象。めっちゃ飛ぶ。
ただ、ACL断裂に始まり、ここ数年は長期離脱に悩まされ続けている。
健康な彼が戻れば守備の質は間違いなく一段上がるが、今シーズンはいかにコンディションを保ってシーズンを走り切れるかが最大のテーマ。
わりと彼の中ではこの先を占う1年になりそうな予感。

  • #4 Dean Huijsen

昨シーズンにボーンマスから加入して以降、CBの序列を一気に駆け上がったオランダ育ちのスペイン人。
20歳とは思えない落ち着きと配球能力を持ち、ビルドアップの起点として重宝された。
しかし、シーズンを戦っていくごとに空中戦や1対1の対人守備が弱点となり怪我も重なって後半戦は失速。ラ・ロハのメンバー入りさえも失ってしまった。
今季は自身のアイドルであるセルヒオ・ラモスの背番号を受け継ぐことになった。
スタイルが違ってもマドリーのCBを象徴する存在になってほしい。

  • #16 Ibrahima Konaté (New)

今夏リバプールからフリーで加入したフランス代表CB。
194cmのフィジカルとスピード、そして球際での粘り強さを併せ持つ、モウリーニョ好みの戦えるCBの代表格。
W杯でのコンディションは杜撰だったが、プレミアリーグでの豊富な経験と、数々のビッグマッチを経験してきた勝者のメンタリティは大きな武器。
例年のDF離脱リスクを踏まえれば、彼が実質的な守備の柱として期待される場面は多くなりそう。

  • #22 Antonio Rüdiger

ここ数シーズン、マドリーのCB陣に絶対的な安定感をもたらし続けているドイツ人、愛称は『エル・ロコ(狂人)』。
対人守備の強さ、危機察知能力、そしてピッチ内外での戦う姿勢は、若手が多くなったDF陣の背骨としての価値がとにかく大きい。
年齢的には30代半ばに差し掛かり、コンディション管理がテーマになる時期ではあるが、彼の経験値なくして今のマドリーの守備は成り立たない。

LSB

  • #17 Marc Cucurella (New)

今夏チェルシーから加入したスペイン代表SB。
172cmと小柄ながら、ボールを持てば止まらない推進力と、粘着質な対人守備で相手のサイドを止めきる能力が持ち味。
2026年W杯及びEuro 2024でスペイン優勝の立役者の一人となり、LSBではパリのメンデスと対をなすほど。
特徴的なモジャモジャの髪型と共に、ピッチ内外で存在感を放つ愛されキャラでもある。
奥様がマドリディスタらしい。

  • #18 Álvaro Carreras

昨シーズンにベンフィカから加入。オーバーラップの推進力とクロス精度に加え、内側へ絞ってビルドアップに顔を出す動きもできるモダンなSB。
移籍元のベンフィカから買い戻す形での再加入だっただけに、ファブリカ組の帰還という物語性もある選手。
ククレジャの加入で今季は熾烈な競争が待っている。本人としては、昨季アルベロアになってから若干干され気味だったため、ここでアピールしたい。

  • #23 Ferland Mendy

対人守備の強さとスピードで一時代を築いたフランス人SB。2度のCL制覇に大きく貢献し、世界最高のLSBの一人と評された時期もあった(かもしれない)。
しかしここ数年は怪我による離脱が常態化し、絶対的地位から完全に離脱。若手・新戦力の台頭に押される中で、意外にも31歳のベテランとしての立ち位置を再定義できるかがテーマ。

MF

  • #5 Jude Bellingham

23/24シーズンにドルトムントから鮮烈な加入を果たして以降、マドリーの心臓部を担うイングランド代表MF兼イングランドの10番。
マドリーにおける3人の顔の1人。
ジダンが着けた背番号5を受け継ぐ象徴的な立ち位置に加え、加入初年度でCLとラ・リーガの2冠に貢献するという結果で応えた22歳。
中盤の選手でありながらボックス内に顔を出して得点を決めるセカンドストライカー的なスタイルと巧みなボールコントロール及びチームに対して献身的一面も併せ持つ。
しかしエンバペが加入して以降、負傷もあって乗り切れない2シーズンを経験。今季は3シーズン目に突入するが、彼のピッチでの役割に注目したい。

  • #6 Eduardo Camavinga

21/22シーズンにレンヌから加入して以降、そのアスレチックな身体能力とマルチロールへの対応力でマドリーの中盤に欠かせない存在となったフランス代表MF。
中盤の3ポジション、そしてLSBまでこなせる稀有なユーティリティ性を持ち、CL2度の優勝にも大きく貢献してきた。
ただ、22歳という若さにもかかわらず、確固たる自分のポジションを掴みきれていない側面が彼の立ち位置だ。
今夏には放出の噂も浮上したが、本人はマドリー残留の意思が強く、今季も重要な戦力として続投する見込み。彼の位置が定まる年になれば、マドリー中盤の姿もより明確に見えてくる。

  • #8 Federico Valverde

マドリー中盤の心臓であり、無尽蔵のスタミナと強烈なミドルシュートを武器とするウルグアイ代表MF。
攻守にわたる貢献量ではチーム随一で、時にはRSB、RWG、HVといった万能性は、現代サッカーでも最も貴重なタイプの選手と言っていい。
昨シーズンは悪い意味で目立ってしまったところが目に新しいが、今シーズンは第一カピタンを務める。
彼の情熱がピッチの至る所で見られることを心待ちにしている。

  • #14 Aurélien Tchouaméni

22/23シーズンにモナコから加入したフランス代表のDMF。
188cmの高さとカバー範囲の広さを活かしたアンカーとしての能力に加え、DFラインの緊急事態時にはCBとしてもプレー可能な守備の柱。
特に空中戦とインターセプトでの読みの鋭さは、この年代の6番タイプでは屈指のレベルだと個人的には感じる。
ボールを扱うことやビルドアップの観点では成長の余地がありすぎるが、まず失点しないサッカーの中で、彼が担う役割の重要性はさらに上がっていく。今季のマドリーでは彼の守備力が鍵になりそう。

  • #15 Arda Güler

23/24シーズンにフェネルバフチェから加入したトルコ代表の若き左利き司令塔。加入初年度・2年目は怪我や出場機会の少なさで存在感を発揮しきれなかったが、25/26シーズンにアロンソ体制でついに開花。
主にトランジション局面の起点として、ボールを奪った瞬間に前を向いて最前線のFWへのラストパスを届ける役割を掴んだ。
技術、視野、パスの精度、そしてセットプレーからの直接的な脅威まで、若くして完成度の高い選手。肉体的に大きく成長した。
今季は自身のポジションをさらに確立する年になるはず。

  • #20 Bernardo Silva (New)

今夏マンチェスター・シティからフリーで加入したポルトガル代表MF。ペップ・シティの中盤を長年支え、プレミア連覇、CL優勝など数々のタイトルを掴んできた32歳の名手。
身長は小柄ながら、無尽蔵のスタミナと圧倒的なボール保持能力、そして味方を活かすパスワークで試合のテンポをコントロールできるマドリーの中では特殊な能力を有する。
モドリッチ・クロース以降マドリーが探し続けてきた試合を作れる中盤のピースとして、大きな期待がかかる。
年齢はあるが、彼のスタイルはフィジカル依存ではないため、まだしばらくは高いレベルでプレーが期待できる。と思う。

  • #21 Brahim Díaz

マンチェスター・シティの下部組織で育ち、ミランを経て23/24シーズンにレアル・マドリーに戻ってきたモロッコ代表の10番。
細かいドリブルと突破力、両足共に質が高いシュートを武器とする、いわゆる技巧派の10番。
ローテーションの中で使い勝手のいい存在として、ここ数シーズン重要な役割を担ってきた。
2026年W杯ではモロッコ代表として存在感を示し、代表レベルでも一段成熟した印象。
今季もマドリー中盤の厚みを担う一人として続投する。

FW

  • #7 Vinícius Júnior

18歳でフラメンゴから加入して以降、マドリーの左サイドを7年以上にわたって支配し続けているブラジル代表エース。マドリーにおける3人の顔の1人。
爆発的なドリブル突破と大舞台での勝負強さが売りのマドリーの韋駄天。
エンバペ加入後は前線でスペースを取り合う場面もあり、25/26シーズンは共存に苦しむ時期もあったが、彼がクラブの顔のひとりであることに変わりはない。
今夏に2032年までの6年の契約延長をした。今シーズンはエンバペとの関係性や第二カピタンとしての自覚や人間性が問われる年になる。

  • #9 Endrick

24/25シーズンにパルメイラスから鳴り物入りで加入したブラジル代表の若きストライカー。
18歳での加入から2シーズン、期待されたほどの出場機会に恵まれず、25/26シーズン後半にはリヨンへローン移籍。そこで多くの試合に出て感覚を戻し、自身初のW杯へ招集しこの夏マドリーに帰還した。
エンバペ・ヴィニシウスの2枚看板が動かない前線で、どこにポジションを見出すかが最大のテーマ。
今夏には放出説も出たが、モウリーニョとクラブは彼を残す判断を下した。20歳の彼にとって、勝負の1年になる。

  • #10 Kylian Mbappé

24/25シーズンにPSGから満を持して加入したフランス代表キャプテン。
マドリーにおける3人の顔の1人。
世界最速クラスのスプリント、両足からの決定力、そしてビッグクラブでのタイトル獲得経験をすべて備えた、現代フットボール最高のFWの一人。
加入初年度から2シーズンで既に数々のゴールを積み重ね、クラブの広告塔としての存在感は圧倒的。
ただ、ヴィニシウスとの関係性、そしてマドリー内での役割の最適解については、まだ試行錯誤の途中にある。
19歳でW杯を制し、その後もW杯決勝でハットトリックを決めた男が、マドリーでNEO銀河系の中心として何を築くか。
今シーズン以降のマドリーの物語は、彼を軸に回っていくのだろうが、彼がタイトルを掲げている姿を見たいものだ。

  • #11 Rodrygo Goes

19/20シーズンに18歳でサントスから加入して以降、マドリーで多くの決定的な瞬間を演出してきたブラジル代表FW。
右利きでありながら両ウイングでプレー可能で、何よりCLでの勝負強さで名を挙げてきた男。
21/22 CL準決勝マンチェスター・シティ戦の逆転劇での連続ゴールをはじめ、大舞台での決定的な仕事を積み重ねてきたビッグゲームプレイヤーの1人。
ただ、エンバペ加入以降は前線での立ち位置に悩む場面も増え、25/26シーズンは出場機会にも波があり、シーズン途中で前十字靭帯断裂という大怪我を負った。そんなことからシーズン開幕後もしばらくはリハビリ予定で復帰は1月頃を想定。

  • #19 Carlos Espí (New)

今夏レバンテから加入した若手FW。
モウリーニョが求めるであろうポストプレーを得意として、純粋なNo.9として獲得した。
まだトップレベルでの実績は限定的だが、モウリーニョ体制で出場機会をつかめれば、成長の速度は一気に上がる可能性を秘めている。
出場機会は限定的であろうが、役割がはっきりしているため少しずつ立ち位置を作っていく年になる。

  • #25 Yan Diomande (New)

今夏ライプツヒから加入した若きウイング。
ブンデスリーガ1年目で大ブレイクし、この夏マドリー加入となった。スピードとドリブルを併せ持つFWで、まだ若いながらもトップレベルの空気は経験している。
縦へ速い攻撃を志向するモウリーニョの要請かつ、若手枠としての未来への投資の側面が強い獲得である。
移籍金が1億4000万ユーロ前後でマドリーの移籍市場最高値。多分スタメンには名を連ねるであろう。前評判がかなり高いので、巨大なプレッシャーを払拭できるか。

監督:José Mourinho (New)

今夏ベンフィカから就任した、通算2度目のマドリー監督となる63歳のポルトガル人。
CL 2度優勝(03/04ポルト、09/10インテル)を含む主要タイトルを4カ国(ポルトガル・イングランド・イタリア・スペイン)で獲得してきた、現代サッカー優勝請負人の一人。Special Oneを自称し、それを裏付けるだけの結果と存在感で長年サッカー界の中心にい続けてきた男。

戦術的には、まず失点しない構造化された守備、縦に鋭いカウンター、そしてセットプレーの徹底活用が代名詞。
近年はローマ、フェネルバフチェ、ベンフィカと、必ずしもトップクラブとは言えない環境でも独自のフットボールを組み立て続けてきた。
今回のマドリーは運命の巡り合わせとも言える就任で、勝つこと=コンペティションの制覇に全振りできるスカッドと合わさった時、彼の指揮官としての新章がどう描かれるかは、26/27シーズン最大の見どころのひとつ。

期待される点は、大舞台での勝負強さ、選手をまとめ上げるカリスマ性、そして勝利に拘る揺るぎない姿勢。懸念される点は、モダンなスーパースター(エンバペ、ヴィニシウス、ベリンガム)との関係性、そして2〜3シーズン目にありがちな内部軋轢のパターン。
第一次マドリー政権(10〜13)の最終年に生まれた軋みが、今度は繰り返されないかも見守りたいポイント。多分3年目は怪しい。

彼が勝ち方や勝者のメンタリティを、このNEO銀河系のロッカールームにどう植え付けていくか。

予想ゲームモデル

話が長々となってしまったが、後少し。
この節では、開幕を目前に控えた26/27マドリーがどんなサッカーを見せるのか、強みが磨かれる領域課題として浮き彫りになる領域の2つの角度から予想していきたい。
まだ一試合も公式戦を戦っていない段階の予想である以上、外れる可能性は当然ある。
それでも、モウリーニョの過去とこのスカッドの構成を照らし合わせれば、輪郭はある程度見えてくると思っている。

磨きがかかる領域

まず、この夏マドリーが手にした駒立てで、強化される領域が3つある。順に見ていく。

守備ブロックの深さ

初期フォーメーションは4-2-3-1だが、非保持局面では4-4-2に可変してブロックを組むと予想する。
ここで効いてくるのが、この夏コナテ、ククレジャ、ドゥンフリースを加えた厚みのあるDF陣だ。
カルバハル退団の穴を即座に埋めるだけでなく、各ポジションに対し最低2枚の即戦力を配置することで、ローテーションで長いシーズンを回せる編成になっている。
もう一つのポイントは、ウィング(ヴィニシウス、ロドリゴ、ディオマンデ)を下げすぎない部分。これは攻め残りさせるという意味合いではない。
下げすぎないのは、トランジションの局面で生かすためだ。その分ハーフボランチやSBの負担は大きくなるが、非保持でスペースを埋めるのが得意なチュアメニ、B to Bで走れるバルベルデ、カマヴィンガといった役者は揃っている。

ポジトラの型

この夏のスカッドで最も磨きがかかるのが、ボールを奪ってから前線に速く運ぶポジトラだろう。
前線4枚(ヴィニシウス・エンバペ・ディオマンデ・ベリンガム)は全員が縦へのスピードが速く、ゴールエリア付近で仕事ができるタイプ。
相手が空けたスペースに一気に切り込んでいく形が、モウリーニョ流のカウンターに噛み合うのは言うまでもなく、特徴的なのが、1人で完結するよりも2人以上での得点パターンが増えるであろうという点。
エンバペのスピードにヴィニシウスのドリブルが絡み、そこにベリンガムがボックス内に走り込むといった、トランジションを個人だけに頼らず、連動することが前提なカウンターが形になる可能性が高い。

セットプレーの比重

モウリーニョの代名詞の一つが、セットプレーの徹底活用だ。
そしてこの夏のマドリーには、その武器を極めるための材料が揃っている。コナテ、リュディガー、ハウセン、ミリトンら高さのあるCB陣、そして中盤でもエアバトルに強いチュアメニ、途中出場で高さを追加できるエスピなどセットプレーの状況で並ぶ選手たちの脅威度は、間違いなく一段上がることを期待したい。
均衡した試合を1発で動かす武器として、今シーズンは得点の全体に占めるセットプレーの割合が明らかに増えるはずだ。

浮き彫りになる領域

一方で、この夏の駒立てには、はっきりと課題として残る領域もある。ここでは2つの角度から書いておきたい。

テンポ操作の担い手不足

ベルナルド・シルバの獲得で、試合をコントロールできる選手は手中にある。
しかし、彼をどこで使うかがまだ見えないのが現実だ。トップ下はベリンガムで固定される以上、彼は必然的にダブルボランチの片方に入ることになる。
もう1枚は、走れるバルベルデか守れるチュアメニ。ここまではいい。
問題は、ベルナルド・シルバがボランチの位置から中盤全体のテンポを作りにいった時、周りの相方や前線が同じテンポを共有できるかどうかにある。
エンバペ・ヴィニシウス・ディオマンデといった前線は縦へのスピードと個の勝負を売りとするタイプで、いわゆるパスを引き出す動き=受け手としては少し努力不足が否めない。
テンポを作るはずのベルナルド・シルバが、パスの受け手を見つけられずに孤立する場面が出てくる可能性は否定できないし、多分何回も起こる現象だろう。
理想は、ロドリのような純正なアンカーを獲得できていれば中盤の骨格そのものが変わっていたかもしれないが、ここは今回叶わなかった。

保持局面の非設計

モウリーニョ流のサッカーの本質は、ボールを保持して崩すことではない。カウンター、セットプレー、そして構造化された守備など、相手が動いてくれることを前提とした武器だ。
そしてラ・リーガの現実は、マドリーが対戦する多くのチームが引いてブロックを作ってくる。
相手がリスクを取ってこない試合、こちらがボールを持たされる展開が予想される。ここでどう崩すのかの明確なプランは、今のマドリーからは見えてこない。
ラ・リーガの下位相手や、CLでのアウェー戦、引かれた壁を破る場面で、この課題は必ず顔を出す。
ここを個人戦術で強引に破っていくのか、あるいは開幕からの数ヶ月でモウリーニョが解答を提示するのか。
今シーズンの試金石は、意外にもこの保持で崩す局面にあると個人的には思う。

おわりに

昨シーズンは、色々な意味でカオスな試合が多かった。
選手の態度に呆れる場面も少なくなく、悲観的な言葉ばかりが頭をよぎるような1年だったと思い返せば言えるだろう。
そしてその流れで迎える26/27シーズン。監督にはあの強烈な個性を持つモウリーニョを迎える。こんなことから心配がないと言えば嘘になる。

それでも、結局のところ応援しているチームには期待してしまうのが本音だ。
今批判にさらされている選手も、輝き続けている選手も、今シーズンが勝負の年になる選手も全員を含めて、最後は全員でトロフィーを掲げている瞬間を見たい。

レアル・マドリーを応援している人間として、それ以上のものは望んでいない。

ただし、今シーズンだけは言い訳ができない。
これだけのスカッドと、モウリーニョという指揮官が揃ったのだ。

ここで駄目なら、多分誰がやっても駄目だろう。
だからこそ、どうか良いシーズンになりますようにと中東から、開幕を待っています。

長い記事を読んでくれてどうもありがとうございます。
今シーズンもなるべく試合のレビュー記事を投稿していきますので、今シーズンもどうぞよろしくお願いいたします。


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