#05 振り返りのたびに自分を責める人へ ── 達成率より成長率
振り返りセッションで、開口一番こう言う人がいます。
「すみません、今月できませんでした」
顔が暗い。まるで先生に宿題を出せなかった小学生みたいに。
でも話を聞いていくと、このクライアントさんめちゃくちゃ動いてるんです。
新しい挑戦をして、先月はできなかったことができるようになってる。なのに本人の自己評価は「できませんでした」。
この現象、本当に多いんです。振り返るたびに自分が嫌いになる、この構造の話をします。
達成率は、挑戦する人ほど傷つく物差し
原因は本人の性格じゃありません。使っている物差しです。
多くの人は、振り返りを無意識に「達成率」で測っています。
ゴールに対して何%できたか。
これまで、学校のテストも、会社の予算も、ぜんぶこの物差しで評価され続けたわけなので、無理もありません。
でも思い出してください。人生を変えるゴールは、現状の外側に置くものです。今の自分には届かない場所に置くからこそ、そこに向かう過程で自分が変わる。ということは、現状の外側のゴールを達成率で測ったら、未達になっちゃうこともあるんですよね。当たり前なんです、外側に置いたんだから。
つまり達成率という物差しは、挑戦が大きい人ほど点数が低く出る設計になっている。真剣に挑戦している人ほど、毎月「できませんでした」と自分を責めることになる。おかしいでしょう、この構造。

見直すべきは、物差しなんです。
そして、この物差しにはもう一つ、もっと大きな落とし穴があります。
達成率を求められると、人は「達成できるゴール」を置くようになるんです。当たり前です。100%を求められているんだから、確実に届くところに旗を立てるのが、いちばん合理的ですから。
でも、そこで失っているものがあります。
脳は、届かないゴールで活性化する
認知科学のコーチングを学んだときに教わって、いまも毎回のセッションで確かめている原則があります。
「僕たちの脳は正直にできている」という話です。
今のままで達成できることに対して、脳は本気を出しません。今のままで安心、今のままで大丈夫、という状況では、持っているポテンシャルが引き出されないんです。
逆に、「今のやり方のままでは届かない」という場所に立ったとき、脳は新しい方法を探し始めます。そしてクリエイティビティが働き出す。
条件は3つあります。
ゴールが明確なこと。
期日が明確なこと。
数字が明確なこと。
この3つが揃っていて、しかもそれが今のままでは届かない場所にあるとき、脳は活性化します。そして解像度があがればあがるほど、回転数が上がっていく。
ここで、順番の話をさせてください。
多くの人はゴール達成のための手段から考えます。過去にやってきたこと、いま持っている知識、できそうな方法。それを並べて、その範囲の中でゴールを決める。手段(プロセス)が先で、ゴールが後です。
でも、これをやると、手札が現状維持のものだけになるんですよね。過去の自分にできたことの中からしか、選べなくなる。
順番が逆なんです。ゴールが先で、手段(プロセス)が後。
今のままでは届かないゴールを先に置くと、そのゴールのほうがアイデアをくれます。「どのようにしたら届くんだろう」と考え始めた脳が、それまで一度も出てこなかった発想を出してくる。アイデアは、手段を探しているときではなく、ゴールから生まれてくるものなんです。
だから、「できるかどうか」を、今の時点でジャッジすることはできません。ゴールを置いたあとの自分が、何を思いつくかは、今の自分には分からないからです。やりながら見つかっていく。飛び込んでから、開発されていく。
「できそうだから、やる」の順番でいる限り、見える世界は、今の枠のままなんです。
枠の外側にゴールを掲げたから、そこまで行けた
セッションで実際にあった話をします。
あるクライアントさんが、それまでの自分からするとかなり大きな数字を、その月のゴールに掲げました。
結果は、未達でした。掲げた数字には、届かなかった。
でも僕は、その報告を聞いて「めっちゃいい」と返しています。掲げる前の数字と比べたら、明らかに過去最高の結果だったからです。
そのとき伝えたのが、これでした。
高い数字を掲げたからこそ、そこまで行けたんですよ。
確実に届く数字を置いていたら、そこまでは絶対に伸びていません。届かなかったゴールが、クライアントさんをそこまで引っ張り上げたんです。
達成率で見れば「未達」。成長率で見れば「過去最高」。
同じ月の、同じ事実です。違うのは、当てた物差しだけ。
だから僕は、その事実を自信にしてほしいと伝えました。そして次の月、そのクライアントさんはゴールを下げませんでした。むしろ、さらに上げたんです。
GOOD & MORE
じゃあどう振り返るか。セッションで行っている型はシンプルです。
①GOODの振り返り
この1ヶ月で良かったこと・できたことを先に挙げる。小さくていい。むしろ小さいものを拾えるかが勝負です。
そして、なぜそれができたのか、そこから何がわかるか、GOODからの気づきと学びを振り返ります。
②MOREの振り返り
MOREは、「できなかったこと」ではなく、「もっとこうできた」、「来月はもっとこうしたい」ということ。
そのために次の1ヶ月、何を変えるか、MOREからの気づきと学びも振り返ります。
ポイントは、1ヶ月のGOODを受け取ることです。
達成率の物差しでいきている人の多くは、MOREから振り返りはじめます。
また、GOODよりもMOREの量が多くなる傾向があります。
振り返りで大事なことは、この1ヶ月でどれだけ成長できたかというGOODを受け取ることなんです。
比べる相手は過去の自分
なので、大事なことは物差しの交換です。達成率よりも成長率。
ゴールとの距離を測るのをやめて、スタート地点からの距離を測ってください。1ヶ月前の自分は、これができたか? 半年前の自分は、この景色が見えていたか? こう測ると、挑戦している人の自己効力感も上がりやすくなります。実際に前進しているんだから、当然です。
たとえば、こういう2人がいたとします。
達成率100%、成長率103%の人(確実に届くゴールを置いて、きっちり達成した)
達成率50%、成長率200%の人(届かない場所にゴールを置いて、半分までしか行けなかった)

達成率という物差しで見れば、前者が優等生です。後者は「未達」で、会社員や政治家であれば、下手をすると評価が下がる。
でも、1年後に遠くまで行っているのは、どちらでしょうか。
半分しか届かなかった人は、それでも自分を倍に伸ばしています。しかもその過程で、これまで持っていなかった発想や、やり方を手に入れている。一方、確実に届くゴールを達成し続けた人は、達成率だけはずっと100%のまま、ほとんど同じ場所にいることになります。
炎の色の話をよくするんですが、「できてない自分」を燃料に頑張る人は、赤い炎なんです。勢いはあるけど、自分を燃やしてるから、いつか燃え尽きる。一方、「成長してる自分」を燃料にできる人は、青い炎。静かで、温度が高くて、長く燃え続ける。
長い挑戦を走り切るのは、いつも青い炎の人だと思うんです。
達成率の呪縛を捨てて、圧倒的な成長率を獲得しませんか?
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