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メモ ビッグデータに圧倒されないため、米海軍はクラウドで対応している

現在、海軍の艦艇は、周囲の環境と敵の動態を把握する情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)活動に基づいて運用されています。しかし、ISR活動によって収集されるデータの量が増加するにつれて、人間の認知能力では処理が追いつかない状況が起きるようになっています。この限界はミサイル打撃戦を想定した現代の海上戦上で大きな課題です。

ランド研究所の報告書『データ洪水(Data Flood: Helping the Navy Address the Rising Tide of Sensor Information)』(2014)は、次のような具体的な問題を提起しています。

Porche, I. (2014). Data flood: Helping the Navy address the rising tide of sensor information. Rand Corporation. https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR315.html

  • 遅くなるダウンロードの時間:大量のデータを通信系で伝送するとき、ネットワークの帯域幅が不足するため、データの取得に時間がかかります。

  • 共有される通信パイプライン:複数のシステムや部署が同一の通信経路を使用するため、ボトルネックが発生します。

  • タグ付けされていない生データ:データに適切なメタデータ(そのデータの属性に関する情報)が付与されていないため、検索、分析が困難になっています。

  • 孤立したデータベースとネットワーク:異なるシステム間でデータが分断されており、統合、共有が難しくなっています(「縦割り」と呼ばれる問題)。

  • 雑然としたワークステーション:アナリストが使用するコンピューターに多数のアプリケーションがインストールされているため、操作が複雑で効率が低下します。

それぞれの艦艇でデータ・アナリストが取り扱うべきデータが増加しているのにもかかわらず、それを処理する能力が向上していないことについては、具体的な数値を挙げて説明しています。

「陸上において100ギガビット毎秒の転送速度で作業するアナリストは、1テラバイトのデータを4分でダウンロードできるが、40メガビット毎秒の転送速度で作業する艦上のアナリストは、同じデータをダウンロードするのに3日かかる。ダウンロード時間の課題をさらに悪化させる要因が2つある。第1に、アナリストが使用する通信パイプラインは、時には彼らの制御外にある。たとえば、衛星通信チャネルへのアクセスは他の人と共有されており、地域的、国家的な優先順位に基づいて、海軍のアナリストが使用できない場合がある。第2に、アナリストは、必要なものを正確に見つけるために、複数の容量が大きなファイル(高解像度の画像など)をダウンロードしなければならない。これは、ISRセンサーによって生成される多くのビッグデータ(画像、ビデオ、音声など)が「タグ付けされていない」ためである。つまり、これらのデータには、アナリストがそれらを見つけ、アクセスするかどうかを判断するのに役立つ情報が付随していない」

pp. 14-16

こうした課題に対応する上で著者らはクラウドの技術を活用する必要があると著者らは結論を出しています。Google DriveやDropboxのように、クラウドではデータを一元的に管理し、物理的な場所に依存することなく、必要に応じてアクセスできるようにする技術です。アメリカでは電子情報を対象にした諜報活動を行う国家安全保障局が分散型クラウドの技術を業務に導入し成果を上げており、これを海軍においても導入することが推奨されています。

もちろん、単にクラウド・コンピューティングの技術を用いればビッグデータの問題をすべて解決できるというわけではありません。報告書でそこまで詳しく論じていませんが、情報セキュリティの問題を考慮する必要があり、
サイバー領域における敵の脅威が想定できます。今後さらに無人航空機の活用が拡大し、そのセンサーデータを処理する必要が生じる場合、どれだけのデータを安全に伝送、処理できるようになるかによって、その艦艇の戦闘力が決まることになるでしょう。

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