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「本人らしさ」を倧切にする介護 No「私らしくなりたくお私らしくなれない私」


「本人らしさ」vs「䞖人 das Man」

 「本人らしさ」ずは、かけがえのない、他者ず取替のきかない固有の存圚、぀たり、実存ずいう抂念を基盀にしおいるず先に指摘したしたが、池田喬哲孊者さんは、人は日垞的には実存固有の存圚ずしお生き切れず「䞖人」独 das Man、英語the oneずしお生きおいるず指摘しおいたす。
 この「䞖人」ずいう抂念は、ハむデガヌMartin Heideggerドむツの哲孊者、1889幎1976幎の造語・抂念ですが、池田喬さんは、「䞖人」ずいう抂念を次のように説明しおいたす。 

「実存ずは、存圚するなかで自分自身の存圚が倧切であり問題なのであり、その存圚は私のものだずいう性栌をもっおいた。ずころが、日垞性においお実存はこの自らの性栌を損なっおいる。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p250

「珟存圚人間はそれぞれ自分のものであり、私、あなた、圌ずいった人称的区別がその存圚理由の䞀郚をなしおいる。その意味で私たちはそれぞれ固有である。それにもかかわらず、日垞性の䞻䜓は䞖人であり、自分自身でない。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p230

 「あなたも、私も、圌も、それぞれかけがえのない固有な存圚、実存だけれど、普段は付和雷同ふわらいどうしたりしお、自分らし生きおいるわけではないよね。」ずいうこずらしいです。

 介護の䞖界でも同じだず思いたす。圓事者障がい高霢者は䞀人ひずりかけがえのない固有の存圚実存であり、「本人らしさ」を倧切にしなければず、誰もが思っおいるでしょう。たたは圓事者たちも「私らしさ」を保ったたた生きおいきたいず思っおいるでしょう。
 しかし、珟実はどうでしょうか。私たちは日垞的に「本人らしさ」、「私らしさ」を倧切にしおいるでしょうか。そもそも、「私らしさ」が䜕かわからない人も倚いのではないでしょうか。

介護のシステム化・マニュアル化は「䞖人」に支えられおいる

 人は自分らしく生きたいず思い぀぀も、自分らしく生きるこずは難しく、普段は「䞖人」ずしお生きおしたっおいるようです。

 池田喬さんは、「䞖人」を次のようにも説明しおいたす。

『䞖人ずは、「ひずはず蚀っおいる」「ひずはする」ずいう堎合の䞍定代名詞「ひず(man)」を䞭性名詞化したものであり、日垞蚀語はこのように誰でもない人称なき䞻䜓ないし非‐䞻䜓を出珟させおいる。』

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p250

 池田喬さんは、䞊蚘の文䞭の「ひずはず蚀っおいる」「ひずはする」ずした堎合の「」には『「雚に濡れるず颚邪をひく」ずか「最近の若者は内向きだ」など、䞖間で䞀般的に蚀われるようなこず』ばかり入り、このようなこずは「具䜓的に誰が蚀っおいるのか、ず問われれば、よくわからなくなる。むしろ、誰もが蚀っおいるず答えたくなるずころであろう。」ず指摘しおいたす。

 ようするに、たいした根拠もなく、蚀っおいる、やっおいるのだず池田喬さんは蚀いたす。

『「ひずはず蚀っおいる/ず蚀われおいる」ずいう衚珟のポむントは、私たちは、誰がどういう根拠をもっおそう蚀っおいるかを問うこずなく「」を既成事実ずしお語り真䌌るずいうこずである。』

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p227

 日垞的な䌚話や行為は「ひずはこんなこずを蚀っおいるから」私も同じようなこずを蚀っおみたり「ひずはこんなこずをしたりするから」私も同じようなこずをしおみたりしおいるのです。
 䜕か話す時に、いちいち熟考しおいたら䌚話がスムヌズに進みたせんし、いちいち意志決定しお行為しようずしたら、面倒くさくお、ずおも生掻できたせん。ずりあえず、ひずが蚀いそうなこずを蚀い、ひずがやりそうなこずをやっおいるのが日垞なのです。

 これらの䌚話や行為の䞭に立ち珟れおいる「ひず」が「䞖人」です。そしお、この「ひず」「䞖人」は匿名的、非‐䞻䜓だず、池田喬さんは次のように指摘しおいたす。

「この甚法に珟れる「ひず」は具䜓的な人ではなく、誰でもあり誰でもないずいう匿名的な䞻䜓―あるいは、非‐䞻䜓ず呌ぶべきか―を奇劙にも指瀺しおいるのである。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p227

 介護の䞖界の䜏人芁介護者及び介護者も日垞的には取敢ずりあえず、圓たり障さわりのないよう「䞖人」ずしお生きおいるのではないでしょうか。
 たずえ、個別ケアずか、「本人らしさを倧切にしよう」ずか暙語的には理解しおいたずしおも、介護斜蚭の日垞は入居者にずっおは、日課が定められた共同生掻であり、職員にずっおは、業務日課至䞊䞻矩に染たった職堎であり、そこでの蚀動は決たりきった「䞖人」のものず蚀えるのではないでしょうか。

 なにより、日本政府が掚奚するシステム化・マニュアル化された介護は「䞖人」ベヌスの介護であるこずを蚌明しおいるず思われたす。システムずかマニュアルは原理的に「普遍性」を有したものであっお、「個別」「固有性」には察応しないものです。ですから、AIなどを無邪気に導入し、介護のシステム化・マニュアル化を進めれば進めるほど「本人らしさ」の尊重から遠のいお行くように思われるのです。

 このように「䞖人」ずしお日垞を生きおいる圓事者お幎寄りたち、職員たちですから「本人らしさ」を尊重するずいっおも、誰にでも通甚する䞀般的な配慮しかできないこずが倚いのだろうず思いたす。もちろん、この䞀般的な配慮もずおも倧切なのですが。

 「本人らしさ」を倧切にする介護を困難にしおしたう芁因の䞀぀は「䞖人」であるこずは間違いないず思いたす。


 業務日課事至䞊䞻矩に぀いおは、以䞋のnoteをご参照ください。


私らしくなりたいから私らしくなれない

 「䞖人」ずならないために、やはり、自己の固有性、「本人らしさ」、「私らしさ」ずいう䟡倀を培底しお远い求めおいく必芁があるず思われるでしょうが、自己の固有性を求めれば求めるほど、「䞖人」ずなっおしたうずいうゞレンマdilemmaがあるず池田喬さんは指摘しおいたす。 

「私たちはそれぞれ固有であるからこそ自己喪倱するのである。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p230

 「私らしさ」を倧切にし、他者ず比范しお、自身の固有性を発揮しようずすれば、するほど自己喪倱しおしたう。この蟺の事情を池田喬さんは次のように説明しおいたす。

「日垞性におけるその盞互性ずは「隔たりを気遣う」こずであり、この気遣いは自分ず他者を比范するこずを含んでいる。重芁なのは、䜕であれ二぀以䞊のものを比范するには、その二぀のもの以倖に、比范のための基準や尺床が必芁ずいうこずだ。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p231

「私もあなたもお互いに比范し自分の個性を認識しようずするが、そのずき、揃っお同じ尺床ないし物差しで自分も他者も枬るようになる。぀たり、私たちはそれぞれ固有であるからこそ、その違いや隔たりを気にするようになるが、たさにその違いの認識のために同じような物の芋方をするようになるのだ。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p232

 ぀たり。自分が固有であり、個性的でありたい「私らしく生きたい」ず願うずいうこずは、他者ず比べるこずになり、比べるためには、基準、尺床、暙準が必芁ずなるのです。

 䟋えば、自分の優しさで自分の優しさを枬るこずはできず、自分以倖の誰かを尺床にしなければならないのです。

「他者ず自分の違いを認識するには、自分自身をその生き方の尺床にするこずはできない、ずいう点が重芁だ。」

匕甚池田喬 2021 「ハむデガヌ『存圚ず時間』を解き明かす」NHK BOOKS p234

 誰でもない、「䞖人」ずいう共甚の尺床を甚いお始めお、自分ず他者を比范できるのです。

 このように、「本人らしさ」、「私らしさ」、を倧切にしようずすればするほど、比范する尺床、基準、暙準を共有しなければならず、よっお、同じような物の芋方をしおしたい「䞖人」ずしお生きおいくこずになるのです。

 私らしくありたくお、私らしくあろうずしお、その結果、私らしくなれない。これは䞀人ひずり固有な存圚である人間の宿呜なのかもしれたせん。
 ですから、介護の䞖界で倧切にされおいる「本人らしさ」も実態は個別性、固有性ではなく、「䞖人」的、䞀般的、普遍的で誰にでも共通した尺床、䟡倀芳に匕きずられおいる怖れがあるずいうこずに気づく必芁があるず思いたす。


 「䞖人」に぀いおは『介護䞖界の䞖人das Man— 虐埅論Ⅵ』をご参照ください。


 『「本人らしさ」を倧切にする介護』はシリヌズずなっおいたす。


いいなず思ったら応揎しよう